関学出て鞄職人?  RSSを登録する

バギーポートの鞄を作っている鞄職人の私が、様々な魅力ある物作り人と出会い成長して行く様を時におかしく、時に悲しく思いつくままに綴っています。物作り人必読!

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2007/02/12

「関学出て鞄職人」Vol:70「祈り」

 
  
 
 
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                            ■【関学出て鞄職人?】
        
                〜 魅力ある物作り、人が、私を変えていった 〜
 
     Vol:70  「祈り」
 
                         発行人:田村幸樹
                                                   隔週発行
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人は失敗して成長します。 人は体験して成長します。
 
そして人は人と出会い成長します。
 
このメルマガを読んで一人でも多くの方が、
 
物作りに興味を持っていただけたら幸せです。
 
 
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発行人プロフィール: 昭和53年 大阪府立泉陽高校卒
             昭和59年  関西学院大学文学部卒
             昭和60年  有限会社JOB設立
             最初はメーカーに依頼して鞄を作っていたが
             5年目ごろから独学で鞄を作り始め、現在にいたる
 
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◆2月12日号 menu    
 
1.Vol:70   「祈り」

2.あとがき

 
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皆様!

こんにちわ!

予定では先週発行でしたが、またまた遅れてしまってごめんなさい。


さて、もう遠い昔の事のようですが、

先々週の金曜日、

遠方から「熟女の修学旅行」と称して三人の女性がここ神戸に遊びに来てくれました。

先号のあとがきでも触れたあの三人さんです。


さて、彼女達が神戸に来られた理由の一つに、

その中の一人、

竹内圭子さんが主催する「ハンドベル友の会」を神戸で開催するということがありました。

場所は私の工房の二階です。

今日は、そのお話です。


それでは、Vol:70「祈り」
 
楽しんでください!
 
 
 
 
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1.Vol:70 「祈り」


初めて手にするハンドベルは、思ったよりも小さな物でした。


「こうやって、釘を打つように振ってください!」

そういう竹内さんのまねをしてベルを振ると、

ベルは「チーン」と心地よい音を発しました。


テーブルを囲んだソファーや椅子に座った私以外の参加者達も、

手に手に彼女のまねをしてベルを振りました。

部屋のあちこちから様々な音階のベルの音が鳴り響きました。


この時私は、この一つ一つのバラバラの音が、

後に、想像以上の感動を与えてえくれるとは思いもしませんでした。



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千葉県鎌ヶ谷に住む竹内圭子さんは、私より一つ年下です。

ピアノの教師であり、ライターでもあり、

現在、『ピアノのおけいこ』というメルマガも発行されています。

そして、その天真爛漫な明るさと、天衣無縫の性格で、

「圭子お姉さま」のハンドルネームで、皆に愛されています。


その竹内さんが、

「音楽経験の有無も、年齢も、まったく関係なく

 音楽を演奏する楽しさを味わってほしい・・・」

そんな思いで、始めたのがこの「ハンドベル友の会」です。


二つ以上の楽器で音を作り上げていく、音楽のアンサンブルはとっても楽しいものです。

その中でも、みんながひとつひとつの音を担当してメロディーを創り上げていくことは、

アンサンブルの形として、とても珍しいことだそうです。

ハンドベルはそれを可能にし、

かつ、始めて会った人達でも、

心を一つにしてメロディーを作りあげていく楽しさが伴うそうです。


何一つまともに楽器も弾けない、

楽譜も読めない私は、そのことを不安に思いつつ当日を楽しみにしていました。



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演奏会の会場となった工房の二階は、

このビルのオーナーの亡くなられたお父様が、以前住まれていた普通のマンションです。


そのリビングの大きなテーブルを囲んでソファーや椅子が置かれ、

参加者が席に着きました。

総勢10名。

女性8名に男性が私を含めて2名。

会ったことのある方もいれば、名前だけ知っていて始めて会う方、

名前も、会うのも初めてという方。

そんな、年齢も様々な十名に配られた楽譜が、「アベマリア」と「ムーンリバー」。


談笑が交じった自己紹介の後、

練習は「アベマリア」から始まりました。

参加者は、それぞれに配られた楽譜の、

一番上に書かれたアルファベットと同じ文字が書かれたベルを取りに行きます。

私に配られた楽譜にはAと書かれていました。

私はAと書かれたベルを手にし自分の席に戻りました。


「ムーンリバー」は、オードリー・ペプバーン主演の映画、「ティファニーで朝食を」の主題歌。

私にも馴染みがある美しい曲です。

「アベマリア」も、シューベルト作曲の方だと思っていたので、

メロディーラインぐらいは知ってるつもりでした。


ところが、いざ演奏が始まると恥ずかしいことに、それは全く私の知らない曲でした。

バッハ作曲、グノー編曲の「アベマリア」でした。


戸惑う私を、始めて会った隣のAさんが美しい声でメロディーを歌って助けてくれます。

私は只、その声にあわせて、楽譜の一章節、一章節を目で追う事だけに集中しました。



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ようやく、メロディーと楽譜が一致し始めた頃、

「では、録音します。」

竹内さんがそう言ってピアノの前から立ち上がり、

自分のパソコンの録音の準備を始めました。


「それではいきます!」

竹内さんのその声で参加者に緊張が走り、最初のベルの音が鳴り響きました。

私には、もう、導いてくれるAさんの歌声はありません。

私は頭の中で、1234、1234と数を数え、

自分のパートがきた時にベルを振るのがやっとでした。


演奏が終わると、竹内さんは手を叩き、

「素晴らしい!素晴らしい!」と皆を誉めました。

そして、

「でも、もう一回!右のページの二段目から、もう一度練習しましょう!」

そう言って、自ら「1234、1234」と声を出して皆を鼓舞しました。


何度か録音が繰り返された頃、

工房で仕事をしていた私の家内がお茶を持って、

うちのスタッフの女の子と部屋に入ってきました。


「かおりん!丁度よかった!聞いていって!」

竹内さんがそう声を掛け、

私達の初めての人前での演奏会が始まりました。



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この、神戸での「ハンドベル友の会」が開催されるのが決まった後、

竹内さんは私に一通のメールをくれていました。

その内容は、こうでした。


「・・・略

 あとで、みんなにも伝えますが
 今回は、「祈り」というテーマが自分の中にあります。

 だから、ちょっとむずかしいアベマリアを選曲しました。


 20年前に、一度訪れたことのある神戸の街が
 大震災で壊れてしまったこと、たくさんの未来ある命が
 失われてしまったこと、想像をはるかに超える絶望のなかから
 生きる力をほんのわずかですが、知ることができました。

 神戸の地で音楽を奏でることが
 いつかできたなら、と思っていました。

 うまく言えないのだけど、祈りを込めた音楽を
 みんなで創り上げたいと、思っています。」


このメールを貰った後、私は震災の時の一人の男の人の事が頭に浮かびました。

いつものように、会社へ向かう車の中で私は家内と、その人の事を話題にしました。



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震災の時、私達の工房があった町の一角は大火に包まれ全てが燃え尽きました。

かろうじて、私の工房が入っていたマンションの、

私の工房だけが全焼せずに助かりました。


多くの人がまだ避難している中、私達夫婦はすぐに仕事を再開しました。

ただ、水道が止まっていた為、

毎朝近くの民家に井戸水を汲みにいくのが私達の仕事の始まりでした。

タンスにしまう透明の衣服用の大きな透明のケース。

それに水を満タンにして、会社まで転がしていました。


しばらくすると、給水車が町に来てくれるようになりました。

町の人々は、その給水車のおじさんに感謝しました。


またしばらくすると、私達の工房がある一角以外は水道が開通しました。

それでも、そのおじさんは私達夫婦の為だけに、

毎朝給水車を走らせてきてくれていました。


「あのおじさん、どこから来たって言ってたっけ?」

ハンドルを握りながら私は家内にそう尋ねました。

「確か、岡山・・・あっちの方だったと思う。」


「毎朝、きてくれたよね!」

「うん、嬉しかった!」

「でも、仕事といえばそれまでか・・・」

私のその言葉に、家内は窓の外を見つめながらこう言いました。

「うううん。それだけじゃないものを私は感じた。だから嬉しかった。」


私は、いつも屈託のない笑顔で、

ポリタンクに水を注いでくれていたおじさんの顔を思い浮かべました。



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あの時、ここ神戸には日本中から、或いは世界中から、

たくさんの人が駆けつけてくれて私達を支えてくれました。

壊滅した神戸の復興を祈り、たくさんの愛を届けてくれました。


そして、十二年経った今でも忘れずに、

神戸を思ってくれている人達がたくさんいる・・・


私は、今回の「ハンドベル友の会」が終わり、

千葉に戻った竹内さんに、次のようなメールを送りました。


「圭子お姉さま!

 こちらこそ、凄くいい経験させて頂きました。
 ハンドベルは、足を引っ張らないように必死でした。
 でも、あんなに楽しいとは思いませんでした。
 やっぱり、皆で何かを作り出すというのはとっても楽しいね!
 物作りの原点を思い出させてくれました。

 かおりんも工房の皆もすっごく感激していました。

 圭子お姉さまがメールで、神戸の為に「アベマリア」を演奏したい・・・
 って言ってくれたときは、本当に嬉しかったです。
 僕たちは、神戸で生活して、
 自分達だけがひどい目に会ったように往々にして勘違いしてしまうけど、
 圭子お姉さまのように、
 日本中の人が今でも神戸の事を心配してくれているという事を、
 決して忘れてはいけないと再確認いたしました。
 ありがとう!」



今回のハンドベルは、東京の方、愛知の方、京都の方、

そして、地元兵庫の方、様々な地域の方が参加してくれていました。

その方達一人一人が、神戸で、ハンドベルで、

この「アベマリア」を演奏する意味を竹内さんから伝え聞き、

それぞれの思いを込めて参加してくれていました。


そして、いよいよ演奏が始まりました。



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最初のベルの音が鳴り響き、

竹内さんのピアノの伴奏がついてきます。

優しい、心地いい響きが美しいメロディーを作りあげていきます。

メロディーは段々とクライマックスに近づき、

教会音楽らしい荘厳なクライマックスへと続きます。

一章節の中に七つの音が入った最後のサビの部分を通り過ぎ、

静かに一音づつの音が消え入った時、演奏は終了しました。


竹内さんが立ち上がり、拍手をして「素晴らしい!」を連発します。

家内からも、工房のスタッフからも、

そして、参加者からも自然と大きな拍手が沸き起こりました。


その時、演奏に参加した誰もが、

私も含めて自分のパートの役割を果たすのに必死だったと思います。

けれども、そこから作り出されたハンドベルの音色は、

確実に竹内さんの思いを伝えてくれました。


演奏が終わった後、家内がちょっぴり涙ぐんでこう言いました。

「すっごい!本当に感動した。

 音楽って、本当にいい!!!」



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昨日、このメルマガを途中まで書き上げ、家に帰った後、

家内に、何故竹内さんが「アベマリア」を選んだのかを話しました。

彼女は少し押し黙った後、こう言いました。

「祈り・・・感じたよ。だからあんなに感動したのかもしれん・・・」


そして今朝、私も初めてそのときのビデオ撮影された「アベマリア」を聞きました。


「圭子お姉さま。

 祈り・・・感じたよ!

 ありがとう。」




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多分、もう少ししたら、
このときの模様は竹内圭子さんのメルマガで発表されると思います。
多分・・・

竹内圭子さんのメルマガ、『ピアノのおけいこ』  ↓ ↓ ↓

 http://www.mag2.com/m/0000153071.html

まだ読まれていない方は、是非この機会にお読みください!




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2.あとがき


このハンドベルの演奏会が無事終わった先週、

私の会社に大きな変動がありました。


一番弟子のH君がこの春に独立する事になり、

女の子の一人もご縁があって退職する事になりました。

     
とっても辛いけど、二人が二人とも新しい希望の旅立ちです。

私にはそれを遮る事はできません。

先週一週間は家内と悶々とした日々を過ごしました。
 
けれども今はそれも吹っ切れました。

笑って送り出してあげようと思います。

   
只、今年に入ってようやく体制も整ったので、

今までの生産量を増やす予定を立てていました。

その処理に追われながら、叉一から体制を整えなければなりません。

目の前にある注文書の山を、

ゴールデンウイークまでにやり遂げなくてはいけません。


人生は、ほんとうに思うようには行かないもんです。

生きることは、辛く悲しい事がいっぱい起こります。

このメルマガを読んでくれている読者さんの中にも、

いっぱいそんな方がいらっしゃると思います。

でも、私はそんな時は必ず次への旅立ちの始まりだと信じています。



メルマガ、しばらくお休みさせていただきます。

11月に入院して以来、

これまで、必ず隔週で朝の九時にお届けしていたのが出来なくなり、

ご迷惑ばっかりおかけしますが、三ヵ月後には必ず戻って参ります。


楽しみにしてくれている皆さん、ごめんなさい。

五月には更にパワーアップして帰ってきます。

本当にごめんなさい。


               


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最後までお読みいただいて本当に有難うございます
 
 
 
Vol.71予定は5月です。
 
 
 
 
 
乞うご期待!
 
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