2009/01/23
「兵庫県弁護士会メルマガ通信」(第50号)
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ◇◆◇◆ 「兵庫県弁護士会メルマガ通信」(第50号) ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ (2009.1.23配信) ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ http://www.hyogoben.or.jp/ ◇◆◇◆ 発行:兵庫県弁護士会 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ◆ 目次 ◇ 「全国一斉 商品先物取引等投資被害110番」の実施について ◇ 今月の法律相談のページ 「事故避けようとして別の車と衝突−「緊急避難」との判断がカギ」 執筆者:安田孝弘 弁護士 「交通事故の因果関係−支払い義務ない財布紛失」 執筆者:木下靖章 弁護士 ◇ ニュースの読み方 〜「無期懲役」〜 執筆者:森川 拓 弁護士 ◇ 編集後記 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■□ 「全国一斉 商品先物取引等投資被害110番」の実施について ■□ 我が国において、また、兵庫県下においても、商品先物取引をはじめとする投 資被害が頻発しています。 また、近年は、従来の商品先物取引被害のほか、海外先物、海外先物オプショ ン、ロコロンドン貴金属取引、CFDあるいは外国為替証拠金取引などと、形を かえて投資詐欺被害が次々と生み出されています。 いち早い弁護士相談によって被害者を救済するきっかけを作るとともに、現在 における我が国における被害の実態を把握するため、当会と神戸先物・証券被害 研究会との共催により、下記のとおり、電話法律相談(110番)を実施するこ ととなりました。 記 ◎日時 2009年(平成21年)1月30日(金) 午前10時から午後4時まで ◎相談方法 電話相談のみ(相談料無料) ◎電話番号 【神戸】078−360−8101 【姫路】079−282−1705 ※双方とも、当日のみの臨時専用回線です。 ◎相談担当者 神戸先物・証券被害研究会会員 当会消費者保護委員会委員 当会消費者被害救済センター登録会員 ◎その他 「神戸先物・証券被害研究会」は、兵庫県下(神戸地区)の弁護士有志で構成 する商品先物被害・証券被害に対応する研究団体です。今回の「110番」は、 日弁連・消費者保護委員会の呼びかけで全国一斉(ただし、相談日は地域によっ て多少異なります。)に実施されるものですが、兵庫では、当会消費者保護委員 会と「神戸先物・証券被害研究会」の共催で実施します。 ■□■□■□■□ 今月の法律相談のページ ■□■□■□■□ ◇◆「事故避けようとして別の車と衝突−「緊急避難」との判断がカギ」◇◆ 執筆者:安田孝弘 弁護士 神戸新聞2008年11月4日掲載 Q:高速道路をバイクで走行中、隣のトラックが合図もなく突然車線変更してき ました。それを避けるため,ハンドルを切ったところ,別の車と衝突してしまい ました。ハンドルを切らなければトラックと間違いなく衝突していましたが,そ れでも私に責任はあるのでしょうか。 A:交通事故の責任には,自動車運転過失致傷罪などの刑事上の責任と不法行為 に基づく損害賠償責任という民事上の責任があります。本件でも,相談者と衝突 した車両の乗員らが死傷すれば,相談者について,刑事上・民事上両方の責任が 問題とされます。 本件の刑事上の責任については,相談者の行動が,刑法37条1項本文の緊急 避難に該当するのかという問題に帰着します。 緊急避難とは,(1)自己又は他人の生命,身体,自由又は財産に対する現在の危 難を避けるため(2)やむを得ずにした行為は(3)これによって生じた害が避けようと した害の程度を超えなかった場合に限り,違法性を阻却され,罪とならないとい う制度です。 したがって,本件でも相談者の行動が(1)から(3)の要件を充足すれば,相談者は 刑事上の責任を問われることはなくなります。 本件では(1)高速道路上で隣の車線を走っていたトラックが突然合図なく車線変 更してくることは,相談者の車両とトラックが衝突し,相談者が死傷する危険性 のある出来事であり,相談者の生命,身体に対する現在の危難にあたると考えら れます。 そして(2)相談者はハンドルを切らなければトラックと間違いなく衝突していた のであり,急ブレーキをかけるなどほかの回避行動をとる余地がなかったことか らして,相談者のとった行動は,やむを得ずにした行為にもあたると考えられま す。 したがって,本件で相談者のとった行動が緊急避難に該当するかどうかは,相 談者と衝突した他の車両に乗っていた人の死傷の程度などの被害状況によること になるでしょう。 もっとも,被害状況が大きく,相談者の取った行動が(3)の要件を満たさない場 合でも,刑法37条1項ただし書きの過剰避難として,情状により刑の減免がな されることもあります。 そして,相談者の行動が緊急避難にあたる場合には,相談者は民事上の責任も 負わないということになるでしょう。 ◇◆「交通事故の因果関係−支払い義務ない財布紛失」◇◆ 執筆者:木下靖章 弁護士 神戸新聞2008年11月18日掲載 Q:交通事故で怪我をさせた被害者から「治療のため病院に行く途中財布を落と した」として,財布に入れていたお金を請求されています。 被害者は「事故がなければ,病院には行っておらず,財布も落としていない」 と主張しています。 私は,どこまで払わなければならないのでしょうか。 A:交通事故で相手に損害を生じさせた場合、その損害に見合ったお金を相手に 対し支払う義務が生じます(不法行為に基づく損害賠償義務)。このお金を支払 う義務は、事故がなければ損害が生じなかったといえるような場合であって初め て生じます。すなわち、事故と発生した損害との間には因果関係が必要とされて います。 とすると、本事例の場合、被害者は事故がなければ病院に行っておらず、財布 も落としていないはずですから因果関係はあるようにも思えます。 しかし、事故がなければ損害が生じなかったといえる全ての場合に因果関係を 認めてしまったのでは、お金を支払う義務の範囲が無限に拡大しかねず、いくら 加害者とはいえ、その責任があまりにも重くなりすぎてしまいます。例えば、本 事例の被害者が財布を落としたので交番へ行く途中、転んで骨折をし、学生であ った被害者は3か月間大学の講義を欠席せざるを得なくなり、その結果留年して 内定していた会社に就職できなくなってしまったという場合を考えてみてくださ い。 そのような、およそ一般常識からかけ離れた結果とならないよう、法律上、因 果関係のある損害とは、常識的に考えて加害者が行ったことから発生するのが通 常であろう損害に限られるとされています。 本事例をみてみると、交通事故で被害者にけがをさせた場合、一般の人であれ ば治療のため病院に行ったとしてもほとんどの場合財布を落とさないでしょうか ら、財布を紛失したことについては、因果関係はないということになります。 したがって、落とした財布に入っていたお金については支払う必要はありませ ん。 ※「今月の法律相談」のページは、神戸新聞に毎月第1、3火曜日に掲載され ている「くらしの法律相談」から、神戸新聞の了承を得て転載しています。 なお神戸新聞のサイトは、 http://www.kobe-np.co.jp/ です。 ■□■□■□■□ ニュースの読み方 ■□■□■□■□ 〜「無期懲役」〜 森川 拓 弁護士 東京地方裁判所は、平成20年12月26日、平成19年5月に無職の松沢正 太郎さん(当時94歳)ら3人を殺傷し、現金を奪った秋葉克巳被告人(43歳) に対し、無期懲役の判決をしました。 このような重大事件を起こした被告人に対し、無期懲役という判決がされるこ とがあります。 無期懲役について皆さんどのように理解されているでしょうか。「無期」とい う言葉から、判決では刑務所に入る期間を何も定めずに、刑務所での被告人の改 善の程度に応じて、刑務所等が被告人を釈放する懲役刑(絶対的不定期刑といい ます。)というイメージをお持ちかも知れません。しかし、無期懲役とは、被告 人を終身懲役に服させるという終身刑の一種なのです。 このようにご説明すると、無期懲役の判決を受けても刑務所から出所できると 聞いたことがあるよとおっしゃるかもしれません。 確かに、無期懲役は、一生涯刑務所から絶対に出られないという意味での終身 刑ではありません。10年が経過し、改悛の状が認められるときは、仮釈放とい う制度により、「法律上」刑務所から出てくることも可能となります。ただし、 あくまで仮釈放ですので、一生涯、保護観察下におかれるという制約があります。 したがって、現在、日本において、無期懲役は、死刑の次に重い刑罰とされてい ます。 これに対しては、無期懲役が重いといっても、10数年程度で仮釈放により社 会に戻ることが可能だと聞いたことがあるという方がいるかもしれません。確か に、前記のとおり、法律上は最短で10年の経過により、仮釈放となることも可 能です。しかし、近時、10数年で仮釈放となっている者は、ほとんどいません。 この点、昭和50年代後半ころに仮釈放となった者の平均服役期間は15〜1 6年程度でした。ですから10数年という数字はこのころのデータから出たもの かも知れません。しかし、平成19年に仮釈放となった者の平均服役期間は約3 1年となっています(平成18年は約25年)。加えて、これは幸運にも仮釈放 となった者の平均服役期間ですので、現実には40年以上もの間、刑務所に服役 している者や服役中に死亡する者も少なくありません(平成10年から平成19 年までの間に、120名の無期懲役受刑者が服役中に死亡しています。)。 仮釈放を認めない無期懲役を作るべきだという議論もあるようですが、まず、 現在の無期懲役の現状を把握することが重要だと考えます。 ■□■□■□■□ 編集後記 ■□■□■□■□ 兵庫県弁護士会メルマガ通信第50号をお届けします。 新年を迎えました。今年も兵庫県弁護士会のメルマガをどうぞよろしくお願い します。 今朝のニュースでは和歌山県南部町の梅の花が三分咲きだそうです。春はそこ まで来ています。 梅がえにきゐる鶯 春かけて鳴けども いまだ雪はふりつつ 読み人知らず(古今集5番) (健)


