2008/01/12
広原盛明のつれづれ日記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2008/1/12 広原盛明のつれづれ日記 vol.109 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.hirohara.com/ ◆目次◆ つれづれ日記 ・12月25日:地域社会学会2007年研究例会の “縮小社会”に関する報告 (最近の講演活動や研究報告から、その6) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 12月25日:地域社会学会2007年研究例会の “縮小社会”に関する報告 (最近の講演活動や研究報告から、その6) 私はもともと社会学が好きだった。若いときから都市社会学 や農村社会学に興味があり、学生時代には好んで社会学の専門 書を読んでいた。工学部ではなく文系の学部に進んだ方がよかっ たと思ったことも多々ある。だから住宅問題や都市計画の研究 に関しても、技術的なテーマに関心があるというよりは、むし ろ「社会学的なアプローチ」の方が面白かったのである。 そんなこともあって、大学院時代や助手の頃から社会学研究 者との交流を重ねてきた。そのなかの岩崎信彦氏(神戸大学名 誉教授)や鰺坂学氏(同志社大学教授)が、京都の同志社大学 で開催される地域社会学会の2007年研究例会に私を報告者とし て招いていただいたのである。 地域社会学会の2007年度の年間研究テーマは、「“縮小社会” と地域社会の現在」というものだ。2005年から日本全体が「人 口減少社会」になったが、このような趨勢のもとで地域社会が これからどう変貌していくのか、そこで生じる地域問題はいか なるものか、またどのような政策課題が設定されなければなら ないかなど、年4回の研究例会を通して継続的に討議されるこ とになっている。その3回目の例会が今回の報告と討論だった。 岩崎氏から私に与えられたテーマは、「都市おける“縮小” のあらわれと政策課題」といういささか難しいものだ。大都市 圏での「縮小社会」現象の表れをどのような角度からとらえる か、それに抗し、乗り越える政策と運動の課題をどう設定する かを「自分の頭で考えよ」というものだ。日本の名だたる社会 学者たちの前で「好きなように喋れ」というわけである。 岩崎氏の手前、さすがに恥をかく(かかせる)わけには行か ないので必死になって考えたが、結局のところ、「人口縮小」 を悲観的にとらえる画一的な見方に対して敢えて楽観的な論旨 を組み立て、挑発的に「縮小時代の都市論」を展開することに した。(報告要旨は「最近の論考」欄に同時掲載したレジュメ を参照してください) 論旨は2つの骨子から構成されている。第1に、人口減少は規 模縮小をともなうことは勿論であるが、やがては人口再生産が 安定的に定常化する「静止安定人口」に落ち着くことが想定さ れていて、必ずしも否定的側面だけをみることはないこと。第 2に、従来の都市圏モデルは中心都市を核とした同心円状の構造 を前提とし、都市圏の人口増減を以って都市の成長・衰退の指 標にしているが、これからの都市圏とりわけ大都市圏は「1極 構造」から「多極構造」へ進化していくことが予想されること から、既存の大都市圏の人口減少を以って衰退と見なすのでは なく、「多極型都市ネットワーク」への移行過程とも見なしう ることだ。 このような視点から京阪神大都市圏(通常は大阪大都市圏と いう)の現状を見るとき、京阪神圏は東京圏や名古屋圏に比べ て人口減少の度合いは否定しがたいものの、それは大阪・京都・ 神戸が相対的に独立している「3極構造」であることから、東京 圏や名古屋圏のような「1極構造」よりも進化した「都市ネッ トワーク」を形成していると見なせることなどを強調した。 地域社会学の分野で「縮小社会」がどのような文脈で把握さ れているかはよく知らない。しかし、遠隔郊外住宅地などが人 口減少によって消滅していく事態に対しては、悲観的な見方が 支配的であることは聞いていた。そんな雰囲気の学会の席上で、 中長期的視点からの楽観論を展開することはさすがに気が引け たが、それでも司会者や事務局が後ほど「議論百出で面白かっ た」といっていただいたときは、正直言ってホッとした。 これは懇親会での余禄ではあったが、遅まきながら「何とか の手習い」で地域社会学会に入会させていただき、今後は社会 学者たちと共同で研究していくことになった。異分野の研究者 を快く受け入れてくれる開放的な雰囲気が気に入ったこともあ るが、工学部系の巨大学会(建築学会は4万人)に比べて、せ いぜい百人足らずの研究者が濃密に討論する場が継続的に持た れている人文系の学会に魅力を感じたのである。 今年もいよいよ年末に近づいた。12月16日の日曜日は、 朝の8時半から夜の8時過ぎまで丸1日ぶっ通しで恒例の龍谷 大学法学部の政治系ゼミの討論会が開かれた。10のゼミが半 年かけて準備したテーマを発表し、質疑応答を通して互いに論 戦するのである。私のゼミの今年の発表テーマは、「祭りを通 してまちづくり」を語るものであったが、会場の大方の予想に 反して準優勝の栄冠に輝いた。4年間の成績は、優勝1回、準 優勝3回というもので、学生たちの頑張りは相当なものだ。彼・ 彼女らに深夜までコンパに付き合うことは苦しかったが、これ でよいお正月を学生たちと一緒に迎えられるように思う。 2007年の「つれづれ日記」は、今年はこれで閉じること にしたい。拙い文章を読んでいただいたみなさまに感謝すると 同時に、来年こそは「よい年」が迎えられることを祈りたい。 (なお新年は1月7日頃からスタートします) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本メールマガジンは、HP「広原盛明の市民フォーラム」にて 掲載された「つれづれ日記」をまとめて、 週1回配信しております。 発行:広原盛明 メールアドレス:hirohara@skyblue.ocn.co.jp URL:http://www.hirohara.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


