原爆資料館のベランダに出て、身を乗り出すように下の方を見るとバスガイドさん達がバレーボールに興じていた
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「日本一周の旅」へ ようこそ!
[西日本編]は続きます。
これからもよろしくご愛読ください。
どうぞ!
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■日本一周旅■‐No.170 (西日本、第51日目)
19xx年5月28日(月)曇り後雨
呉→ 広島→ 岩国(山口県)
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午前6時40分、起床。午前7時55分、そこを離れ、午前8時から15分間、呉
駅に立寄ってみる。
駅構内で、今日の予定として考えていたこと― 広島で午前中一杯ゆっくりと時を
過ごし、いや,午後2時頃までに延びても良いだろう。そして、次ぎの市の岩国では、
確か文藝春秋の「文化講演会」がある筈だ。それを聞きに行こう。
― しかし、予定は予定であって、予定通りにことが進むとは限らない。
呉駅を出発する頃、雨が降り出した。雨を冒してでも出掛けようかそれともどうし
ようか、ちょっと迷ったが、そのまま出発することにした。有難くも途中で雨は止ん
だ。
海岸線に沿って、先ずは広島まで走ってゆこう。心地良い風に吹かれながら、ゆっ
くりと走った。自分の中に余裕みたいな自信が感じられた。
* *
午前9時半、広島市に入る。駅へと通じる道路は工事の連続だ。
20分後、広島駅前に出てくる。広島郵便局横に自転車を置く。駅の建物を見なが
ら、今日こそはまたもヒロシマに来たのだと思った。
高校時代の修学団体旅行で横浜から広島を訪れたという記憶がある。
原爆資料館の中 http://www.pcf.city.hiroshima.jp/index.html を一応見終わっ
て、ベランダに出て、身を乗り出すように見下ろすとバスガイドさん達がバレーボー
ルに興じている。今回の旅行のためにと親に初めて買って貰ったカメラでその若々し
い元気な光景を撮った―― 今はこのように平和な広島なのだということを無意識の
うちも撮影して置きたかったのかどうかは知らない。
館内の重苦しさから館外に目を転じてみたところ余りにも明るい軽い大きなギャッ
プに内心驚いたのだろう。日がとても照っていた。眩しいほどに良い天気だったのを
今でも覚えている。その日も良い天気だったのだろうか。
郵便局玄関前の方へと回って見ると、サイクリング自転車が置いてある。良く良く
見ると何処かで見たことがある自転車だ。もしかしたら、、、、、と周辺を探してい
るいると尾鷲YHで一泊が一緒になった、清水出身の彼が駅の方からとぼとぼとやっ
て来た。一目で分かった。
再会出来たことを喜び、立ったままで、今までどこをどう走って来たのか、云々云
々と色々話し合った。お互いに日焼けして、真っ黒。1ヶ月以上が経っていた。彼は
四国一周が終ってからは山陰地方をずっと回って来たのだそうだ。
午前11時20分、郵便局前を離れ、一緒に平和公園へと行く。雨がまたも降って
来る。資料館の下、自転車を置いて、公園を訪れる人なら誰でも行くであろう、そう、
あの建物 − 原爆ドーム、そして半球を伏せたような建物。
ドーム、それは目の前で見るとレアリティをひしひしと感じさせるものであった。
あの日、ピカッと何かが光ったと思ったら、原爆は爆発した。
想像力を働かせて、当時を思えば、背筋が寒くなる程の震撼を覚えざるを得なかっ
た。ドームを見れば、そんな思いにもさせられる。
また、平和の鐘を鳴らしてみる。響き渡る音に耳を澄ましていると、やはり原爆の
恐ろしさを思い知らされるものがある。二人で歩きながら、思い思いの感想を抱いて
いた。
広島には2日間滞在して、平和を、戦争をこの身で考える。しみじみと、そうした
いと思った。平和とは何なのか? と力む必要などはない。一人一人がこの地を訪れ
れば、そういう思いに至る筈だろう。君はヒロシマを見たか、だ。雨は小降りになっ
ていた。当時は黒い雨だったと聞いている。
午後1時5分、二人して公園を後にし、国道2号線を僕は岩国へと思いながら走っ
て行った。
午後2時10分、彼は宮島に渡って、厳島神社を見るというので、ここで我等二人
は別れた。と同時に、どう言うことか、待ってましたとばかりに雨がまたも降り出し
てきた。本降りだ。思い出さざるを得ない雨の中のサイクリング。尾鷲への道もそう
だった。宇和島への道もそうだった。そして今日は岩国への道、びしょびしょに濡れ
ながらのサイクリング。
午後3時15分、岩国駅に濡れっぱなしのままで着いた。相変わらず降り続いてい
る雨。駅のトイレでトイレットペーパーを上半身巻き付け,寒さを拭き取ろうとした。
午後3時55分、岩国駅を離れ、商店に入ったりして、その間にも上着が乾くのを
ひそかに待った。
* *
午後4時50分、市体育館横に来る。玄関前には講演会開催の開店祝もどき造作が
幾つも立っている。食パン2枚を口に入れた。残りの2枚は明日の朝食用だ。
午後5時22分、会場の中に入る。広々とした体育館内、ステージ前に一遍に4人
腰掛けられる折り畳み式の椅子の連なりが臨時に置かれているといった感じだ。
雨には閉口するが、ここは雨音も全然聞えない。講演会開始までの時間、ただ座っ
て待っている。耳を澄ましても雨音は全然聞こえない。さっきまで雨の中をびしょ濡
れになって走っていたのにまるで遠い昔の出来事のようだ。
午後6時からの開始と思っていたが、午後6時半からであった。宇和島で見たのと
同じ映画「桂離宮」が上映される。
* *
午後7時から、講演会が始まった。
講演予定者の一人、井上ひさし。
天候悪化の為、飛行機が大阪に引き返してしまったとのことで欠席。
吉村昭の「私の取材旅行」。
小説家になる積りはなかった。作文は嫌いだった。自由題で書いた作文が皆の前で
読まれ、嘘を書くことによって人が感動するということを知った。19歳の時、結核
の大手術をやり、文学を志すこととなる。戦争を主題とした作品、それは直に体験し
た人の話しを元に書かれたもので、本当のことを書き残しておく必要があると自分は
感じた、と。
遠藤周作の「小説 − こぼれ話」。
文学を志望してはいなかった。大学受験で偶々、文学部に入れた。戦後直後卒業の
折り、フランスのリオン大学に留学。この頃から自分ながら小説を勉強し始める。
海がいつも見られる船室、農家での生活、信長と黒ン坊。ポルトガル図書館には戦
国時代、宣教師達が本国に書き送った手紙が埃に被って放置されたままであった、と。
* *
午後9時、終了。ほぼ体育館一杯の聴衆であった。ぞろぞろと皆の後、出口へと歩
を進めていると、後方から僕の上着を引っ張る人 − 振り向いたら彼であった。ね
え、今晩は何処で寝るの?
午後9時半、市役所玄関前、並んで寝ることにした。
雨はまだ降っていた。
信号のランプや街燈が鮮やかに光を放っていた。
* *
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次回をお楽しみに!
それでは!
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