2009/09/26
映画の精神医学 「おくりびと」は納棺師を描いた作品ではない!?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 映画の精神医学 ●第347号● 2009年9月26日発行 ● 発行部数:47,156部 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【目次】 ■1 はじめに ■2 最新映画批評 「TAJOMARU」 ■3 精神医学の目 「おくりびと」と天職 ■4 レンタル中の映画批評 「暴力」と「正義」の別な一面 ───────────────────────────────── ■1 はじめに ───────────────────────────────── 昨日、ジュンク堂に行きました。 今、「いじめ自殺」の教科書執筆をしているので、 その資料探しのためです。 それにしても、こんなにたくさんの本が出版されているのだなあ・・・ と改めて驚かされます。 自殺予防関連の棚を見ているときに、 拙著「自殺という病」が置かれているのを発見して、 何かうれしい気持ちになりました。 本屋に自分の本が並んでいる。 これは、かなりスペシャルな喜びです。 「出版」、これは本好きにとっては、極めてスペシャルな体験なのです。 さて、私も「出版したい」という方は、いませんか? 自分には「出版なんか無理」と思い込んでいる人も多いでしょうが、 日本で1年間に出版される書籍の刊行点数は、約8万冊といいます。 そう考えると、そのうちの1冊に入り込むことは、 それほど無理ではないように思えます。 出版は、「出版するための道筋」を知って、 その通りに行動していけば、非常に高い確率で実現する ことができます。 というか、それなりにしっかりとした企画を持ち、 しっかりとした本が書けるという前提であれば、 まず出版できると言ってもいいくらいです。 そのためには、まず出版の道筋を学ぶ・・・ ということが重要です。 9月30日19時から東京・大井町で開かれる ●「出版ブランディングカレッジ スタート・セミナー」 http://01.futako.info/b/publishing0930.html このセミナーでは、樺沢をはじめとして、 5人のユニークな講師陣が、全く違った角度から、 「はじめて出版する方法」について語ります。 ───────────────────────────────── ■2 最新映画批評 (ネタバレなし) ───────────────────────────────── ┌─────┐ TAJOMARU 現在公開中 └─────┘ 小栗旬のプロモーション映画とみれば、非常によくできている。 最初から最後まで、ほぼ小栗旬が出ずっぱりで、 ファンの方は相当に楽しめる作品になっているだろう。 では、小栗旬にさして興味もない、私のような中年おやじが 一本の時代劇として見た場合はどうか・・・というと、 素晴らしいとは言えないまでも、そう悪くはないと思う。 小栗旬や若手俳優の殺陣、アクションシーンもそれなりに健闘している。 松方弘樹、萩原健一らベテラン俳優の個性的な演技も良い。 しかしながら、映画を見終わった後に、 「いやー、おもしろかった」という充実感がない。 なぜだろう、と思って考えると、やはり上映時間131分が 長すぎるのだ。 一つ一つのシーンは非常に良く撮れていると思うが、 全体のテンポが非常に悪い。特に後半。 映画の最後の部分。クライマックス・シーンの山場といえるシーンが 三、四つ、30分以上も続くのだから、緊張の糸が切れてしまうのは 当然だ。 あと15分ほど短かければ、手に汗握るスリリングな時代劇に なったのではないだろうか。 物事の多面性。そして、人間の多面性。 善人が実は悪人で、悪人が実は善人かもしれない・・・。 原作「藪の中」に共通するテーマは非常に深いものがあるが、 この作りでは秀逸なテーマもなかなか観客に届かないだろう。 樺沢の評価 ★★★☆ (★★★★★が満点。☆は、★の半分) ───────────────────────────────── メルマガ読者全員に19,800円相当のDVDをプレゼントします 詳細はコチラ→→→ http://01.futako.info/b/freeDVD0001.html ───────────────────────────────── ■3 精神医学の目 ───────────────────────────────── ┌──────────────┐ おくりびと (ネタバレ) └──────────────┘ アカデミー外国語映画賞を受賞した「おくりびと」が 9月21日(月)、地上波初放送されました。 視聴率21.7%。 シルバーウイークの特番では、トップの視聴率ということで、 ご覧になった方も多いでしょう。 私は「おくりびと」は劇場公開時に見たのですが、 紹介のタイミングを逸してしまったため、 メルマガでは紹介しておりませんでした。 ということで、今回「おくりびと」の少し踏み込んだ考察を 「ネタバレ」でお届けしたいと思います。 「おくりびと」では、「納棺師」という特殊な職業が登場します。 「おくりびと」公開後に、「納棺師」という職業が注目され、 ニュース番組などで特集が組まれたりしましたが、私は "「おくりびと」は、納棺師を描いた作品" とくくってしまうのは、 作品のテーマを考えると、ちょっと違うのではないか・・・と 思ってしまいます。 「納棺師」という特殊な職業を引き合いに出しながら、 自らの生き甲斐といえる職業。 一生やっていく、誇りを持てる職業。 つまり、「天職とは何か?」 というテーマを突きつけているのではないか、と思うのです。 プロのチェロ奏者として東京のオーケストラに所属していた 小林大悟(本木雅弘)。 オーケストラの解散と同時に職を失った大悟は、 自分程度の奏者は掃いて捨てるほどいる。 このままチェロ奏者を続けても限界があると プロの音楽家の道を断念し、 実家である山形県酒田市へ帰ることになります。 大悟にとって「チェロ奏者」というのは、大きな「夢」。 それを、ずっとそれを追い続けてきました。 1800万円もするチェロを購入した・・・というのも、 彼が一生の職業として取り組もうとしていた決意の表れ だったはずです。 しかし大悟は、チェロから離れてみると、 「チェロ奏者」は自分にとって「天職」ではなかった・・・と気付きます。 酒田に帰省後の大悟が、チェロを演奏するシーンがあります。 そのとき大悟は、素直に演奏を楽しめている自分を発見します。 プロとしてやっていた時には、 真に演奏を楽しんでいなかった・・・と。 優れた才能もないにも関わらず、必死にやってきた自分は、 大きなプレッシャーを背負い、知らず知らずのうちに ストレスにすらなっていた。 真に楽しんで、チェロの演奏が出来ていなかった。 冒頭部、大悟がチェロ奏者をあっけなくやめてしまうシーンに違和感を 感じる人がいるかもしれませんが、 それは暗に大悟自身が「チェロ奏者は自分の天職ではない」と 薄々感じていたからなのでしょう。 大悟が、酒田で、偶然についた「納棺師」という職業。 最初は、「納棺師」が嫌で嫌でしょうがなかった大悟。 その職業に自信を持てずに、妻や友人にも隠します。 しかし、大悟は「納棺師」という職業の持つ重要性に気付きはじめます。 さまざまな人間の最後の旅立ちをお手伝いするという、 仕事の意義に気付き、充足感を感じはじめる大悟。 そして、映画の最後では、自ら父の納棺をすることになります。 自分を捨てた「父」などどうでもいいと思っていた。 しかし、それは実は、「父」と対峙することを避けていた・・・とも 捉えられます。 心理学的に見れば、「父」は社会、「母」は家庭を代表する存在です。 「父」と対峙できない大悟は、実は社会とも対峙できていなかった、 ということ。 「社会に出る」というのは、「仕事につく」ということと、ほぼ同意です。 親のすねをかじっているうちは、一人前の社会人といえないわけですから。 "「父」を乗り越える" ということは、それ自体が「社会に出る」という ことを意味します。 「チェロ奏者」になるという夢を追っていた大悟は、 社会人というよりは、モラトリアムを引きずっていたわけです。 父との関係性を精算した瞬間に、大悟は父を乗り越え、 「真の大人」へと成長したのでしょう。 そしてそれは、「納棺師」は自分にとっての天職である、と真に実感した 瞬間でもあるのです。 自分が「天職」と思っている職業が、実はそうではないかもしれない。 自分が好きになれない今の職業。しかし、その仕事の魅力に まだ自分が気付いていないだけで、本当は「天職」なのかしれない・・・。 天から授かった・・・と思えるほどに、 その職業に誇りを持ち、一生取り組んでいける職業。 あなたは、もう「天職」を見つけましたか? 今の仕事は、あなたにとって「天職」ですか? そんなメッセージ、問いかけを、 私は「おくりびと」から受け取りました。 【蛇足ですが】 「おくりびと」には、生と死のテーマが描かれている、 と感じた人もいるでしょう。 仕事をしないと人間、生きられません。 つまり、社会人にとって、「生きる」ということは「仕事をする」 ということにも通じるのです。 ですから、「天職を見つけた」というのは、 「自分の生きる意味を見つけた」ということと同じです。 「おくりびと」ではたくさんの「死」が描かれますが、 一方で妻(広末涼子)の妊娠という「生」も描かれます。 「天職を見つけた」というのは、「生」の描写そのものです。 広い視点で見ていくと、「天職」というテーマ自体が、 生と死のテーマに含まれることになるのでしょう。 ───────────────────────────────── ■4 レンタル中の映画批評 ───────────────────────────────── なぜこの監督は、観客の心を揺さぶる作品を 作り続けることができるのだろうか? 俳優出身の監督はたくんさいるけども、 自らの俳優経験を見事に監督業に生かし、 ここまで観客を魅了する作品を作り続けている人は、 ほとんどいない。 アメリカ映画で深いテーマの作品といえば、 たいてい人種問題やキリスト教の問題とかかわってくるが、 本作もまさにそうしたテーマを正面から扱っている。 「暴力」と「正義」を扱ったアメリカ映画は数えられないほど たくさんあるが、本作はテーマの切り取り方も鋭く、 圧倒的に印象に残る作品と言えるだろう。 樺沢の評価 ★★★★☆ (★★★★★が満点。☆は、★の半分) 【クイズ】この作品名は? →→→ http://01.futako.info/b/dvd0000033.html ──────────────────────────────── メール送信者:(株)樺沢心理学研究所 佐々木信幸(樺沢紫苑) 連絡先: kzion@kabasawa.jp メール送信者情報の詳細: http://www.saikyo.bizshin.com/semi1/hyouji_eisei.html メールマガジン登録/解除: http://www.mag2.com/m/0000136378.htm サイト http://www.kabasawa.jp/eiga/home.html ブログ http://eisei.livedoor.biz/ ビジネス心理学プレミアム ニュース・芸能・映画の心理学 http://www.mag2.com/m/P0006963.html ■注意・お知らせ 映画の見方は、人それぞれです。このメルマガは、発行者の個人的な見 解であり、他のいろいろな考え方を否定するものではありません。 みなさんから、お送りいただいメールは、メルマガ、ホームページ上で 紹介するかもしれません(もちろん、匿名で)。 ──────────────────────────────── 「映画の精神医学」は、以下のURLより解除することが可能です。 メールマガジンの解除・登録・変更はコチラから http://www.mag2.com/m/0000136378.html ────────────────────────────────


