学園改革支援の『開窓』 −「多様化の虚像」−
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【 学園改革を支援する『開窓』 -069-】2007年10月号
私立学校の改革をお手伝いするメールマガジンです。
現場の声でトップを動かし、改革を推進するためのヒント集。
改革をゴールにせず、スタートにしなければ意味がありません。
そのプロセスを実現するのは、あなたです!
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○○「多様化の虚像」○○
復刊してからというもの、遅配が続きまことに申し訳なく存じます。
なかなか思うように身動きがとれず、ギリギリの毎日を過ごしております。
こういうときに油断すると大きな失敗を招くので、気をつけたいと思います。
ところであなたは、風邪をひいてはいらっしゃいませんか?
ちょっと油断すると朝晩の冷え込みに困らされてしまいますね。
たった一月前、私は海で板乗りに興じていたのですが、もうやめました。
さて今月は、巷で喧伝されている「多様化」について考えたいと思います。
まずはクイズから。
あなたは、「学校の顔」と言われて、だれを思い浮かべますか?
学園の理事長ですか? 学校長でしょうか? やり手の先生?
学園の建物の正面玄関を思い浮かべる方もいらっしゃるのでしょうか。
残念ながら、このメルマガでは、それらはすべて不正解です。
このメルマガを長くご購読くださっているあなたなら、もうお分かりですね。
そう。正解はあなたの学園に通っている生徒・学生ひとりひとりですよね。
私の発想に慣れた読者の皆様は、すぐに正解にたどり着いたことでしょう。
しかし、このような発想は、まだまだ浸透していないのが実情です。
先日、神奈川県の某所で開催された私立学校の入試相談会に出かけました。
もちろん様子見に行ったのではなく、勤務校の入試相談委員としてです。
受験生やその保護者からの推薦入試に関するご質問に答えていました。
ふと人波が途切れたその時、正面のブースの先生方に私の目が留まりました。
女性2人だったのですが、何を思ったのか、突然お化粧を直し始めたのです。
たくさんの学校のブースが並び、大勢の受験生や保護者たちがいる中でです。
いくら自分たちのブースにお客様が来ないからといっても非常識すぎます。
不愉快になった私は声を掛けようと思いましたが、自分のブースにお客様が。
2人は1分もかからずに化粧道具をしまったようですが、残念なことでした。
昨今、「価値観の多様化」の名の下に、自分勝手な人が横行しています。
これもそんな中の一例なのかな、と思うとさびしい気持ちになります。
2人の美しい女性教員は、その後、延々とおしゃべりしていました。
派遣された以上は、権限委譲された重責を感じていなければなりません。
しかしその2人には、そうした責任感らしきものが行動に見えませんでした。
そのブースになかなかお客様が来なかったのは、あの2人だったからでは?
人前で非常識な行動をとる先生とは、話し合いたくないですからね。
もちろんその後も、その学校のブースは閑古鳥が鳴き続けていました。
なぜその学校が世の好評を得られないのか、見えたような気もします。
県境をまたいで不振な評判の立つ学校ですが、これでは恥の上塗りです。
そこで私は、逆説的に次のような考えに至りました。
もしお客様が人前で化粧していた先生と話し合いたくないと思ったのなら、
「あの2人の行動はおかしい」という共通の判断基準を有したことになる。
「人それぞれ」が許される時代になっても、常識の基準は変わっていない。
「人それぞれ」すなわち「価値観の多様化」は虚像なのでは、と。
欧米人と違い、日本人は配慮に満ちているとよく評価されます。
自分自身を主軸として会話を進めていく欧米人とは反対に、
日本人は相手の立場に自分を投影して、相手の立場で話します。
だからこそ、言葉にせずとも以心伝心で思いが伝わるのです。
その国民性から考えても、個人独自の価値観は持ちにくいと思うのです。
そもそも日本人の発想は、自身を絶対化せず、社会的に相対化し、
他者とのかかわりの中で物事を判断し、評価するのが一般的です。
付和雷同的に迎合しやすい性質が、日本人にはあるのかもしれません。
実際に、どのような場面でも「好きにしていいよ」と言われてしまうと、
どんな人でも内心は集団からの疎外に不安を覚えてしまうものです。
ならば教育界はどうでしょうか。学校改革を軸に考えてみましょう。
教育界でも「多様化」が叫ばれ始めて、ずいぶん時間が過ぎました。
私立学校だけでも様々な改革が実施され、各校とも変わりました。
しかし問題は、その改革プロセスと再編された業態にあります。
経益重視の効率化や、奇を衒うような学制改革などが目立ちますね。
カタカナ校名に変更するなどのイメージ戦略も数多く見られます。
産学連携や高大連携もここ数年で流行が見られる改革手法です。
しかし私は、その中の大多数が「改革ごっこ」になっていると思います。
価値観の多様化を標榜して、数多の学校改革が喧伝されてきました。
ところが冷静に教育界を眺めてみると、多様化どころか二番煎じばかり。
募集状況の改善に成功した他校の事例に倣うばかりで独自性がない。
表面的には多様化が進んだように見えますが、それは細則上のこと。
改革の基盤となる発想法は、意外なほど少数パターンに集約されます。
特に共学化と中高一貫化は、その象徴的な例だと言うことができます。
確かに、運用スタイルを見ると各校とも工夫の跡が随所に見られます。
しかしながら基盤となる発想には、それほど明確な差異は認められません。
この状況には、若者のファッション動向に酷似する事実が含まれています。
若者のファッションは個性や独自性の象徴として頻りに採り上げられます。
しかしよく観察すると、実は数少ない数パターンに集約されるのです。
そのパターンを、世間では「なになに系」という表現で括ります。
「アキバ系」、「ウラハラ系」、「ストリート系」、「B系」などなど。
一見個性的とも見える若者のファッションにも、実は「系列」があるのです。
以前流行した「ヤマンバ」「シブカジ」「ハマトラ」も同じことです。
学校改革も「共学系」「一貫系」「連携系」などに集約されます。
多様化と言いながら、実は収斂された狭い枠の中での学校改革。
しかもそのほとんどが生徒不在・学生不在の改革だとしたら?
そもそも学校改革というものは、教員に限らず生徒や学生の中からも、
その機運が高まって全校を巻き込んでいく姿を見せていくものです。
学校側が一方的に押し付けた業態変革など、定着しないのが当然です。
「学校の個性を強化する」と言いながら、実態は模倣にしか過ぎない。
そうだとしたら「操作された価値観」に踊らされた投資でしかありません。
貴重な経営資源を、学校の実情に合わない形で運用することになるのです。
中には建学の精神から遠くかけ離れた改革を進めた学校もあります。
女子教育の理念を謳いながら、いち早く共学化した学校もあるほどです。
以前私は、このメルマガで鼻持ちならない大学のお話をしたことがあります。
ご大層な言い訳を羅列し、共学化による教育品質の低下をごまかすだけ。
もともと女子大であったその大学は、明らかに資源運用を誤っていました。
しかもその理由を学生の資質低下にすりかえて言い逃れをするとは、
まことに見苦しい限りの低劣な教育屋としか呼べないものでした。
学校改革に必要なのは、他校との差別化、すなわち個性の強化です。
独立した一個の学校としての自主性をもって臨まなければなりません。
ただしこの「自主性」という言葉も、不安定な表現と言えます。
社会規範を無視した発想を覆い隠すことさえできる言葉なのです。
学校の「自主性」は、あくまでも生徒の人権と個性の発揮が保障された形で、
公正中立に運用されていかなければ到底認められるものではありません。
「自主性を持て」と生徒に言いながら、価値観を操作する事例があります。
学校または教員が望む形でしか「自主性」を持たせないとすれば虚像です。
その表現が、実は単一理想の押し付けであることは多く見られる現実です。
「自主性」はその性質上、「多様化」の源泉となる可能性を有します。
すなわち変化の創造に繋がるべき、期待度の高い資質とも考えられます。
ただしこれは経営理念上の解釈であり、生徒指導上は逆になります。
なぜなら生徒の「多様化」は、無能力な教員にとって脅威だからです。
ここに経営理念と教育理念とのギャップが生じてしまうのです。
建学の精神から踏み外すことが、果たして「多様化」と呼べるのか。
それを学校の「自主性」だと主張して、ごまかしてはいないだろうか。
しかもその脱線が、単なる他校の模倣に堕しているだけだとしたら。
こんなことを考えると、改革の一歩を踏み出すのは勇気がいるものです。
差別化を想定しながら流行への迎合に堕したのでは、逆効果というものです。
もてはやされる「多様化」ですが、その実態の見極めはきわめて難しい。
虚像を追い、学校改革した結果、学事そのものが虚像に変貌してしまう。
これほど恐ろしい結末は、教育機関として、ぜひとも避けたいところです。
「多様化」の虚像に踊らされることなく、真の「多様化」を実現するには、
生徒・学生の価値観の多様化を、発展的に解釈し、対応する勇気が必要です。
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【発行者】 【 学園改革を支援する『開窓』】
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