2009/06/08
映画の精神医学 「老い」と「死」の恐怖から逃れるヒント
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 映画の精神医学 ●第331号● 2009年6月8日発行 ● 発行部数:47,156部 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1 はじめに ───────────────────────────────── 1週間の休息で、ようやく長旅の疲れから回復してきた樺沢です。 そろそろ夏場に向けて、セミナーや出版など、 本格的活動を再開したいと思います(笑)。 水墨画に興味のある人はいますか? おそらく、ほとんどいらっしゃらないと思います。 では、「モネ」に興味のある方は? 今回の旅行でロンドンのナショナル・ギャラリーを訪れたときのこと モネの「睡蓮」の前には、 日本人観光客を含め、たくさんの人が集まり その作品を鑑賞していました。 モネは日本でも人気の高い画家の一人です。 モネの作品を好きな方も多いと思います。 そんなモネのようなフワッとしたタッチの優しい水墨を書かれる 内田百音(もね)さんという方がいらっしゃいます。 http://01.futako.info/a/uchidamone.html 内田百音さんは、私の友人でもあるのですが、 彼女が6月21日まで八ヶ岳美術館で個展を開いています。 長野県ですのですぐには行けませんが、ドライブなどで八ヶ岳まで 行かれる方は、ちょっとのぞいてみてはいかがですか? ●内田百音墨画展 (原村立八ヶ岳美術館) http://01.futako.info/a/uchidamone.html ───────────────────────────────── ■2 最新映画批評 ───────────────────────────────── ┌─────┐ 「GOEMON」 現在公開中 └─────┘ 「驚異の映像」というのは、やや大げさ。 私の感想としては、「驚異のゲーム映像」だ。 映像やキャラの動きなどが、CGゲームのキャラっぽい。 一言で言えば、「戦国無双」の実写版といったところ。 ほぼ全編にわたりCGを使った迫力のあるVFXは、見応えがある。 しかしながら、劇場の大画面で見るには画素数が足りていないというか、 アラが見えてしまう。 テレビの予告編や特番で見た映像は素晴らしい。 テレビやネット動画のレベルで言えば、これで十分なのだが、 高画質で見てしまうと、「ちょっと、つらい」気がした。 映像界全般の流れでいえば、今後の映像は間違いなく二極化していく。 「高画質化」と「低画質化」である。 地デジの導入とハイビジョンの普及。 DVDは、高画質のブルーレイの普及とさらに高画質な次世代DVDの開発。 一方で、テレビでテレビを見ない。テレビをワンセグ携帯で見る 若者たちの出現。 You Tubeやニコニコ動画など、動画サイトの人気。 若者たちは、「高画質の映像」よりも、ネットや携帯で気軽に見られる 動画を楽しんでいるのが現状だ。 ゲームの世界では、高画質のCGを用いたゲームの開発に莫大な予算が かかるために、ハイエンド・ゲーム機向けのソフト数が不足し、 企業間の競争もなくなり、つまらないゲームが増えている。 それらの反動なのか、ニンテンドーDSやプレイステーション・ポータブル など、持ち運び型の簡易ゲーム機(つまり「低画質」ゲーム)が 爆発的に普及している。 「高画質化」と「低画質化」。 「GOEMON」のCG映像というのは、ゲームやネット配信のレベルでいうと、 最高峰の部類に入ると思うが、劇場の大スクリーンという高画質メディア向け のものではなかった・・・ということだろう。 とにかくCGというのは、超高画質のものでないのならば、 低予算で簡単に作られる時代になったので、今後、おもしろいCGコンテンツ が、ネットやゲームなどでドンドン登場して来るだろう。 そうした映像や動画メディアの成長、変遷という流れの中で、 「GOEMON」のような作品は、一つの役割を担っているのかもしれない。 「GOEMON」の映像以外の面。 登場するキャラは誰もが知っている歴史上の人物だが、その設定は斬新。 ストーリー展開にも、意外性がある。 石川五右衛門を演じる江口洋介や、霧隠才蔵役の大沢たかおらは、 かなり気合いが入っていて、その演技は見応えがある。 石田三成(要潤)や豊臣秀吉(奥田瑛二)の悪役ぶりもすさまじい。 紀里谷和明監督の熱意。 映画作りにかける真剣さ。 そして、それに共感した役者陣の熱意もスクリーンから伝わってくる。 そういう意味で、非常に見応えがある作品である。 最近「歴女」とか「武将萌え」という言葉も流行って、 若い女性の間でも戦国武将の人気が高まっているそうだが、 そういう意味で歴史上の人物をイケメン俳優にやらせるという着想は、 時流をとらえている。 「愛」というテーマにも共感できるし、 紀里谷監督の前作、「CASSHERN」と比べると、その進化は歴然と している。 「戦国武将を勝手にフューチャーしてけしからん」とか 「もっと高画質のCGじゃないと、見るに堪えない」とか 細かいことは気にせずに、 純粋に戦国エンタテイメントとして見れば、 楽しめる一本だと思う。 樺沢の評価 ★★★★ (★★★★★が満点。☆は、★の半分) ■ 突然ですがアンケートです あなたの好きな戦国武将は、誰ですか? 1人だけクリックしてください □織田信長-- http://01.futako.info/a/sengoku_nobunaga.html □豊臣秀吉-- http://01.futako.info/a/sengoku_hideyoshi.html □徳川家康-- http://01.futako.info/a/sengoku_ieyasu.html □明智光秀-- http://01.futako.info/a/sengoku_mituhide.html □石田三成-- http://01.futako.info/a/sengoku_mitunari.html □その他---- http://01.futako.info/a/sengoku_sonota.html ───────────────────────────────── ■3 精神医学の目 ───────────────────────────────── ┌───────┐ 「老い」の問題 └───────┘ 前号で紹介した「グラン・トリノ」の批評が好評でした。 人種、宗教的側面に注目して解説しましたが、 作品の持つ最も中心的なテーマは、「老い」です。 最愛の妻を亡くしたウォルト(イーストウッド)は、 自らの「老い」を実感するとともに、 自らの「死」も意識しはじめます。 そのとき、彼は何をしたかというと、 少年タオに自分の「生き様」なり「男らしい生き方」を 語りはじめたのです。 自分という一人の人間がどう生きたのか。 そして、自分の「古い男」のスピリット(精神)を 伝えたかった・・・という。 その彼のスピリット(精神)を象徴するのが、 古き良き一時代前の名車「グラン・トリノ」ということになります。 映画のタイトル「グラン・トリノ」。 これを象徴的に解釈すると、 「あなたは、後に何を残しますか?」という 意味になるでしょう。 自分の生きた証が、形として、あるいは「精神」として受け次がれて 「残る」とするのなら、人間は悔いなく、 そして安らかに死ねるかもしれない・・・という。 「グラン・トリノ」は、クリント・イーストウッド最後の主演作とも 言われますが、その映画のテーマのごとく、 イーストウッド自身が「老い」を強く意識し、 ひょっとすると「死」というものも 意識しはじめたのかもしれません。 戦後のハリウッドを代表するアクション俳優の一人であった クリント・イーストウッド。 そして近年は、映画監督として、自分の映画で得た経験、 映画観を観客に伝えています。 その映画スピリットを、誰かに受けついで欲しい。 後に「何かを残したい」というイーストウッドの強い思いを、 私は「グラン・トリノ」から受け取りました。 前回、栗本薫さんの追悼文を書きましたが、その中で 不思議と悲しくない・・・ということを書きました。 その理由は、私か栗本薫からいろいろなことを学び、 栗本薫のスピリットを受け継いだと感じているからです。 また、彼女は非常にたくさんの「作品」を残してくれました。 グインサーガだけで正伝が126巻、外伝が21巻。 Amazon で著者名「栗本薫」で検索すると、 なんと615件もの検索結果が出てきます。 さらに「中島梓」名での著作がたくさんありますから、 普通の作家さんが一生で書く本の2倍、3倍、あいるいは それ以上の作品を、私たちに残してくださったのだなあ・・・と。 私は、グインサーガと魔界水滸伝は、全部読んでいますが、 伊集院大介シリーズとか、それ以外のシリーズは実は読んでいなくて、 「そのうち読みたいなあ」と思っているうちにこういうことになりました。 グインサーガの新刊は、ストック分の何冊かはあるのでしょうが、 未完の大作のまま終わらざるをえません。 しかし、私が探索していない栗本ワールドは、実はまだたくさんあって。 「私が知らない栗本薫と、これからもまだまだ出会うことができる」と 思うと、ポッカリとあいた空虚感も埋められたような気がする 今日この頃です。 私は、医者という職業柄、死にゆく人たちと会うことが多いです。 総合病院に勤めていたときに、末期ガン患者さんのカウセリングを していましたが、そうした患者さんは二通りに分かれます。 死の受容ができていなくて、不安と恐怖につつまれ、うつになったり 精神的に不安定になってしまう人。 一方で、自らの病気と死を受容し、明らかな死の恐怖を表に出さない人も います。 この違いは何だろう? あるいは、「死の受容」のためにはどうしたらのいいのか? という難しい問題を抱えながら、そうした末期ガン患者さんとの カウンセリングをすすめていくわけですが、 一朝一夕に答えは出るものではありません。 栗本さんの本音がそのまま記されることが多いグインサーガのあとがき。 ここ数巻を読むと、「死の恐怖」というものは全く記されず、 逆に自らの死を客観視していました。 ある種の達観。「悟りの境地」というとおおげさですが、 ある種の達観の境地にはいらしたのではないか・・・と。 その理由は、私は彼女が、 グインサーガが完結できなかった「不達成感」ではなく、 これだけの世界(作品)を残すことが出来たという「達成感」 「やり遂げ感」を持っていたから、ではないかと思うのです。 引き算型のネガティブ思考ではなく、積み上げ型のポジティブ思考で考える と、読者にこれだけのものを「残した」「残せた」という満足感を 持っていたのではないか・・・と。 栗本氏の追悼文に、ある有名な作家さんが 「グインサーガが未完で終わって残念」と書いているのを読みましたが 私は全く逆だと思うのです。 「ここまで、グインサーガを書いてくださってありがとう」と。 グインサーガという素晴らしい世界、壮大な世界を残してくださって、 心から感謝したい・・・と。 自らの「老い」と「死」の恐怖を持っている方は たくさんいるはずです。 歳をとっていくと、誰もが持つ感情かもしれません。 イーストウッドと栗本薫がなげかけている、 「あなたは何を残しますか?」という問いかけには、 「老い」と「死」の不安と恐怖を克服するヒントが あるのではないか・・・と思います。 ───────────────────────────────── ■4 ウイスキーの心理学 ───────────────────────────────── あなたはウイスキーが好きですか? もしウイスキーが「大好き」なら、 6月5日発行の「ビジネス心理学プレミアム」の特集記事 「ウイスキーの心理学」をお読みください。 もっとウイスキーが好きになるはずです。 「別にウイスキーは好きでない」 「ウイスキーに興味はない」という方。 そういう人も、「ウイスキーの心理学」をお読みください。 きっと、ウイスキーが好きになるでしょう。 ウイスキーにはまって、 スコットランドのアイラ島まで行ってしまった樺沢。 樺沢の「ウイスキーとの出会い」について語りました。 「ウイスキーは人間だった。」 一体何のこと?? 読めばわかります。 「ビジネス心理学プレミアム」は、月額1490円の有料メルマガですが、 登録初月は無料となります。 月末までに解除しますと、完全に無料でお読みいただけます。 内容を読み、満足した場合のみ継続購読してください。 登録はコチラから →→→ http://01.futako.info/a/000000BPMaffitu.html ──────────────────────────────── メール送信者:(株)樺沢心理学研究所 佐々木信幸(樺沢紫苑) 連絡先: kzion@kabasawa.jp メール送信者情報の詳細: http://www.saikyo.bizshin.com/semi1/hyouji_eisei.html メールマガジン登録/解除: http://www.mag2.com/m/0000136378.htm サイト http://www.kabasawa.jp/eiga/home.html ブログ http://eisei.livedoor.biz/ ビジネス心理学プレミアム ニュース・芸能・映画の心理学 http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/69/P0006963.html ■注意・お知らせ 映画の見方は、人それぞれです。このメルマガは、発行者の個人的な見 解であり、他のいろいろな考え方を否定するものではありません。 みなさんから、お送りいただいメールは、メルマガ、ホームページ上で 紹介するかもしれません(もちろん、匿名で)。 ──────────────────────────────── 「映画の精神医学」は、以下のURLより解除することが可能です。 メールマガジン解除:http://www.mag2.com/m/0000136378.html ────────────────────────────────



