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化学、SE、マスコミ、作家…稀有な経歴の発行者が発信する新ジャンル「読むテレビ」。自分じゃ気づけない滑稽な部分を、誰かに指摘されることなく自分だけで気づけちゃう納得マガジンです。

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2008/06/30

滑稽な人のフリ見て我がフリ許せ!<第88号>

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読者の皆さん、
はかまたかずこです。

梅雨つゆツユ…
蒸し暑い日が続いています。
何をするにも、雨はひと手間ふた手間増やしてくれます。
湿度も高く、やはり厄介なシーズンですよね。

傘を新調したり、家の中に観葉植物を増やしたり、
この時期を少しでもポジティブに過ごす方法をいろいろ試してみるのですが…。

そこで、うんと昔にさかのぼり、江戸時代。
便利なものがなかった代わりに、上手にすごす知恵が沢山あったようです。
たとえば、氷をイメージした和菓子をいただいたり、
ちょうど一年の半分ということで、さえない前半だったら後半に向けて
縁起直しの厄払いをしたりとか…

ストレートな快適さ、ではなく、気持ちよくありたい願望からのひと工夫、
そんな目線や考え方が、想定外の”ゆとり”を生んで、
やがて気持ちのどこかに、ホッと涼風を流してくれるような気がします。

先人たちに習って、うっとおしい梅雨を、風流な気持ちで迎えてみる…
…ん…とはいえ、なかなか理想通りにいかないもの…差し当り、朝の1時間だけ(^^;)
少しずつトライしていこうと思ってます!


それでは…88号のストーリー、スタートです!!

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>>> 滑稽な人のフリ見て我がフリ許せ! <<<

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どうすればスマートな振るまいになれるの??

その答えを、一人でも多くの人に、
さりげなく感じ取ってもらおうと登場したこのマガジン。

テレビドラマを見る感覚で、お楽しみ下さい。
理屈ぬきで客観的になれたら、
そこでひとつ、あなたの一面がスマートに。。。

今シリーズでは、
謎の男「僕」が、いきつけの喫茶店「マギー」で、
さまざまなシーンに遭遇します。それはブルースのごとく展開され…


タイトル

《《《   マギーブルース     》》》


(前回のお話)
   
 昨今、物言いをする人間を”クレーマー”と呼ぶことが多い。
 マギーにも、そんなお客がいるが、店側も客側も損得勘定を抜いて、
 互いに改善すべき点に目を向けるべきだと思う「僕」。ちょうどその時、
 僕の背後に座る若い女性客が「クレーマーと思われたくない」と伝票の間違いを
 受け流そうとしていた。少々の損をしてでも、失いたくないもの…
 価値観とセンスのあり方を改めて噛み締める「僕」であった。


////////////////////////////////

 〜14〜 ”マザー”ブルース  

////////////////////////////////


 マギーへは必ず一人で来ている。
 
 今日もひとりで4人がけのテーブルに座っている。
 
 が、今さっき置かれた水のコップは、2つ。

 僕は手元のコップを掴み、向かいのコップを眺めた。

 何も不思議な話ではない。

 僕がそうリクエストしたのだ。

 (2時か…)

 仕方がなかった。
 待ち合わせは、このマギーしか思いつかなかった。

 (チっ……)

 僕は心の中で、舌打ちをした。

 本当はマギーに連れてきたくなかった。
 僕の聖域をまたがれる気分で、非常に不愉快だからだ。

 それに、マギーの連中に、僕のプライベートを見られる気がして落ち着かない。

 幸い、今日は僕には全く関心のなさそうな男性店員しかいない。
 マスターも、あまり店内に出てこない。
 それだけで救われた気分になる。

 (遅い)

 向こうから「2時」と指定してきたのに、もう10分過ぎている。
 本日のおすすめ『ハワイアンコナ』を、
 うかつにも、味わうことなく3分の2まで飲んでしまった。

 (遅すぎる)

 そう思いながら、マギーで、かつてしたことのない腕組みをしてしまった。

 やはりペースが狂う。
 マギーに染まる「僕」の所作ではなく、僕の本能が沸き起こす所作が
 そこかしこに現れてくる。

 (あ……)

 その原因の大元が、店の扉から顔をのぞかせた。
 ”僕はここ”という合図の手をあげた。
 この所作も、マギーで過ごしてきた僕からは考えられない。
 誰も見ていないのに、戸惑いから変な手のしまい方をしてしまった。

 「ごめんごめん」

 大きな荷物を抱えた女性が、そう言いながら僕の向かいにドカンと座る。

 「もう、たのんだ?飲んでる?そっか、じゃあ、わたしも、えっとコーヒー」

 まるで会話をしているように、ひとりで勝手に状況を解釈して、
 何の躊躇もなく、コップの水を飲む。
 この女性(ひと)――母親。

 「だいぶ待たせたね」

 水でのどを潤したせいか、多少なめらかな声で話出す。

 「これ、いいの?わたし?」

 おしぼりを指さして言ったものの、僕の返事を待たずに
 さっさとビニールをこじ開けて、手を拭き出す。
 僕は顎でコップを指しながら、

 「水、もう飲んでるじゃないか」
 「そっか、そっか」

 おでこに手をぽんぽんとしながら、おちゃらける姿は、
 僕が子供の頃から変わらない。

 2年ぶりの再会だった。

 田舎暮らしのおふくろだが、親父と結婚するまでは東京にいた。
 親しい仲間は、こちらに多い。
 僕が上京したのをいいことに、ちょくちょくアパートに来ていたが、
 兄貴夫婦と同居をはじめたことがきっかけで、あまりこちらへ来なくなっていた。

 「あんた、痩せたねえ」

 コーヒーの味なんか、わかりっこない母親は、そういいながら
 案の定、お湯のように飲んでいる。

 「ちゃんと食べてる?」

 答えるのが面倒くさい僕は、適当にうなずくだけにした。
 それより何より、もっとコーヒーを味わってほしい。

 「そうそう。時間がないからこれ、渡しとく」

 黙ってそれを受け取り、開く前から何かがわかった。

 「ま、考えといて」

 時間がないないというのは、兄貴の嫁さんに遠慮しているのだろう。
 本当だったら、一泊二泊していくところだ。

 「ま、元気そうでよかった」

 (おふくろもな)

 声に出して言えない。

 最後の一口を飲み干し、おふくろは帰る身支度をはじめた。
 
 「え?もう帰るの?」 
 「うん、電車の時間があるからさ」
 「まだいいだろ」
 
 フッと穏やかな表情を見せたかと思うと、途端に手を横にふり、

 「あんたと違って忙しいの、お母さんは」

 一癖あるような言いっぷりをする。
 このひとも素直じゃない。
 
 「この荷物、紙袋でもってこようかと思ったけど、破れるといけないから、
  鞄ごと、置いとくから」
 「なに?」

 何かは、もうわかりきっている。
 畑で取れた野菜とか、僕の好きな煮物だとか、乾物などなど…
 聞き返すまでもないのに、こういうことだけは一言文句をいいたくて声に出す。

 「なにってあんた…煮物だけは帰ったら冷蔵庫にいれなさいよ、明日も食べれるから」

 そう言って、鞄を持ち上げようとするものだから、

 「いいよ、そこに置いとけば」
 「ん、わかった。じゃあ、母さん行くわ」

 そう言って、今度は立ち上がり様に伝票を掴んだ。

 「いいよ、それも置いとけば」
 「……」

 何も言わずにうなずいたおふくろは、伝票をテーブルに戻した。
 そのついでに、僕の手の甲をポンと叩いた。

 「じゃ、いくね」
 「……」

 身軽になったおふくろが、軽く手をふるので、

 「改札まで、送るよ」

 思わず、声に出してしまった。

 「アラめずらしい」
 「荷物、これだけ?」

 おふくろのハンドバックもぶんどるように、僕は全部の荷物を持って、
 マギーのレジに立った。

 「ありがとうございました!」
 
 店員はそう叫んだものの、接客の最中でレジに戻るまで数秒の時間ができた。

 僕は店内を見渡した。

 さっきまでのおふくろとの一部始終が、
 いつもマギーで起こる出来事の一つかと思うと、
 不思議な気分になる。

 窓際に、ひとりコーヒーを飲む、若い男性がいる。
 ちらっちらっと、こちらを見ている。
 彼がどのように、僕とおふくろを見ていたか…
 
 コーヒーチケットを男性店員に差し出すこの手に、
 ついさっき叩かれたおふくろの温もりがよみがえると、
 
 (どうにでも思ってくれ)

 気が大きくなる。
 
 そうしてマギーを後にしてから、おふくろから手渡されたものを思い出し…
 ぐっと気が重くなった。

                             つづく



*次回をお楽しみに!


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