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映画の精神医学
●第258号● 2008年2月11日発行 ● 発行部数 :49,549部
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【 目 次 】
■1 はじめに
■2 最新映画批評 「スウィーニートッド /フリート街の悪魔の理髪師」
■3 精神医学の目 自分のために生きる
■4 【特別寄稿】 クレルモン=フェラン国際短編映画祭 体験記
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■1 はじめに
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昨日の私のライブ・イベント「理想の親像」は、
大いに盛り上がり大成功に終わりました。
なんと、「韓国」や「熊本」から参加している人がいたのには、
驚かされました。
参加してくださいましたみなさん、本当にありがとうございます。
今回のイベント「理想の親像」は、DVDとして発売したいと思って
いますので、参加したいけど参加できなかったという方は、
もう少々、お待ちください。
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■2 最新映画批評
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「スウィーニートッド /フリート街の悪魔の理髪師」 1月19日公開
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ジョニー・デップ主演の「スウィーニートッド /フリート街の悪魔の理髪師」。
「スウィーニートッド」、日本では公開週第1位となりヒットしたが、
アメリカでは第5位とコケた。
日本ではヒットしたが、アメリカでは大コケした理由。
実際に、作品を見て、よくわかった。
アメリカ人は、ミュージカルの目が肥えているので、
ブロトーウェイ・ミュージカルの映画化には非常に評価が厳しい。
例えば、「レント」の映画版。
私は大好きだが、アメリカではヒットしなかった。
「スウィーニートッド」、正直グロい。
ちょっと「残酷描写」が、強すぎる。
舞台ではよくても、映画にするとダメな描写がある。
映画というのは、表現がリアルなのだ。
人殺しの描写。
「演劇」「ミュージカル」「オペラ」とか舞台芸術においては、
「残酷さ」というのはほとんどない。
しかし同じ描写も、映画化すると雰囲気は一変する。
映画というのは、非常に「リアル」なメディアである。
その「リアル」さゆえに、舞台芸術をそのまま映画にすると、
見ていられないほど「残酷」なものになる場合がある。
ベストセラー小説の映画化「リアル鬼ごっこ」。
これも、鬼につかまるシーンが、非常に残酷なのだが、
小説で読む分には、それほどでもないのだろう。
というわけで、「映画化」という作業は、原作に忠実に行えば
いいというものではない。
「スウィーニートッド」では、たくさんの人間が殺されるが、
カミソリを首にあててスパッと切るシーンを、
特殊効果を使ってリアルに表現する必要性があっただろうか?
ティム・バートンらしくないというか、
同じ残酷描写でも「コープス・ブライド」のように
戯画化したり、コミカルに描くこともできただろう。
こうした、残酷描写というのは、アメリカでは一部の好きなマニアみたいのも
いるが、一般人は拒否反応が強いから、アメリカでヒットしなかったのは
当然だろう。
そういうわけで、「スウィーニートッド」は、
「ミュージカル」というよりは
「ホラー映画」「スプラッター映画」である。
残酷描写が嫌いな人は見ない方がいい。
残酷描写が好きな人は、楽しめるだろうが・・・。
樺沢の評価 ★★☆
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■3 精神医学の目
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自分のために生きる
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今日、悲しいことがあリました。
昨日、私のライブ・イベント「理想の親像」も、無事終了。
肩の荷がおりて、数日前に発売されて楽しみにしていた、
グインサーガ最新刊「ランドックの刻印」を読みはじめました。
「あいかわらず、グインサーガはおもしろいなあ・・・」と
スタバで至福の時間を過ごしました。
そして、「あとがき」を読み始めると、顔面が硬直しました。
栗本薫さんが、自らの「胆管癌」を告白していたからです。
以前から、彼女の体調不良については、グインサーガの
あとがきにも書かれていましたが、こんなことになっていたとは・・・。
自らの病状をまるで、他人事のように淡々と記述してあるその文章は、
「栗本らしい」というか、生きるか死ぬかという限界状況に
直面しても、ここまでクールに自己洞察できるのか・・・と
驚かされると同時に、彼女の胆力のすごさを感じました。
「術後5年生存率40%」。
手術してから、5年後に生きている確率が「40%」。
こんな数字を、何万人が読む人気小説の「あとがき」にサラリと
書けてしまうのはすごいことです。
これから大手術を受ける彼女の覚悟のようなものが切々と
伝わります。
以前も書きましたが、
栗本薫さんは、私の最も好きな小説家です。
グインサーガは現在119巻。
この勢いなら、200巻も夢ではない・・・と思っていましたが、
グインサーガがいつまで続くのかわからない・・・という
悲しい現実に直面しました。
昨年、「世界SF大会」で栗本薫さんにお会いしたエピソード。
はじめてグインサーガを読んだ時の感動と感激。
グインサーガとともに歩んできた私の人生が、
走馬灯のように思いだされ、涙がボロボロと流れてきました。
スターバックスの16人掛けの大テーブルで、
ボロボロと涙を流している40男。
ほとんど不審人物でありますが、どうすることもできません。
自分の母親が癌告知されたような気分です。
周囲の客にばれないように、しばらく、テーブルに顔を伏せて
誤魔化すしかありません・・・・
この「あとがき」の中で、彼女が非常に素晴らしいことを書いています。
>もう本当に余分なものはだんだんと排除していって、
>よけいなストレスとは縁を切り、ひっそりと自分の
>「本当にしたいこと、しなくてはいけないこと」の優先順位を守り通して
>・・・ひたすら「一番したいこととその次にしたいことと、その
>次にしたいことと、その次の次くらいまでにしたいこと」だけを大事にして
>生きてゆくほかはないかな、と思っています。
>もうこれから先は、雑音など一切かかわりなく、残された人生を
>「自分のためにだけ」書いてゆくだけのことだ、
>とあらためて思います。
>それが一年あろうと十年あろうと、百年あってもやっぱり同じこと
>でしかない、というのを、わかるために今回のようなことは
>起こるのかもしれなあ、と思います。
「自分のために書く」「自分のために生きる」ことの大切さ。
自分が本当にしたいことをやろう。
実は、これと同じことを、昨日の私のライブ・イベント「理想の親像」で
語らせていただきました。
日本人のお母さんは、「子供のために生きる」人が多く、
日本人のお父さんは、「会社のために生きる」人が多い。
でも、本当は、「自分のため生きる」べきなんです。
自分が幸せでないと、子供も家族は幸せにはなれません。
自分を犠牲にして、「私は子育てを頑張っています」と言っても、
それでは自分も幸せになれないし、「よい子育て」も
できるはずがないのです。
「自分のために生きる」
言葉で言うと簡単ですが、実際には難しいでしょう。
でも、「自分のために生きる」ということは、本当に大切なことです。
この「自分のために生きる」ということは、
「幸せになるためのコツ」といってもいいのだけども、
日本では「ああ、この人、自分のために生きているなあ」という人が、
本当に少ないと思います。
幸い、私は3年間のアメリカの生活を通して、
「自分のために生きている」たくさんのアメリカ人や
アメリカに住んでいる日本人の友人を通して、
「やっぱり、一度きりの人生だから、自分の本当にやりたいことをやって
自分のために生きないとダメだ」
と気付きました。
あなたは、誰のために生きていますか?
自分の人生を、「自分のため」に生きていますか?
栗本さんのホームページで確認したところ、手術は無事終了し、
現在順調に回復されているようです。
また、バリバリ、グインサーガを書けるように、
元気になっていただきたいと心からお祈りいたします。
私にとって、「グインサーガ」のない人生など、想像もできません。
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■4 【特別寄稿】 クレルモン=フェラン国際短編映画祭 体験記
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■第3日目■
運命の一日。
……なんて言うのは大げさかもしれないが、
いよいよ僕らにとってのメインイベントのひとつ、
1400席を超えるメイン会場、ジャン・コクトー劇場での
上映が行われる日がやって来た。
上映開始は16時。
落ち着かない気持ちでライバルたちの作品を鑑賞するものの、
観客の反応に過敏になってしまい、
笑い声や拍手が起これば
「ああ、昨日の上映ではこんなに喜んで貰えなかったなぁ」
と落ち込み、滅多に起こらないブーイングを聞けば
「僕らの作品もブーイングされるんじゃないか」と心配し、
とてもじゃないけど素直に観賞できる状態じゃなかった。
その上、映画祭から「明日の昼、あなたの作品に関して
質疑応答する時間を設けましたので、万難を排してご参加下さい」
とのメッセージが届き、緊張はMAXに。
質疑応答って、英語? フランス語? 通訳は?
そもそも、ちゃんと応えられるのか、自分?
そうだ! 忘れてたけど、上映の前に監督の紹介があって、
観客の前で手を振って挨拶もしなくちゃいけなかったんだ!
うう、何だか胃の辺りが重くなってきた気がする……。
プロデューサーの阿部くんも強張った表情で、
なんだか落ち着かない様子。
気がつけば、すでに15時30分。
劇場に行き、列に並ぶ阿部くんと別れ、監督は指定の入り口へ。
司会の女性と「挨拶」に関して簡単な打合せをした後、
「笑顔でね!」と念を押されて会場に入る。
ジャン・コクトーは二階席もあるすり鉢状の劇場で、
1400席以上あるというのに満員札止め状態。
そして16時を少し過ぎたところで、先程の女性が上映作品を
簡単に説明し、監督の紹介が始まった。
僕らの作品は2番目に上映されるが、最初の作品は
監督が来場していなかったので、
いきなり「……ベン・スズキ!」と呼ばれ、慌てて立ち上がる。
こわばった笑顔で四方に向かって手を振って拍手に応えたんだけど、
ほかの監督たちは立ち上がって一瞬手を上げるだけ。
やり過ぎだったか……と、ややブルーになったところで照明が落ち、
上映が始まる。
最初の作品。途中から観客がモゾモゾと動いている。
受けが悪いなぁと思っていたら、ブーイングが起こる場面も。
映画が終わり、クレジットが流れ出すタイミングで拍手が
起こるのだが、やはり拍手が少ない。
「自分たちの作品は大丈夫だろうか?」次第に不安が募っていく。
つづいて始まった「胡同の一日」。
観客の反応が気になって気になって、まったく画面に集中できない。
半ばを過ぎたあたりから、後ろの観客が咳をし始める。
「うわ! ヤバい! 頼むからブーイングだけは止めてくれ!」。
やたらとのどが渇き、胃が痛くなってきたような気もする。
そして迎える、エンドクレジット……。
突然、大きな拍手が沸き起こる。
昨日の上映のときよりもずっと長く拍手は続き、目頭が熱くなる。
隣に座る阿部くんと、同時に大きなため息をつく。
まるで風呂上がりのように全身から力が抜け、幸福感に包まれて、
その後の作品に関してはほとんど記憶にない。
ただ、チェシャ猫のように、自分がずっとニヤニヤしてい
たことだけは覚えている。
上映が終わり、劇場を出る僕らに、
「キミがあの北京を舞台にした作品の監督? すごく良かったよ」とか、
「タンスを乗せた自転車がキュートだった」とか、
さまざまな国の人が声を掛けてくれた。
片言の英語で短い会話を交わし、近くのカフェレストランで
ひと息つく僕ら。
阿部くんも肩の荷が下りて、晴れやかな表情だ。
まずは、ビールとオレンジジュースで乾杯。
国際映画祭に招かれ、大スクリーンに自分たちの作品が映し出され、
国籍も文化も違う大観衆から拍手を貰う……。
これは本当に素晴らしい体験だ。
自分が手掛ける作品が、多くの人に理解され、彼らに喜びや楽しみを
与えることができたこと--ひと言で言えば、ちゃんと「届いた」ことが
何よりも嬉しく、そしてこれからモノ作りをつづけていく上での
大きな力になるだろう。
映画であれ、ほかの芸術であれ、あるいはスポーツであっても、
人に何かを「見せる」ことを生業としているなら、一度はこういった体験
すべきだと思った。
その後、別の劇場に移動して、ライバルたちの作品を観賞。
各国の短編映画作家たちが、腕によりをかけて作った作品の、
クオリティの高さに唸らされる。
明日は、いよいよ映画祭のクライマックス、授賞式だ。
その前に、僕らの作品に関しての質疑応答(ディスカッション)を
こなさなくてはいけない。
「日本語ができる通訳が手配できなかったので、明日は英語でお願いします」
というメッセージを受け取り、せっかくの幸福な気分が2割ほど
目減りしたところで、僕らの3日目が終了した。
(鈴木勉)
さて、次号で、いよいよ、コンペの受賞結果の発表です。
鈴木監督は、何か賞を受賞できたのか?
こうご期待。
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