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2008/11/15

学園改革支援の『開窓』

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【 学園改革を支援する『開窓』 -079-】2008年11月号

私立学校の改革をお手伝いするメールマガジンです。
現場の声でトップを動かし、改革を推進するためのヒント集。
改革をゴールにせず、スタートにしなければ意味がありません。
そのプロセスを実現するのは、あなたです!

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○○「混同したから」○○


こんにちは。先月はお休みしてしまい、真に申し訳ありませんでした。


ここ数年の急激な生徒の幼児化に、私の学校はたびたび悩まされています。
たいていの場合、保護者の過保護や過干渉が原因と思われるのですが、
思考するということ自体に拒否反応を示す生徒が増えているように思います。
「褒めて育てる」ことばかりがクローズアップされすぎたのでしょうか。
権利の主張ばかりで義務の遂行が衰退したのは、大人の社会と同じですね。



学校で混同しやすいもの。
公務と私情。規範と強制。指導と命令。自由と放埓。などなどなど。
学校という場は、何かにつけて調整を必要とする厄介な場所ですが、
その調整さえ意味を成さない、不可思議な混同状況が多々見受けられます。

昨今の公立学校改革を見ていますと、浅薄かつ表面的な制度改革ばかり。
しかもそれは、学事の見直しではなく、システムや入試制度だけなのです。
あのような軽薄な制度変更を「学校改革」と呼んではばからない厚顔無恥。
お役所の庶民をだますテクニックには、いつもながら感服してしまいます。

公教育を思いつきで変えてみたり、実験台にしてデータ化してみたり。
そのたびに現場の生徒たちは振り回され、道具のように扱われてきました。
特に「ゆとり教育」以後の学校現場の混乱は、国家的な危機をも招きました。
「学力低下」のひと言で片付けられたこの問題は、底の深さを見せています。

私学への敵対心から、単なる人数集めのための入試制度変更が繰り返され、
本来考えるべき学事の広がりと厚みから、お役所が目を背け続けた結果です。
学識だけに偏った、現場を知らない「有識者」という意味不明な不逞の輩。
そんな連中がこの国の公教育を崩壊させ、子供たちの将来を食い物に。
「有識者」なんかより、教育現場に必要なのは「常識者」なのですが。



そんな公立学校の被害状況を見ていると本当に腹が立つことばかりです。
しかし他人のことよりも、心配なのは私立学校の今後の在り方です。
間違っても「有識者」なるあの生物を育成することに心血を注ぐことなく、
本来の教育の実践に情熱と注意を注ぎ込んでいて欲しいと思います。
思いつきや実験台とは違う、「人間の教育」が私たちの仕事だからです。

ところがここ数年、決してそうとは思えない私学の学校改革も増えました。
マーケティングの手法を取り入れることは大切な意識改革だと思いますが、
ただ単に、人数を集めることばかりに集中している私立学校が多すぎます。
おいしい話で入学意欲を誘い、入学したら型にはめるだけの教育ごっこ。
そんなことにならないよう、学事と入試制度は分けて考えたいですね。

昨今の私学の「学校改革」を見ていますと、制度変更ばかりのようです。
「とりあえず」的なコース変更や男女共学化、中高一貫化、入試方式の変更。
どれも学事そのものの内容を昇華させることを目的とはしていないようです。
「人数がいなければ、やりたいこともできない」という意見も理解できます。
しかし、学校という場の性質から考えると、順序が逆のように思えるのです。

本来は学校として一つの方向性を打ち出し、それを実現するためにこそ、
学校改革がスタートするべきなのですから、制度改変は二次的なはずです。
しかるに昨今、学事改善の前に業態を変更する私学が後を絶ちません。
危機感があるように見えて、実は目先の収入増を狙っただけのこと。
そんな風に思える私立学校が、いくつかあるように思えるのです。



こんな例があります。

ある女子校が共学化して大成功。話題作りにメディアを活用したことが奏功。
たっぷりと宣伝を効かせて、事前の入試説明会でも整理券が必要なほど。
それ以来の数年間、生徒募集には苦労せず、今でも定員充足は朝飯前。
なんともうらやましい限りと言いたいところですが、実は違っていました。

私が息子の小学校へPTAの会合に出掛けた時のことです。
その学校の話題で、保護者の皆さんが盛り上がったことがありました。
「あの学校、共学になって本当にいい加減な仕事に変わったわよね。」
「そうなのよ。昔は面倒見が良かったのにねえ。びっくりしちゃった。」
「生活指導もできてないのよね。子供たちも非常識になったわ。」

今でもメディアでは「勝ち組」として扱われている学校なのですが、
どうやら保護者から見た評価は、決してそうとも言えないようです。
中にはご自身の出身校だということで怒っておいでの方もいたのです。
母校の教育内容が低下すれば、卒業生として怒るのも無理はありません。

この学校、今でも受験生には大人気で、説明会は変わらず大盛況です。
それなのに卒業式への保護者の参加率が減少しているのだそうです。
制度改革に伴い、事前になされるべき学事改善が置き去りになった結果です。
教員の意識改革や、新たなスキルの導入を怠ったことが原因と思われます。
学校内の急激な変化を想定せずに、人数集めに終始した改革だったのです。



これが大学ともなると、その弊害はさらに顕著になると言って良いでしょう。
以前このメルマガでも紹介しましたが、私の関わったある大学の話です。
もともと女子短大だったその大学は、今では共学化して数年が過ぎました。
しかしその学事たるや、軽薄なコース編成で浅くて表面的な教育ばかり。
入試に取り組む姿勢も、子供たちの人生をもてあそぶかのような非常識さ。

受験に当たっては随分とおいしい話を並べ立てて、さんざん引き回した挙句、
いざ他の大学の入試が終わった頃になって受付を拒否するという無礼ぶり。
これはAO推薦でのできごとでしたが、その生徒は結局、浪人したのです。
年が明けた頃に「出願却下」と言われても、一般入試には対応できません。
入試方式が変われば、それ相当の準備が本人にも指導教員にも必要です。

その大学には、その前年、私のクラスの生徒も入学していました。
しかし残念ながら、その生徒も2年生修了時に退学してしまいました。
「実のある教育を受けられなかった」とその本校卒業生は話していました。
本校に来た募集係の先生は、熱心な教育論を私の前で披歴していましたが、
こうなると話の全部が建前だけの嘘っぱちだったのだな、と思えます。

私の怒りを爆発させたその大学には、もう二度と生徒を受験させません。
募集係の先生は何度も本校へ足を運び、私への面会を求めていましたが、
そのたびに私はことごとく面会を拒否し続けました。不愉快の極みでした。
一度だけ進路指導部長が私の代わりに面会しましたが、結果は同じこと。
「不愉快な大学ですね」というのが、進路指導部長の唯一の感想でした。

その進路指導部長から聞いた話では、次のような言い訳をされたそうです。
「共学化して、未体験のカリキュラムが増加したため、授業が手薄に。」
「男子学生の取り扱いに慣れていないので、個別指導が行き届かず。」
「お付き合いのなかった高校さんとの関係が増えたことで手が足りない。」
こんな馬鹿げた教育ごっこに付き合わされた子供たちがかわいそうです。

およそ「大学」とは呼べないその大学は、今では不人気校に転落しました。
当たり前の話です。学事の不誠実さのため、学生からの怒りを買ったのです。
恥を知らないその大学は、きっとまた多くの子供たちを犠牲にしながら、
入試改革と称して表面的な人数合わせに資源と労力を注入することでしょう。
私に言わせれば、制度改革ではなく、単なる「受験料詐欺」という評価です。



学校改革と一言で表現されてしまいがちな、あらゆる変化の盲点。
学校内には矛盾や弊害がさまざま潜んでいるものです。
教員に起因するものであれば、それなりに対策を講じることはできます。
しかし、学校の方針となれば、そう簡単に修正できるものではありません。

忘れてはいけないのが、変化には結果がいずれ発生するということ。
入試制度の改革や、コース再編。共学化に中高一貫化。
生き残りを賭けた苦肉の策とは言え、それなりの責任を伴うのです。
ことに学事の悪化や指導の形骸化は、かえって学校の危機を招きます。
制度の改革と学事の改革を混同しないでください。

私立学校は尊い建学の精神のもとに、その存在意義を示し続けてきました。
その建学の精神を乗り越えていく以上、陰腹を切る覚悟が必要なのです。
「受験生が増えた!」などという目先の変化に踊らされてはなりません。
数年後には、軽薄な混同に対する、社会の手痛い制裁を受けることに。
それを避けるには、学事内容への冷静な先読みと対応が必要なのです。

どうも経営力優先の学校改革が目立つようですが、私学の私学たる所以を、
我々現場の教員がしっかりと捉え直し、執行部に提言し続けるべきですね。
そうしなければ、「金もうけ主義」の汚名を冠する事態に陥ってしまいます。
不況の今だからこそ、「貴校の学事は信頼できる」という評価が必要です。
真の生き残りとは、自らの首を締めないことから始まるのですから。




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 【発行者】       【 学園改革を支援する『開窓』】
               スクール・アイデンティティ研究室
                       代表  藤井 宗茂

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