2006/05/12
山岳プロガイドによる『山歩き』からの『登山』入門 Vol.010
************************************************************************ 山岳プロガイドによる『山歩き』からの『登山』入門 【010】2006/5/12 ************************************************************************ <<今回のお題>> ■山歩きの部■ ・実践山歩紀行−『英彦山(,M)/福岡県)』 □登山の部□ ・アルピニズム的こころ−『天気図を見ましょう・第3回』 /高気圧と低気圧の中の空気の流れと天気の関係 /気圧配置と日本の天候(冬) ◇番外編◇ ・『科学的手法と自然体験』 ◇お知らせ◇ ・2006年山岳ガイドプラン公開・受付開始!(渋いプランを作りました) ************************************************************************ ↓私のお勧めメールマガジンです。是非ご登録ください。 ご登録はこちら http://www.mag2.com/m/0000078289.htm (関東版) http://www.mag2.com/m/0000083471.htm (関西版) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼登山情報案内無料メールマガジン『山と温泉の旅』 ┏━━┓百名山から関東、関西を起点とした日帰り登山など、 ┃〜〜┃日帰り入浴施設とともに案内するメールマガジンを毎週配信中! ┃/\┃気になる登山用具から山開き情報などの企画も行っています。 ┗━━┛詳しくはぜひ以下ページをご確認ください♪ ●『山と温泉の旅』 http://www.h3.dion.ne.jp/~kurasupo/ ●『登山用具を探す』 http://www.h3.dion.ne.jp/~kurasupo/hobby.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■山歩きの部■********************************************************** △ 実践 △ △△ 山歩紀行 △△ 『英彦山(,M)/福岡県)』 --------------------------------------------------------------------- コ−ス:コ−ス:高住神社〜望雲台分岐〜英彦山北岳〜英彦山中岳〜英彦山南岳 〜材木石〜大南神社〜鬼杉〜玉屋神社〜奉幣殿 --------------------------------------------------------------------- ◎以下の記事(写真入)はこちらでもご覧頂けます → http://www.cbn-inc.com/yama/articles/01_hikosan.htm http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan000.jpg この案内図がなんとも言えずいい感じを出してます。今回は高住神社から北 岳→中岳→南岳の英彦山縦走です。 日本三彦山といえば、福岡県添田町の英彦山、兵庫県夢前町の雪彦山、新潟 県弥彦村の弥彦山が知られています。さらに英彦山は日本三大修験道として出 羽の羽黒山、熊野の大峰山と並ぶ霊場として、現在も広く信仰を集めています。 山の印象としては、修験道の山だけあって、何か身の引き締まるような感じが します。 北岳までの登山道には溶岩奇岩が点在していて、立ち止まって眺めたりしな がら登っても約2〜3時間くらいで北岳山頂に届きます。丸太階段などもあって 整備された登山ルートですが、ところどころ不安定な岩を踏むようなところも あるので気をつけてください。次第に視界が開けて、大きな岩の急登を登りき るとすぐに北岳山頂です。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan001.jpg 《写真:高住神社の登山口には山桜が咲いていました。朝日に映る山桜花。》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan002.jpg 《写真:望雲台分岐を過ぎて登る》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan003.jpg 《写真:北岳への快適な登山道》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan004.jpg 《写真:岩場を越えると急登が終わる》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan005.jpg 《写真:北岳山頂広場直前》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan006.jpg 《写真:英彦山北岳山頂(標高1195m)》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan007.jpg 《写真:北岳山頂の案内板》 北岳からほぼ同じ高さに見える中岳に向かいます。約30分くらいで、いった ん降りてまた登るだけ。登山道も歩きやすく問題ないと思います。中岳山頂に は木の標識がありますが、売店跡等もある広場になっているので頂上という雰 囲気ではありません。むしろ山上の小さな神域都市に来たという感じ。中岳山 頂の先には上宮があり、引き戸を入って参拝もできます。 上宮は740年に藤原清足による創建ですが、現在の社殿は1840年代に佐賀藩主 によって再建されたものです。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan008.jpg 《写真:北岳から中岳へ》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan009.jpg 《写真:英彦山中岳山頂の広場を上宮へ》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan010.jpg 《写真:英彦山中岳山頂(標高1180m) 上宮の50mほど手前にあります》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan011.jpg 《写真:英彦山中岳上宮》 続いて中岳から南岳に向かいます。中岳からは直接に山麓の奉幣殿へ下る登 山道が分かれています。南岳までの道も歩きやすい好ルートで、南岳山頂には 屋根と展望台があり、天気によってはここで昼食ということも考えられるでしょ う。英彦山の最高峰でもあります。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan012.jpg 《写真:天狗ラインから直接奉幣殿へ下る登山道》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan013.jpg 《写真:こちらが南岳への登山道》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan014.jpg 《写真:中岳から南岳へ向かう途中で英彦山中岳上宮を振り返る》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan015.jpg 《写真:南岳への分岐》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan016.jpg 《写真:英彦山南岳(標高1199.6m)山頂の祠》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan017.jpg 《写真:南岳山頂の展望台からは九州の山が良く見えます》 いよいよ下山ですが、実はここからがまた楽しい発見と驚きの連続です。南 岳からすぐの岩場を下ると、あとは特に緊張する部分はありません。材木石周 辺も少し急ですが、開けていて休憩ができるくらいの場所です。 最初の見所は大南神社。断崖の洞窟の中に建っていて、山桜の時期には本当 に美しい景観が期待できます。 次は鬼杉で休憩しましょう。高さ38m、周囲12.4m、樹齢約1200年の大杉の 前の小さな沢では、珍しいオオイタサンショウウオを見つけました。 美しい森を抜けると玉屋神社です。ここからは緩やかなトラバース気味の登 山道を下って英彦山神宮奉幣殿へ下ります。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan018.jpg 《写真:英彦山南岳直下の岩場》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan019.jpg 《写真:材木石》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan020.jpg 《写真:大岩の下を行く》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan021.jpg 《写真:大南神社》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan022.jpg 《写真:鬼杉》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan023.jpg 《写真:玉屋神社手前》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan024.jpg 《写真:玉屋神社》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan025.jpg 《写真:英彦山神宮奉幣殿(台風で損傷し改修中)》 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/hikosan026.jpg 《写真:英彦山神宮奉幣殿の参道 土産物屋さんを右折して下ると別所駐車場》 今回は英彦山の登山コースとしては最も長いルートを歩きましたが、登高差 が少ないせいか割と楽なルートといえると思います。それだけに、英彦山や修 験の歴史をじっくり味わいながら、のんびり歩きたい山ですね。 (^^)メールはこちらまで→ mailto:yamahiro@cbn-inc.com □登山の部□************************************************************ ◇◇アルピニズム的こころ◇◇ 『天気図を見ましょう・第3回』 /高気圧と低気圧の中の空気の流れと天気の関係 /気圧配置と日本の天候(冬) --------------------------------------------------------------------- ◎以下の記事(写真入)はこちらでもご覧頂けます → http://www.cbn-inc.com/yama/articles/02_20060512_kishou3.htm □高気圧と低気圧の中の空気の流れと天気の関係□ 高気圧や低気圧の内部では、何が起こっているのでしょう?まずは風(空気・ 大気の流れ)を見てみましょう。 ---------------------------------------------------------------------- 移動性高気圧は一般に西から東へ移動します。その際に高気圧周辺では、下 の図のように時計回りの風が吹き出しています。また、高気圧の中心付近では 風が弱く、高気圧の中心から遠いほど風が強く吹いています。 高気圧の中心付近では下の図のように下降する気流ができるので、上空の乾 いた(水蒸気が少ない)空気が下降してくるため、晴れの天候となるわけです。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/kishou3_1.jpg ---------------------------------------------------------------------- では低気圧ではどうでしょう。 一般に低気圧は北東に進みながら発達し、発達中の低気圧周辺では、下の図 のように反時計回りの風が吹いています。また、高気圧とは反対に、低気圧で は中心付近ほど強い風が吹いています。 そして、下の図のように低気圧の中心付近では上昇する気流ができるので、 地上付近の水蒸気を多く含んだ空気が上昇し、雲を作り、雨を降らせるわけで す。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/kishou3_2.jpg ---------------------------------------------------------------------- □では高気圧と低気圧の周辺では、それぞれ天気はどうなっているでしょう□ 高気圧では中心付近から前面に晴れの領域が広がっていて、中心から遠いほ ど曇りとなリます。 また、高気圧の中心の後ろ側は薄曇りから、次第に雲が厚くなっています。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/kishou3_3.jpg ---------------------------------------------------------------------- 低気圧では前線が発生するため、少し複雑です。 前線付近では雨となり、低気圧の中心から離れるほど曇りとなり、遠く離れ たところは晴れています。 前線を伴った低気圧の場合、寒冷前線付近では、雷(界雷)を伴った強い雨 が降ることがあります。また、突風が吹いたり、ひょうが降ることもあり、寒 冷前線が通り過ぎると急に気温が下がります。 寒冷前線の南側では湿った暖かい空気(暖気)があり、寒冷前線の北西側は 乾いた冷たい空気(寒気)があります。 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/kishou3_4.jpg では、どうしてこんな天気分布になるのでしょう?また、どうして前線部分 では特徴のある気象が発生するのでしょう? 第4回講座では、低気圧に伴う前線の周囲の様子、空気・大気の流れがもたら す水分の変化(天気の移り変わり)を勉強しましょう。 ---------------------------------------------------------------------- 次に日本の各季節の天気図(気圧配置)と実際の天候の特徴を順に見てゆき ましょう。まずは「冬」の気象から。 (1)寒さを表す縦縞模様 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/kishou3_5.jpg 冬の天気予報で、天気図の解説をする際、「西高東低の冬型の気圧配置」と いう言葉がよく出てきます。右の気圧配置が正に、その気圧配置です。日本の 東に低気圧、西(大陸の奥地)に高気圧があり、西に(気圧が)高く、東に(気圧が) 低い気圧配置です。この気圧配置になると、大陸の高気圧から冷たい空気が流 れ出し、日本にやってきます。 大陸にある非常に優勢な高気圧のことをシベリア高気圧といい、シベリア気 団の強さを表していると言えるでしょう。大陸の空気は非常に低温で乾燥して おり、この空気が日本に到達する前に日本海を通ると、海は暖かいため水が蒸 発し空気は湿っていきます。この湿った空気が日本の山にぶつかると上昇して 雲を形成し雨や雪を降らせます。気象衛星の画像で、日本海に筋状の雲が形成 されるのは、大陸からやってきた空気が海の上で水蒸気と熱の補給を受けて上 昇するためです。その後水分を、山の風上側で落とした空気は、山を越え乾燥 した気流となって太平洋側に吹き降ろします。結果、この気圧配置の際には、 日本海側で雨や雪のぐずついた天気となり、太平洋側で乾燥した晴天となりま す。大陸から流れ込んでくる寒気が強いほど、風が強い上に日本海での海面と の温度差が大きくなり、水は蒸発しやすくなります。そのため、大陸から少し 離れたところですぐに雲が形成されます。右の雲画像では、筋状の雲は大陸の 陸地から近いところで発生しており、寒気が強いことを示しています。 冬型の気圧配置には、大別して2つの型があり、1つは等圧線が南北に何本も 走った「山雪型」で、季節風が強く、山岳での空気の上昇が強いため山の近く で大雪をもたらすものです。もう1つは、日本海で等圧線が袋状になったり、小 さな低気圧が形成されている「里雪型」で、季節風は弱く日本海側の平野部で 大雪をもたらすものです。ちなみに、本州の等圧線の間隔が狭いほど季節風が 強いことを表し、本州上に等圧線が5本以上通っていると強い冬型と言われます。 (2)太平洋側に大雪もたらす南岸低気圧 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/kishou3_6.jpg 西高東低型の際に雪が降るのは、日本海側ですが、時として太平洋側でも雪 となる場合があります。右の天気図は、実は4月の天気図と雲画像です。日本の 南岸を通る低気圧は主に、2月から3月の冬の終わりから春先によく現れます。 天気図では、関東の南岸を低気圧が東進しており、やや発達しています。この 低 気圧は24時間後には978hPaまで発達しました。このように、本州南岸を低気 圧が発達しながら通ると、低気圧に向かって北から冷たい空気(寒気)が流れ込 んで、太平洋側でも雪の降る可能性があります。実際にこの事例では、4月に関 わらず甲信・関東北部で大雪となり、河口湖では観測史上3位の23cmの積雪を観 測しました。 第4回講座では「春」の気圧配置と天候を勉強しましょう。 --------------------------------------------------------------------- 第1回 『天気図を見ましょう』 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/02_20050305_kishou1.htm 第2回 『天気図の見方・気象用語の整理』 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/02_20060417_kishou2.htm 第3回 『高気圧と低気圧の中の空気の流れと天気の関係 /気圧配置と日本の天候(冬)』 http://www.cbn-inc.com/yama/articles/02_20060512_kishou3.htm 第4回 『低気圧に伴う前線の周囲の様子・気圧配置と日本の天候(春)』 第5回 『気圧配置と日本の天候(梅雨・夏)・雷のメカニズム』 第6回 『気圧配置と日本の天候(秋)・気象通報の詳細 /天気図の購入方法/r2win32 の紹介』 (^.^)/~~~メールはこちらまで→ mailto:yamahiro@cbn-inc.com *PR********************************************************************* ↓SMAPの新曲「Dear Woman」、お勧めです。「心からありがとう」と言う歌 詞がいいですね。メロディも軽快でSMAPらしいいい曲ですよ。是非聞いて みて下さい。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000F7CKFQ/503-6986904-7179137 ◇山登りなんでも相談掲示板◇******************************************** http://www.cbn-inc.com/treebbs2/3/index.html 山登りについてのいろんな疑問や不安について、たとえば...装備の選び方、 山の天候のこと、バテない登り方とか、何でも相談してください。 山岳プロガイド山崎、またはそれぞれのご相談に適した専門家が出来る限り (と言うことでお許しを...)お答えします。 --------------------------------------------------------------------- 【掲示板からの話題】 『山のライブカメラいろいろ』 「ライブカメラ」って何?WEBカメラ、WEBCAMとか、スタンフォードのコーヒー メーカーが始まりと言われている(このコーヒーメーカーはケンブリッジ大学コ ンピューター研究所のTrojan Roomに置かれていたもの。1991年、延々廊下を歩 いていったにもかかわらずコーヒーがなくなっていることが頻発したため、業 を煮やした研究所内のメンバーがカメラを研究所内ネットワークに接続しその 状態を監視することのできる簡単なUNIXアプリケーション「xcoffee」を書きま した。 http://www.cl.cam.ac.uk/coffee/coffee.html )、道路情報などに定着 している。 ※西穂山荘のHP(積雪など良く分かります。山荘は通年営業ですので、山開き情 報など問い合わせて見てください。) → http://www.nishiho.com/ ※このHPの”特集”で積雪状況は少し分かります。たぶん4月下旬には西穂のラ イブカメラも復活。 → http://www1.neweb.ne.jp/wa/kamikochi/index2.html ※槍の肩のライブカメラ(だんだん解けてきました) → http://www.mcci.or.jp/www/yarigatake/live.htm ※南岳(非難小屋から大キレットの向こう側・北穂奥穂方面と左には前穂北尾 根(4峰から上)がよく見えます。西穂はこの北尾根の奥ですが標高的には似た ような感じになっていると思います。) → http://www.mcci.or.jp/www/minamidake/live.htm ※新穂高ロープウェイ駅より望む笠ヶ岳(上の駅です。画像は見難いかも・・・) → http://www2.dennousya.com/~jinzu/hodaka2.jpg ◇番外編:科学的手法と自然体験◇**************************************** ここ数年、仲間と一緒に子どもたちのための自然学校を運営しています。そ の中でいろいろな指導方法が用いられるのですが、自然にかかわるインストラ クション、コミュニケーション、ファシリテーションなどのノウハウというの は、多くが欧米の心理学や認知科学に基礎を持つものに関連するようです。 話は変わります。最近チョムスキーを少しまとめて読み返してみたのですが、 チョムスキー(Avram Noam Chomsky)というのは言語学の生成文法理論という考 え方を生み出した人です。この人以前の欧米(おもにアメリカ)の言語学とい うのは、”構造主義言語学”が主流で、文字通り言語の“構造”に重心をおい ていて、言語の“意味”は感知したくなかったのですね...つまり彼らの思 想を簡単に言うと、言語学というのは言語規則を扱うもの(たとえばインドヨ ーロッパ語族とウラルアルタイ語族の文法的違いとか)で、一方、言葉の“意 味”というものは言語によるコミュニケーションの中で生み出されるものであ り、言語のルール自体が“意味”を持つことはない!と決めていたのですね。 ところがチョムスキーは、言語のルール自体にも、人間の精神構造をあらわす “意味”が隠されているんだぞ!と言い始めて、構造主義言語学のいろんな欠 点(有名なのは直接構成要素分析という手法の欠陥)を指摘したりして、少し ずつ攻勢を強めてゆくわけです。 これはどういうことかというと・・・構造主義言語学の“直接構成要素分析 (IC(=immediate constituent)分析)”という手法があるのですが、これ は英語なら英語の文章を、句とか節とかでとにかく分割してゆくわけです。そ こに困った問題があるのですが、たとえば・・・「light house keeping」とい うフレーズを分割するには、「light/house keeping」(軽い家事)、「ligh t house/keeping」(灯台守)という2通りが考えられます。ではどちらの分 割が適当かを考える場合、その“意味”に帰ってみるしかないわけです。 チョムスキーいわく、『君たち構造主義言語学の諸君は、“意味”は嫌いだ と言っておきながら、“意味”を考えなければ分析ひとつ出来ないじゃないか。 それなら初めから“意味”を最大限に利用しちゃったらどうなの?』というコ ロンブスの卵みたいな発想をして、言語規則(文法)、つまり単語の並び方に は、その言語の生成過程で、さらに深層の構造が関与していて、その深層構造 というのはおそらく人類共通の深層心理的な、メンタルな何かであろう。とい う理論を展開したのです。まあこれは、最初に言った者勝ち、という感がない ではありません。 案の定、構造主義言語学はチョムスキーを批判します。『俺たちはそういう メンタルなものを禁欲して頑張ってきたのに!』というわけです。でも結果的 には、チョムスキーの理論がいろいろ補強されながらも勝ち続けているのです が・・・ この構造主義言語学というのが、同時代に発展してきた“行動主義心理学” とほとんど兄弟みたいな考え方の基盤を持っていると思うのです。行動主義心 理学というのは、いわゆるS−R(シグナル−レスポンス)というか、人間一 般に共通の心の動きを法則的に捉えようとするもの(と僕が考えているのです が、間違っているかも)で、つまり、たとえば、 自然(WildernessとかNature)に接した体験をした ↓ 一般に人の精神はこう反応して ↓ その人の内面にこういう影響を与える ・・・というような一般化を試みる方法論ですね。 でも、チョムスキーが構造主義言語学の欠陥につけこんで、“メンタル”を 持ち込んだのと同じようなことを、この自然体験に置き換えると、どうなるで しょう・・・ 自然の中での体験を、行動主義心理学的に捉えて、 『グリーンを見ると心が落ち着く』 『自然の中での生活を数名で役割分担して体験すると協調性が強化される』 とか言う以外に、こんなことを言う事になるのだと思います。 『森の中では、木の精や森の妖精が人に話しかけて、 その人の心を癒してくれる』 もし、こんなことを欧米流のコミュニケーション学講義の教室で言ったりし たら、『あんた何言ってんの?』となるでしょう。しかしながらこういう自然 観は、日本にはずっと昔からあって(ヤオヨロズノ神ですね)、それが欧米流 のアカデミックな専門分野では思考対象にもならないといっても、その専門分 野の方法論が日本で多用されるようになったのは、ここ数十年にことに過ぎま せん。 心理学のような学問を背景とするコミュニケーション、ファシリテーション の体系というのは、私はきちんと学んでないので判断する資格がないのですが、 おそらく“科学する心”が基礎ですから、それは目に見える現象、測定可能な 変化、計算予測できるデータを、主として取り扱うのではないでしょうか? とすれば、確かにそこからいろいろな有益な方法論が作り出され、それがと ても有益なだけに、実践する人はその方法論自体に束縛される危険は大きいと 思います。そんな状況で『木の精』の話をしたら、『木の精が存在しないとは 言わないが、それは科学の分野での対象はなくて、もっとメンタル分野の対象 です。木の精を信じるか信じないか、それは科学で考えることではなくて、哲 学というものです。我々の科学(心理学・認知科学・児童心理学・・・)では 哲学は必要としません。』こんな風に一蹴されると思います。 でも僕は思うのですが、『哲学は必要ない』というのも、ひとつの『哲学』 なのですね・・・どうしてそこまで考えないのだろう?・・・まぁ、こんな話 をしているときりがないので、いつか専門家にでも直接掘り下げてみたいと思 っています。 現在、私たちが接している自然体験活動に関連するコミュニケーションやフ ァシリテーションを勉強するなら、そういう日本人古来の感じ方というのも大 事にしてみたら、何か新しい柔軟な、強い考え方が生まれるのではないかなぁ ・・・と感じています。 ◇お知らせ◇************************************************************ 2006年度個人・グループ向ガイドプラン(2006年4月〜2007年3月)を公開し ました。どちらかと言えば凝ったルートです。初心者よりは経験者の方、あり きたりの登山ツアーではない内容をお探しの方には良いと思います。決して楽 ちんルートではありませんが、ガイドと顧客がひとつのチームとなって、特別 な経験を共有するための少人数向ガイド山行プラン。今年は以下の4つの企画 のみ実施します。 ○黒部川源流・雲の平から黒部湖へ ○北アルプス表銀座“ゆっくり”縦走 ○蒜山三山テント泊縦走(冬期) ○伯耆大山・北壁バリエーションルートガイド(冬期) http://www.cbn-inc.com/yama/plan.htm ************************************************************************ ◇次号掲載予定◇ ・『大江高山(おおえたかやま/島根県)』 ・『アルピニズム的こころ−天気図を見ましょう・第4回』 /低気圧に伴う前線の周囲の様子 /気圧配置と日本の天候(春) ************************************************************************ ※図表が崩れて見える方は、 http://www.mag2.com/faq/mua.htm を参考に、 等幅フォントに設定してご覧ください。 ************************************************************************ 【発行者略歴】 山崎裕晶(やまざきひろあき)。1966.3.3兵庫県出身。山岳プロガイド。 アルピニスト。岡山大学山岳会会員。国内難ルート冬期登攀。ガッシャブルム 主峰(8,068m)西陵の初登攀などの海外遠征。ニュージーランドでの山岳ガイド を経て、国内山岳ガイド多数。過去5年間のガイド登山で述べ7,000名以 上をガイド。現在も毎月約120名をガイド。 アルバム=> http://www.cbn-inc.com/yama/history/01.htm Eメール => mailto:yamahiro@cbn-inc.com ************************************************************************ 【発行者】山崎裕晶(やまざきひろあき) 【発行者サイト】 http://www.cbn-inc.com/yama/ ************************************************************************ このメールマガジンは『まぐまぐ!』http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000143198.htm ************************************************************************ ※許可無く転載することを禁じます。 ※受信者個人の責任においてご利用ください。 ************************************************************************ Copyrights Hiroaki Yamazaki 2004-2006 All Rights Reserved ************************************************************************ ↓まぐまぐからのお知らせ↓


