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2008/03/20

映画の精神医学 旭山動物園の悪夢

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      映画の精神医学
       
●第264号● 2008年3月20日発行 ● 発行部数 :49,549部
 
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    【 目 次 】
■1 はじめに
■2 最新映画批評  「魔法にかけられて」
■3 精神医学の目   旭山動物園の悪夢
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■1 はじめに
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 それにしても、東京は暖かいですね。

 札幌から戻ったばかりなので、余計に実感します。
 もう少しで、自転車も気持ちよく乗れそうです。

 東京の開花予想は、3月23日と発表されました。
 東京の花見、これは非常に楽しみです。

 私は北海道、札幌出身ですが、
北海道の花見というのは、花見というよりは「ジンギスカン」です。
 
 「花見」を口実にして、ジンギスカンを楽しむのが目的なので、
全く趣がありません。

 大学の頃、東京出身の同級生から、
東京の花見は、焼き肉やバーベキューをしないで弁当を食べるのだ
と聞いた時は、驚きました(笑)。



 さて、旅行から帰って来たばかりの私ですが、
旅行に出かけると本が読めるのも魅力です。
 電車、飛行機などの移動時間に、かなり本が読みすすめられます。

 私が今、読んでいるのがコチラ
→→→ http://01.futako.info/a/book.html

 先日、札幌のグインサーガ・ファンの友人に会った時に、
グインサーガ・ファンなら当然面白いだろう、ということで
勧められました。

 昔から読んでいる人にとっては「いまさら」でしょうが、
これはかなりはまりますね(笑)。

 映画化もされているので、DVDをレタンルしてみようかな・・・。


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■2 最新映画批評
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┌───────────┐
 「魔法にかけられて」   公開中
└───────────┘ 

 3月14日。公開初日の21時からのレイトショーの回に
足を運んだが、満員だった。
 最前列まで埋まっていたのには驚いた。

 とにかく、日本人は「ディズニー」に弱いようだ。
 「ディズニー」という言葉を聞くだけで、魔法にかけられたように
メロメロになってしまう。

 「魔法にかけられて」は、宣伝費も相当かけているようだから、
ある意味、ヒットは当然なのかもしれない。

 作品の出来の方だが、ミュージカルとして非常に高い完成度を持つ。
 
 「アラジン」の「A Whole New World」、「リトル・マーメイド」の
「Under the Sea」の作曲をしているアラン・メンケンの楽曲が最高だ。

 「想いを伝えて」「そばにいて」といったナンバーは、
10年、20年先もディズニーのスタンダートとして残るだろう。
 「そばにいて」は、多分、結婚式でも使われるのではなかろうか。

 また、楽曲のみならず、エイミー・アダムスの歌唱力も素晴らしい。
 この歌唱力は、ミュージカル出身に違いないと勝手に思っていたが、
調べてみるとミュージカルやシンガーとしてプロのキャリアは
ほとんどないというから驚いた。

 お姫様の役としては、ややふけているという気はしないでもないが、
外見よりも歌唱力優先のキャスティングは成功といえる。

 「魔法にかけられて」は、ミュージカルである。
 ラブストーリーであり、コメディ的なおもしろさも十分に兼ね備えているが、
基本はミュージカルであるから、ミュージカルとしての完成度は非常に高いが
ラブストーリーあるいはコメディとして期待しすぎると、やや物足りない人も
いるかもしれない。

 自由の女神こそ登場しないものの、ニューヨークの観光ガイドムービー的な
おもしろさもある。
 
 おとぎの世界からのトンネルが、ミュージカルのメッカともいえる
ブロードウェイ、タイムズスクエアのマンホールに通じている、というのは
実に説得力がある(笑)。

 そして、デートコースとして定番のブルックリン橋。
 5番街の高級ブランドでのショッピング。

 一番驚いたのは、「カッツ・デリカテッセン」である。

 リスのピップがエドワード王子に、毒リンゴの企みをゼスチャーで
伝えようとした場面に手で来るお店。
 この店は、「カッツ・デリカテッセン」といって、ニューヨーカーなら
知らない人がいないほど。パストラミサンドで有名なお店である。
 ここのパストラミサンド(劇中でも画面にうつっていた)は、
とろけるほどおいしいのだ。

 「カッツ・デリカテッセン」は、メグ・ライアン主演の「恋人たちの予感」に
も登場していたが、「魔法にかけられて」に登場してしまったおかけで、
今後、日本人観光客も大量に押し寄せるに違いない。


 原題の「Enchanted」だが、シンプルながら素晴らしいタイトルだと思う。
 「enchanted」には、邦題通り「魔法にかけられる」という意味があるが、
「魅了される」「うっとりとさせられる」という意味もある。
 つまり、「恋の魔法にかけられて」というニュアンスが込められている。
 実にオシャレなタイトルである。

 あと見ていて思ったのは、さすがはディズニーだけあって、
一本の映画で終わらないな・・・ということだ。

 「魔法にかけられて」は、ほとんどそのままの形で、舞台の
ミュージカルとして上演可能だし、
「想いを伝えて」のパレードシーンは、ふりつけもそのままで
ディズニーランドのパレードとして通用するだろう。
 今年の夏休には、東京ディズニーランドのパレードに登場しているに
違いない。

樺沢の評価  ★★★★

 (★★★★★が満点。☆は、★の半分)

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■3 精神医学の目
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┌───────────┐
 旭山動物園の悪夢
└───────────┘ 

 先週、旭山動物園に行って来ました。

 北海道旭川市の旭山動物園。
 年間入園者数で上野動物園を抜いて日本一の動物園になり、
雑誌や新聞でもよくとりあげられているので、ご存知の
人も多いでしょう。
 
 ペンギン、白クマ、ユキヒョウなど、寒い地域に住む動物が多く
「冬は雪に閉ざされてしまう」この地理的短所を、
他の動物園にいない動物を、たくさんの雪があり、そして気温も低いという
自然に近い環境で展示するという長所として利用し、
見事に成功させた動物園といえるでしょう。

 それにしても、ベンギンの散歩は可愛らしいですね。

 かみさんが、ペンギンをもう一度見たいというので、
2日連続で行って、合計3回もベンギンの散歩を見ました(爆)。

 さて、「旭山動物園」ですが、私は「旭山動物園」は
以前、2回ほど訪れたことがあります。
 とはいいっても、今のような環境展示が始まる前の10年ほど昔のことです。
 そのころ、旭川に住んでいましたから。

 そして、「旭山動物園」といえば、非常に印象深い思い出があります。

 思い出というよりは、トラウマというか「悪夢」に近いので、
今までほとんど話したことはなかったのですが、
10年以上も前の話ですから、今回暴露しようと思います。


 私が精神科医になって2年目。
 1年目は札幌で研修しましたが、2年目からの3年間。
 旭川の旭川赤十字病院という病院で研修しました。

 旭川赤十字病院といえば、テレビ東京系の「主治医が見つかる診療所」という
番組に出演されている脳外科医の上山博康先生がいらっしゃる病院といえば、
「ああ」と思いだされる方もいるでしょう。
 北海道の道北地区の医療を担う重要な病院です。

 さて、私が旭川赤十字病院に勤務開始したその日のことです。

 病棟を挨拶がてらまわっていると、
看護長さんから、いきなり「来週患者さんのレクリエーションがあるので、
先生も随行してください」と言われました。

 患者さんのレクリエーションということで、入院患者さん
100人ほどを連れて旭山動物園に行くとというのです。

 精神科のベッド数が150床あり、そのうちの3分の2の患者さんを連れて
貸切バス2台で出かけるという大がかりなレクリエーションです。

 1日がかりですし、これだけたくさんの患者さんが行きますから、
途中で具合が悪くなって注射や投薬が必要な患者さんも出てきますから、
医師の随行が必要となります。

 ということで、私が勤務を開始した早々に。
 まだ、病院の勝手も、患者さんの名前や病状も全く把握していない頃、
患者さんのレクリエーションに随行しました。

 旭山動物園。当時は、今のような「環境展示」というのを行っていなくて、
ごく普通の市民の動物園という感じでした。

 貸切バスが動物園に到着して、駐車場から入場ゲートに向かいます。
 私も患者さんの誘導を手伝っていました。

 そうしたら、すぐに看護師さんの一人が血相を変えてやってきました。

 「Nさんが逃げました!!」

 いきなりで、何のことか理解できません。

 閉鎖病棟に長期入院中のNさんが、貸切バスを降りた直後、
一瞬の隙をついて、入口ゲート前のタクシー乗り場から、
停車中のタクシーに飛び乗った、というのです。

 赴任したばかりの私は、Nさんの病状もわからず、
またどう対応していいのか途方にくれましたが、
看護師さんが要領よく各方面に電話し、
適切に対応していました。

 病院、タクシー会社、警察、患者さんの実家など、など各方面に
素早く連絡をとった結果、
Nさんの乗ったタクシー会社が判明し、降車した地点が実家の近く
ということで、実家に帰るだろうということで、
実家に連絡したところ、
1時間ほどして実家で無事保護されました。


 そんなわけで、「旭山動物園」というのは、
私にとっては「ベンギンの散歩で有名な動物園」ではなく、
「患者さんが逃亡した動物園」ということで、苦々しい記憶として
残っているわけです。


 さて、一昨年ですが、シカゴから一時帰国した時に、
私がいた当時からずっと旭川赤十字病院に勤務している、
私の上司の精神科医の先生にお会いしました。

 いろいろと昔話に花を咲かせる中で、
「そういえば、あの動物園から逃亡したNさんはどうなりましたか?」
とNさんについて尋ねてみました。

 そうすると、

「Nさんは退院したよ」

と言うではないですか。


 これには、ビックリしました。

 統合失調症で長期入院していたNさん。
 話もほとんどせず、身の回りのことも看護師さんの補助なしでは
何もできないようなNさん。

 退院することは永久に不可能だろうと、当時は思っていましたが、
そのNさんがなんと「退院」した・・・という。


 ほとんど言葉を発しなかった彼が、話せるように、人とも
コミュニケーションがとれるようになったというのです。

 これは、「奇跡」といっては大げさでは、当時の状況をふまえると、
「奇跡」としか思えないほどの驚きです。


 その理由は、「薬」です。

 Nさんがよくなったのは、SDA(セロトニン-ドパミンアンタゴニスト)という
新薬を飲み始めてからのことです。

 SDAは、従来使われていた抗精神病薬と比べて、沈静作用が弱く、
精神的な賦活作用もあり、意欲を盛り上げる作用があります。
 
 Nさんは、従来型の抗精神病薬から、新薬のSDAに切り替えたところ、
自然な発語もみられるようになり、コミュニケーション能力も非常に
高まったそうです。

 「精神科の薬」というと、非常にネガティブなイメージがあると思います。
 
 眠くなったり、手か震えたり、強烈な副作用が出る、というイメージが
あるでしょう。

 ほとんどの人は、「精神科にはかかりたくない」と思っているでしょうが、
その理由の一つは「精神科の薬なんか飲みたくない」からだと思います。

 しかし、この「精神科の薬=ひどい副作用の出る薬」というのは、
クロルプロマジンやハロペリドールといった1960年前頃から使われてきた、
定型向精神薬という「古い精神科の薬」のイメージだと思います。

 映画「カッコーの巣の上で」とか、昔の精神科病棟を描いた映画で、
患者さんは廃人のようなボーッとした顔つきで登場しますが、
それは沈静作用の強いこうした定型向精神薬を飲んでいたことと
関係があります。

 それが、副作用が少なく意欲改善作用もあるSDAが登場してから、
長期入院していた統合失調症の患者さんは、非常に高い割合で
退院しました。

 20年前であれば、精神科に入院していた患者さんの過半数は
統合失調症でしたが、今では、それが20%以下とか、病院によっては、
それ以下にまで下がっています。
 (ちなにみに、現在は、老人、認知症の入院が多いです。)

 精神科において、薬物療法の革命が起きたのです。

 こうした精神科薬物の著しい進歩と言うのは、
一般の人はあまり知らないと思います。

 したがって、「精神科の薬=ひどい副作用の出る薬」という
イメージがいまだにはびこっているのです。

 統合失調症の治療薬としてSDAが登場したように、
うつ病の治療薬としてSSRIという薬が登場しました。
 これも副作用が少なく、革命的な薬です。

 こうした新薬も当然副作用がゼロなわけではなく、医師の
指示のもと慎重に投与されなくてはいけませんが、20年前の
薬と比べると「革命的」であって、副作用出現率も著しく低く、
安全性も非常に高くなっています。

 しかしながら、「精神科薬」に対する偏見や間違った知識は
以前としてはびこっています。

 結局、こうした間違ったイメージが、精神科の印象を悪くし、
精神科に来院するのを遅らせて、病気を悪化させ、
病気を治りづらくさせている、といえるでしょう。

 こうした新薬を使えば、統合失調症もうつ病も、
早期治療さえすれば、かなりコントロールできる病気と言えます。

 「精神病=不治の病」ではないのです。
 
 「精神科の薬=ひどい副作用の出る薬」ではありません。
 
 ですから、もしあなたやあなたの家族が精神的な不調で悩んでいる
のでしたら、できるだけ早く精神科を受診して、治療を開始すべきです。


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■4 最近見た映画と評価
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3/18 CONTROL ★★★☆

 伝説のバンド Joy Division のカリスマ・ヴォーカリスト、
イアン・カーティス。彼の成功の軌跡と23歳で自殺までの経緯を
描いた作品。「てんかん」という病をかかえ、それに苦しめられ様子が
感傷的ではなく、ドキュメンタリー風に淡々と描かれることで
心に響く。

 (★★★★★が満点。☆は、★の半分)

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