2009/02/20
NDPC通信 第40号
☆★☆─────────────────────────────☆★☆ NDPC通信 第40号 天然染料顔料会議 Natural Dyes & Pigments Conference http://ndpc.info office@ndpc.info ☆★☆─────────────────────────────☆★☆ 2009年2月20日配信 事務局を交代して第2回目となる今号は不惑の第40号を迎えました。 2004年10月発行の第1号の冒頭では、牛田智会長(武庫川女子大学)から会の 発足にあたっての挨拶に加え、2004年に中米のエルサルバドルで開催された 「藍と天然染料の国際会議」のレポートが掲載されています。 http://archive.mag2.com/0000140858/index.html?start=40 この国際会議は、様々な天然染料に恵まれ、マヤ文明の時代に既に高度な天然藍の 利用技術を誇ったこの国で近年になって興った天然藍の復興の動きに呼応して 計画されました。JICAをはじめ日本からの数々の支援も受け、新しい産業としての 可能性を拓くことが目的でした。 あれから5年近くが経ち、世界ではさまざまな動きがありました。環境や情勢、考え方の 変化に従って多くの国や地域は変化し続けていますが、反面、何も変わっていない 地域もあります。 私たちの活動は世界に直結しています。惑うことなくその使命を全うしたいと思います。 ☆★☆ 目次 ☆★☆ 【1】シリーズ「博物館・美術館紹介」(20) 東京国立博物館 東洋館 【2】図録の紹介 「世界の藍」「古渡り更紗」 【3】事務局だより ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【1】シリーズ「博物館・美術館紹介」(20) 東京国立博物館 東洋館(アジアギャラリー) 第三室・特集陳列 「インドの染織 インド更紗 インドの細密画」(2009/1/14〜2009/4/5) 天然染料顔料会議副会長 片岡 淳(琉球大学教授) ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 茜は木綿布には直接的には染まらない染料です。そこで人はミロバランや牛乳など タンニンやタンパク質を有機媒染剤とし、木版や万年筆の元祖ともいわれるカラムペ ンにミョウバンや鉄分を染み込ませた無機媒染剤でそのうえに模様を施します。そし て煮立った茜の染料につけると、媒染剤があるところだけ赤や黒色などに染まります。 この技法を用いてあの美しいインド更紗が出来上がります。ペルシャ・ヨーロッパそ して和更紗などこの技法は世界に広がり、その土地の更紗が生まれます。そして有機 顔料や鉱物の顔料を用いて細密画も見られます。ペルシャの細密画はネコの毛で筆を 作っているのですが、インドはわかりません。どなたか御存じですか。 展示の詳細は東京国立博物館のサイトをご覧ください。 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=00&mansion_id=M2&dispdate=2009/02/16 ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【2】図録の紹介 「世界の藍(文化学園服飾博物館)」「古渡り更紗(五島美術館)」 天然染料顔料会議副会長 片岡 淳(琉球大学教授) ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 離島の沖縄に居るとなかなかすべての展覧会に足を運ぶことはできません。そんなと き、展覧会図録は大いに助かります。2册紹介します。 ☆「世界の藍(文化学園服飾博物館所蔵品・2008/10/10〜2008/12/22)」 1000円 インド藍・琉球藍・蓼藍・大青などの含藍植物の紹介から、日本、中国南部、南・ 東南アジア、西アジア、アフリカ、中米そしてヨーロッパの藍染めの服飾品を紹介 しています。特に興味深いのはウズベキスタンのムルサクといわれる藍染めの経絣の コートです。喪を表す色とされており、沖縄でも藍染めと白糸の織物や風呂敷も同様 なのが興味深いですね。 ☆「古渡り更紗(五島美術館・2008/10/25〜2008/11/30) 商品番号7番 2800円 江戸を染めたインドの華 の展覧会図録。伊井家伝来の更紗は東京国立博物館でも展 示されましたが、この図録は450点すべて紹介されており、さらに90点も衣装や服飾品が 掲載されています。日本人好みの更紗がすでに当時インドでも作られていたことが伺え、 さらにしゃれた衣装は江戸の豊かな文化を感じることができます。 先日、宮古上布について教えてほしいという東京からの観光客が3人教室に訪れまし た。ひとりは30才前の男性ですが、琉球王家の黄色芭蕉地に赤色染め木綿布格子裂や 宮古上布そして木綿の52cm幅の両面花織など説明してほしいということでした。着 物や茶道に趣味があり、その延長で沖縄の布に興味をもったということです。若い人 もまんざらではないと思いました。なぜ、王家という言葉を出すかといえば、経糸や 緯糸の均一さと細さ、織耳の美しさ、織密度などです。縫いしろがないことから袖部 と判断し、王家の布は袖口を折り返して縫っていない晴れ着である一部と判断しまし た。一方、52センチ幅の木綿の花織はどうも中国貴州省あたりのものではないかと思 われます。この布を濃い藍染めにして衣装を作ります。黒アゲハ蝶のような輝きのあ る濃い藍に染めて、卵白等を塗って砧打ちをして、仕立てます。刺激的な一時でした。 ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 【3】事務局だより 天然染料顔料会議事務局長 澤田 圭司(NPOアースネットワーク東京事務局) ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ つい先日、東北大学で熱帯の植物資源について研究する学生から問い合わせを いただきました。 ボルネオ島の原住民の暮らす村で単身2ヶ月のフィールドワーク、素人同然であった 伝統染色の現場に文字通り飛び込み、その魅力にとりつかれて帰ってきたのでした。 ボルネオ島ではMorinda citrifolia L.(和名:ヤエヤマアオキ)を中心とした自生の 染料植物をつかって木綿を染めます。下処理にも自生の植物や陸貝の貝殻を焼いた 石灰、マングローブ植物を焼いた塩分まじりの灰などを使いますが、これら伝統染織の 多くはみんな混ぜて、放置して、晒してという作業工程においても共通しています。 分量も工程も浸す時間も正確に定められた日本の草木染めのテキストに慣れ親しんだ 私たちにとって、こうした伝統の知は一見不思議に思えます。 身近にあるものをいろいろとりあわせて経験から考え出した染色法が結果として理に かなっており、そのありのままの形が今も伝統の技法のなかで再現されている。 これはまさに、効率と費用対効果優先の現代社会が失った本来の学びのプロセスです。 子どもたちの学びからの逃避が世界的な問題となっている昨今、私たちはもう一度 この伝統の知の生まれるプロセスに目を向けてみる必要がありそうです。 ボルネオでは天然染料は徐々に化学染料に替わり、そうした伝統も先細りの一途です。 翻って中米のエルサルバドルやアフリカのウガンダに暮らすメンバーからは、天然染料が 世界で注目され始めている実感も寄せられています。欧米からの観光客が好んで高額で 買っていく例が年々増えているそうです。日本の企業も注目しています。 ただし、商業的な発展ばかりを考えていては、伝統の知と同じく現代社会の闇に足を すくわれかねません。効率や再現性を求めて安くたくさん作る方に傾いてしまうと、 結局は環境も文化も破壊する方向に向かいます。環境問題や教育問題をはじめ、 現代社会が抱える諸問題の解決の糸口としてのさまざまな価値に目を向けることで、 天然染料の活用が新しい価値観や文化の創造につながる可能性を追求することが 私たちの使命と考えます。 彼女は4月から東京大学の大学院で継続研究を決められたとのこと。 春の訪れとともに小気味よい新しい風が届きました。 ☆★☆──────────────────────────────☆★☆ 編集者のつぶやき・・・・ 今年から事務局と編集者を兼任することになりましたので、このつぶやきコーナーも 今号で終了となります。今後は「事務局だより」のコーナーで毎月の目新しい動きや ちょっとご報告という内容をお送りしたいと思います。惜しまれながら…(笑) これからも引き続きよろしくお願いします。 ◎NDPC通信−天然染料顔料会議 のバックナンバー・配信停止はこちら ⇒ http://archive.mag2.com/0000140858/index.html このメールに返信すれば、発行者へ感想を送れます



