2009/01/31
ファンタジー長編小説「紅龍の夢」第231号
≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≫≪≫≪≫≪≫ *.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.: \ \\☆ \ \ \\ ┃フ┃ァ┃ン┃タ┃ジ┃ー┃長┃編┃小┃説 \ ★ \ ┃紅 ┃龍 ┃の ┃夢 ┃第231号 *.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.: ≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≫≪≫≪≫≪≫ □ 巻の六 ── 死の花嫁 / The Bride of Death ── ◇第21回 *……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*…… 5.闇の誘惑(2) 「プロケル、貴様!」 ニュクス共々、地下迷宮から強制的に出されたタナトスは、元公爵に食って かかった。 しかし、この王に怒りをぶつけられることに慣れていたプロケルは、特に うろたえることもなく、うやうやしく頭を下げ、詫びを入れた。 「申し訳もございませぬ、タナトス様。されど、年寄りになりますると気が 短うなりましてな。 一刻も早く、ご無事なお姿を拝見致したいがゆえの我がままでございます、 平にご容赦……」 サマエルも、にっこりしながら老公爵に加勢する。 「二人きりでいたかったところを悪いが。タナトス、問題は、まだすっかり 解決したというわけではないのでね」 「それによぉ、タナトス。オレが見たトコ、お前、エサやり過ぎだぞ」 「何を言う、これしきのことで……!」 ダイアデムの言葉に、魔界の王は勢いよく振り向く。 途端に足元がふらついて、両足を踏ん張らなければならならなくなり、彼は 面食らった顔をした。 「くっ、ど、どうしたのだ、力が入らんぞ……?」 「タナトス様!」 プロケルが急いで彼を支える。 ニュクスもまた、おろおろと主に取りすがった。 「タ、タナトス、すまぬ、妾が吸い過ぎたせいで……」 「ほらみろ。ま、最初は加減が分かんねーのも無理ねーけどな。 サマエルだってさ、初めの時は飢え過ぎてて、オレの力をほとんど全部吸い 取っちまって。 その上、オレをベッドに押し倒してさー、あん時は、さすがに参ったぜ」 第二王子は焦り、妻の言葉をさえぎった。 「ダイアデム、よ、よしておくれ、こんなところで、人聞きの悪い……!」 「ホントのことじゃん。 へへ〜ん、逃げられないオレにその後何をしたか、みんなの前で言って やろーかぁ?」 「……どうして? なぜ、今頃になって、そんな昔のことを蒸し返すのだね? そんなに私に、恥をかかせたいのかい……?」 サマエルはうなだれた。 そんな彼のフードの奥を覗き込み、ダイアデムは念話を送った。 “お前がヤバイこと考えてっからさ。 今は私情を挟むのは禁物だぜ、魔界のことだけ考えてくれよな” 一瞬心臓の鼓動が激しくなるのを覚えたサマエルだったが、彼も魔界の王子、 それを心の声にさえ現さない。 “何のことだね? さっぱり分からないが” “ごまかしたってダ〜メ、お前とは長いつきあいなんだからよ、バレバレだぜ。 さっき、タナトスが迷宮に入ったときさ。 このまんま、入り口塗り込めて『暗黒の瞳』に取り憑かせ、一生閉じ込めて やろーかとか、アブねーこと考えてたろーが? 邪魔んなるようなら、プロケルもまとめて始末しちまえ……とかさ” 今度こそサマエルは、息が止まりそうになった。 心の中で一つため息をついて気を取り直し、彼は妻に返事をした。 “やれやれ、お前には隠し事ができないね……。 お前の言う通り、たしかに一瞬だけれど、そう思ってしまったことは認める よ……あ、それでさっき私にキスしたり、即刻タナトスを呼び戻すよう、主張 したりしたのだね?” “そーそ。お前ってば、殺気立って、超ヤバイ顔してたぜ。 だから、腹が膨(ふく)れりゃ少しは気が和(なご)むかなーとか思って、精気 をくれてやったんだけどよ。 ……ったく、困ったもんだ、そんなに憎いのかよぉ、たった二人の兄弟 だってのにさ?” ため息まじりの妻の念話に、サマエルもまた諦めたように答える。 “お互い様さ、タナトスもそう思っているのだからね……” その時、気遣わしげにタナトスを介抱していたニュクスが、顔を上げた。 「なれど、“焔の眸”、サマエルは、おぬしに何をしたのだ? 後学のために聞いておきたい、教えてはくれぬか」 その問いかけに、弱り切ってプロケルとニュクスに支えられていたにも関わ らず、タナトスはにやりとした。 「そうだな、俺もぜひ聞きたいものだ。詳しく聞かせろ、ダイアデム」 「へへぇ、そんなに聞きたい? じゃあ、教えてやるよ」 「やめておくれ、ダイアデム、お願いだから、あの時のことは、もう……!」 サマエルの哀願も気に止めず、ダイアデムは話し始めた。 「こいつはな、ベッドにオレを押さえ込んで、もー一度唇を合わせて来たのさ。 オレは、もうダメだって覚悟を決めた。魔力すっからかんにされて、消され ちまうんだって……。 けど違ってた。オレを押さえつけたのは、女を振るための芝居だったんだぜ、 あきれたことに。 その女ってのが、ライラ。今のリオンの恋人さ」 「ライラ? ……ああ、イナンナの子孫で、彼女に瓜二つの女性だったな。 だが、本当にそれだけか?」 タナトスは、疑いの眼差しをサマエルに向ける。 ダイアデムは、かつての主人に言い返した。 「へっ、ンな偉そーに言える立場かよ、お前?」 「なに?」 「お前こそ、オレにしたこと忘れたのか、ってゆってんだよ! あの、魔界王になった日の夜、お前はオレをどうしたんだっけな!?」 途端に、タナトスの顔から血の気が引いた。 「あ、いや、それは……」 「どうした、タナトス、顔色が悪いぞ。 どうやら身に覚えがあるようだな……?」 彼らの間に何があったか、とっくに聞いて知っていたサマエルだったが、 わざと冷ややかな視線を兄に送った。 ダイアデムもそれに便乗して、わざとらしくサマエルにすり寄っていく。 「そーなんだ、サマエル。聞いてくれよぉ。 あん時、こいつときたらさぁ、オレを……」 「よ、よせ、ダイアデム! 貴様こそ、サマエルに知られればまずいのだろうが!」 「へん、男らしく認めろよ。お前、魔界の王なんだろ!」 「妾も聞きたい。“焔の眸”はこの通り、正直に話してくれた。 それにおぬしは妾に、『何でも聞いてくれ、ちゃんと説明するから』と申し たのではないか?」 ニュクスまでが口を出すと、タナトスは唇を噛んだ。 「くっ、そんなに聞きたいなら教えてやる! 俺は、戴冠式の後、ダイアデムを寝室に呼び出し、夜伽(よとぎ)をさせたの だ! あの時の仕返しがしたいのだろう、“焔の眸”! 貴様が吐き、泣き出してしまうまで、嫌がっていながら抵抗できずにいた ことに、俺は気づきもしなかったのだからな!」 そこまで言うと、タナトスは、淋しげな微笑みを浮かべ、ニュクスの漆黒の 瞳を見つめた。 「俺に愛想が尽きたろう? せっかく戻って来てくれたのに、こんな話を聞い たのではな……」 「何ゆえ愛想を尽かさねばならぬ? おぬしは魔界王、我ら“眸”の主人。 その話ならば、すでに聞き及んでおったし、第一、主人が下僕に夜伽を命じ たとて、何の不具合がある?」 きょとんとした顔で“黯黒の眸”が答える。 続けてダイアデムが言った。 「サマエルもそう言ってくれたぜ。それに、たとえ、進んで身を任せたんだと したって、過去のことは気にしないって」 「ダ、ダイアデム──サマエル……貴様ら、俺をはめたな……!」 歯ぎしりをしながら、タナトスは二人を睨みつける。 それに答えるサマエルもまた、苛立ちが声に出るのを隠そうともしなかった。 「そう、たしかにとっくの昔に聞いていたさ。だが仕返しをしたくなったのは 私で、ダイアデムはそれに乗っただけなのだから、彼を責めないで欲しいね。 それにしたところで、考えてもみるがいい、いくらしもべだからと言って、 後宮の女性でもない者の意志も確かめずに夜伽をさせるとは……。 魔界では身分制度は絶対だ、彼が拒否できるわけがない。お前は傲慢過ぎる のではないのか?」 常日頃、誰かに誤りを指摘されても決して反省などしないタナトスも、今回 助けてもらったこともあり、また、自分の身に置き換えてみれば、弟の腹立ち ももっともだと思った。 「分かった。ならば改めて謝罪しよう、許してくれ、ダイアデム」 そう言って、彼は頭を下げる。 紅毛の少年は、首を振った。 「もー千二百年も前のことだし、オレは気にしてねーけどよ。 でも“黯黒の眸”のことは、下僕だなんて思わないでくれよな」 「当然だ、妃のことを僕(しもべ)などと考えるわけがなかろう」 苛立たしげに、タナトスは答える。 「おお、もう夜が明けて参りましたぞ。 お体も心配でございます、少し休息を取られてはいかがですかな、タナトス 様」 プロケルが口を添えると、虚勢を張っていたものの、実際はかなり弱って いたタナトスはその気になった。 「そうだな。少々休むとするか。他のことは、体力が戻った後だ」 次の瞬間、サマエルは突如ニュクスの手を取り、引き寄せて抱き上げた。 「いい機会だ。お前が休んでいる間……明日の朝まで彼女を貸してもらうよ、 タナトス」 「サ、サマエル、何を致す!? 降ろせ!」 「いいから、大人しくしておいで、ニュクス」 サマエルはもがく“黯黒の眸”の化身をがっちりと押さえ、決して降ろそう とはしなかった。 「ニュクスに何をする、貴様! ……く!」 驚いたタナトスが、二人のそばに寄ろうとするが、足に力が入らない。 「では、ごきげんよう、兄上。──ムーヴ!」 暴れる美女を抱いたまま、サマエルは呪文を唱え、消え失せた。 消える寸前、弟の唇に、意味ありげな微笑みが浮かんでいたのを、タナトス は見落とさなかった。 「くそっ、サマエル、どこに行きおったのだ!」 魔界王は叫び、後を追おうとするものの、弱り切った体では、自力で立って いることもおぼつかない。 「あ、あいつめ──! 俺はちゃんと謝ったではないか! それなのに、なぜニュクスをさらう!」 ダイアデムは再び、不良少年のような質(たち)の悪い笑いを浮かべた。 「分かんねーのかよ、タナトス。 あのセリフ、お前がジルを借りたときとおんなじだぜ……?」 「くそっ、なんて根暗なヤツだ、俺がジルにしたことを、まだ根に持っていた のか!?」 「それに致しましても、それがしめには分かりかねますな。 わざわざ手を貸して下さり、せっかく“黯黒の眸”殿が無事戻ったと言うの に、何ゆえサマエル殿下は、かようなことをなされるのか……?」 琥珀色の瞳を曇らせて、いぶかしげにプロケルがつぶやく。 その疑問は、同時に魔界王のものでもあった。 「たしかにな。最初から、ヤツが自分で地下へ行った方が手っ取り早いはずだ ……というか、元々ヤツは、“黯黒の眸”から力を得たのだぞ、今さらニュク スを手に入れて、どうする気なのだ……?」 首をかしげていたタナトスは、紅毛の少年と眼が合うと残りの力を振り絞り、 紅い眼に凶暴な光をたぎらせて、彼に詰め寄った。 「ダイアデム、ヤツはどこに行ったのだ、貴様は知っているのだろう! さっさと教えろ! さもないと、俺は貴様を……!」 魔界王の剣幕に臆(おく)した風もなく、けろりとダイアデムは答えた。 「さもないと、どうするってんだ? 念のため言っとくけど、またオレに何かしたら、サマエルのヤツ、今度こそ マジギレして、“黯黒の眸”を粉々にしちまうぜ?」 「何だと貴様!」 タナトスは荒っぽく、少年のえり首をつかんだ。 to be continued... ====================================================================== ◆ 後記 ◆ ---------------------------------------------------------------------- 先日、変わった夢を見ました。 いえ、夢と呼べるかどうかも怪しいんですが。 ぐっすり寝てたところに、いきなりこんな声で眼が覚めたんです。 『僕はいつも誰かを……何かを見守ってなきゃいられない性質(たち)なの』 ──え? 何? 誰? がばっと起きて、見回しましたが、誰もいるはずがなく、ちょっとキツネに つままれたような気分でした。 声自体、ものすごくはっきりしていたものの、耳に聞こえてきたというより は、自分の心の中に置かれていったような感じ? でして。 普通、夢の中で声が聞こえるときは、その前に一応何か出来事があって、 夢の中の人物がしゃべる声が聞こえるもんだと思うんですが。 その声はまったく唐突に聞こえて来て……何だったんでしょうね? やっぱり夢、でしょうか? ところで、暖かい冬だな〜って思ってましたが、昨夜からいきなりどか雪! さっき大きな除雪車が、家の前を通って行きました。 様子を見ようと窓を開けたら、吹雪の中、見慣れない小鳥が一羽、家の前で じたばたしてました。 別にケガしてるわけじゃないみたいなんですが、常時すごい風がふきつけて るので、飛べなくなってしまったようです。 そのうちに、何とか飛んでいきましたが、大丈夫かな。 インフルエンザも、あちこちで猛威を振るってるみたいですね。 今年のはタミフルも効かないようだし、困ったもんです。 高熱が出た後って、二週間ぐらいは体の調子が戻んなくって大変ですからね。 今のところ、私の近くでは流行ってないみたいですが、皆さんもご注意を。 ---------------------------------------------------------------------- アルファポリス、HPとWEBコンテンツランキングに参加しています♪ ↓どうぞ応援(クリック)お願いします(毎日でもOK) m(_ _)m↓ http://www.alphapolis.co.jp/site_access2.php?citi_id=200061015 http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=875003507 ネット小説ランキングに参加中☆ ↓よろしければ、投票お願いします(お一人月一回です) m(_ _)m↓ http://nnr2.netnovel.org/rank05/ranklink.cgi?id=aw72sqon ---------------------------------------------------------------------- ■発行者 :流河 晶 ■マガジン名:紅龍の夢 ■マガジンID:0000131099 ■発行周期 :週刊 ◎バックナンバー: http://archive.mag2.com/0000131099/index.html ◎発行者Webサイト: http://www12.ocn.ne.jp/~tower/ ◎ご意見・ご感想・連絡等はコチラ: http://www12.ocn.ne.jp/~tower/mailform.html ◎メルマガ配信中止はコチラ: http://www.mag2.com/m/0000131099.htm このメールマガジンはインターネットの本屋さん「まぐまぐ!」 http://www.mag2.com/を利用して発行しています。 Copyright (C) 2004-2009 流河 晶 All rights reserved. ※メールマガジン内の文章等を無断複製・転載することを禁じます。 ======================================================================



