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2008/02/08

「兵庫県弁護士会メルマガ通信」(第40号)

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   ◇◆◇◆ 「兵庫県弁護士会メルマガ通信」(第40号)  ◇◆◇◆
    ◇◆◇◆     (2008.2.8配信)       ◇◆◇◆
     ◇◆◇◆  http://www.hyogoben.or.jp/  ◇◆◇◆
            発行:兵庫県弁護士会
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◆ 目次

◇・裁判員の選任手続について(その3)
                 執筆者:朝本行夫 弁護士

◇・あなたが裁判員です! パート2
      〜刑事裁判はどんな流れで進むの?
                 執筆者:富本和路 弁護士

◇ 今月の法律相談のページ
 ・「再婚時、前夫からの養育費は?−諸般の事情考慮し決定へ」
                 執筆者:西川精一 弁護士

 ・「突然の婚約破棄−原則、損害賠償請求できる」
                 執筆者:水野博章 弁護士

◇ ニュースの読み方  〜実刑〜
                 執筆者:藤原孝洋 弁護士

◇ 編集後記

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■□■□   裁判員の選任手続について(その3)   ■□■□
 
                   兵庫県弁護士会 裁判員制度実施本部
                    本部長代行  朝本行夫 弁護士

1 個別事件で,裁判員候補者に選ばれれば,兵庫県の場合,神戸地方裁判所
(本庁)或いは神戸地方裁判所姫路支部から呼出状が送られてきます。
 呼出状に記載された日時にこれらの裁判所に行きますと,再度,質問票が配ら
 れます。これを当日用質問票と呼んでおります。
 当日用質問票に書かれる質問内容は,どの事件でも同じように決まっている訳
 ではなく,審理する裁判官が事件に応じて決めることが出来ますが,裁判所が
 実施した裁判員の模擬選任手続では,次のような質問事項がありました。
(1) この事件の被告人や被害者,あるいはその家族及びその他の関係者と何らか
関係がありますか
(2) 今回の事件のことを報道などで知っていますか
(3) あなた自身又は家族や親しい友人など,身近な人が今回の事件と同じような
犯罪の被害にあったことがありますか
(4) あなた自身,または家族や親しい友人など,身近な人が,刑事裁判の被告人
になったり,有罪の判決の言渡をうけたことがありますか。
(5) 今回の事件について,あなた自身が公平な判断をすることができないと思う
ような事情がありますか
(6) 裁判員に選ばれた場合,法令に従い公平誠実に職務を行なうことを誓う宣誓
をしていただくことになりますが,宗教上等の理由で宣誓できないという事情が
ありますか
(7) あなたが裁判員に選ばれた場合,裁判員の職務を終了する見込み時間は,午
後5時30分までですが,何か困難な事情がありますか
(8) 事前にあなたが提出された質問票について,書き忘れたことや,追加,訂正
したいことがあれば,お書き下さい

2 当日,裁判員候補者は,個別に裁判官から,口頭で質問を受けます。
 質問受ける部屋には,裁判官の他に検察官と弁護人も同席しています。
 質問事項は,以下のようなものが予想されます。
(1) 事前質問票及び当日質問票には,嘘偽りなく記載して頂いたということで宜
しいでしょうか
(2) 裁判では法廷で取り調べた証拠のみに基づいて判断する必要があります。 
事件によっては,テレビや新聞等で被告人が真犯人であるかのような報道がなさ
れることがありますが,そのような報道に接した場合でも,報道の影響を受けず,
法廷で取り調べた証拠のみに基づいて,被告人が犯人であるかどうか,公平に判
断することができますか

3 また,当日質問票で,次のような答えをされた方に対してだけする質問もあ
ります。
(1) 当日質問票?「あなた自身又は家族や親しい友人など,身近な人が今回の事
件と同じような犯罪の被害にあったことがありますか」や,当日質問票?「あなた
自身,または家族や親しい友人など,身近な人が,刑事裁判の被告人になったり
有罪の判決の言渡をうけたことがありますか」という質問に対して,「ある」と
答えた方に対しては,ご自身や身近な人のそのような経験から離れて,この裁判
で証拠に基づいて公平に判断することができますか,という質問をすることが考
えられます。
(2) 当日質問票?「あなたが裁判員に選ばれた場合,裁判員の職務を終了する見
込み時間は,午後5時30分までですが,何か困難な事情がありますか」という
質問に対して,「ある」と答えた方に対しては,具体的な事情を質問することが
あります。

4 質問手続が終われば,裁判員候補者は待合室で待機しておきます。
 その間に,裁判官と検察官,弁護人で,選任資格のない方や欠格事由のある方
 を除外したり,不公平な裁判をするおそれがあると考える人を除外する,理由
 付不選任請求の手続,そして理由を示さない不選任請求の手続を行います。
 これらの手続で除外されなかった方の中から,クジで,実際に裁判員の仕事を
 行なって頂く方(6名の場合と,4名の場合があります)を選び,補充裁判員
 を若干名選びます。
 裁判員及び補充裁判員に選ばれなかった方に対しては,裁判長から,不選任と
 なったことのお知らせと挨拶がなされることかと思います。
 裁判員及び補充裁判員に選ばれた方が,その後受ける説明等は,次回に説明さ
 せて頂きます。
                                                                以上


■□■□■  あなたが裁判員です! パート2  □■□■□
■□■□■  〜刑事裁判はどんな流れで進むの? □■□■□

                            富本和路 弁護士

1 はじめに
 前回のパート1では、捜査の意味や供述調書の作成などについて、お話させて
いただきました。
 簡単に流れを復習すると、警察と検察官が「被疑者が犯人であると判断可能な
程度に証拠を作ったり、集めたりする」というのが捜査で、捜査の結果、検察官
が「被疑者が犯人であると判断できる」と考えれば、その被疑者を裁判にかける
=起訴する、ということでした。そして、捜査のときに、供述調書というものが
作成されるけど、供述調書は無条件にそのまま信用すると危険な場合がある、と
いうこともお話させていただきました。
 今回は、刑事裁判の簡単な流れや、実際に裁判員の皆さんが行うことになる事
実認定のやり方などを知っていただければと思います。

2 刑事裁判の構造
(1) 刑事裁判の簡単な流れ
 ア 人定質問
 裁判の簡単な流れを説明しますと、まず、検察官が起訴している被告人が、裁
判に出頭している被告人と同じ人物で間違いがないかを確認する手続があります。
裁判官が、被告人の名前、住所、職業などを聞いて、間違いがないことを確認し
ます。これが人定質問といわれるものです。
 イ 起訴状朗読
 人定質問後、検察官が起訴している被告人が実際に出頭してきている人物と同
一であることが分かれば、検察官が起訴状を読みます。起訴状には、どのような
事件を裁判所に審理してもらうかが、簡潔に分かりやすく記載されています。
 ウ 黙秘権等告知及び罪状認否
 検察官が起訴状を読んだ後、裁判官が、被告人に対して、黙秘権などの権利が
保障されていることを告げます(黙秘権等告知といいます)。その上で、検察官
が先に読んだ起訴状の事実に間違いがないかどうかについて、裁判所から被告人
に質問がなされます。被告人は裁判所からの質問に対し(1)すべて認める、(2)違う
ところを主張する、(3)黙秘したまま答えないという態度のいずれかを取ることに
なります。そして、裁判所は、被告人の対応後、弁護人にも検察官が読んだ起訴
状の事実についてどう考えているのかを聞きます。弁護人は、基本的には被告人
と同じ対応をとりますが、(1)の場合であっても、特殊な事情がある場合は事実関
係をすべて認めることを前提に、法的な主張とかを言うことがあります。(2)の場
合は、被告人の主張が法律上どのような意味を有するのかなどを主張します。(3)
の場合は、弁護人によっていろいろな主張が考えられますが、無罪を主張したり、
被告人が黙秘をしていることを繰返す場合があります。ただ、ほとんどの事案は
(1)で、(2)が若干あり、(3)はほとんどないというのが実情だと思います。これらの
被告人・弁護人の対応を「罪状認否」といいます。
 エ 冒頭陳述
 次いで「冒頭陳述」といわれる手続が行われます。具体的には検察官が、起訴
状記載の事実よりも詳しい事実関係を主張して、この事実関係が証拠で証明する
予定の事実となります。また、検察官の冒頭陳述に続いて、弁護人が冒頭陳述を
することもあります。弁護人の冒頭陳述は、特に無罪主張の場合に行われること
が多いのですが、無罪となる理由や事実関係などを主張します。
 この冒頭陳述は、あくまで検察官・弁護人双方の「主張」に過ぎず、冒頭陳述に
続く「証拠調手続」によって裁判所に現れた証拠を常識的に判断してから、検察官
の主張が正しいかどうかを判断しなければなりませんので、例えば、「冒頭陳述
で○○と言っていたのだから、○○だ。」という思考をしてはならないことに注
意してください。後ほど説明しますが、事実認定は、「××という証拠からする
と、冒頭陳述の○○という事実がある(又は「ない」、「分からない」)」とい
う流れになります。
 オ 証拠調手続
 冒頭陳述が終わると、証拠調手続に入ります。検察官や弁護人の冒頭陳述は、
あくまで「こういう事実があったんですよ」という主張であり、この主張を根拠
付ける=証明する証拠を取調べる手続が始まるわけです。
 証拠調手続の流れですが、まず、検察官立証(事実を根拠付ける証拠を取調べ
ることです)が行われます。検察官は冒頭陳述を証明するために、これこれの証
拠を取調べてください、と裁判所に請求し、これを受けて、被告人がそれぞれの
証拠を同意=裁判所で調べてもよいとするのか、不同意=裁判所で取調べるべき
ではないとするのかの意見を言います。被告人が同意した証拠は裁判所によって
取調べられ、被告人が不同意とした証拠については、その証拠を裁判所が取調べ
てもよいのかについて、判断されることになります。
 検察官立証に次いで、弁護側の立証に入ります。手続的な流れは、検察官立証
とほぼ同じです。
 そして、その後、ほとんどの事件で被告人質問が行われます。被告人の話した
ことも、証拠となります。
 カ 論告・弁論
 証拠調手続が終了すると、論告が行われます。論告とは、検察官が、裁判に現
れた証拠を元に、証拠の見方や具体的な事実認定のやり方などを主張し、最後に、
求刑といって、どの程度の刑罰がふさわしいかについての検察官の意見を言いま
す。
 論告後、弁護人から弁論が行われます。弁論についても、証拠に基づいて、被
告人が無罪であることや、有罪としても被告人に酌むべき情状関係があることな
どを主張し、執行猶予付の判決を求めたりします。
 キ 判決
 論告・弁論で裁判の審理が終了し、判決にいたります。
 以上が、刑事裁判の大まかな流れです。この流れの中で、裁判員の皆さんが裁
判官とともに、どういう事実があったのかについて事実認定していき、有罪・無
罪を決め、有罪の場合に、どのような刑罰が適切なのかを決めていくことになり
ます。

(2) 事実認定って何?
 裁判は、検察官が主張する事実が本当に正しいのかということを判断して、有
罪・無罪を決め、どのような刑罰を科すのかを決める場です。その判断に際して
は、検察官の言っていることを、証拠から認定していくと手続(これを「事実認
定」といいます)を踏みます。
 「証拠から認定するって、具体的にどういうこと?」と思われる方も多いと思
います。そこで、裁判を離れた日常的な例と、裁判に関係する簡単な例を挙げて
みようと思います。
 ア 日常的な例
 一般的によく挙げられる事実認定の例なのですが、「朝起きたら、家の前の地
面が濡れていた。あぁ、夜のうちに雨が降ったんだ。」というのがあります。地
面が濡れているということから、雨が降ったのだと常識的に判断されているとい
うことです。
 しかし、ここで疑問をもたれるかたもいらっしゃると思います。「となりの人
が早起きして、地面に水をまいたかもしれないじゃないか。」と。そうすると、
地面が濡れているから直ちに雨が降ったと認めることはできず、他の事情、例え
ば、付近一帯の地面が濡れていたり、屋根にも水滴がついているなどの事情があ
れば、常識的に判断して「雨が降った」ということを認めてもよいでしょう。
 それでも、「いや、誰かが、夜のうちに飛行機とかで付近一帯に空から水を振
りまいたかもしれないじゃないか。」と考えることもありえないことではないで
す。しかし、この誰かが水をまいたという考えは「付近一帯の屋根や地面が濡れ
ていた」という事情だけを前提とした場合、常識的ではありません。逆に言うと、
誰かが水をまいたという考え方が常識的だというためには、「その付近一帯では、
年がら年中、毎朝屋根や地面が濡れている」とか「日常的に大量の水が降り注ぐ
ような設備・施設などがない」というような事情が加味されることが必要です
(もちろん、その他にも加味しなければならない事情はあると思いますが)。
 このように、皆さんが日常的に判断していることは皆さんの経験に基づいてな
されています。この例でしっかりと覚えていてもらいたいのは、「付近一帯の屋
根や地面が濡れていた → 雨が降った」という思考が事実認定の手法であると
いうこと、それと、「付近一帯の屋根や地面が濡れていた」という事情だけを前
提とした場合、「誰かが水を撒き散らした」と結論付けるのは常識的ではない、
ということです。
 事実認定とは、単なる空想・想像であってはならず、常識的に判断するという
ことが前提となって成り立つのです。
 イ 裁判に関係する簡単な例
 では、次に、裁判でありえる簡単な例を挙げてみましょう。なお、この例は、
非常に簡略化されたものであり、現実の裁判とは何ら関係がありません。
 検察官が、「被告人Aは、平成○年×月△日、被害者Bを殴って怪我をさせた」
としてAを起訴したとします。この場合、(1)平成○年×月△日にAがBを殴った
こと、(2)Bが平成○年×月△日に怪我をしたこと、(3)(2)のBの怪我の原因が(1)に
あること、の3点が検察官の主張ということになります。そこで、裁判において
は、(1)、(2)、(3)の事実が本当にあったのかを、証拠に基づいて判断していくこと
になります。
 検察官が、Bの診断書を裁判に提出しました。Bの診断書は証拠になります。
そして、その診断書を見ると、「平成○年×月△日、全治1ヶ月の打撲の怪我を
した」と書いてあります。そこで、常識的に考えて、「Bが平成○年×月△日に
怪我をした」ということが分かります。そこで、(2)の主張を認めても何ら不自然
ではないということになります。でも、Bが怪我をしたのは分かっても、仮にそ
の怪我の原因が例えば自転車に乗っていて自分の不注意で転倒したことにあると
すれば、(1)と(3)が本当かどうかは分かりません。そこで、AがBを殴るのを見た
という証人Xを裁判所に呼んで証人に話を聞くことになりました(「証人尋問」
といいます)。証人Xは平成○年×月△日にAがBを殴るのを確かに見たと証言
し、証人Xには何らの疑わしい点も見受けられませんでした。この証人Xの証言
は証拠となりますので、Xの証言という証拠から「Aが平成○年×月△日にBを
殴った」ということが分かります。そして、診断書とXの証言という2つの証拠
を常識的に判断して、「平成○年×月△日、AがBを殴った」という事実(検察
官の主張(1))と「BがAに殴られて怪我をした」という事実(検察官の主張(2)、
(3))が分かるということになります。このように、検察官の主張する事実を、裁
判に現れた証拠から常識的に判断していく手続が事実認定ということになります。
 上記例は非常に簡略化していますので、このコラムを読まれている方の中には、
「いや、平成○年×月△日にAがBを殴ったことが分かっても、Bは同じ日に自転
車で転倒したかも知れず、その転倒による怪我の診断書だったら、検察官の主張
している事実は認められないんじゃないの?」とお考えになる方もあろうかと思い
ます。そのようにお考えになられたあなたは、立派に事実認定という手続を理解
しています。実際の裁判では、事件のあった時間帯、場所、殴られた部位、殴っ
た強さ、殴った回数、診断書の怪我の部位、など、もっと詳細に主張され、証拠
が提出されます。それらの証拠を皆さんの常識に照らして判断してもらう、そし
て、その判断の際には空想などは入れてはならない、というのが重要なのです。
事実認定というのは、誰もが日常的に行っていることなのです。そして、裁判員
の皆さんに期待されているのは、皆さんの常識を裁判手続に反映させることです
から、裁判員になられた方は、忌憚のない闊達な発言をしていただくことが必要
になります。

3 パート2まとめ
 今回は、刑事裁判の簡単な流れと、事実認定の手法などについて、お話させて
いただきました。刑事裁判の大まかな流れを知ることで、検察官、弁護人、裁判
所が何をやっているのかについて理解できると思いますので、裁判員になられた
際の参考にしていただければ幸いです。
                                                                  以 上


■□■□■□■□ 今月の法律相談のページ ■□■□■□■□

◇◆「再婚時、前夫からの養育費は?−諸般の事情考慮し決定へ」◇◆

                執筆者:西川精一 弁護士
                  神戸新聞2007年12月4日掲載

Q:私は、夫と3年前に離婚し、5歳と10歳の子供と3人で暮らしています。
離婚する際に、2人の子供の親権者には私がなること、毎月定額の養育費をもら
うことを前夫と合意しました。今、再婚を考えている人がいるのですが、私が再
婚した場合、前夫から養育費をもらえなくなるのでしょうか。

A:一般に、離婚する際に養育費の額について合意した場合でも、離婚当時に予
測し得なかった「事情変更」が生じた場合、相手方に対し、養育費の増額や減額
を請求することができます。例えば、父母の勤務先が倒産したり、父母や子が病
気や怪我により長期入院することになったり、物価の急激な上昇が起こったりし
たという場合です。
 相談者の場合に、この事情変更が認められるかが問題となりますが、再婚した
というだけで、当然に事情変更ありとして前夫の養育費支払義務がなくなったり、
減ったりするわけではありません。
 例えば、再婚相手が、相談者の子らと養子縁組をしない場合、再婚相手と相談
者の子らとの間には親子関係は生じませんので、前夫が子らに対して一次的な扶
養義務を負うことに変わりはなく、養育費支払義務も原則として変化しません。
ただし、再婚相手が子らの養育を含め、生活全般について費用を負担するように
なったという事情がある場合には、「事情変更」ありとして前夫の養育費減額請
求が認められる可能性があります。
 再婚相手が、相談者の子らと養子縁組をする場合、再婚相手と相談者の子らと
の間に親子関係が生じ、通常は再婚相手と子らが同居して生活していくと思われ
ますので、再婚相手が一次的な扶養義務を負うことになります。しかし、この場
合も、前夫と相談者の子らとの親子関係が無くなるわけではありませんので、前
夫の扶養義務も、二次的ではありますが、存続し続けることになります。したが
って、前夫の養育費支払義務が当然になくなることはありませんが、扶養義務が
二次的なものとなり、前夫の養育費減額請求が認められる可能性があります。
 結局、再婚したという事実だけではなく、養子縁組の有無、扶養義務者の経済
力の有無、再婚後の家庭の状態など、様々な事情を考慮して、改めて前夫の養育
費負担額が定まると考えてください。この点について、相談者と前夫だけで話し
合いがつかない場合には、調停や審判などで解決することになります。


◇◆「突然の婚約破棄−原則、損害賠償請求できる」◇◆

                執筆者:水野博章 弁護士
                  神戸新聞2007年12月18日掲載

Q:大学時代から5年間も付き合っていた彼女がいました。結納も済ませ、すで
に結婚式の招待状も発送しました。しかし、突然、彼女から、別に好きな人がで
きたという理由で、結婚できないと言われました。僕は彼女に対し、何か請求で
きるでしょうか。

A:結論から言うと、あなたは、彼女に結婚式場の前金や解約違約金を請求でき
る可能性が高いでしょう。また、結納金も原則返還してもらえます。
 結婚するとさまざまな義務を負いますが、婚姻届を出す前でも、「婚約」して
いればその地位に一定の保護が与えられます。
 「婚約」とは文字通り結婚の約束ですが、「結婚しよう」と口に出してもその
意味は人によっていろいろです。実務的には式場を予約したか、結納は済んだか、
などの外形的な事実から婚約の成立を判断していきます。婚約が成立すると、一
方が正当な理由なく婚約を破棄した場合に損害賠償の問題が生じます。
 あなたは結納を済ませて結婚式場の招待状も発送しているのですから、彼女と
の婚約が成立していることは間違いなさそうです。また、別に好きな人ができた
というだけでは婚約を破棄する正当な理由とは(少なくとも法律上は)言えませ
んから、あなたは彼女に対して損害賠償を請求できるでしょう。
 損害賠償が請求できるのは、結婚式場の前金や解約違約金などの出費です。
 では慰謝料はどうでしょうか。
 心のつらさはお金にかえられません。それでもこれはひどすぎるからせめてお
金で認めてあげよう、これが慰謝料です。妊娠した女性が出産直前に婚約破棄さ
れるようなケースはまさに慰謝料が問題になる事案です。
 大学から5年間付き合った彼女に直前で婚約破棄される苦痛も損害ですから、
少ないながらも慰謝料が認められる可能性がありますが、費用をかけて裁判をす
るかどうかは慎重に考えた方が良いでしょう。相手に好きな人ができたこと自体
は仕方ありませんし、「せめてお金を・・・」と言いだしにくい事案です。
 なお、結納金は、一般に結婚が成立することを前提として交付されているもの
ですから、婚約が解消された場合には、原則返還してもらえます。ただ、地域の
慣行がある場合にはそちらに従うべきでしょう。


 ※「今月の法律相談」のページは、神戸新聞に毎月第1、3火曜日に掲載され
ている「くらしの法律相談」から、神戸新聞の了承を得て転載しています。
 なお神戸新聞のサイトは、 http://www.kobe-np.co.jp/ です。

■□■□■□■ ニュースの読み方 〜実刑〜 ■□■□■□■□

                執筆者:藤原孝洋 弁護士

  法務省は19日、実刑を免れ執行猶予判決を受ける刑事被告人に社会奉仕命
令を出すことができるようにするため、3月にも省内に勉強会を発足させる方針
を決めた。「刑務所に収容される実刑と実社会で暮らしていける執行猶予との差
が大きすぎる」(法務省幹部)のが理由で、刑罰の幅を広げるねらいもある。
(1月 19日21時39分配信 産経新聞より抜粋)

 「実刑」とは,執行猶予がつかずに実際に刑の執行を受けることを指す。罰金
刑についても,法令上,刑の執行が猶予されうる(刑法25条)ので,罰金の支
払いを命ぜられた場合も言葉の語源からいうと実刑なのかもしれないが,罰金刑
を受けた場合に実刑を受けたというやりとりは聞いたことがなく,一般的には懲
役刑や禁固刑といった自由刑の執行が猶予されなかった場合に使用される。
 なんとも曖昧な用語解説であるが,それというのも「実刑」は法文上,定義さ
れている言葉ではない(すくなくとも私が知る限り。)。法律用語辞典にもなく,
法学における講学上の言葉でもないようである(一方,国語辞典には掲載されて
いる。)。

 とはいうものの,刑事事件の有罪率が99%を超える我が国において,大多数
の被告人にとっては,実刑なのか,執行猶予付きなのかが最大の関心事であり,
おそらく,大多数の弁護人にとっても,大きな関心事である。重大事件について,
執行猶予判決が下されると無罪をとったかのように(少しおおげさだけど)うれ
しい場合もある。
 この実刑と執行猶予の間に社会奉仕つき執行猶予を設けようというのが今回の
報道の骨子である。
 ただ,社会奉仕といっても千差万別である。一人でできる社会奉仕から,相手
がいてこその社会奉仕もある。負担の大きさも一律ではなく,社会奉仕2週間を
命ぜられた被告人と社会奉仕1ヶ月を命ぜられた被告人の刑の均衡が保たれるの
かという問題も当然生じるだろう。さらに,実際の運用として,これまで実刑と
なっていたケースが社会奉仕付き執行猶予という形で収監されずにすむという形
で運用されるのか,これまで単なる執行猶予付き判決だったケースも新しい制度
ができたということで社会奉仕を命じていく形で運用されるのか,弁護士として
は関心をもたずにはいられないところである。今後の議論が待たれる。

 さて,刑罰間の格差という意味では,死刑と無期懲役刑の差も大きなものであ
る。今日,被害者感情に配慮し,厳罰化の傾向にあるが,安易に死刑を選択して
欲しくないという意味では,この差を埋める刑罰こそ必要ではないかというのが
実感である。

■□■□■□■□編集後記■□■□■□■□

 兵庫県弁護士会メルマガ通信第40号をお届けします。本日2月7日は旧暦の
1月1日です。

   み吉野は山も霞みて白雪のふりにしふりにし里に春はきにけり
                   後京極摂政(新古今和歌集)

                                           (健)
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