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化学、SE、マスコミ、作家…稀有な経歴の発行者が発信する新ジャンル「読むテレビ」。自分じゃ気づけない滑稽な部分を、誰かに指摘されることなく自分だけで気づけちゃう納得マガジンです。

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2007/08/29

滑稽な人のフリ見て我がフリ許せ!<第75号>

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自分では、なかなか見ることのできない、自身の滑稽な一面。
誰かに教えてもらうのは、素直になれないこともある。
でも、誰かに教えてもらわないと、滑稽のままになってしまう。
じゃあ、どうすればスマートになれるの?

その答えを、一人でも多くの人に、
さりげなく感じ取ってもらおうと登場したこのマガジン。

テレビドラマを見る感覚で、お読み下さい。

理屈ではなく、自然と自身の環境に照らし合わせ、客観的になれたら、
そこでひとつ、あなたの一面がスマートに。

さて、新しいシリーズのスタートです。
お楽しみ下さい。



タイトル

《《《   マギーブルース     》》》


////////////////////////////////

 〜1〜  隣のテーブル

////////////////////////////////


「いつもの」

と言って、出されるほど馴れ合いの店ではない。

「今日おすすめのブレンドを」
と、いちいち注文を告げるのが、適度な店との距離で心地いい。しかし、

「お煙草吸われますか?」

これを毎回聞かれるのは鬱陶しい。
僕の顔を見るなり、
「禁煙のテーブルに御案内します」

これくらいは、すすっとやってもらう…
これが僕の中での常連だ。

今日もまた、かれこれ一時間は座っている。

飽きない。

喫茶店が好きなのだ。

店にある雑誌や新聞を、漫然と読む時もあるし、
持参した単行本を読むときもある。
でも、一番多い過ごし方は、
店内を観察していること。

4人がけのテーブルが7つ、
2人がけのテーブルが壁際に2つ、
8人は座れそうな円卓のテーブルが、店の中央に一つ。

喫茶店の中では、大きめな方だろう。

その名は「マギー」。

名前の由来は、噂では、マスターが手品好き、ということらしい。
だからといってマギーとは、ベタな気もする。
ぜひとも噂であってほしい…。

店内全体が茶系に統一されていて、
入り口やコーナーなどに置かれた、観葉植物の緑がよく映えている。
トイレの中にも小さなパキラが置かれている。

僕がこの「マギー」を気に入っている理由の一つは、清潔感。
まず、それらの観葉植物が枯れていない。フレッシュなのだ。

椅子の座面も、シミなどができにくいビニール製のもので、
客が去ったあと、店員が丹念に座面を拭く様子も、何度か目撃した。

蛍光灯ではなく、白熱等の柔らかい照明もいい。

大きめの喫茶店は、珈琲の味も大味だったりする、のが僕の定説であるが、
ここのマスターは珈琲にこだわりを持っており、
僕の好みである、ブラジルやコロンビア豆を、好んで使用しているのも嬉しい。

そんな気の合いそうなマスターと、一度も言葉を交わしたことがない。
これこそ、僕がこの喫茶店を好む、条件なのだ。

ヘタな馴れ合いは、いらない。
美味しい珈琲と自由な時間があれば、それだけで僕には好条件である。


今日は2人がけの椅子に座った。

狭い通路をまたいだ、隣の4人がけのテーブルで、
70は超えているだろう男性4人が、少し窮屈そうに座っている。

定年したての、まだ勢いのある”閑な人”ではなく、
ゆとりを、ゆとりで躱していそうな4名だ。

僕が来るだいぶ前からいるらしい。
珈琲がすっかりなくなっている。
ちょっと覗けば、カップの底が見えてしまう至近距離である。

4人の一人が、飲もうとして、カラであることにきづき、
辺りをキョロキョロした。
おかわりかな、と思っていると、
何食わぬ顔で、また相槌を再開した。

(2杯目頼めばいいのになあ)

珈琲好きの僕としては、おせっかいにも、そう思えてしまう。
2杯目からは、定価の半額で飲めるサービスがこの店にはある。

けれど、隣の集団は、そんな気配を微塵も見せない。
話の腰を折ってまで2杯目が欲しくないらしい。

一人が喋り続け、
一人は話しを聞いているような聞いていないような目線で空を見ており、
一人は相槌だけをしきりに打ち、
残る一人がキョロキョロしながら、相槌を打っている。

一見バラバラで、早くお開きすればいい状態だが…
4人は、それはそれで、いいバランスをとっているようにも見える。

話している男性は、僕が知る限り、同じ話を3回繰り返している。

「コスタリカにいたときにね…」

この前段からはじまるのだ。
核心に到達する前に、別の話題に脱線してしまう。

続きから話し出せばいいのに、この初老は律儀にも最初から
話だそうとする。どうやらポイントは、コスタリカにいたことらしい。

出だしとしては、かなり興味深い。
コスタリカに住んでいたのか…
自ずと神経が、隣のテーブルに注がれる。

早く続きを話してくれ…関係のない僕の方が、先走る。
けれど、テーブルの他の3人は、何も苛立っていない。

(お前達、続きを聞きたくないのか…それとも、もう知っているのか)

僕の神経が話だけじゃなく、他3人にもぐんぐん注がれていく。

三人は三様の空気を持ちながら、一人の男の中途半端な武勇伝を
根気良く聞いている。

彼らを見ていると(一体コスタリカで何があった)という僕の興味や苛立ちも、
徐々に、彼らの空気に包括され、
乗り心地の悪い揺りかごに、仕方なく乗せられているような気分になってきた。

どうでもいい…、しまいには、そうなり、
いつしか、穏やかに、僕がその4人目の聞き手になっている。

”となりの芝生”は青い、といった諺があるが、
僕のこの”となりのテーブル”は、何色と呼べるのだろう?

座った客の雰囲気や話題でもって、こちらが抱く色調はコロコロ変わる。
色なんか特定するものじゃないが、
未知数ってことも踏まえると「白」ってとこか…。

今日おすすめのブレンドは、どんな味わいだったか思い出せない。


                         つづく

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