2009/06/25
NDPC通信 第44号
☆★☆─────────────────────────────☆★☆ NDPC通信 第44号 天然染料顔料会議 Natural Dyes & Pigments Conference http://ndpc.info office@ndpc.info ☆★☆─────────────────────────────☆★☆ 2009年6月25日配信 ☆★☆ 目次 ☆★☆ 【1】天然染料顔料会議 第6回大会 in松山 のお誘い 【2】シリーズ「博物館・美術館紹介」(23) 【3】シリーズ「染織つれづれ」(3) 【4】ボルネオ島イバン族の織物と染色技術(2) 【5】事務局だより ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【1】天然染料顔料会議 第6回大会 in松山 のお誘い ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 前号でお知らせしました天然染料顔料会議2009年大会(9月12〜13日) について、プログラムと参加方法をご案内します。 ◆研究発表と実践報告・ワークショップ◆ 日時:2009年9月12日(土)13:00〜17:00 会場:愛媛県民文化会館(ひめぎんホール)別館 〒790-0843 松山市道後町2丁目9番14号 TEL:(089)923-5447 http://www.ecf.or.jp/m_facilities/index.html 参加費:会員3,000円、一般5,000円 定員:50名(申込先着順) 内容: 研究発表「天然染料で染めるということ」牛田智(武庫川女子大学教授) 研究発表「天然染料と絣」片岡淳(琉球大学教授) 実践報告「津屋崎藍いろの会の実践活動」渋田和美(NPO法人アースネットワーク) このほかにも発表者の募集&交渉中です。 ◆研修ツアー◆ 日時:2009年9月13日(日)10:00〜17:00 行先:民芸伊予かすり会館(松山市久万ノ台)、シルク博物館(西予市野村町)、 漆喰壁とうだつの町並(喜多郡内子町)など 参加費:実費(入館料、交通費等) 定員:特に無し ◆参加申し込み・お問い合わせは◆ NDPC(天然染料顔料会議)事務局 〒113-0031 東京都文京区根津2-34-21 tel & fax:050-7532-2330 e-mail:office@ndpc.info 主催:天然染料顔料会議 共催:NPO法人アースネットワーク http://earthnetwork.info/ ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【2】シリーズ「博物館・美術館紹介」(23) 染・清流館「祇園祭展」(6/2-7/24) 京都芸術センター「布の記憶/糸の時間 日中交流展」(6/13-7/5) 広島県立美術館「アジアの染織」(6/30-9/27) 天然染料顔料会議副会長 片岡 淳(琉球大学・教授) ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ ◆染・清流館「祇園祭展」(6/2-7/24) http://someseiryu.net/topic_page.html 型染・ろうけつ・織・その他の技法の展覧会です。 10:00-18:00 休館日 毎週月曜日 7/21 入館料300円/大人 200円/学生 【染・清流館】 〒604-8156 電話075-255-5301 京都市中京区室町筋錦小路上ル山伏山町550-1 明倫ビル6階 ◆京都芸術センター「布の記憶/糸の時間 日中交流展」(6/13-7/5) http://web.kyoto-inet.or.jp/org/meirin-a//exhibition/nunonokioku.html 現代中国のテキスタイル作家と日本の作家たちとの交流展です。 【京都芸術センター】 〒604-8156 電話075-213-1000 京都市中京区室町通蛸薬師下ル山伏山町546-2 ◆広島県立美術館「アジアの染織」(6/30-9/27) 刺繍スザンニ、絣グリンシンなど中央東南アジアの染織品展です。 月曜日休館 【広島県立美術館・第4室】 〒730-0014 電話082-221-6246 広島市中区上幟町2-22 ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【3】シリーズ「染織つれづれ」(3) 天然染料顔料会議副会長 片岡 淳(琉球大学・教授) ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 沖縄はこのところ見ごたえある染織の展覧会が開催された。 一つは沖縄県立美術博物館県民ギャラリーで開催された 「新垣幸子八重山上布展 琉球の光と風」と宮古島博物館「宮古上布」 だ。新垣氏は沖縄県指定無形文化財技能保持者で日本工芸会正会員でも あり、石垣市の工房には学生をつれて見学をさせてもらっている。大学 では90分刻みで15コマと機械のごとく短時間に区切られた生活リズムから、 1年間の季節のなかで、織物の繊維をとるカラムシの栽培と糸採りと 績むという製糸作業、そして絣織物について実地で学ぶ。大学教育で 織物を教える意味がどこにあるのか、自問するよい機会だ。 もうひとつの「宮古上布」展は、500点もの明治時代に織られたと 思われるものから最盛期の宮古上布、そして現代の織物が展示されていた。 これらはすべて宮古諸島産のカラムシという植物の靭皮繊維から手作業で 糸にし、手織りしたものをいう。夏の着物の白眉といわれるだけに 黒光りする砧打ちされた着物は、クロアゲハ蝶のようだった。 ふたつの展覧会を見て、王府時代の復元をしている作家とそうでない ものとに明らかに違う何かが感じ取れる。往時の職人の技をその当時の 技術に驚き、技量の限界を作業者は感じる。それだけではなく、当時の ものづくりの世界に心を馳せることが、作家の広がりをもたらすようだ。 世界各地の染織品や正倉院展を見ることは、その時代と生活に誘うことが どれ程こころとものづくりを豊かにするかということである。 近代化という名のもとに、便利な生活を求めてきたわれわれは、 自然から繊維植物や染料を得ることで、より豊かな生活と、生きた証が 残ることを、そしてその行為に記録されることを今一度確認する必要が ある。 エコということばで、目先だけではなく、生産され消費される一貫した ものづくりが本当に環境にいいのか、と。人工問題以外に解決はないの ではないか。地球の大きなサイクルに環境異変と勝手に思っているだけ ではないのか。長い単位と広い視点でものを考えることを学んだ。 ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【4】ボルネオ島イバン族の織物と染色技術(2) 藤澤 奈都穂(東京大学大学院農学生命科学研究科) ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ ◆材料と手順 イバン族の織物は、赤と青の2色のみで染められていて、カラフルでは ありません。赤を染めるには、engkudu(Morinda citrifolia)という アカネ科の植物の根を使います。この他にもPsychotria aurantiacaの葉や、 Coelostegiaの樹皮を使うこともありますが、engkuduで染色したものは 色落ちしにくく、最も価値のあるものとされています。ただ、この植物で 染色する際には、糸の前処理が必要で、これをうまく行わないと色が 美しく出ないので、前処理の材料の計量は腕のある(神のお守りを持つ) 女性が行います。前処理はショウガやナッツから抽出したオイル、塩など を混ぜた液を煮て糸をつけ、一週間ほど日光と夜露にさらします。これは 盛大な儀式として村中の女性が集まって大々的に行われる行事でもある ようですが、現在ではほとんど開催されていないようで、私も見ることは できませんでした。 前処理をした糸はengkuduの染色に使います。Engkuduの根を貝殻から作った 粉や胡椒の葉などと一緒に煮て糸をつけ、乾かします。きれいな色が出る まで染めの作業を繰り返します。上手な人が染めるととても鮮やかな赤色 になりますが、茶色っぽく染まってしまうこともあるようでした。 青く染める時は、Marsdenia tinctoriaの葉を使います。これには前処理は 必要なく、大量の葉と貝殻の粉を煮て糸をつけ、乾かします。 ◆近年の染色の現状 近年イバン族の村は大きく変化しています。イギリスの占領後、ほとんどの 人がキリスト教に改宗し、独自の信仰に基づいた儀式がへり、布の意義が 薄れていきました。また、道路建設や、モーターの導入などから、町が 身近になり、生活が急激に都市化しています。化学染料も多く出回り、 手間のかかる自然染料の使用はへり、私の訪れた村では、30歳以下で、 染色の技術を知る女性に合うことはできませんでした。かつて誇りで あった織物技術は、若い世代にはなじみのないものとなってきている ようです。 その一方で未だに従来の染色スタイルを続けているところもありました。 政府や企業が伝統的技法によって作られた布の流通経路を確保し、その 村から買い取り、伝統織物の補助をしていました。近年では主に都市部で 伝統技法により手間をかけた高価な布の需要も増えてきているようで、 今後伝統技法がより広く見直される可能性もありそうです。 (つづく) ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【5】事務局だより 天然染料顔料会議事務局長 澤田 圭司 ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ お待たせしました。9月の松山大会のプログラムをお送りしました。 急峻な四国山地から瀬戸内海に注ぐ大河川のデルタ地帯に広がる広大な 稲作地帯を背景に、古くから瀬戸内の交易中心として栄えた伊予・松山。 日本三大綿絣に数えられる伊予絣の発祥の地といわれる今出村(いまづむら・ 現在の松山市西垣生町)は、私の生まれ故郷でもあります。 松山平野を貫流する大河の河口と空港に挟まれた小さな漁師町です。 祖父母の時代は町のいたる所から絶え間ない機音が響いたそうですが、 今は一軒の織元もありません。 地元には今も創始者・鍵谷カナの功績を称える「鍵谷祭」が残り、命日の 5月28日には小学校の運動会や神社のお祭りが開かれています。 朝鵙ニ 夕鵙ニ かすり織りすすむ 若き日の夏目漱石や正岡子規らとも句友として親しんだ村上霽月(むらかみ せいげつ)の詠んだ句です。漱石や子規が訪れた霽月邸は今も昔のまま、 そばの老木のクスノキも子どもたちの格好の遊び場です。 空港から市の中央までバスで30分、城下を中心にすべてが一箇所に集まった こじんまりとした町です。 前号に引き続くボルネオ島イバン族の研究レポートはいかがでしたか? 次号最終回は染料植物の意義と展望について、若手研究者の瑞々しい感性と 視点でお送りします。お楽しみに。 ☆★☆──────────────────────────────☆★☆



