2009/10/21
Kojiro's house「トムと愉快な仲間たち」
△▼△ Kojiro’s Houseから発行のお知らせ ▲▽▲ ** 5周年を迎えました!! これも一重にみなさまの応援のお陰です ** ☆★ 新規連載 「トムと愉快な仲間たち」 ★☆ 第一話 ミッキーを町に帰す 第二話 捕えられたトム 第三話 森の大戦争 第四話 トニーの木の子供たち ・・これまでとはちょっと色彩の異なる、子供たちと森と妖精の物語です・・ 2009年10月21日掲載分 第四話 トニーの木の子供たち (5/5最終回) 9、大鷲に乗って & 10、蘇ったトニーの木 尚、掲載を終了した物語はKojiro’s Houseのホームページでご覧いただけます。 ホームページはこちら→ http://www014.upp.so-net.ne.jp/Kojiros-House 「トムと愉快な仲間たち」第四話 トニーの木の子供たち 9 大鷲に乗って チャマが大鷲の羽を大きく振ると、ワ! ナンダ、ナンダ! みんなの身体がふわりと浮 き上がったのだ。そして宙に舞い上がったトムたちが着地した所は太い木の根本だった。 大鷲の棲みかかもしれません。しかし濃い雲の中だから、大鷲の姿など全く見えません。 すると突然、天にも轟くような大きな声が響き亘ったのだった。 ・・私の城にようこそ!・・ それは腹の底まで痺れる雷鳴のような声で、大鷲に間違いありません。 「・・すると、太い木だと思ったのは大鷲の足だ!」 足の大きさから想像しても、大鷲はとてつもなく大きな鳥のようだ。みんな恐怖でいっぱ いになっていた。 しかし怖がってばかりもいられない。トムがここにやって来た理由を話し出した。 「大鷲さん、僕たちを町にいるミッキーの処に連れて行ってください! 砂時計を取りに 行かなければならないのです!」 ・・誰に頼まれた何の砂時計だい?・・ 「年老いたトニーの木のバーバが、トニーの木から作られた20個の砂時計を探していま す。老い先を案じて、砂時計に宿る20人の妖精たちに会いたがっているのです・・・」 するとトムがいきなり上着の襟を摘み上げられて、放り上げられました。他の3人も次々 と摘み上げられて、着地した所はどうも大鷲の背中らしい。 「町に連れていってくれるんだね、ありがとう!」 ・・落ちないようにしっかり掴まっていなさい!・・ 大鷲は一度身体を低く沈め、あとはググッと力強く岩を蹴って、あとは大きな翼をバサバ サと羽ばたくと、勢いよく雲の中に吸い込まれていきました。 それはまるで白い雲の中を走るジェットコースターのようです。綿のような白い雲がトム たちの顔を激しく叩いていく。 「凄い!でも何も見えないよ! 大鷲さんは大丈夫なの?」 ユッペは、視界が全然利かないから、大鷲が何かに激突しないかと心配だった。 ・・心配は、ご無用! 私にはよく見えている・・ 雲の中でも大鷲は透視がきくらしい、どんどん降下していきました。 やがて厚い雲が切れて、下に見えてきたのは鋭く切り込んだ深い渓谷。そして尚も降下が 続くと、谷は次第に大きく開けていた。 「凄い! こんなに奇麗な景色は初めてだ!」 ユッペとチャマは飛行機に乗った事がないから、とても興奮していました。 トムは小さい頃両親と旅行した時に飛行機に乗ったが、どんな景色だったかなんてもう記 憶にありません。やはり眼下の景色に感激していた。 するとグルービーがこんな感想を漏らした。 「僕は村の病院に来る前、この景色を見たような気がするんだ!」 「もしかして、グルービーは大鷲に乗って村に来たんじゃないの?」 「そうかもしれない・・でも、その時のことはよく憶えていない・・・」 記憶が薄れているのはグルービーだけではありません。トムもユッペもチャマもいつ誰と どうやって村の病院にやって来たのか記憶がないのです。町に住んでいた頃のことも、家 が何処に在ってどんな様子だったのか、すっかり忘れてしまったらしい。 大鷲は谷を下りきると速度を落とし、あとは悠々と大空を旋回し始めました。眼下には平 野が広がって、田んぼや町や工場などが箱庭のようにキレイにみえた。 「こんなに美しいなんて、町に住んでいた頃は少しも気付かなかったよ・・」 「そうだ、私は学校の傍に住んでいたんだよ・・」 ユッペが以前のことを思い出したようだった。するとチャマにも記憶が蘇った。 「僕の家の傍には火の見櫓が在るはずさ・・」 「真下に見える河原は、子供のころ遊んだ場所みたいだ・・」 確かな記憶が無くても、みんな昔の頃が無性に懐かしくなっていた。 「もしかしたら、お父さんやお母さんに会えるかもしれないね!」 みな地上に下りられない事は知っているが、お父さんとお母さんの姿を一目見たい気持ち が湧いていた。 すると、大鷲が反転して小学校の上空を周り始めました。 運動場には沢山の子供たちの姿、そして運動場に面した家の窓から上空に向かって手を振 る2つの影が見えたのです。そして大きな翼を広げた大鷲が、ゆっくりとその2つの影に 近付いていきました。 「アレは、お父さんと、お母さんだ! 手を振っている!」 遂にユッペがお父さんとお母さんの姿を見つけたようだ。 それから大鷲は火の見櫓の傍で手を振るチャマの両親の上を旋回して、それから畑で上空 を見上げるグルービーの両親を見つけてくれたから、両親の姿を目にしたユッペもチャマ もグルービーも幸せな気持ちで一杯に満たされたのだった。 「今度はトムの番だよ!」 ところが、トムは自分の家が何処だったのかどうしても思い出せません。 小さい頃ミッキーとよく遊んだから、きっと家も近かったはず。しかしトムは両親の顔さ えよく思い出せないのです。 「確か、ミッキーの家は電波塔が立っている放送局の側・・・」 「それじゃ、先にミッキーに会って砂時計を受取ろうよ。近くまで行けば、トムもきっと 自分の家を思い出すさ」 そこで先にミッキーの家に向かう事になりました。 風の便りならぬ風の電報を送ったから、ミッキーが庭に出て待っている筈です。 大鷲が電波塔の上空を旋回しながらミッキーの姿を探すと、庭先に出てきた少年が手を振 った。 「ミッキーだ!」 あとは降下して砂時計を受取るだけ。しかし大きな大鷲は、狭い庭先にはとても降りられ ません。 「ミッキーに砂時計を放り上げてもらえばいいさ!」 しかし取り損ねたら危険です。大暴れするような砂時計だったら、それこそ大変な事にな るに違いありません。トムたちは皆、どうしていいか分らず、戸惑うばかりだった。 しかし大鷲に迷いはありません、もう急降下を始めていて、ミッキーの家の庭を目掛けて 滑空していきました。屋根や垣根にぶつかりそうになりながら、しかし大鷲は着地する事 もなく再び大きく羽ばたいて上昇したのです。 砂時計を見事受取る事が出来たかどうか、大鷲の背中に乗ったトムたちには分らない。上 空に舞い上がってから下の庭を覗くと、ミッキーの姿がありません。 「オーイ! 僕はココだよ!」 なんとミッキーは大鷲の足にしっかりと抱え上げられていた。 「ワーイ! 元気だった、ミッキー!!」 トムは親友との再会に大喜びだった。 そして砂時計を受取るとミッキーにこのまま一緒に村に行こうと誘いました。友達が増え たら、村の生活がもっと楽しくなるに違いありません。しかしミッキーは少し考えて、や はり町に留まる事にしたようだった。 「・・一緒に遊びたいけど、やっぱり止しておくよ。村に行ったらもう町に戻れないよう な気がするんだ・・・」 「そうだね。お父さんやお母さんと一緒にいる方がいいに決まっている。もし、僕のお父 さんとお母さんに会ったら、よろしく言っといてくれるかい?・・」 やっぱりミッキーを村に連れて帰ることは無理のようです。 「ウン、必ず伝えるよ!」 「きっとだよ!」 トムは両親に会えなかったけれど、親友のミッキーならきっと両親にそれを伝えてくれる はずです。 そして、大鷲はミッキーを庭に下ろすと、大きく羽ばたいてあっという間に上空へと舞い 上がっていました。 ・・・つづく 10 蘇ったトニーの木 トニーの砂時計が全部揃って、それを持ってバーバに会いに行く日がやってきました。 途中、村にただ一軒だけの不思議なお婆さんの店を訪ねると、珍しい事に店が閉まってい る。声を掛けても返事がありません。不思議に思って中を覗くと、陳列棚に商品もありま せん。 「お婆さん、引っ越したのだろうか・・?」 そこで裏の倉庫に回ってみたが、倉庫の中も空っぽです。 「やっぱり引っ越したみたいだ・・」 しかし近くの住人に尋ねても、お婆さんの行き先は誰も知らないようだった。 「仕方がない、お礼は今度会った時に言うとしよう・・」 白い砂時計と金色の砂時計そして透明の砂時計、お婆さんの助けがなければ大鷲に会う事 もミッキーに会いに行く事も出来なかっただろう。トムたちは皆でお礼を言いたかったの です。 トムたちが森にやって来ると、噂を聞いた森の仲間たちが沢山集っていた。 カラスや猪の衛兵たちも、そして長老ドクトニアンの手下だった衛兵の隊長もトムたちに 祝福を言いにやって来た。 「みんなの許しを得てやっと森に戻ってきたが、俺は本当に馬鹿だった。許してくれるか い! バーバに聞いたよ、遂にやったそうだね! オメデトウ!」 「ありがとう。ところで、長老のドクトニアンはどうしているの?」 彼は森の恵みを独り占めしようとして、森の仲間に追われて森を出て行ったが、元はとい えば森の住人です。 「長老だって、トニー族の一員だ。トニーの砂時計が揃ったと聞けば、密かに見に来てい るかもしれないよ・・」 「もう過ぎた事は誰も恨んじゃいない。はやく森に戻ればいいのに・・」 彼も自分の過ちを認めて反省していると、風の噂に聞いたが、まだ皆の前に顔を出せずに いるらしい。 トムたちの到着を知ってバーバがゆるゆると木の根元まで降りてきました。 そしてトムたちが苦労して集めた20個の砂時計を一つずつ確かめると、とても嬉しそう だった。 「トム、ユッペ、チャマ、グルービー、本当にありがとう! トニーの木の子供たちが全 員揃ったから、これで私は安心して死ねるよ・・」 「バーバは、この砂時計をどうする積りですか?」 「そうね、早く子供たちの顔を見たいわねー!」 バーバはやっぱり妖精を呼び出すつもりらしい。 しかしトムは金色の砂時計の事が気になってしようがありません。金色の砂時計の妖精を 呼び出したら、きっと森のパワーをすべて吸い取ってしまうに違いないのです。 「もしも、20人の妖精を此処に呼び出すつもりなら止めた方がいいですよ・・」 「あら、それじゃ砂時計を集めてもらった意味がないわねー・・?」 「トニーの木の妖精は皆とても変わった性格をしています。扱い方も夫々違っていて、中 にはとても危険な砂時計もあるのです・・」 「それは、千年もの間幾多の試練を乗り越えてきたトニーの木だから、誕生した子供たち も様々。でもそれは生きるため身に付けた知恵なのよ。心配は要りません・・」 そう言うとバーバは砂時計を一つずつ積み木のように積み始めたのだった。 バーバは砂時計の秘密を何も知らないようだ。トムが慌てて止めた。 「バーバ、本当に危険なんです! 特に金色の砂時計は!」 「ほ、ほ、ほ、心配はご無用。私はトニーの木のバーバ、昔から皆にそう呼ばれてきまし たよ・・」 危険を訴えるトムの言葉を無視して、砂時計を一つずつ積み上げていきました。 だんだん高く積み上げられた砂時計は塔のように立っているが、安定せずゆらゆらと揺れ ていて、バーバを取り囲んだ森の仲間たちも、それが崩れはしまいかとハラハラ、砂時計 の塔から目が離せません。 そして遂に、残るは白い砂時計と金色の砂時計と透明の砂時計の3つになったのです。バ ーバが手にしたのは白い砂時計。それは風の精です。もし塔が崩れたら、さぞかし強烈な 突風が吹き荒れるに違いありません。 しかし塔はゆらゆらと揺れながらも倒れずに持ちこたえていた。 あと残るは2つ。次にバーバが手にするのは金色の砂時計かそれとも透明の砂時計か、ト ムの目はバーバの指先に釘付けだった。トムだけではありません、森中の仲間が息を止め 固唾を呑んで見守っている。 するとバーバが選んだのは透明の砂時計。それは水の精です。しかしそれも、倒れたら大 変、滝のように激しく水が流れ出すかもしれません。 バーバが透明の砂時計をそっと塔のてっぺんに乗せると、塔が大きく傾きかけて、しかし 辛うじて踏み止まったようだった。 残るは金色の砂時計だけ。砂時計が動き出して金色の砂が流れ出したら、森中が金色に染 め尽くされるに違いありません。それは森に生きる草木や生き物たちの生気を吸い取り、 森は死滅してしまうのです。 バーバが最後の砂時計を手に取ると、森は小鳥の声さえ鳴き止んで、死んだように静まり 返った。そして、今正に最後の金色の砂時計を塔のてっぺんに乗せようとしていました。 トムは胸に手を当てて一心に祈るしかありません。 ・・奇跡がおきて、何事も起きませんように! 起きませんように!!・・ てっぺんに金色の砂時計を乗せた塔は、前よりも更に大きく揺れて、時には弓なりになり ながらいつまでも揺れていた。今にも倒れそうになりながらも、しかし辛うじて倒壊せず に踏み止まったようだった。 それと同時に、トムが恐れていたように金色の砂が少しずつ落ち始めていた。するとどう だろう、金色の砂時計だけではありません、すべての砂時計が一斉に時を刻み始めたので す。そして20個の砂時計が一斉に動き始めたから、落ちる砂の音が優しいハーモニーを 奏でている。そして周りの木々の間にトニーの木の妖精たちが次々と現れて、踊り出した のだった。 トニブルやアカトニーやピーター、そしてブラットニーの姿も。砂時計の揺れに合わせて 妖精たちが楽しそうに踊っていて、森の仲間たちもみんな陽気に踊り出していた。 やがて砂時計が時を刻み終えるといつしか妖精たちの姿は消えたが、陽気な森の仲間たち の踊りは続く。 その間トムは、金色の砂時計の事が気になってずっと地面を見つめていました。ところが 金色の砂が森に染み亘っていった様子がありません。その代わりに、砂時計の塔から伸び ていたのは木の根のようだった。 そして砂時計の塔も、さっきより高く伸びたような気がしてなりません。よく見ると、砂 時計の塔が木になって太く高く成長している。そしてトニーの木は瞬く間にズンズン大き くなって、昔のように森の広場に高々と聳え立ったのです。 「なんて事かしら! トニーの木が蘇ったわ!」 バーバは感激して蘇ったトニーの木に抱きつき、その目にはいっぱいの涙が溢れて止まり ません。 「万歳!!万歳!! トニーの木が帰ってきたぞ!!」 それはもう、森中が喜びで湧きかえったのだった。 やがて森に元の静けさが戻ると、そこには砂時計もバーバの姿もありません。大きなトニ ーの木だけが立っていた。 「さっき、店のお婆さんを見つけたよ!」 ユッペがそう言う。 ユッペだけではありません、トムもチャマもグルービーもそれに気付いていました。 不思議な店のお婆さんも、きっとトニーの木の妖精だったに違いありません。 トムと愉快な仲間たち 第四話 トニーの木の子供たち END 発行者Webサイトhttp://www014.upp.so-net.ne.jp/Kojiros-House このメールマガジンは「まぐまぐ」http://www.mag2.com/ を利用して発行しています 配信中止はこちらhttp://www.mag2.com/m/0000132809.htm
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