滑稽な人のフリ見て我がフリ許せ!<第73号>
>>> 滑稽な人のフリ見て我がフリ許せ! <<<
自分では、なかなか見ることのできない、自身の滑稽な一面。
誰かに教えてもらうのは、素直になれない。
誰かが教えてくれないと、余計に滑稽になってしまう。
じゃあ、どうすればスマートになれるの?
その答えを、一人でも多くの人に、
さりげなく感じ取ってもらおうと登場したこのマガジン。
テレビドラマを見る感覚で、お読み下さい。
理屈ではなく、自然と自身の環境に照らし合わせ、客観的になれたら、
そこでひとつ、あなたの一面がスマートに。
さて、今シリーズはスピリチュアルな要素満載です。
現実に巻き起こる何かに通じるもの、きっとあります…お楽しみ下さい。
タイトル
《《《 グレー 》》》
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(これまでのお話)
山本一樹、11歳。ちょっとのんびり屋の、でも元気な小学生。
母さんと父さんと暮らす三人家族。
うたた寝をしたある日、一樹は夢の中で「グレー」と名乗る少年と出会う。
その少年の正体は…、一樹の「魂」。
夢の中だけで会える一樹の友人となる。以来、父さん、母さんの意識が
少しずつ変化し、山本家にいろんな”不思議”が訪れ出す。
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〜11〜 向上するってこと
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「そんなことをしても、頭良くならないよ」
健ちゃんが言う。
「だって、僕、今このドリルしか持ってないから」
一樹がうなだれる。
「どうせやるなら、もっと役に立つ参考書を使わなくちゃダメだよ」
自主学習の時間、中学受験で塾に通う健ちゃんが、勉強法について
先輩風を吹かせている。
「どうやって、役に立つモノを見つけるの?」
「それはさ」
「うん、何?」
「それは…」
「なに?」
「あれさ…」
「……」
「一樹も塾に行けばいいんだよ」
「……」
「いろいろ教えてもらえるよ」
帰宅後、早速母さんに話す一樹。
「ねえ、僕も塾に行こうかな」
「え?だって中学受験止めたから、もう行かないって言ってたじゃない」
アイロンがけをしながら答える母さん。あまり真剣に取り合おうとしていない。
「でもさ…」
「また、誰かに誘われたんでしょ」
「そういう訳じゃないけど…」
「じゃあ、どうして」
「健ちゃんが…」
「ほら、やっぱり」
「違うよ!言うんだ、健ちゃんが」
「何を」
「役に立つ参考書を使ったほうがいいって」
「役に立つ?」
「そう。そのためには塾に行ったほうがいいらしいんだ、だからさ」
「参考書もいいけど、学校の宿題をきちんとやれるようになるほうが先じゃない?
いつも母さんが、わあわあ言わないとやれないっていうのは、どうなのよ」
痛いところつかれたな、一樹。
「もういいよ、わかったよ」
へそを曲げたって、母さんの言う通りだよ。
「は〜あ。また始ったあの子の思いつき」
母さん、ため息をつきながらアイロンがけ。ところが、ふと
「でも、珍しいわね。自分から何かを始めたいって…」
ぼそぼそ独り言を言う母さん。
確かに。母さんのいう通り、この話には、気づきたいメッセージが隠れてるよ。
その夜…
「どうせ、いつもの思いつきなんだろうけど」
「いいじゃないか、行きたいって言うんだったら、行かせれば」
父さんに、一樹のことを話す母さん。
「なあ、一樹。どうして塾に行きたくなったのか、父さんにも聞かせてくれよ」
「もう…いいよ」
ソファにうなだれながらテレビを見る一樹。
「もういいってお前、母さんに行きたいって言ったんだろ」
「もう、面倒くさくなった」
「ほら、ごらん」
母さんがそうして口を挟むもんだから、余計一樹はへそを曲げる。
「お前はそういう風だから、母さんにどうせ思いつきって言われるんだぞ」
「……」
「ちゃんと話してみろよ」
「よくわからない」
「わからないって…」
父さんも一樹を叱ろうにも、とりあえず母さんの顔を見る。
「なんだかね、健ちゃんが…ほら中学受験するって言ってる子。
その子に誘われたらしいのよ。それで、役に立つ参考書があるからとか…」
「違うよ!塾に行くと、役立つことがわかるんだ!」
一樹がキッとなり、叫ぶ。
「おいおい、落ち着け、一樹。何がわかるんだ?」
「それが…よくわからない…」
「よし、お前が感じたことを、ゆっくり話してごらんよ」
「……」
「父さん、焦らないから」
「…あのね」
「うん」
「僕がいつもやってるドリルを見て言うんだ」
「健ちゃんが、か」
頷く一樹。
「頭良くならないよって」
「だから塾に行こうって?」
「ううん、違う…役に立つ参考書を使ったほうがいいって…
それで僕、それはどうやって見つけるの?って聞いたんだ。
そしたら健ちゃん、塾に行けって…」
父さんと母さん、顔を見合わせる。
「父さん、わかったぞ。一樹がさっき、よくわからないって言った意味が」
「え?」
「役立つ参考書を見つけるために塾へ行く。ここまではいいんだ。
ところが、どうせやるなら自分にとって、より良いものを、っていう考え方に
お前、戸惑っているんだろ」
「そう!」
父さん、一樹のかゆいところを掻いてくれたね。
「あら、そうだったの…」
あっけらかんと言う母さん、相変わらず心のヒダを読み取るのは苦手なようだ。
「お前には、欲ってヤツを教えてこなかったかもな」
「難しいわよ、この子に」
「わかるよ!」
どうやら、一樹は母さんの言うことなすことに、反抗的だな。
「向上心って知ってるか、一樹」
「コウジョウシン?」
「自分をより高めようと考えることで、大切なことなんだ」
「……」
「でもな、健ちゃんの言う話はちょっと違う」
「……」
「どうせ同じ使う時間を、有効に使ったほうがいい。
この考え方は悪くない。けれど時間を使う前から、敢えてその方法を限定するのは
どうかな、と父さんは思う」
「限定?」
「健ちゃんは、一樹のやっているドリルを否定しただろ?」
「うん」
「一樹が、それを一生懸命やろう、という気持ちは誰にも否定できないんだ」
「……」
「もっと役に立つ参考書をやったほうがいい、ってのは、健ちゃんの意見であって、
絶対にその通りにしなくちゃいけないこと、ではないんだ。一樹はそれを、
健ちゃんからのアドバイス、として受け止めればいいんだよ」
「僕…びっくりしたんだ」
「ん?」
「なんか…そうしなくちゃ、ダメ人間のような気がして」
「健ちゃんの言うとおり、にか」
「うん。僕が知らない世界が急に現れて、健ちゃんの言う通りにしないと
置いてきぼりにされそうでさ」
「なるほどな」
「だから…とにかく塾に行かないといけないと思ったんだ」
「健ちゃんのアドバイスを参考にして、一樹が参考書を選ぶか、
やっぱりドリルを選ぶか、一樹が自分にとってどちらが自分のためになるか、
しっかり考えるってことが向上するってことなんだ」
「じゃあ、塾にいかなくても置いてきぼりにならない?」
「行かないからって、そうはならないよ」
「じゃあ、僕、もっとコウジョウシンを持つよ」
「そうね。そうあって欲しいわね」
母さん…また嫌味っぽく言う…だから一樹は素直にならないんだよ。
「まあ、そう言うな母さん」
「そうだよ、母さんはいつもそうやって一言多いんだ」
「ま、この子ったら生意気なッ」
「一樹、今の話がちゃんとわかったら
その上で、やっぱり塾に行ったほうがいいな、って思えたら
その時もう一度母さんに頼みなさい」
「…うん」
「不満か?」
「…母さんやだ。父さんに言う」
「好きにすれば」
「わかった、わかった。じゃあ、父さんに言いなさい」
「うん」
「もう遅いから、一樹、早くお風呂入って寝なさい…
返事は!…一樹!」
黙ったまま、居間から出る一樹。
「あの子、どんどん私に反抗的になってるのよね」
「お前も嫌らしい言い方してるぞ」
「だって、ああ言えばこう言うって、四六時中をあなたは知らないから…」
「わからないでもないけど、
お前の言い方は…前にも言ったけど…険のある言い方をするからさ」
「まだ、そう?わたし」
「ときどき、な」
「わかった…」
母さん、以前よりだいぶ素直になったね。
「もっとアイツに、要領ってものを教えるようにした方がいいかもな。
その健ちゃんって子。ある意味、今から世間を知ってるっていうか…」
「そうねえ、健ちゃんママが、そもそも要領の良い考え方をする人だから…
自然と学んだとすれば、私達がもっと要領よく生活しなくちゃ、
あの子のお手本にならないってことかしら」
「んー…あまり計算高い人間になって欲しくないと思ってたけど、
そうは言ってられないかもな、世知辛い世の中だからなあ」
「わたし、それなりの要領を教えてるつもりなんだけど…」
「もっとリアルに、無駄はできるだけ排除したほうがいいとかさ」
「でも、無駄って結構大切じゃないかしら…」
「え?」
「無駄なことをする勇気って、結構大変よ」
「勇気?」
「そう。人から見て、無駄だなあって思えること。
自分でも、そうわかっていながら、やるってことは勇気いるもの」
「まあ、確かにな…」
「そんな無駄をして、その中で見つかるのが要領だと思うんだけどなあ…
そうして身につけた要領って、私しっくりくるもの」
「お前…」
「なに?」
「成長したな」
「失礼ね、前から私はこうよ。
第一、主婦業はそもそも無駄の連続なんだから」
「そうきたか…」
「とにかく一樹の自主性を信じましょ」
母さん、本当に成長したね。
つづく
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