2009/01/17
ファンタジー長編小説「紅龍の夢」第229号
≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≫≪≫≪≫≪≫ *.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.: \ \\☆ \ \ \\ ┃フ┃ァ┃ン┃タ┃ジ┃ー┃長┃編┃小┃説 \ ★ \ ┃紅 ┃龍 ┃の ┃夢 ┃第229号 *.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.:*・゜*.。.: ≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≫≪≫≪≫≪≫ □ 巻の六 ── 死の花嫁 / The Bride of Death ── ◇第19回 *……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*……*…… 4.迷宮の宝石(4) 「つまりお前達は、魔族を滅ぼすための先兵として、神族の手によって送り 込まれてきたと言うわけか。 しかし、それではなぜ侵略の時、ヤツらに与(くみ)しなかったのだ? 私の中にある先祖の記憶では、“黯黒の眸”は、魔族のために“紅龍”を 呼び出し、そしてお前……“焔の眸”もまた結界を張って、初代紅龍の見境 ない攻撃から、我らフェレスを守ってくれていたよ」 ダイアデムの衝撃的な告白を聞いても、問いかけるサマエルの声は、あく までも冷静だった。 以前、幼少時代に自分の魔力を封じていたのが、シンハだったと打ち明け られた時に比べれば、彼自身のショックは遥かに少なかった。 宝石の化身は、遠い眼をした。 「ああ、たしかにオレ達は、初めは敵のスパイ同然の存在だったんだけどな。 お前らの先祖は、とても穏やかな性質で、邪悪とは全然無縁な人々だった。 だから、オレ……“焔の眸”の輝きを浴びても、邪心はさほど強く呼び起こ されなかったのさ。 戦いが起きたのはたった一度きり、それもごく局地での争いで、絶滅戦にゃ、 なんなかった。 戦が終わった後は、オレ達を清めて神殿に祀(まつ)り、花や供物(くもつ)を 供えて、崇(あが)めてくれてさえいたんだ、オレらが敵だってことも知らずに。 そんな平和な時が、気が遠くなるほど長く続いてた……」 「そこへ、神族がやって来たのか。 だが、連中がウィリディスに着くまで、どうしてそれほど長くかかったの だろうね?」 第二王子は再び尋ねる。 紅毛の少年は、可愛らしく小首をかしげた。 「んーと……それはだなぁ。 ……ほら、連中は、オレら以外にも“眸”をあちこちばらまいてたろ? だから候補地は、他にいくつもあったんだよ。 ちょいと住んでみて、自分らに合わねっとそこをぶち壊して次行く……ンな 野蛮なことを繰り返して、とうとう、今の天界……ウィリディスにたどり着い ちまった、ってわけさ」 「そう。それで?」 サマエルは穏やかに先を促す。 「……そんで、オレ達も初めは計画通り、先住生物を抹殺しろっていう命令を 実行しようとした。 ……っていうか、ホントのトコ、それ以外の行動はできるはずもなかったん だ、オレらは元々、命令通りにしか動けないように作られてたんだから。 けど、サマエル、お前はいつも心の中で見ているんだろ、あのすさまじい 惨劇を……。 あの当時、オレ達にはまだ、肉体はもちろん、心だってなかった。 でも、戦の元凶になった鉱物を、平等に皆のものにしようって決めて、神殿 に祀(まつ)った優しい人々が、なす術もなく殺されてくのを結晶面に映し出し ているうちに、不思議なことが起こったんだ。 ……長年崇められ、祈りを捧げられるうちに、いつの間にか、フェレス達の 精神と同調しちまってたのかもしれねー……うまく説明できねーけど。 ともかく、オレらの中に、魔族の悲劇に対する怒りと悲しみが湧き上がって きた……オレらに初めて、心が生まれたんだよ。 その生まれたての心に、彼らの悲鳴、苦痛の念、流されていく血がどっと 流れ込んで来た。それがオレらに力を与え、ついには神族の命令を無効にした んだ。 そのお陰で、お前らに味方して一緒に戦えるようになったってわけ。 ま、“黯黒の眸”は、魔族に味方した方が戦が大規模になって、たくさん 負の感情……つまり餌を手に入れられるって思ったみてーだけどな。 後は、お前達も知っての通りさ」 元魔界の至宝の長い告白が終わると、タナトスは組んでいた腕をほどき、 さも軽蔑したように言った。 「……ふん、それが本当のことだとどうして分かる、貴様らが俺達に、味方 したなどと?」 サマエルは、妻をかばうように、さっと前に出た。 「待て、タナトス、早まるな、“焔の眸”に嘘はつけない。 彼らはやはり、私達の先祖を守って戦ってくれた守護神なのだ」 だがタナトスは、そんな弟をじろりと見ただけで動こうとはせず、念を押す かのように尋ねた。 「つまりだ。 かつて貴様らが真実、裏切り者のスパイで、虐殺に手を貸したのだとしても、 今は違う……そういうことだな?」 宝石の化身はうなずいた。 「うん。だから、一万二千年前“黯黒の眸”がセリンを操って、人族と魔族の 戦を起こしたのも、神族のヤツらの指図なんかじゃねーよ、ホントに。 ……信じられねーかも、だけど」 「ああ、それはもういい、戦を起こした真の理由は、テネブレに聞いた。 だが、貴様らがスパイかどうかということが、現在の俺と“黯黒の眸”に 何の関係があるのだ? ついでに言えば、貴様とサマエルについても同様だな。 ──見ろ、貴様のそんな与太(よた)話などより、俺が貴様に危害を加えるの ではないかと、それだけを心配しているようだぞ」 タナトスは、弟王子を指差す。 ダイアデムは肩をすくめた。 「そりゃーそーさ。 サマエルは、たとえオレが母親を手に掛けたんだとしても許すから、そばに いてくれなんて、泣きついてくるようなヤツなんだぜ、オレが昔、何してよー が、文句なんか言うわけねーじゃん。 けどお前の反応は、よく分かんねくてよ……」 「俺を見くびるな。過去は過去、今は今だ」 タナトスはきっぱりと言ってのける。 ほっとしたダイアデムは、今度は銀髪の老公爵に向き直った。 「んじゃあプロケル、お前はどうだ?」 「……は?」 いきなり話を振られたプロケルは、琥珀の猫眼(びょうがん)を見開く。 「今の話、お前はどう思う? こいつらは、オレらに惚れた弱みでンなコトほざいてっけどよ、魔族の代表 として、お前はどう思うんだ?」 「そ、それがしが、魔族の代表とは、左様に恐れ多い……」 魔界の重要人物三人に見つめられ、プロケルはあたふたした。 だが一瞬のち、彼は、にっと唇をほころばせた。 「いや、申し訳もございませぬ、それがし寄る年波には勝てませず、この頃、 とみに耳が遠くなりましてな。 お三人様のお話が、この年寄りめには、とんと聞こえませんでしたわい」 元公爵は、ピンと尖った、よく聞こえそうな耳にわざとらしく手をあてがい、 聞き耳を立てる仕草をしながらそう言った。 「はぁ……お前、芝居、ヘタ過ぎ」 ダイアデムはため息をつき、サマエルは優しい微笑みを浮かべる。 「ありがとう、プロケル」 「ふっ、亀の甲より年の功、というわけだな。 それよりも、今はニュクスのことが心配だ。 ──さあ、それで俺は、何をどうすればいいのだ?」 タナトスは身を乗り出す。 彼にとっては済んでしまった大昔の話など、どうでもいいことの一つにすぎ なかった。 サマエルは肩の力を抜き、気を取り直して説明を始めた。 「それではまず、一時的に封印を解き、お前が迷宮に入った後、再び封じる」 「ふん、それから?」 「“黯黒の眸”の名を呼びながら、彼女の気が感じられる方へと進むのだ」 「けどよ、やっぱ無理なんじゃねーの、タナトスにはよ。 オレでさえやっとなんだぜ、あいつの気配を追うのは」 ダイアデムが口をはさむ。 タナトスは、憮然(ぶぜん)とした表情になった。 「やってやるさ、やらねばならんのだろう! それで? 後はどうするのだ?」 「彼女が出てくるまで、ずっとそうしているしかない」 「なにぃ! 探すのとどう違うのだ、それでは!」 兄が叫ぶと、サマエルはにっこりした。 「大丈夫だよ。彼女は飢えている、お前の魔力に惹(ひ)かれて必ず現れるさ、 それもすぐにね」 「ふん、貴様の言うことは、いまいち信用が置けんからな。 だが……それしか方法がないというのなら、仕方があるまい」 タナトスは不服そうに言い、それからさっそく、地下迷宮の封印を解きに かかった。 「──地下に広がるラビュリントスを護りし結界よ、魔界の王、黔(けん)龍王 サタナエルが汝に命ず、その堅き扉を開き、我を招き入れよ! よし、では行ってくる。あとは頼んだぞ」 「は。ご幸運を祈っておりまする」 プロケルがうやうやしく頭を下げる。 ダイアデムも、ひらひらと手を振った。 「ま、せいぜい頑張りな。オレも祈っててやるよ」 「……私も」 付け足しのように言う弟王子を、タナトスは睨みつけた。 「ふん、二度と還ってくるな、と思っているのだろう、貴様」 途端にサマエルは、緋色の眼を、誰にも見られぬようフードに隠したまま、 唇の端を釣り上げた。 「まさか、そんなことは思っておりませんよ。 第一、あなた様がいなくなってしまわれたら、魔界王の位が空位になって しまうでしょう? 私は継ぐことはできませんし、リオンもまだ無理ですし。 それゆえ、必ず還ってきて頂きたいと切に願っておりますよ、“兄上”」 魔界の王は、眉間にしわを寄せた。 「──ちっ! そこでなぜ、いきなり敬語になり、しかも“兄上”などと抜か すのだ!」 「ほらほら、急ぎませんと。 愛しいお方が、あなた様をお待ちになっておいでなのでございましょう? 魔界王陛下」 サマエルは、わざとうやうやしくお辞儀をし、兄が大嫌いな敬称を使って みせる。 タナトスは顔を真っ赤にした。 「くっ、貴様、覚えておれ!」 「おいおい、サマエル、お前、他人のこと言えないじゃんか、それじゃ。 あ、そーそー、一つ教えといてやるよ、タナトス。 ニュクスの手なずけ方はよ、こーやるんだ」 ダイアデムは、ふわりと空中に浮かび上がった。 そして、サマエルの顔と同じ高さまで行き、彼の頬を手で挟み込んで、顔を 近づける。 「……?」 彼が何をするつもりか分からず、サマエルはただ、眼を瞬(しばた)いていた。 二人の唇が合うと、タナトスやプロケルが驚いたのは無論だが、一番信じら れない思いでいたのはサマエルだった。 “ダ、ダイアデム、こんな、皆の前で……” 「口移しが一番美味い、って言ったのはサマエル、お前だぞ」 「そ、それはたしかに……あ、あの時は、そう言ったけれど……」 いつもは何があろうと頭に来るほど冷静な弟が、珍しくへどもどしているの を見たタナトスは、飛び切り皮肉な笑みを浮かべた。 「ふっ、幼獣に口移しでエサをやる要領というわけだな、ダイアデム」 「へっへぇ、分かってんじゃねーかよ、タナトス。 ま、頑張って来いよな。 あ、でもくれぐれも言っとくけど、エサやり過ぎんなよ。 いっつもギリギリって感じにしとくと、お前のそばをフラフラ離れてくって ことがねーんだからな」 「貴様も、そうやってサマエルを飼っているというわけか? ふん、参考にしておいてやろう。 ──ムーヴ!」 タナトスが目の前から消えると、サマエルはため息をついた。 「……はぁ。私は、お前に飼われているのかい?」 「そ。お前ペット、オレ、ご主人様、な?」 「サ、サマエル様が、ペットですと……?」 プロケルは、この二人の関係に驚きを隠せなかった。 悪びれる様子もないダイアデムは、例によって質(たち)の悪い笑いを浮かべ る。 to be continued... ====================================================================== ◆ 後記 ◆ ---------------------------------------------------------------------- 一昨日、大雪が降りました。といっても15cmくらいですけど。 今まで割と暖かかっただけに、冬本番って感じですね。 お陰様でウイルスは無事、退治できましたが、まだgogo2me.netで検索して くる人が多いので、よっぽど流行ってるみたいです。 本物の風邪やインフルエンザ同様、みなさんも気をつけて下さいね。 ---------------------------------------------------------------------- アルファポリス、HPとWEBコンテンツランキングに参加しています♪ ↓どうぞ応援(クリック)お願いします(毎日でもOK) m(_ _)m↓ http://www.alphapolis.co.jp/site_access2.php?citi_id=200061015 http://www.alphapolis.co.jp/cont_access2.php?citi_cont_id=875003507 ネット小説ランキングに参加中☆ ↓よろしければ、投票お願いします(お一人月一回です) m(_ _)m↓ http://nnr2.netnovel.org/rank05/ranklink.cgi?id=aw72sqon ---------------------------------------------------------------------- ■発行者 :流河 晶 ■マガジン名:紅龍の夢 ■マガジンID:0000131099 ■発行周期 :週刊 ◎バックナンバー: http://archive.mag2.com/0000131099/index.html ◎発行者Webサイト: http://www12.ocn.ne.jp/~tower/ ◎ご意見・ご感想・連絡等はコチラ: http://www12.ocn.ne.jp/~tower/mailform.html ◎メルマガ配信中止はコチラ: http://www.mag2.com/m/0000131099.htm このメールマガジンはインターネットの本屋さん「まぐまぐ!」 http://www.mag2.com/を利用して発行しています。 Copyright (C) 2004-2009 流河 晶 All rights reserved. ※メールマガジン内の文章等を無断複製・転載することを禁じます。 ======================================================================


