映画の精神医学 「一家虐殺事件」について考える
■今週の注目情報
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あるシャンプー、「髪に悩む」47才男性が使うと!!
先日、弁護士の友達に面白い話を聞きました。彼、髪に悩んでいたのに会うと
髪がしっかりしているんです!聞くと「ナバホ族は髪に悩まない?」らしい。
そこで彼は、ナバホ族に伝わる成分を使ったシャンプーを毎日使っていると。
なんでもそのシャンプー、通販のみで販売数50万本を突破し、更に売れ続け
ているんだそう。
使用者の47才男性の声 → https://www.emotent.jp/t/1428/
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映画の精神医学
●第262号● 2008年3月6日発行 ● 発行部数 :49,549部
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【 目 次 】
■1 はじめに
■2 最新映画批評 「ライラの冒険/黄金の羅針盤」
■3 精神医学の目 「心中」という言葉の恐ろしさ
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■1 はじめに
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前号の「第80回アカデミー賞授賞式 感想と分析」の中の一文
>既にオスカーを獲得しているケイト・ウィンスレットや
>フィリフップ・シーモア・ホフマン。
「ケイト・ウィンスレット」ではなく、
『エリザベス:ゴールデン・エイジ』の「ケイト・ブランシェット」
の間違いでした。
「ケイト・ウィンスレットは、アカデミー賞はノミネートはされたことがあるが
受賞はしていない」と多くの読者からご指摘いただきました。
たいへん申し訳ありませんでした。
私の中では、『ホリデイ』での好演が印象深いケイト・ウィンスレットが
大好きなので、「ケイト」まで書いて、無意識に「ウィンスレット」と
打ち込んでしまったのでしょう。
3月から4月にかけて、アカデミー受賞作、ノミネート作が
続々と公開されてきます。
「ノーカントリー」(3月15日)、「フィクサー」(4月12日)、
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(4月26日)、「つぐない」(4月GW)
「JUNO/ジュノ」(6月)と、主要部門の受賞作、ノミネート作は
ほとんど公開されます。
大変楽しみです。
でも、私が近日公開の作品で最も楽しみなのは、
「魔法にかけられて」(3月14日公開)です。
「魔法にかけられて」は、久々に日本でヒットを記録する
「ハリウッドのベタなコメディ映画」になりそうです。
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■2 最新映画批評
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「ライラの冒険/黄金の羅針盤」 3月1日公開
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先週末の日本の興行収入ランキング。
「ライラの冒険/黄金の羅針盤」が初登場で堂々の1位。
好調なスタートを切った。
私は、以前から楽しみにしていたので、公開初日に
劇場に足を運んだ。
「ロード・オブ・ザ・リング」を見た時に、
「どんな映像でも映画化できる時代になったものだ・・・」と
感心したが、「ライラの冒険 黄金の羅針盤」でも
改めてそう感じた。
ファンタジックな壮大な世界が、見事に映像化されている。
ライラ役のダコタ・ブルー・リチャーズの演技に、
早くも「天才子役」の声も出ているが、
私としては、コールター夫人役のニコール・キッドマンの
演技にインパクトを受けた。
演技というか、その存在だけで全てが表現されている・・・という
凄味がある。
キッドマンは、主演する一作ごとに美しさをアップさせているが、
のみならず、演技力も美しさに比例して、アップさせているところが
さらならる驚きである。
ただしょうがないことだが、3部作の第1作ということで、
「スター・ウォーズ エピソード1」のように、人物紹介的な側面が
どうしてもぬぐえない。
あるいは「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」のように、
「次作に続く」的な側面も強く、ラストがスッキリとしない。
「スター・ウォーズ エピソード1」公開時に、
「3部作の第1作だから、3本そろった時点で評価すべき」という意見と
「一本ずつ公開されているのだから、一本としての完成度が重要」という
二つの意見が対立して存在していたのを思いだす。
この「ライラの冒険」も、「一本の完成度」にこだわりすぎる人は、
バランスの悪さが気になって、あまり楽しめないかもしれない。
私は、第2作、第3作への期待感を十分に高めてくれた、というだけで
この作品は十分に役割を果たしたと感じた。
あと、さすがにベストセラーとなった小説を原作にしているだけあって、
テーマが深いというか、いろいろなものが象徴的に描かれているので、
映画に踏み込んで見ると、さらに楽しめる。
この映画の舞台となる世界では、全ての人間は、ダイモンという
守護精霊を持っていて、ダイモンは動物の姿をしている。
この動物が可愛らしく、時に恐ろしかったりするが、この
「ダイモン」が一体何を象徴しているのか?
映画を見終わったあとに、その辺を考えてみると映画の理解が
深まるだろう。
樺沢の評価 ★★★★
●「ライラの冒険/黄金の羅針盤」ダイモン占い
http://egoods.holy.jp/c/daimon.html
あなたのダイモン(守護精霊)は?
樺沢のダイモンは、ハクガン(白雁)の一つ、名前は Haythia だそうです。
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■3 精神医学の目
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「心中」という言葉の恐ろしさ
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先日週刊誌を読んでいたら、沖縄での米兵による暴行事件。
これを「強姦事件」と書かずに、マスコミが「暴行事件」と
いう言葉を使うことによって、事件が軽微なもので
あるかのよう印象を与え、本質的な問題をすりかえていると
指摘がありました。
「米兵暴行事件」と「米兵強姦事件」。
同じ事件なのに、その印象は全く異なります。
実際、この米兵は、「強姦容疑」で逮捕されているわけで、
「傷害事件」の容疑ではないのですから、
「暴行」という表現には確かに違和感を感じます。
米軍、アメリカ政府への配慮なのか?
日本国民の側ではなく、アメリカ側を向いた言葉使いです。
これと非常に似たことを、最近、全く別な事件で感じました。
東京都足立区の「無理心中事件」です。
52歳の佐々木亨が、ナタを振りまわし妻(49歳)と母(85歳)を殺害し、
本人は自殺しました。
15歳の二男はかろうじて生き残ったものの、両手首をナタで切断される
重傷を負い、一生障害者として生きなくてはいけない身体となりました。
非常に残虐な事件であったといえるでしょう。
「一家死傷事件」と書いているマスコミもありましたが、
「死傷」という言葉は、「事故」や「災害」でも使われる言葉ですから、
この事件の本質を全く伝えません(事実をあいまいにする表現です)。
ですから、「一家殺害事件」か「一家虐殺事件」と表現するのが
適当だと思いますが、ほとんどのマスコミは「無理心中事件」と
書いています。
今回の事件の場合、死傷した被害者の三人は、「自殺したい」意志は
なかったようですから、死にたくないのに殺された。
これは、どうみても「殺人事件」です。
「無理心中事件」と報じることで、大きな誤解を与えているのです。
「無理心中事件」という見出しだけで、事件の詳細まで読まない人は、
「心中」だから、借金に追い詰められた家族も一緒に死のうと
思って死んだ・・・とイメージするのではないでしょうか?
逃げ惑う家族を、ナタを振りまわして残酷に殺していく様子は、
映画「シャイニング」を彷彿とさせますが、「無理心中事件」と言う言葉からは、
こうした情景は全く想像もつかないでしょう。
「心中」とは、「2人以上の人が一緒に自殺する」という意味です。
一方で、「無理心中」は、「相手の合意なく行われる心中」のことで、
首謀者が相手を殺害します。刑法的には、「殺人」として扱われ、
首謀者が生き残れば当然殺人罪に問われます。
そもそも、この「無理心中」という言葉自体が非常におかしなものです。
「無理心中」と「心中」の定義を合体させると、
「相手の合意なく、一緒に自殺すること」になります。
死に対する合意がないのは、「自殺」とは言いません。
心中とは、「2人以上の人が一緒に自殺する」ことをさすわけですから、
「死にたくない」人が首謀者によって殺されるのは、「心中」ではありません。
言葉自体が、明らかに自己矛盾をはらんでいます。
本人の意思に無関係に殺すのですから、「無理心中」は
「殺人」以外の何物でもないのです。
一言でいえば、「無理心中」と言う言葉自体に、「無理」があるのです。
「死にたくない人が殺される」ことは自殺ではありません。
「死にたくない人が殺される」場合は、一般には「殺人」という
言葉が使われるはずです。
加害者が「後で自分も死ぬつもりでした」と一言、言えば、
それだけで「殺人」が「心中」になってしまうわけです。
「無理心中」というのは、あくまでも首謀者の心理に根ざした言葉です。
足立区の事件は、生き残った二男の立場から見れば、
いきなり父親がナタを持って襲ってきて、両手をナタで切断され、
命からがら家から逃げ出した、というのが現実です。
二男には父親と一緒に死にたいという気持ちは全くありませんでした。
首謀者が「家族を殺した後自殺しよう思った」と言えば、「心中」
になって、それを言わなければ、「殺人」になる。
でも、被害者の立場でいえば、どちらの場合でも、
「死にたくないの殺される」わけで、
自分を殺した後に自殺しようがしまいが、殺された被害者とっては、
何の違いもなくて、何の慰めにもなりません。
「加害者」の心理に共感して事件を見れば、「無理心中事件」であり、
被害者の心理に共感して事件を見れば、「殺人事件」になります。
どちらの立場で報道するのが正しいのでしょうか?
私は、加害者の立場に立った、結果として加害者にプラスの印象を与え、
擁護する報道には、問題があると思います。
おそらくは、警察が「無理心中の疑いがある」と公表したせいで、
マスコミもそれにならって、特に深い考えもなく、
一斉に「無理心中事件」と報道してしまうのでしょうが、
もう少し事件の本質と、言葉の意味。
そして、それが社会に与えている影響を考えてほしいものです。
あと「一家心中」という言葉もあります。
これは「一家そろって自殺する事」を意味しますが、
夫が首謀者の場合、妻は「死ぬこと」に同意しています。
その意味で「心中」です。
しかし、「一家心中」では、赤ん坊や小さな子供も犠牲となります。
当然、赤ちゃんが「殺されることに同意」しているはずもなく、
無力な赤ちゃんは一方的に殺されるのです。
これはどうみても、「殺人」です。
日本では、
「自分が自殺して、子供をを一人残すのは不憫である」という理由に
同情、共感する人が多く存在します。
私は、「何の罪もないのに親の都合で殺される子供」の方が
何倍も不憫に思いますが、日本の現実はそうではないのです。
「心中」に対して、「可哀そう」とか「しょうがない」といった、
同情的な感情を抱く人が圧倒的に多いのです。
そうした社会状況が、常識的に存在する日本では、
「自分が自殺しよう」と追い込まれた時に、
「家族を残すのは不憫だから一緒に自殺しよう」
という発想が、自然と生じます。
今回の事件を引き起こした佐々木亨は、追い詰められ、正常な心理状態
ではなかったと推測されますが、そういう異常心理の状態では、
思考が短絡化します。
思考や判断は、よりシンプルに、より単純化してきます。
「どうしょうもないので、自分は自殺しよう」
→「家族を残すのは不憫だから、家族も一緒に死のう」
こういう直線的思考に簡単に飛びついてしまうのです。
これが、「無理心中は殺人です」「無理心中は絶対にやってはいけません」と
いうことが、日本の常識になっていれば、限界状況に追い込まれ時に、
「わざわざ家族を殺そう」という発想は出て来ないでしょう。
自殺しようとする人は、まじめな人が多いです。
だから、「心中=殺人=絶対悪」ということが常識として刷り込まれていれば、
限界状況に陥った時、家族を殺すことはないでしょう。
「自分だけ自殺して、家族を残すのは不憫」
すなわち、「心中=悪いことではない=むしろ良いこと」。
こうした認識。コンセンサスが日本に存在することが、
「家族殺人」が立て続けに起きる理由と言えるでしょう。
「心中」という言葉が日常的に使われる国日本。
そして、「心中」という行為に対する批判も、それほど聞かれません。
今回の足立区の事件も、障害者となった息子に共感してかわいそうだという
同情の声は聞こえてきますが、息子の両腕を奪った父親に対する批判というのは、
あまり聞こえてきません。
それは、「父親」が既に自殺しているからです。
日本では、「死」によって罪が贖われるという価値観がありますから、
妻と母を殺して、息子の両腕を奪うという凶悪な犯罪を犯していながら、
全くバッシングされない、という不思議な現象がおきています。
これで父親が生き残っていたら、相当、激烈なマスコミのバッシングに
あうのは確実でしょうが、死者に対して罪を追求しないというのが、
日本の伝統なので、このようなおかしな現象がおきています。
加害者が死んでいようが、生きていようが、人を殺すのは悪いことです。
「心中」、「つまり家族を殺した後に自分も自殺しようと思った」というのは、
「殺人」に対して何の言い訳にもなりません。
しかし、マスコミも、そして普通の日本人なら
「心中」という旗が振られると、ついつい罪を許してしまうのです。
そうした現状があるから、また次の「心中」が起きます。
日本では、家族殺人事件が頻繁におきていますが、
これを「無理心中事件」とマスコミが書くことで、
次の「無理心中事件」を誘発している、といえるのです。
「心中」の連鎖です。
もし、「心中」という言葉を使うのであれば、
同時に、マスコミは「心中」は殺人です、
「心中」は絶対にいけません、というメッセージを
同時に強烈に打ち出すべきです。
今のマスコミのメッセージは、
案に、「心中だからしょうがない」
=「心中だから、殺人じゃない」
=「心中は、悪い事ではない」
という逆のメッセージを発しているように思います。
今回のような事件が起きた時に、マスコミが、「一家虐殺事件」
「一家殺害事件」と表記するようになれば、いくら本人が自殺したい
といっても、家族を巻き込めば「殺人」である、ということが
周知され、それが常識となります。
古典文学、浄瑠璃、歌舞伎、落語の世界では「心中物」というのが
あって、「心中」が美化して描かれてきました。
江戸時代、「心中物」は庶民のたいへんな人気を博しましたが、
江戸幕府はそれに対して、対策を講じました。
「心中」は漢字の「忠」に通じるとしてこの言葉の使用を禁止し、
相対死(あいたいじに)と呼びました。
また、心中した者を不義密通の罪人扱いとし、死んだ場合は「遺骸取捨」とし
て葬式、埋葬を禁止し、一方が死に、一方が死ななかった場合は生き残ったほう
を死罪としました。
また、1722年には「心中物」の上演を禁止しました。
江戸幕府ですら、「心中」を犯罪として取り締まろうとしていたわけです。
今の日本政府の対応は、江戸幕府以下、ということになります。
江戸時代では、「心中」を美化する流れに対して、幕府が
「心中は犯罪です。心中はいけません」というメッセージを明確に
出していました。
今、なぜ。そうしたメッセージが、どこからも出て来ないのが
不思議です。
ですから、「心中は犯罪」と言う人がいないために、
現代では「心中」のマイナス部分は忘れ去られ、
美化された「心中」のイメージが、日本人の心に深く
焼きついてしまっている、と言えるでしょう。
今回の足立区の「一家虐殺事件」は、非常に悲惨な事件だと思います。
こうした事件を繰り返しておこなさいためにも、
「心中」という言葉の使用について、もっと慎重になるべきです。
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