2009/02/14
ファンタジー長編小説「紅龍の夢」第233号
≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≫≪≫≪≫≪≫ *.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.: \ \\☆ \ \ \\ ┃フ┃ァ┃ン┃タ┃ジ┃ー┃長┃編┃小┃説 \ ★ \ ┃紅 ┃龍 ┃の ┃夢 ┃第233号 *.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.: ≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≫≪≫≪≫≪≫ □ 巻の六 ── 死の花嫁 / The Bride of Death ── ◇第23回 *……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*…… 5.闇の誘惑(4) この意ある宝石達にとって“真の自由”とは、“死”、つまり自身の破壊を 意味するようなところがあることに、タナトスは気づき始めていた。 眸達がそう思い込んでしまった理由の一つは、魔族が代々、事実上不死で ある彼らを呪縛し、自由を奪って来たせいもあるのだろう。 長い年月が過ぎ行くうちに、いつしか彼らは、解放されることを諦め、自身 を元素へと変換させて地中に融けていくことを夢見るようになってしまったの かも知れなかった。 タナトスには到底、理解しがたいことだったが。 かつては、常に自分に付き随っているのが当然だった、魔界の王権の象徴と された“焔の眸”……生き物のように考え、行動する鉱物の化身。 その少女めいた美貌を見ながら、タナトスは口を開いた。 「ふん。いい覚悟だが、それに成功したとしても、ヤツは廃人になるのでは ないのか。現状でさえ、正気を保つのに苦労しているのだろう。 俺はいい気味だと思うが、貴様はどうだ? 真実あほうに成り果てたあやつを見て、平気でいられるのか?」 痛いところを突かれたダイアデムは、青くなった。 「えっ、そ、そうなっちまうかもしんねーけど……。 サマエルがどうなっちまっても、オレは頑張って面倒見るよ……」 プロケルは首を振った。 「いけませんな、ダイアデム殿。いかにサマエル様ご自身の仰せでも、手を こまねいている場合ではありませんぞ、ぜひともお助けに参らねば。 タナトス様、ここまでお尽くし下さる弟君を、見殺しにしたとあっては 末代までの恥でありますぞ。 微力ながらそれがしもお手伝い致しとう存じます、第一、魔界王家の末席に 連なるものと致しましても、ご先祖様に申し訳が立ちません!」 「そうだな。面倒だが致し方あるまい。 “カオスの貴公子”だからといって、“黯黒の眸”のすべてをかぶる必要も なかろう。行ってやるとするか」 「だ、駄目だよ、サマエルは一人でやるって……」 それでも止めようとするダイアデムを、タナトスは見据えた。 緋色の瞳が強く燃え上がり、命令することに慣れた声が辺りに響き渡る。 「黙れ! すぐ死にたがるあのたわけ者を、伴侶である貴様が止めずして、 誰が止めるのだ!? それとも貴様は、サマエルの死を望んでいるとでも言うのか! 今すぐ案内しろ、“焔の眸”! 我が弟の元へ!」 「な、何でオレが、サマエルを死なせたがらなきゃなんねーんだよ!? こっちだ、早く!」 ダイアデムは、ぱっと立ち上がり、駆け出した。 タナトスとプロケルは急いで後を追う。 先行する“焔の眸”の輝きに導かれ、魔界王と元魔界公爵は、憑かれたよう に暗闇の中を走り続けた。 「いた! あそこだ!」 少年が指差す先、青白い光を発する魔法陣の中に、黒衣の美女が横たわり、 そしてすぐそばには、第二王子が倒れていた。 「サマエル!」 夫の体に取りすがったダイアデムは、青ざめた。 すでに息がなかったのだ。 「死んじゃヤだ! ずっと一緒にいるって約束、破る気かよぉ! ──オルゴン!」 「殿下! ──オルゴン!」 プロケルも大急ぎで魔力を送った。 そんな二人には眼もくれず、タナトスは、最愛の女性に駆け寄った。 「無事か、ニュクス!」 揺さぶられて、黒衣の美女は薄く眼を開けた。 たゆたう漆黒の瞳がようやく魔界王を捉え、色あせた唇がかすかに動く。 「あ、あ、タナ、ス……最期、一目、会い、たいと……う、れし……」 「しっかりしろ! 貴様は俺のものだ、許可なく消滅するなど、許さんぞ!」 「デ、モ、一人、デハ、淋シ、イ、一緒、ニ……」 「何だ? よく聞こえんぞ」 タナトスが口元に耳を近づけた、そのとき。 ニュクスの眼がいきなり大きく見開かれ、その手が彼の首に掛かり、きつく 締め上げた。 「な、何をする!? く、放せっ!」 「ニュクス殿、おやめなされ!」 プロケルがそれに気づき、ニュクスの手を外そうとするが、女とは思えない すさまじい力で、どうしても振り解くことができない。 一方、“焔の眸”の祈りは天に通じ、どうにか第二王子は蘇生した。 まだ意識はなかったが、呼吸も心臓も元通り動き始めた。 「はぁぁ、間に合ったぁ……!」 額の汗をぬぐったダイアデムの眼に、もみ合う三人の姿が映り、彼は急いで 老公爵に思念を送った。 “オレに任せろ! サマエルを頼む!” “──は!” 素早くプロケルと入れ代わった少年は、ものすごい形相でタナトスの首を 締め上げている凄艶(せいえん)な美女の背後に忍び寄り、頭に触れた。 「ぎゃっ!」 青白い火花が炸裂し、悲鳴を上げて倒れかかる兄弟の体を、宝石の化身は 魔力で支え、静かに床に横たえる。 やっと解放されたタナトスは、くっきりと手の跡がついた首に手を当て、 激しく咳き込んだ。 「うっ、ぐふっ、ごほっ、はぁっ」 「大丈夫かよ、タナトス」 「タナトス様、おケガは!」 駆け寄ろうとするプロケルを、タナトスは手を振って押し留める。 「大、丈夫だ、プロ、ケル、あれくらいで、やられる、俺ではない」 「それはようございました」 プロケルは胸をなで下ろす。 「礼を言うぞ、ダイアデム。……ふう。だが一体、なぜ……」 タナトスは、肩で息をしながら尋ねた。 「ああ、テネブレの意識に支配されたんだよ。 化身としちゃヤツの方が長いし、お前を道連れにしよって思ったんだろ。 お前、テネブレにも気に入られてるみてーじゃん」 「くそっ、ヤツの仕業か! 俺は心中など望んではおらん、共に生きて楽しい思いをしたい、とは思うが。 俺にとって人生とは楽しむことだ。 まだ俺は、楽しみ尽くしてはおらんからな」 タナトスはニュクスの息を確かめ、意識を失っているだけと知ると、安堵 した。彼女のドレスの乱れを直し、髪を優しくなでてやる。 「はん、さっすがは“この世の君主”、生きることにいっつも前向きだよな。 けど、ニュクスが特別だってサマエルが言った意味、分かっただろ。 最初にお前が感じた通り、こいつはヤバイんだ。んな嫁さんもらったら、 命がいくつあっても足りやしねーぜ、やっぱ諦めた方が……」 暗い口調のダイアデムの言葉を、タナトスは最後まで言わせなかった。 「黙れ! ニュクスが一人前になるまで面倒を見ろと言ったのは、貴様だぞ! 今さら途中で、放り出せと言うのか!」 「あん時はそう言ったけどさ。んなことになるなんて思わなかったし。 けど……本気なんだな、お前」 「当たり前だ! 俺はサマエルのように、好きでもない女に甘い言葉を掛ける 気にはならん、偽りの恋などいらんからな」 タナトスはきっぱりと言い切った。 ダイアデムは、かつての主人……魔界王に選んだ男の顔を、初めて見るかの ようにまじまじと見つめた。 「ふうん。そんなに真剣に“黯黒の眸”のこと思っててくれてたのか。 なら、話は別だ、オレが引き受けるよ、残りの闇の力を。 そうすりゃテネブレは、オレの中に封じておける」 「い、や……そ、れは、あまり、勧められ、ないね。テネブレが、お前を、 乗っ取ってしまう、ことも、あり得る、から」 その時、かすれてはいたが、聞き慣れた声が聞こえてきて、一同は、はっと した。 「サマエル!」 「殿下、ご無事で……」 妻と元公爵に助け起こされて、サマエルはゆっくりと立ち上がる。 「ありがとう、心配を掛けたね、ダイアデム、プロケルも」 「サマエル、オレのこと分かるんだな? 頭、おかしくなってないな?」 「分かるとも。いつもと同じ程度にしか狂っていないよ。幸か不幸か、ね」 「──バカ!」 胸に飛び込んで来た妻を、サマエルは受けとめて微笑んだ。 「すまないね、また死に損なってしまった。 駄目男を相手にする苦労は、まだ当分続きそうだよ」 「るせー、オレを置いて逝(い)くな!」 震え声で叫び、少年は彼にしがみつく。 「ああ。すまなかった」 そんな弟夫婦に、複雑な視線を注いでいたタナトスは、つかつかと近づいて いき、冷ややかに声をかけた。 「サマエル、貴様! 何ゆえ、主たる俺に一言の断りなく、“黯黒の眸”を連れ出した?」 サマエルは顔を上げもせず、静かに尋ね返した。 「彼に聞かなかったのか?」 「大方は聞いた。しかし、初めに言えばすむことではないか!」 「一刻を争う状態だったからね」 「それに致しても、ちゃんと説明して頂きませんと、我らも困惑致しますぞ、 サマエル様。 お聞き及びの通りタナトス陛下は、心より“黯黒の眸”殿を想っておられる のですからな」 プロケルが口を挟んだ。 「“陛下”はよせと言っているだろう、プロケル」 タナトスが苛立たしげに言う。 まだ、やらなければならないことが控えている、早く終わらせてしまおうと 思ったサマエルは、心満たされる妻の温もりから身を離した。 「ダイアデム、後でまたちゃんと話し合おう。タナトス、説明も後だ。 ニュクスが眠っているうちに“闇の力”を封印しなければならない……が、 私はもはや飽和状態だ。 本気で彼女を、娶(めと)る気があるのなら、残りの力を引き受けてはくれ まいか」 「分かった。だが後で一発殴らせろ、気が治まらん」 「ご随意に、兄上。いえ、魔界王陛下」 「貴様、またそれか!」 「タナトス様……」 「ちっ!」 プロケルにたしなめられたタナトスは舌打ちし、顔をしかめつつも急いで テネブレを封じる呪文を唱え始めた。 「──闇に属する者、“黯黒の眸”の第一化身テネブレよ、その身邪悪にして 魔界に仇なすものなれば、“闇の貴公子”たる魔界の王、黔龍王サタナエルの 名に於て、汝の身を永久に封じる。 我が魔力の一部となりて、我が体内で久遠の眠りにつくがよい、テネブレ! ──サムナス!」 「ぎゃあああ!」 苦しみ悶えるニュクスの体から、黒い煙状のものが立ち昇る。 細く曲がりくねった角を持つ禍々しい姿のそれは、すぐに崩れ、魔界王の 体内に吸い込まれていった。 「うわっ! く、くそっ、何だこれは……!」 直後、タナトスは、体を二つに折って苦しみ出した。 「ど、どうなされたのです、タナトス様!」 とっさにプロケルが彼の体を支える。 サマエルは、にっこりした。 「ああ、うっかり教えるのを忘れていたよ。 “黯黒の眸”は、神族の手によって創られ、さらに永の年月、魔界の神殿に 祭られていた貴石。弱ってはいても、単純な呪文で封じるなどできはしない。 結界を使うのも、知っての通り不十分。 私のように体内に吸収し、同化するのが確実だが、そのためには“闇の力” ……負の感情の集合体と戦い、従わせなければならない。 お前の中にあるのは、“黯黒の眸”が集めた力の極々一部、私のものよりは 遙かに屈伏させることはたやすいはず、少しばかり苦しいが、愛する女性を 得られるのなら、安いものだろう?」 「貴様! うっかりだと! うわ……!」 つかみかかろうとしたタナトスの手は空を切り、がくんと膝をつく。 「タナトス様!」 「うるさい!」 手を貸そうとするプロケルを振り払い、タナトスはよろよろと立ち上がる。 「ま、魔界の王ともあろうものが、これしき……!」 to be continued... ====================================================================== ◆ 後記 ◆ ---------------------------------------------------------------------- ぽかぽかと暖かい日が続いているのに、なかなか風邪が治りません。 熱はないんですが、なんかだるくてねむくて、ちょっと困ってます。 冬眠したい気分(笑)。 ---------------------------------------------------------------------- アルファポリス、HPとWEBコンテンツランキングに参加しています♪ ↓どうぞ応援(クリック)お願いします(毎日でもOK) m(_ _)m↓ http://www.alphapolis.co.jp/site_access2.php?citi_id=200061015 http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=875003507 ネット小説ランキングに参加中☆ ↓よろしければ、投票お願いします(お一人月一回です) m(_ _)m↓ http://nnr2.netnovel.org/rank05/ranklink.cgi?id=aw72sqon ---------------------------------------------------------------------- ■発行者 :流河 晶 ■マガジン名:紅龍の夢 ■マガジンID:0000131099 ■発行周期 :週刊 ◎バックナンバー: http://archive.mag2.com/0000131099/index.html ◎発行者Webサイト: http://www12.ocn.ne.jp/~tower/ ◎ご意見・ご感想・連絡等はコチラ: http://www12.ocn.ne.jp/~tower/mailform.html ◎メルマガ配信中止はコチラ: http://www.mag2.com/m/0000131099.htm このメールマガジンはインターネットの本屋さん「まぐまぐ!」 http://www.mag2.com/を利用して発行しています。 Copyright (C) 2004-2009 流河 晶 All rights reserved. ※メールマガジン内の文章等を無断複製・転載することを禁じます。 ======================================================================


