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2007/03/24

★★ 小林秀二の不動産ファイナンス・マガジン ★★

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★★★ 小林秀二の不動産ファイナンス・マガジン 第16号(2007.3.24)★★★
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不動産ファイナンス・マガジンの第16号をお届けいたします! 

目次
1.ニュースの裏読み 1つ
2.役立つファイナンス理論
3.お役立ち(書籍のご紹介)
4.情報1つ
5.編集後記
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1.ニュースの裏読み
 
★    地価公示発表 識者は将来をどうみているか

地価公示が発表されて、全国平均が16年ぶりに上昇に転じました。
読むのが面倒な人のために新聞の解説を要約すると、

・全国全用途平均で0.4%上昇 デフレから脱却
・三大都市圏が牽引し、仙台・福岡なども反転
・一等地の値上がりはすごい。一部過熱気味である。
・上昇率トップは南青山5丁目45.5%
・最高地点は銀座山野楽器で3,060万円/平方メートル
・地方圏は15年連続マイナスで歯止めがかからない
・つまり二極化。局所バブル。
・バブルピークにくらべ商業地は3割、住宅地は半分の水準。
・海外マネー、リートが買っている。(買われていない県は11県)
・低金利によるイールドギャップは世界的にはまだ高い
・大都市はオフィス賃料、人口も増えているから実態は伴っている
・収益価格が定着したのでバブルではない
・国内リートは東京で買えず地方を物色
・土地鑑定委員会の鎌田委員長は一部過熱気味なのを警戒感を表明
「過去の数字であって将来も続く予測ではない」と異例の談話

地価公示は1月1日時点の標準地の価格で、不動産鑑定士が評価していま
す。本来、土地の買収や徴税のためであって、地価高騰を抑制する目的も
あったので動きは保守的にします。しかも、過去の取引事例による鑑定評
価ですから遅れ(ラグ)と平滑化(スムージング)が指摘されています。
個別性はないですしバランスが重視されますので実勢時価とは別ものです。

土地価格には、この公示地価のほか、7月1日の都道府県基準地価、公示
地価をもとに計算した相続税路線価、あとは市町村の固定資産税路線価な
どがあります。これに実勢時価があるので「土地は1物5価」などと言わ
れます。

そもそも不動産価格を1点で出すのは無理があると思うのですが、行政的
には困るので1つに決めるわけです。所有者の属性や税金、リスク態度な
どはいろいろあると思うのですが一律に意味があるわけです。したがって
、投資価格を決めるときは公示地価などは無視されます。口の悪い人は「
大本営発表」と言うことがあります。ここで上昇していれば今年8月に発
表される相続税路線価は自動的に上がるのですから、改めて「路線価も上
昇!」などと驚く必要はありません。いちいち8月に一面トップにするよ
うなニュースではないわけです。

さて、不動産市場は情報不効率的であるといわれることがあります。こう
いう市場では新情報が瞬時に価格に反映されないことになります。マルチ
ンゲールではないといいます。ファマは情報の織り込み具合で市場を3つ
に分けました。

過去の価格からでは超過リターンは得られないウィーク・フォーム、公表
情報で超過リターンを得ることができないセミ・ストロング・フォーム、
インサイダー情報を使っても超過リターンを得られないストロング・フォ
ームの各市場です。こういう市場では価格はランダムに動くので過去のデ
ータから予測することはできませんのでチャートを付ける意味はありませ
ん。

たとえば新駅ができるような場合、株式だと計画が出た段階で瞬時に値段
が上がるのですが、土地だとジワジワ上がっていくと信じられています。
トレンドが確実にわかったり、過去の値動きから将来の価格がわかるとい
うのですからウィーク・フォームよりもっと不効率な市場というわけです。
こういう市場では市場に勝てる機会が確実に存在することです。つまり、
儲けることができ、将来価格を予想でき、そのために過去の価格をチャー
トをつけるのが意味があるかもしれないということになります。

これは本当でしょうか?たしかに、株価と公示価格のグラフを並べてみる
と株価はランダムですが、土地は滑らかでランダムには見えません。でも
これは先ほど書いた公示価格の求め方、すなわち鑑定評価に問題があるよ
うです。

実勢データを使ってみないとなんとも言えないはずです。多くの売買や賃
貸のデータを集めてヘドニックという回帰分析をしてみると、あら不思議
ランダムに動くのです。

ただし、地域や用途や価格か賃貸かによって多少違っているようです。つ
まり、市場に多くの参考データがある市場とそうでない市場では違いが出
てきます。都心のオフィス賃料はかなり効率的ですし、地方によっては不
効率的なところもあります。結局、不動産市場は1つと考えてはいけない
のかもしれません。しかし、少なくとも滑らかに動いているというのは幻
想のようです。

そして、不動産鑑定はランダム性をなくしてあたかも滑らかに動くように
しているのです。ところがそれを見た人たちは不動産価格は滑らかに動い
ていると思い込んでいるフシがあります。驚くべき事に当の鑑定士ですら
そう思っている人がほとんどなのです。

土地鑑定委員会の鎌田委員長の談話、「過去の数字であって将来も続く予
測ではない」というのは、バブルを懸念して、このまま滑らかに同じよう
な上昇トレンドとなるようにとらえないようクギを刺したわけです。しか
し、こう言ってしまうと真意はともかく「土地市場はすくなくともウィー
ク・フォームでの情報効率的市場である」しかも「公示地価さえもそうい
う性質がある」とまで聞こえてしいます。

もし「地価はまだ数年上がるでしょう」というコメントがあるならこの人
は暗に何を言っているということになるのでしょうか?

a.この市場はかなり情報不効率な市場でありランダムには動かない。
b.私だけが安いと思っているので、自分は多くの人と違う変わり者なの
  だ。
c.この地価公示は低すぎるので間違っている

aの場合、土地市場(特に都心)が割合と効率的であれば、ジワジワ上が
ることはなく、上がるなら既に上がっているはずです。そうではないとう
のですからかなり挑戦的です。しかも数年間に渡って上がるということは、
売買当事者(特に売り手)はかなり愚かな人で日本中が間抜けだらけとい
っています。

bのアナリストがいたらアナリストの仕事はやめたほうがいいかもしれま
せん。あるいは誰も知らない情報を掴んでいるすごい人だと思います。

cの人のコメントには注意が必要です。今回の発表は間違って低いまま
なので、もし水準が変わらなくても来年以降の地価公示は段々上がってい
くようになるということでしょう。しかし上がっていくのは地価公示であ
って地価が上がっていくかは関係ありません。したがって、この場合は「
地価が上がっていくか?」ではなく「地価公示が上がっていくか?」とい
う問いだと間違って答えている場合です。

さて新聞には楽しい事に識者のコメントが載ります。これをチェックして
みたくなります。ここまで読んだ読者の方もそうではないでしょうか。

23日の主要6紙(朝日、日経、読売、産経、毎日、東京)の朝刊と夕刊
を全て調べて識者のコメントをチェックしました。

問いは「今後、地価は・・・」であって「今後、地価公示は・・・」では
ありません。将来予測などしたくありませんが、こう聞かれたら何か答え
ないといけないのかもしれません。あるいは言ったことと違うように書か
れてしまった方もいらっしゃるかもしれません。しかしそこは出てしまっ
た以上しょうがないですね。

『「今後地価はどう動き日本経済にどんな影響があるのか」識者に聞いた』
(日経朝刊)では、木内登英氏(野村證券)、河野龍太郎氏(BNPパリ
バ)は触れず、石沢卓志氏(みずほ証券)だけは、「地価上昇は2010年
ごろまで続くだろう。」とコメントしています。

「東京23区の地価はいつまで上昇を続けますか?」というズバリな質問
もあります。将来上昇する期間の長い順番に並べています。(朝日朝刊)
                 住宅地    商業地
1.石沢卓志氏   みずほ証券  2010年春  2012年春
2.中山登志朗氏  東京カンテイ 2010年冬  2009年冬
3.福島大輔氏 野村證券     2010年春 2009年春
4.福田秋生氏 不動産経済研究所 2009年春 2010年春
5.房園博行氏 アーバンコーポ  2011年冬 2011年冬
6.酒造豊氏 長谷工総研     2007年冬 2007年冬
7.室津欣哉 森ビル       2007年冬 2007年冬
8.山崎成人 REITアナリスト 2007年秋 2007年秋

注:3.の福島氏はコメントで「公示価格はまだそこまで上がっていない」
としており、実勢は天井としています。つまり2つを明確に区別していま
す。

5人は2〜5年は上昇が続くとして3人は年内ということでした。コメン
トなどを読むと価格と賃料、床需給と価格を単純に考えている人が多いと
思います。それから金融畑のアナリストには「効率的市場仮説」が染み込
んでいるようです。

私の意見は、都心などの地価は公示地価よりもっと高くなっていると思い
ます。地価公示は、よほどの事情が明らかにならない限り高くて30%ア
ップですからそれ以上つけることができません。逆に地方の人口が減って
いるところはもっと下がっていると思います。そういった情報を含めた経
済状況は価格に瞬時の織り込まれていると思います。したがって、もっと
高い(低い)ところで日々上がったり下がったりしていると思います。で
も取引がないから観察できないだけです。そこから来年さらに高くなるか
どうかはわかりません。神のみぞ知る、です。

ランダムでもなければ単純なトレンドでもないとすると、地域ごとに不動
産市場はどういう動き方をしているのでしょうか?これについては、今年
3月の日本不動産金融工学学会の私の論文を読んでください。

若干のラグはあっても反転したのは事実でそこからスタートするのであっ
て、その幅が少なすぎるのです。もしこの水準が続いても、来年も「地価
公示は上がる」でしょう。でもそれは今年までの調整の意味であって、実
勢とは関係ない話です。注意したいのは反転したのはもっと前ですし都心
はもう数年前に反転しています。ですから調整不足の調整ですがその間、
実勢も動いているのでそのうち何が何やらわからなくなってくるのです。

ただし、個別性とか2極分化というのはかなり強まっているのは本当だと
思います。2極化と読むとなにか納得してしまいますし話は終わってしま
い思考停止です。そうではなく、現実の「複合不動産(既存建物付き)」
の賃料獲得能力によって標準地の地価とのベーシス・リスクが大きくなっ
ているのです。これは2極化ではなく多極化のように見えるはずです。

バブルなのかは投資家が「よりバカ理論」で行動しているかで判断します。
高くても何でも、自分より高くなると思っているよりバカな人がいる、と
思って高くても買うおバカな行動のことです。一種のババ抜きですね。

都心のビルを買っている私募ファンドは若干そういうところが見えます。
また、地方の大都市では賃料や人口などは増えていないのに価格が上昇を
続けているのは東京からの波及かもしれません。しかし、全体としてほん
の一部です。

利回りのスプレッドは低下していますが、これは世界的かつ歴史的な長期
傾向です。ただし、解説記事にあった「英米では長期金利を下回る不動産
利回り(朝日)」というわけで日本にマネーが来るのもわかりますが、日本
もそこまでいくでしょうか?賃料の長期的な上昇傾向でも無い限りそうい
う状態になるのは理解できません。そうなったとしてもよほど規制でもな
い限り供給が増えると思います。そうなったら私は買いません。それはバ
ブルです。

行政はどうすればいいかって?行政が価格に介入したり心配するくらいな
ら床が増減できないような変な規制を止めればいいだけのことです。

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2.役立つファイナンス理論

Q In capital budgeting , that part of a project’s risk that cannot
be eliminated by diversification is called :

A.    market risk.
B.    corporate risk.
C.    stand-alone risk.
D.    unsystematic risk.

Answer A

個別のプロジェクト特有のリスクは分散投資で減少できるが、市場リスク
は残ってしまう。

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3.お役立ち(書籍の紹介)

★ 森平先生から2発
「物語で読み解くデリバティブ入門」日本経済新聞社 1,575円
「物語で読み解くファイナンス入門」日本経済新聞社 1,575円

   出る出ると言われて早数年。
早稲田ファイナンス研究科の森平爽一郎先生の待望の2冊が予約受付中です。
   読み物風なのでサラリと読めて役に立つと思います。お勧めです!

★「不動産ファイナンス入門
 ―リスクマネジメントのための不動産金融工学―」
  体裁:A5判、320頁、ハードカバー
  定価:3,780円(本体3,600円+税)
  発行:株式会社ビーエムジェー
  発売:丸善株式会社
    在庫なくてすみません。今、第2刷に入っています!
購入はこちら⇒ 
http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=refe-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4990200950&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr
★    「継続賃料鑑定評価マニュアルの作成に向けて」が出版されます。

2月27日に行われた(社)大阪府不動産鑑定士協会のシンポジウムが大盛況
だったことから、その資料が出版されることになりました。 
最新の最高裁判例の分析やオプションを活用した賃料評価についてです。
清文社より4月予定
 
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4.情報

★    プラネットセミナー
3月30日(金)午後
「不動産デリバティブの現状と今後」
有料
国土交通省での研究会も始まりました。その前に先取りして
みます。今後の仕事に役立ちます。
講師 小林秀二
お問い合わせ ⇒ http://planet-limited.co.jp/

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5.編集後記

不動産デリバティブが注目されているようです。そこでセミナーを急遽やることに
なりました。かなり実験的なのでひっそりですが・・・
これが新聞紙上に載ったのは国土交通省の予算が余ったので今年度駆け込みで研究
会をつくったのが発端のようです。
国土交通省と金融庁の不動産をめぐる覇権争い、それから弾き飛ばされる鑑定士に
ついて、5月15日発売の専門誌「Evaluation第25号」(プログレス出版)に寄
稿しましたのでそちらも是非お読みください。

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