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2009/04/16

学園改革支援の『開窓』 -「経営者の招聘(後編)」-

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【 学園改革を支援する『開窓』 -082-】2009年4月号

私立学校の改革をお手伝いするメールマガジンです。
現場の声でトップを動かし、改革を推進するためのヒント集。
改革をゴールにせず、スタートにしなければ意味がありません。
そのプロセスを実現するのは、あなたです!

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○○「経営者の招聘(後編)」○○


今年の東京の桜は、咲いている期間が短かったような気がします。
日々の齷齪に花見の情趣さえ湧かず、業務に没頭するばかり。
そんな中、心服する友と浅草で夕食を共にし、向かう途上、電車から桜見物。
もう散りかかりの状態でしたが、隅田河岸の桜に和むことができました。



さて前回は、このメルマガ初の宿題を出しまして、今日は続編となります。
このひと月の間に、皆様、さまざまな解答をご準備くださったと思います。
そしてまた、私が提示するであろう解答を、心待ちにされたことと思います。
そこでさっそく、前回の宿題の解答から申し上げることに致しましょう。



実は、今回の宿題に関しては絶対的かつ普遍的な解答は存在しません。
「したがって正解はない」などと言うと皆さまから叱られそうですので、
もう少し詳しくお話をさせていただこうと思います。



なぜ絶対的かつ普遍的な解答が存在しないのか。
それは組織が生き物であり、絶えず変化の過程に置かれているためです。
そしてまた、以前にも申し上げた通り、組織には文化や風土が存在します。
組織の実態は、その文化や風土、そして構成要員の利害によって変化します。
つまり、今この瞬間の解答が、明日も正解であるという保証はないのです。

さらに、その組織独特の文化・風土・構成員の利害関係というものは、
その組織に身を置くあなたにしか、正確な整理ができないものでもあります。
したがって、あなたがご準備くださった解答は、実際にはすべて正解です。
あなたがこのひと月で気付いたあらゆるリスクが、弊害要因となるのです。
中には既に、組織上の障害という形で顕在化したものもあることでしょう。

流動性の高い「人間」という要素が組織を構成し、それを動かしている限り、
絶対的かつ普遍的な正解があり得ないのは、避けられない現実なのです。
とは言え、これで話が終わったのでは、このメルマガの意味がありません。
そこで、さらに一点、気づきとなり得るお話をしたいと考えました。



一般に日本の組織は、上意下達型の意識力学を有するものとなっています。
したがって理事会が外部から経営者を招へいする際に求めるものは一つだけ。
それは権力を有効に行使する能力です。しかしここに落とし穴があるのです。

権力とは本来、権威を基盤として立地し、かつ容認されるべきものです。
しかるに理事会が権威の醸成を肩代わりし、権力だけを付与してしまう。
理事会が管理者としての職務権限をちらつかせ、これを実行するのです。
権限はあくまでも権限であり、権威は醸成される以外に成立しないものです。
現場の第一線で働く教員たちが、看板だけの権威に従うはずはありません。

現場第一線の教員たちは、学生・生徒の立場に立って物事を考えています。
彼らにとっては、今、目の前にいる学生・生徒への対応が第一義なのです。
学生・生徒の意見や意思の方が、外様の上司より優先されるケースがある。
たとえ理事長の権限を以てしても、外部招聘の経営者に権威は見出せない。
理由を端的にまとめると、このようになると思います。

「現場にいる学生・生徒のことを、何一つ知らない人間じゃないか」

この立脚点の違いが、軋轢や反目を生じさせる最大要因となるのです。
しかし招聘された側としては、理事会から「権威」を保証された立場です。
その名目上だけの権威が、現場から見ると一方的な権力と映るわけです。
これでは初めから齟齬を含んだ関係が構築されることとなってしまいますね。
しかも現場から見ると、唐突に現れて、一方的に介入されることになります。



特に公立学校の学校長は、「絶対君主」に等しい存在とみなされています。
その感覚を払拭できぬまま現場に介入し始めるわけですから、当然不快です。
現場教員から不満や誹謗中傷が発生するのは、この図式では自明の理ですね。

学校に限らず、企業にも言えることですが、外部から経営者を招く時に、
経営陣(学校では理事会)が不必要に下手に出て交渉することがあります。
つまり、「せっかく見付けた獲物を、逃がしたくはない」ということです。
給与や勤労条件の他に、権威・権限の保証を要求されるケースが多いのです。

招聘される側としては、円滑かつ迅速に経営手法を実践したいはずです。
それなのに、権威の醸成がどうのこうのと条件を付けてしまったのでは、
「理想の経営は困難だ」と敬遠されてしまう危険性があるのではないか。
そのことを理事会は恐れます。したがって無条件に近い形で交渉を進める。

こうして雇われた外部招聘の新経営者は、「自分は特権階級」と誤解します。
「現場のお前らに能力がないから、オレが雇われたんだ」という大きな誤認。
軋轢や齟齬を放置してでも経営を再構築しようとする新経営者。
変化に追随するかしないか以前の段階で、意見を封じ込まれる現場教員。
たとえ正しい経営手法を実践したとしても、現場の理解は得られません。

出世の道を断たれるのではないか。自分は配置転換されるのではないか。
自分の権限が奪われるのではないか。既存の権益を失うのではないか。
そんな不安が現場第一線の教員たちの中にも芽生え始めることでしょう。
その現場に生き残れるかどうかで杞憂する卑怯者が、派閥を形成するのです。
社会変化や外の世界を知らない教員は、すぐにこの落とし穴にはまります。



まるで学園ドラマのような、こうしたお決まりの道を進まないために、
私たちは外部から経営者を招へいする際、何に気をつけなければならないか。

一つは、招聘しようとする人物に、こう念を押しておくことです。
「あなたに権限を付与することは可能だが、権威までは付与できません。」
権威は、その人物が真剣に現場の不安を吸い上げ、対応策を示すことで、
現場の教員たちに容認されて初めて発生するものだからです。

第二に、その人物と現場との調整をするパイプ役の教員を決めておくこと。
招聘された経営者と現場との双方が、感情で暴走しないようにするためです。
双方がお互いのことを理解し合わないまま、意地を通しても無意味ですから。
そしてこの役を負わせる教員は、能力ではなく教育理念で選ぶことですね。
欲得ではなく、現場の生徒たちのために命を張る教員を選んでください。

第三に、「経営の建て直し」などという抽象的な表現で招聘するのではなく、
具体的な経営目標や改善点を、招聘する経営者と現場の双方に徹底すること。
ゴールを定めずに持久マラソンを始めさせるから、ルートが混乱するのです。
しかも持久戦である以上、失敗すれば消耗戦以外への発展はありません。
ただしこれは、理事会がしっかりと現場の問題点を把握するのが前提です。

第四に、理事会は招聘した人物に経営の立て直しを丸投げしないこと。
理事会も積極的に関与し、経営と学事との自立バランスを保つのです。
したがって「学事は現場の上長に任せてある」という無責任は許されません。
教育機関である以上、学事と経営は商品そのもの。顧客への責任があります。
大勢の若者の人生を預かっているのだという、命がけの責任感が必要です。



実際には、ここに書いたこと以外にも、それぞれの組織によって、
さまざまな要因によって、現実は変化し続けることでしょう。
その変化をどれだけ先読みできるか、どれだけ瑕疵を未然に防ぐか。
常にそうした意識を理事会、執行部、現場教員が共有できるかがカギです。

関係者全員が理性的に対処できるなら、外部から招聘する必要はないはず。
むしろ全員を一気呵成に巻き込むことより、現場の空気を変えてしまうこと。
理性的に対処しなければ働きにくい空気を作ることが近道です。
残念ですが教員というものは、とかくお山の大将になりたがる癖を有します。
非常体制だということを広く知らしめ、協調せざるを得ない場を作るのです。

協調協働することによって、一つ一つ課題を解決していくしかありません。
そうすれば協調協働こそが改革への最短ルートであることに気付くでしょう。
理事会・執行部・現場教員は、共通の利害の上にあるという認識が必要です。
立場の違いなど、学校を取り巻く経営環境から見れば、微細なものなのです。
まずは学校全体のゴールを明確化することから始めてみては如何でしょうか。



※ 配信が一日遅れになってしまい、申し訳ありません。お詫び致します。




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 【発行者】       【 学園改革を支援する『開窓』】
               スクール・アイデンティティ研究室
                       代表  藤井 宗茂

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