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2008/05/02

★★ 小林秀二の不動産ファイナンス・マガジン ★★

★★★ 小林秀二の不動産ファイナンス・マガジン 第20号(2008.5.2)★★★
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不動産ファイナンス・マガジンの第20号をお届けいたします! 

目次
1.ニュースの裏読み 1つ
2.役立つファイナンス理論
3.お役立ち(書籍のご紹介2つ)
4.情報2つ
5.編集後記
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1.ニュースの裏読み
 
★    ケーススタディ:ニッポンの地上げ屋

3月に起きた東証2部スルガコーポレーション(横浜市)の弁護士法違反事
件。復習してみましょう。

これは麹町5丁目にある紀尾井町TBRビルを地上げするのに暴力団系の不
動産仲介会社(光誉実業)を使って入居者との立ち退き交渉をし10人超が
逮捕された事件です。立ち退き交渉は判例で所有者以外では弁護士しかでき
ないとされ非弁行為にあたります。

登記簿を見ると05年9月に土地と建物を外資系投資銀行から取得していて、
入居者を退去させたあとビルを解体して更地にして別の信託銀行に売却して
90億円の利益を得ました。築30年、13階建てで約2万8千平方メート
ル。テナントは外国大使館や法律事務所、飲食店、スポーツクラブ(会員約2
千人)など約百近くありました。

光誉には交渉費用として42億円が渡され、うち業務委託費は37億円で交
渉期間の家賃収入5億円です。経費等を差し引いて報酬は十億円超となりま
した。

05年10月から始まった交渉の際には光誉が購入したと説明して売買契約
書(スルガの押印)のコピーを見せ、所有権移転と支払口座の変更の「お知
らせ」と代理受領の「委任状」を配布していましたが、これは実態がない仮
装のようです。騒音や刺青男をうろつかせて営業を妨害したり威圧したり、
テナントの弁護士が相手だと低姿勢で下手に出たり使い分けていました。「
退去準備金」としてその場でバッグから現金の束5つを置いてゆきました。
非弁行為を指摘すると泣きついてきた社員もいたようです。

2〜3ヶ月でほとんどが退去すると5階空室を拠点に交渉を進め始めました。
実際に光誉が行った交渉は20テナントです。エレベーターの大半を止めた
り、ゴミを放置したり、木魚を鳴らしたりしました。代替物件が必要なスポ
ーツクラブなども06年夏には退去し、1年も経たないうちにもぬけの殻に
なりました。

スルガ社は72年に設立されて95年に東証2部に上場していますが、04
年以降に権利関係が複雑な物件を整理転売する事業で業績を伸ばしています。
07年3月期で連結売上808億円。うち地上げによる売上げが3割でした。
同様の手口で立ち退かせた物件5棟で1千億円で転売してうち粗利益は27
5億円を得ています。光誉には150億円が渡され、うち数十億円が報酬
(1物件で数億〜十億円)となっています。

当初は別の会社が担当していて、弁護士を使って慎重に時間を掛けていまし
た。しかし時間がかかって金利負担が増したため「交渉の早い、立退き料の
安い便利な」光誉に変えました。「1年でやってくれ」と依頼したそうです。
以前は弁護士報酬込みで6千万円〜7千万円でした。スルガの岩田社長は「
07年6月に取引銀行から指摘を受けるまで暴力団との関係は知らなかった
」と釈明しています。その後に元警察庁OBと元浦和地検検事正を専務と外
部取締役として迎えています。

立ち退き交渉が非弁行為に当たるというのは判例によります。

地上げに対して非弁行為で逮捕は異例です。この判例では依頼主は処罰でき
ませんのでスルガは立件されていません。ただし仮装の契約書では別の適用
があるかもしれませんし、社会的責任を取らせると判断したのでしょう。シ
ノギが困難になった暴力団がフロント企業を通じた事業や株価操作など不正
行為が活発化しているため、警視庁としては資金源を断つ目的があります。

さて、この事件を聞いて「立ち退き交渉やっちゃあいけないの?」「自称家賃
コンサルタントが交渉に来た事がある」という人もいるのでは。

非弁行為で注意したいのは、立ち退き交渉のほか、交通事故の示談、債権取
立て、破産申し立て手続き、離婚交渉などです。2年以下の懲役、300万
円以下の罰金となります。

この事件の記事を読んで「スルガけしからん」「地上げは怖いなあ」「非弁行
為ってあったなあ」という感想だけではいけません。

気づかないといけないのは、この事件では誰も損していないということです。

注目すべきは、42億円から報酬10億円超を差し引いた約30億円の行方
です。2〜3ヶ月でほとんどが退去し、その退去準備金は少なくとも500
万円(5束)くらいだったわけですが、法律系事務所なら1千万円も貰えば
御の字。ビル全体で事務所系8割だったとして4億円〜8億円。光誉が交渉
したのは20テナントだから実際には交渉するほどのこともなく出て行った
のでしょう。実費は6千万円を参考に1億円として計5億〜9億円。恐らく
店舗系のテナントの代替や移転補償費が残りの20億円くらいか。

このようにテナントは損しないばかりか、十分すぎるほど貰っているはずで
す。いくら暴力団と言えども、そこはケチらない。バブルの頃のように放火
したり車で突っ込んだりもしない。突っ込まれても十分過ぎるお金は貰って
いったはずです。

光誉は10億円超の報酬を得ることができ、スルガコーポは48億円(90
億円−42億円)の利益を得ています。更地を買った信託銀行は適正な値段
でしょう。ビルを売った外資系投資銀行が損している訳はありません。ビル
解体業者、新しく移転したビルや内装工事会社や引越し業者も儲けました。
きっと新しいビルを建てる建設業者も儲けることでしょう。もしリートに入
れば信託や専門家の需要も出ます。古ビルだったら無理でしたから。

損した気になる人を探すと、飲食店が移転してしまった常連客や通いにくく
なったスポーツクラブの会員。でも店やクラブは新しくなるはず。あと、引
越し業務を担当させられたのに給料に反映されなかた従業員の皆様。損した
人はほとんどいないのです。

これはどういう事でしょうか。もちろんこの間に不動産価格が上昇したのか
もしれませんが、そうでなくても開発利益が生まれます。多くの不動産開発
や都市再開発には開発メリットが生じ、それが魅力となってお金を引き付け
ることがあります。開発利益が生まれる理由はいくつかあります。一般に建
替えは難しい問題がたくさんあるので、もしうまく行くと結果的に利益が生
まれることになります。

本件のような都心商業物件の場合、その元を辿ると外資系投資銀行に売却さ
れたときの価格に借家権価格がかなり控除されていたことが大きい。権利と
して明示的でなくとも築30年ならキャッシュフローも下落の一途です。そ
うかといって建替えはほぼ不可能だからです。つまりその根本のかなりの部
分は借地借家法とその判例がこういう錬金術を生み出していると考えられま
す。損しているのは広く国民全体です。弱者救済の名のもとに反永久的な更
新と賃料抑制をさせ立退き料を慣行化させる。そこに暴力団が付けこむ。付
けこまれる理由は、法や法律家が市場を歪めていることに他なりません。

これに対応するためには定期借家権で契約することです。日本ではまだ馴れ
ていなく導入も進んでいません。首都圏では3%弱というデータもあります。
しかし、これが本来の契約というものです。先進国でこんな妙な契約がまか
り通っているのは訊いた事がありません。普通は定期借家権では家賃は安く
なります。しかし、これはそれを上回るリスクを取り除くことができます。
一見、不合理なように見えますが、ファイナンシャルには合理的です。EV
Aは上昇します。大家さんは目先の受け取り家賃最大化を図るのではなく、
経済付加価値を最大化するように行動すべきです。少なくとも転売時に買い
叩かれることはなくなる。もちろんテナントにとってもメリットは大きい。

ファンドでも同じです。そうせず将来、借家権を引いた低い価格で転売した
り、賃料抑制させられたり、高額な立退き料を支払うことになれば誰が責任
を負うのでしょうか。名目や近視眼的な行動が誤りであることを指摘できる
専門性が必要だと思います。築年の古い建物は一見利回りが高いように思え
ることがありますが、こうしたリスクが近づき大きいということを忘れては
いけません。そう考えてゆくと、たとえ新築であっても先延ばしすることは
できないはずです。

追加)本日の日経新聞「経済教室」の米山氏の論文には利回りに関する上記
の認識が足りないと思う。

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2.役立つファイナンス理論

Q Which of the following statements about bond call features is FALSE? 

A.    Calls expose investors to additional default risk.
B.    Calls expose investors to additional reinvestment rate risk.
C.    Calls expose investors to reduced capital appreciation potential. 
D.    Calls create risk because they add uncertainly to the bond’s 
         cash flow pattern.

Answer A

金利低下時に発行者のオプションによって期限前償還される。よってBのように
投資家は再投資リスクを負う。金利低下で債券価格は上昇するが、コールによっ
て価格上昇が抑えられる(C)。Dのように予想外のキャッシュ・フローにもなる


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3.お役立ち(書籍の紹介)

★    地上げ屋の実態を知りたい人に

「地上げ屋 − 突破者それから −」
幻冬社アウトロー文庫  宮崎学著

グリコ・森永事件のキツネ目の男である宮崎氏がその後、バブル期に地上げ
屋として暗躍した記録。神保町や群馬のゴルフ場開発で札束が飛び交い、悪
徳弁護士とやりあう。現在の総理大臣もちょっと出てきます。

★「不動産ファイナンス入門
 ―リスクマネジメントのための不動産金融工学―」

  体裁:A5判、320頁、ハードカバー
  定価:3,780円(本体3,600円+税)
  発行:株式会社ビーエムジェー
  発売:丸善株式会社
   第2刷も売れています!
ビジネス街の本屋さんでしか見かけないけど。

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4.情報

★    大阪府鑑定士協会総会
5月30日(金) 13時 – 15時
社)大阪府不動産鑑定士協会 総会発表
新阪急ホテル 非会員3000円

(1) J-REIT各社のWACCの算定
     神戸大学教授 砂川伸幸氏
(2) 家賃データの分析
     不動産金融工学研究所 小林秀二

  定期借家権のデータ分析の他、家賃契約の理論について
  しゃべります。 

  問い合わせ
  http://www.rea-osaka.or.jp/
 
★    生駒DSS 不動産セミナー2008

「不動産白書2008」の発行に合わせてセミナーを開催。
各エリアやロードサイドビジネスの現状と今後がテーマ

東京ではレイモンド・トート氏の講演もあります。

名古屋 5月28日(水)13時30分〜ミッドランドスクエア5F
大阪  5月29日(木)13時30分〜大阪産業創造館4階
東京  5月30日(金)13時〜東京商工会議所 東商ホール

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5.編集後記

暫定税率も復活しました。

この議論を聞いていると、税金VS道路、地方や庶民いじめの構図が多かっ
たようです。残念なのはガソリン税を環境税としての性質やそう発展させる
ような意見が全く聞こえなかったこと。利害のある族議員や地方首長、対立
軸を作りたいだけの民主党の「話をまぜるな」みたいな一喝で消えてしまっ
た。

普段は「環境を守れ」「温暖化を防げ」「京都議定書が」などと叫んでいる
カンキョー派の人は自分が払う段になると急に声が小さくなることがよくわ
かりました。私と同じくどっかの誰かが負担してくれるのを期待して、自分
が我慢するのはまっぴらということなんでしょう。「自分ができるエコから
始めます」などという偽善と自己満足にしか聞こえなくなりそうです。

一家で車6台乗り回しておいて(それは地方ではしょうがないのですが)「
エコバッグを持っていきまあす」「車でわざわざ廃油持ってきました」なん
てブラック・ジョークみたいじゃないですか。本人たちは大真面目で気づか
ないところがすごいのですが。


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発行:有限会社不動産金融工学研究所
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