関学出て鞄職人?  RSSを登録する

バギーポートの鞄を作っている鞄職人の私が、様々な魅力ある物作り人と出会い成長して行く様を時におかしく、時に悲しく思いつくままに綴っています。物作り人必読!

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2007/06/17

「関学出て鞄職人」Vol:71 「zeal(熱き思い」

 
  
 
 
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                            ■【関学出て鞄職人?】
        
                〜 魅力ある物作り、人が、私を変えていった 〜
 
     Vol:71  「zeal(熱き思い)」
 
                         発行人:田村幸樹
                                                   隔週発行
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人は失敗して成長します。 人は体験して成長します。
 
そして人は人と出会い成長します。
 
このメルマガを読んで一人でも多くの方が、
 
物作りに興味を持っていただけたら幸せです。
 
 
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発行人プロフィール: 昭和53年 大阪府立泉陽高校卒
             昭和59年  関西学院大学文学部卒
             昭和60年  有限会社JOB設立
             最初はメーカーに依頼して鞄を作っていたが
             5年目ごろから独学で鞄を作り始め、現在にいたる
 
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◆6月17日号 menu    
 
1.Vol:71   「zeal(熱き思い)」

2.∽∽〜かおりん、たむたむの裁断したろかーー〜∽∽

3.あとがき

 
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皆様!今晩は!

ご無沙汰しています。

5月に必ず復帰しますと言っておいて約束を破ってごめんなさい。

そして、心配してメールをくれた皆さん。ありがとう!

じっと、我慢していてくれた皆さん。ありがとう!

私は元気です。

そして、メルマガ復活です!

これからも以前同様よろしくお願い致します。


さて、今日のタイトルの「zeal(ゼール)」とは、

「仕事に対する熱意、情熱。」の事を意味します。

メルマガをお休みさせて頂いていたこの三ヶ月間、色々な出来事がありました。

今日は、その中でも、私がもっとも頭を悩ませた新しい人員の問題です。

休んでた分、とっても長いのでお暇な時じっくりと読んでください。


それでは、Vol:71「zeal(熱き思い)」
 
楽しんでください!
 
 
 
 
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1.Vol:71 「zeal(熱き思い」


私がこのメルマガを休刊したのが2月の中頃です。

その2月の末にFさんが寿退職し、

代わりにそれまで週に一度修行に来ていたO君が3月から手伝ってくれる事になりました。

けれども、O君は既に5月からイタリアに修行に行くことが決まっていました。


もう一人の、H君は3月いっぱいで独立すると言っていたのを、

何とか4月まで伸ばしてくれました。

それでも、結局5月には、

残ったAちゃんと私と家内の三人だけで仕事をこなさなければなりません。


何年か前でしたら、それなりに三人でやっていく体制にシフトチェンジできたでしょうが、

工房を移った今の規模、注文数からすると、とてもそういうわけにはいきません。

新しい人員を整備する事が私の急務でした。



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私のところではありがたいことに今まで人の募集をしたことがありません。

鞄作りを志す、若い子達が、

人の紹介であったり、サイトを見たり、

このメルマガを読んでくれていたりして、自然に集まってきていました。

ここ、数年間も毎月のように、

何人もの人から、「求人の募集はありませんか?」と問い合わせがありました。

今年の1月始めにも、

二件のメールと電話による問い合わせがありました。

そのときは、こういう事態になるとは思ってもいなく、

叉、修行に来ていたO君も新年に入り正式に働いてもらうつもりでいたので、

断りの返事を出しました。


ところが、1月の半ば、Oくんからイタリア行きの話を聞かされ、

2月に入り立て続けにFさんとH君の退職の意思を聞かされました。


最初の一ヶ月間は、今までの事もあるので、

すぐに希望者が現れるかもしれないと楽観していたところもありました。

ところが、気の流れと言うのは不思議な物で、

それまであれだけあった求人の問い合わせが、ぷっつりと音沙汰も無くなりました。



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4月に入って、私は自分のサイトに小さく「鞄職人見習募集」の一行を載せました。

叉、知り合いの三宮のセンター街のお店に、

同じく「鞄職人見習募集」の張り紙を出してもらいました。


「募集」の一文字はやはり効果がありました。

サイトを見た人から問い合わせのメール、

店の張り紙を見た人から問い合わせの電話がいくつかありました。

けれども、どの人も私の出す採用条件を聞くと、

連絡が来なくなりました。


私が出した条件は四つだけです。

1.賃金は最低賃金であること。

2.勤務時間は、10:00〜19:00の土曜日を含む平日すべてである事。

3.素直に真面目に働く事。

4.勤務時間が終わった19:00から自主的に自分で鞄作りの勉強をする事。

この条件を満たしてくれる人は現れませんでした。



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ある日、大阪の23歳の青年からメールが届きました。

メールには、

「将来は自分で、自分の作ったものを販売して生活したい。

 そのために、行き着いたのが鞄です。」

そう、切々と書かれていました。

すぐに、面接に訪れ、私は彼に同じく四つの条件を出しました。

大阪からという事で、通勤に二時間かかります。

この二時間という通勤時間は、今いるAちゃんや、イタリアに行ったO君と同じです。


「7時以降も自主的に勉強できますか?」

「はい!」

彼は元気にそう答えましたが、私は彼に何か違う物を感じたので、

「今日、今から時間があるならこのまま働いてみる?」

そう、聞いてみました。

彼は、叉「はい!」と元気に答えました。


私は、彼にベルトを7時までずっと縫うように命じました。

ミシン経験のある彼は黙々と7時までミシンを踏みつづけました。


あくる日、彼から通勤時間に時間がかかる事と、

賃金が低い事を理由に断りの電話がありました。



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O君とH君が退職する日が近づいた4月の終わり、

「センター街の店の張り紙を見ました」と、28歳のKという青年から電話がありました。

彼もまた、すぐに面接にやってきました。


後に、もう一人雇う34歳の青年も同じKというイニシャルなので、

ここでは28歳のK君は28K君、34歳のK君は34K君と表記します。


28K君は、独特の風貌をしていました。

坊主頭の額は頭の途中まで剃りあがり、あごひげを生やし、

黒ぶちの眼鏡をかけ、昔の月亭可朝がかぶっていたような帽子をかぶり、

スターウオーズのR2みたいにヒョコヒョコと歩きます。

履歴書を見ると、大学で日本画の勉強をし、その後ある染物師のところに弟子入り、

つい最近までは、障害者の施設で絵の教師をしていました。

私が、そのことを聞くと、

「教師といっても、意思の疎通の出来ない重症患者の子供達ですので、

 ほとんど、身の回りの世話です。」

緊張からか顔を真っ赤に高潮させ、28K君はそう答えました。

「いつから、働けますか?」

私がそう聞くと、

「今、新しいアルバイトを始めたところなので、6月から本格的に働かせてください。」

28K君は叉顔を真っ赤に高潮させ、そう答えました。


面接が終わった数日後、

「今のアルバイト先を辞めさせてもらえることが出来ましたので、

 ゴールデンウイーク明けから働かせてください。」

28K君から、そう電話がありました。



---------



28K君が働き出したゴールデンウイーク明けからは、私のところでは、

バギーポートの6月展のサンプル作りが始まっていました。

そんなある日、前のメンバーから只一人残ったAちゃんが、

仕事が終わった後、私のところに近づいてきて、

「田村さん。私はバギーさんの展示会サンプルは何を作ったらいいですか?」

そう聞いて来ました。


Aちゃんはまだうちで働き出して二年と経っていません。

これまで、Aちゃんも何度か作品を展示会に出させて貰っていましたが、

残念ながら、まだ一度も商品化されたことはありませんでした。

前のメンバーの中では一番年下で目立たない存在だったAちゃんでしたが、

その時、私に尋ねる目つきには並々ならぬ意欲が感じられました。

私は、ブリーフケースの大小の二型を考えるようにAちゃんに指示しました。


その日から、仕事が終わった毎夜、終電の時間まで、

Aちゃんは作品を作り続けました。



---------



ところが、働き出した28K君。

縫製の仕事は初めてということで、

仕事が終わった後、ミシンの練習はするのですが、

8時半になると、とっとと帰ってしまいます。

それも週に、何日かだけ。

Aちゃんが残って作品作りをしているのにも何の興味も示さない。

もちろん、就業時間中はとても真摯に仕事に取り組むのですが、

私は、何か物足りなさを感じていました。


最初は、なれない職場の緊張で相当疲れているためだと思っていましたが、

5月の終わりになっても、その行動に変化はありませんでした。


そんな頃、奈良に住むKという青年からメールが来ました。

「自分は34歳ですが、職人見習に年齢制限はあるのでしょうか?」

そういう問い合わせでした。

私が年齢制限は無く、例の四つの条件だけだと返事をすると、

彼もまた面接にやってきました。


34歳という年齢に対する給与の低さ、

奈良という、通うには余りにも遠すぎる通勤時間。

面接に来るといったものの、私はさほど期待はしていませんでした。



---------
 


私の前に現れた34K君は、年齢にはそぐわない若々しい顔つきをしていました。

履歴書を見ると、大学を卒業した後、

ピザ屋に就職し、その後奈良のランドセルを作る会社で働いていました。

その間、鞄学校にも入学し、自分の鞄作りの勉強もしていました。

「ランドセルではなく、普通の鞄を作りたいんです。」

34K君は目をきらきらと輝かせそう言いました。


「ここまで、何時間かかりました?」

私が通勤時間の事を尋ねると、

「3時間半です。」

34K君は身体を少し揺らせそう答えました。

「それじゃあ、無理やね・・・」

私がそう言うと、

「引っ越します!」

間髪をいれずそう答えました。

私が、口をあんぐりさせていると、続けて、

「今週中にはこちらに引っ越してきます。6月から働かせてください。」

34K君はそう言うと頭を深々と下げて工房を去っていきました。


後で聞くと、34K君はこのメルマガの読者さんでした。

私は、34K君の決断に少し納得できました。



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34K君が働き始めた頃、

バギーポート6月展のサンプル作りは大詰めを迎えていました。

作品提出の締め切りの2日前には、

全員で就業時間を使ってAちゃんの作品を仕上げるのを手伝いました。

その、情熱のこもったAちゃんの作品は素晴らしい物でした。


私は、直接バギーポートのオフィースに向い、

池上社長にAちゃんの作品を見てもらいました。

ラックに作品をぶら下げて遠くから真剣に見つめる池上社長の口から、

「いいやん!いけるんちゃう!」

その言葉が出たとき、私は自分の事のように喜びました。



---------



先週の木曜日、バギーポートの6月展の展示会サンプルを全て終えた私は、

初めて全員を食事に誘いました。

場所は行きつけの居酒屋。

28K君と34K君の若い二人の男の子が、

気持ちよく出されたメニューを平らげていく中、

私は、本題の話に入りました。


「28K君。何で自分はAちゃんが一生懸命作ってるときも興味を示さなかった?」

「はぁ。」

28K君は、動かしていた箸を止めて私の話に耳を向けました。

「34K君も、何か作りたくてうちに来たんじゃないの?」

私の横に座っていた34k君も箸をおいて、膝に手をやりました。


「もっと、やる気をみせんとあかんのんちゃう?」

私がそう言うと二人はそれぞれこう答えました。

「いえ、前の職場で頑張りすぎて実は病気になったので、
 
 今度は徐々に慣らして行こうと・・・」

と、私の目を見つめ28K君。


「まだ慣れていなくて・・・」

と、身体をゆらして34K君。


「理由にならん!最初から情熱がほとばしってなくてどうする!」

私は、声を張り上げました。



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「うちは、鞄職人を目指すやつが来るところや!

 時間に来て時間に帰るならその辺のパートのオバちゃんを雇う。

 ほんまに、鞄職人になりたいのなら、俺を奮わせるほどの情熱を表に出せ!

 情熱を見せれば人は心を打たれる。

 そして、その人を応援したくなる。

 すると、その人の周りが変っていく。

 周りが変れば、自分も気付かないうちに少しずつ変っていく。」


私の言葉に、二人の表情が見る見る変っていきました。

食い入るように私を見つめ、素直に「うん!うん!」と頷きます。


そして、その時私は気付かなかったのですが、

家内の横で一緒に話を聞いていた、Aちゃんの様子がおかしかったそうです。

下を向いて、じっと押し黙ったまま動かない。

それに気付いた家内が、そっと「どないしたん?」と聞くと、

「昔の事を思い出したら涙が出てきたんです・・・」

と答えたそうです。


私はその話を次の日の会社に向かう車の中で家内から聞きました。

「きっと、Aちゃんも昔は自分を出せなかったんよ!

 今は、違うけどね!」

「今は、違うね!」

私もそう答え、二人で顔を見合わせて笑いました。



---------



私の考えは今の時代と逆行しているかもしれません。

もっとスマートに、もっとおしゃれに情熱を持つほうがかっこいいかもしれません。

けれども、思いは人に伝わって初めて叶います。

内に秘めた思いなんていらない。

不器用でもいい。

かっこ悪くてもいい。

本当に、自分が心に思っているなら、

本当に自分がなりたいのなら、

熱き思いは、表に出さなくてはいけません。



---------


この月曜日、仕事が終わった後、34K君が歩み寄って来ました。

「社長。作りたいものがあるんで見てもらえますか?」

彼はそう言って一冊のノートを鞄から取り出しました。

私の目の前でそれをペラペラとめくると、

そこには無数の鞄のデザイン画が書かれていました。

その中のひとつを私に見せ、

「まずは、このペンケースから作っていきたいと思います。」

そう言って私の目を見つめました。

私がOKの返事を出すと、嬉々として型紙を作りはじめました。


そして、34K君が裁断台に向かうと同時に、今度は28K君が私に近づいてきました。

「社長。ウエストポーチが作りたいんですけど、見てくれますか?」

彼もそう言って自分の鞄からミニサイズのスケッチブックを取り出しました。

同じく、私の目の前でペラペラとページをめくると、

そこには、更にぎっしりと鞄のデザイン画が書かれていました。

彼も裁断台に向い、型紙を切り出しました。


私は、先日の車の中の家内との会話の続きを思い出していました。

Aちゃんの話をした後、

私たちは、今度は、独立したH君の話をしていました。

H君は今、湊川の市場の中に工房を構え、

自分の作品作りと、うちの下請けの両方をこなしてくれています。

「Hちゃん。うまく、言ったら良いね!」

「ほんまやね!」

そんな話をした後、新しく入った28K君と34K君の話になりました。


「きっと、あの二人も3・4年もしたら独立するんやろね・・・」

私が寂しそうにそう呟くと、隣にいた家内が明るい笑顔でこう言いました。


「ええやん!うちの思いを持った子らがあっちこっちに増えていったら!」


zeal・・・

熱き思いよ。

弾き飛べ!!!





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2. ∽∽〜かおりん、たむたむの裁断したろかあーー〜∽∽
 
|このコーナーでは、わが愛妻かおりんが、世の風俗世相を
|油圧裁断機のごとくたった一言で、がつんと切り落とします!! 
     
    ■ 今回のかおりんは、うちの工房で働き始めたきんちゃん。
     毎朝バスを降りてから、
     工房前の道路を隔てた同じ場所で煙草を吸うのを発見したかおりんは・・・。


   かおりん :「ねぇ、ねぇ、何でいつもあんな所で煙草吸ってるの?」

   きんちゃん:「あ、はい。吸う場所を決めてるんです。
          あそこで一服。ここで一服。と・・・」



   かおりん :「ふ〜ん・・・・・。        犬のマーキングみたい!」

   たむたむ :「ぷっ!」




   かおりんへの応援メッセージはこちらへ ↓
 
            perfume289@hotmail.com
 
  かおりんブログはこちら ↓ (本当のかおりんがここにいます)
 
            http://blog.goo.ne.jp/perfume289/
 





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2.あとがき

昨日の土曜日、以前うちで働いていたJ君が工房にやってきました。

J君は、うちをやめた後ギターのベルトを製造する会社で働いていました。

そこは、所謂「安く!早く!」を方針とする会社だそうです。

J君は、自分がその会社を変える気持ちで入社したそうですが、

それは、当然のことながら叶わなかったそうです。


「このままでは自分の物作りの情熱が失われてしまう・・・」

その歯止めをかけたくて私に相談に来たのでした。


J君は、私のところにいた頃の自分の考えが甘かったことを謝った後、

「土曜日だけでも無給で仕事を手伝わせてください!」

そう頭を下げました。


お金は大切な物です。

でも、お金で買えないものはいっぱいあります。


「人を動かす熱き思い・・・」

それも、そのひとつです。


               


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発行人:田村幸樹
 
JOB inc.
 
発行者WEBサイト 
 
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最後までお読みいただいて本当に有難うございます
 
 
 
Vol.72予定は7月1日です。
 
 
 
 
 
乞うご期待!
 
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