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2009/11/01

映画の精神医学 マイケル・ジャクソン 死の真相に迫る

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      映画の精神医学
       

●第352号● 2009年11月1日発行 ● 発行部数:47,156部

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【目次】
■1 はじめに		
■2 最新映画批評 「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」
■3 精神医学目  マイケル・ジャクソン 死の真相に迫る
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■1 はじめに
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 メルマガの一番最初(上部)に[PR]が挿入されていると思います。
 
 これは、10月末より、
全ての「まぐまぐ」から発行されるメルマガに強制的に挿入される広告で、
「樺沢紫苑」とは一切関係はありません。


 10月29日、大前伶子さんの新刊

●「幸せ日和」(PHP研究所)
http://01.futako.info/b/bookoomae.html

の出版記念パーティーに参加してきました。

 大前伶子さんは、大前研一さんのお姉さんです。
 さすがに広い人脈をお持ちで、VIPがたくさん
いらしていました。


 大前伶子さんは、人当たりがよく非常に穏やかな方ですが、
40歳で恋人を追って単身ニューヨークに渡るなど、
非常にエネルギッシュで行動的な一面ももたれています。

60歳を過ぎた現在でも、
彼女が応援するアーティストの夢を叶えるために、
財団を設立し、熱心に活動を続けられています。


 歳をとると可能性がどんどん狭まって自分の夢をかなえる
可能性が減っていく・・・と考えている人がほとんどだと思いますが、
むしろ逆に歳をとるごとに人生経験は蓄えられ、
いろいろな人との出会いによって、
人とのつながりは広がって行きます。

 大前さんの自伝的エッセイ「幸せ日和」を読むと、
歳を重ねるごとに、自分の夢の実現可能性は高まっているんだ
と勇気づけられます。

●「幸せ日和」(PHP研究所)
http://01.futako.info/b/bookoomae.html


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■2 最新映画批評&精神医学の目  (ネタバレなし)
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┌───────────────┐
 マイケル・ジャクソン THIS IS IT 10月29日公開(現在公開中)
└───────────────┘   
 
 今年の夏、ロンドンで開かれる予定だった
マイケル・ジャクソンのコンサート“THIS IS IT”。

 この実現しなかったマイケルのコンサートを、
100時間以上にも及ぶリハーサル映像、
そして舞台裏の貴重な映像を編集した作品。

 あたかもコンサートを劇場で見てるいるかのように
錯覚させてくれます。

 マイケル・ジャンクソンのファンであれば
涙なくしては見られないでしょう。
 
 ロンドン公演の監督をつとめていたケニー・オルテガが
この映画の監督もつとめているので、
音楽映画として完成されているのは当然として、
マイケルの人物ドキュメントとして圧倒的に良くできています。

 
 マイケルは、裁判以降、マスコミからひどいバッシングを受けた
こともあり、マスコミにはほとんど出なくなりました。
 
 記者会見などに出たとしても、非常に限定的なものです。
 
 この映画では、マイケルの素顔。
 彼の生の言葉、発言が山ほど見られるわけですが、
近年のマイケルの映像が
これほど公にされたというのは初めてのことでしょう。

 これを見ると、マイケルが「音楽とダンスの求道者」
であったことが、否応なくわかります。
 
 最高の舞台を作り上げる。
 最高の音楽と最高のダンスと最高の演出。
 
 マイケルが、0.1秒単位のテンポや演出のタイミングについて、
監督と議論するシーンは、感動的です。


 こうした映像が、マイケルの生前にもっとたくさん出ていれば、
マイケルに対するマスコミの風当たりの厳しさも、
もっとゆるやかなものになっていた気もします。


 音楽に対して、真剣に、真面目に取り組んでいる姿勢。
 それが本当にストレートに伝わってきます。


 私が感動したのは、コンサートを支えるダンサーやシンガーたちが
語るマイケル・ジャクソンの実像です。
 
 彼らにとって、子供の頃テレビで見てあこがれた
伝説の人物、マイケル・ジャクソンと同じステージに立てる
喜びを率直に表現したいくつかのインタビューは、
マイケルが多くの人たちの尊敬を集め、
大きな目標とされていたことのゆるぎない証です。


 こうしたインタビュー映像やバックステージ映像を
随所にはさみながらも、楽曲部分に関しては、
ほぼノーカットでミュージックビデオのように
しっかりと見せてくれます。

 音楽映画として、人物ドキュメントとして、
非常にハイレベルな映画です。

 試写会で見たのですが、
上映終了後、会場から自然と拍手が起こったのも感動的でした。

 「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」。
 これは、DVDで見てもつまらないでしょう。
 大画面の大音響で見てこそ、大きな感動が味わえるでしょう。

 樺沢の評価  ★★★★☆
(★★★★★が満点。☆は、★の半分)


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■3 精神医学の目
─────────────────────────────────
┌─────────────────┐
 マイケル・ジャクソン 死の真相に迫る
└─────────────────┘ 

 映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」は、
純粋にリハーサル映像とコンサート関係者へのインタビューを編集した作品で、
マイケル・ジャクソンの死については全く言及されていません。

 しかしながら、この映画を見ると、
マイケルが死んだ理由というのも、自ずとわかるような気がします。
 
 「King of Pop」と呼ばれるマイケル。

 今回のロンドン公演は、
フル・コンサートとしては8年ぶり、
ツアーとしては実に12年ぶりのコンサートです。

 このコンサートを中途半端なものに終わらせることは絶対に出来ない。
 
 自分が手がけるからには、世界最高水準のコンサートに
しなくてはいけない。

 音楽、ダンス、舞台装置、演出。それら全てを世界最高水準の
レベルで長年待たせたファンを楽しませようという意気込み。

 「世界最高のダンサー」を集めるために、
世界中から数百人のダンサーを集めて、大規模な
オーディションが開かれます。

 よりよい演出を監督に次々と提案し、一歩も妥協しない
マイケルの真摯な姿勢。

 徹底主義、完璧主義です。
 
 他人にも完璧を求め、自分も完璧なパフォーマンスを
しなくてはいけない・・・という。


 しかし、この徹底主義、完璧主義は、人間を追い詰めます。
 
 徹底主義。完璧主義の人でないと、
その分野の頂点に上り詰め、圧倒的な結果を出すことは
困難であるかもしれませんが、
完璧主義の人は、どんなに成功しようが、
どんなに素晴らしいものを作り上げようが、
永久に「満足」することはないのです。

 どんなに素晴らしいモノを作りあげて、
圧倒的な賛辞を浴びたとしても、
本人の中では常に「不全感」が残るのです。

 徹底主義、完璧主義の人にとっては、
「90点」の出来は、「マイナス10点」に
しか見えません。

 「95点」の出来は、「マイナス5点」にしか
感じられない。

 つまり、「95点」「95点」「95点」と、
極めて高い結果を出しても、
それは
「マイナス5点」「マイナス5点」「マイナス5点」
とマイナスの積み上げであって、
「まだ100点がとれないのか」という
否定的な考えしか残らないのです。

 映画「THIS IS IT」のマイケルの徹底主義、完璧主義に基づく
演出姿勢を見ると、やはり完璧主義者が陥りやすい
マイナス思考の蟻地獄に、マイケルも陥っていたのではないか
と想像されます。


 この映画の中にはマイケルが苦悩するシーンや
弱音を吐くシーンは全く含まれてはいませんが、
当然ながら、50歳となったマイケルは
全盛期であった若い頃と同様のダンスや動きはできません。

 思うよう動けない自分自身にたいする自責の念や
否定的な感情も、相当に強く持っていたことは、
間違いないでしょう。


 完璧主義、徹底主義といえば、
マリナーズのイチロー選手を思い出します。

 自らを追い詰めることで、自らのポテンシャルを高めて、
最高の能力を引き出す・・・というのは、
トップランナーとしては自分の能力を引き出すための
重要なテクニックであります。

 それと同時に「多大なストレス」を被っていることも
間違いないでしょう。


 また、このリハーサルの様子ですが、まさに「本番さながら」の
極めて白熱したものです。

 リハーサルでここまで手抜きなしで本気でやるんだ・・・と
驚かされますが、このリハーサルを終えた興奮した状態で
家に帰って、すぐに眠るということは、全く不可能であったでしょう。


 完璧を求めるがゆえのプレッシャーと
本番さながらの白熱したリハーサルによる神経の高ぶりによって、
マイケルは強度の不眠に苦しめられるようになっていた。

 強い睡眠薬を使わなければ、全く眠れない状態になってしまった
という状況が、非常によく理解できます。

 マイケルの死については、麻酔薬プロポフォールを大量注射した
主治医に殺人の疑いがかけられています。
 
 意図的な殺人なのか、過失なのかわかりませんが、
いずれにせよ、その背景にはマイケル自身が
強度の不眠症で苦しんでいたという事実があったでしょう。

 マイケルの死の直後、
マイケルがリハーサルで思ったようなダンスができない。
 このままではコンサートが失敗するというストレスに苦しんでいた、
という報道がありましたが、映画を見ると全くそうではない・・・という
ことがわかります。

 むしろ逆なのです。
 
 リハーサルも順調に進み、マイケルの動きにも非常にキレがあります。
 
 リハーサルはうまく行っていた。
 しかし、仮に「95点」の出来だとしても、それ自体はマイケルにとって
極めて大きなストレスになっていたはず。
 まだ、「100点」ではない・・・と。

 どんなに完成度が高まっても、完璧主義者は
「さらに完成度を高めよう」としますので、底なし地獄です。

「95点」を「96点」に高めるのは、
「85点」を「86点」に高めるのとくらべて、
何倍もの労力を必要としますので、
完成度が高まるほど、反比例的にストレスも高まっていった
可能性すら、想像できます。


 先日、フォーク・クルセイダーズの加藤和彦さんが
自殺されましたが、これと同じような心理状態にあったのではないか・・・と
私は考えています。

 一端、トップに君臨してしまうと、そう変なモノは出せない。
 常にトップを走り続けなければいけない・・・というプレッシャーに
一生悩まされ続けるのです。

 「この程度で良いだろう」という妥協ができる人はいいのですが、
徹底主義者・完璧主義者にとっては、それは絶対にゆるせないことなのです。

 一方で、「老い」という問題もあって、若い頃と同じエネルギーを
出し続けることは困難です。

 しかし、完璧主義の性格は、今以上の完璧さを自分に求めるわけですから、
そのギャップによって精神的に追い詰めざるを得ないのです。

 トップランナーの苦痛。

 我々凡人には、あくまでも「想像」するしかないわけですが、
映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」は、
マイケルの最後の「輝き」を収めた映画でありながら、
そこから最後の「影」を読み取ることも
また可能なのです。


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