2006/10/29
「関学出て鞄職人」Vol:65「三ちゃんと鉄砲汁」
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■【関学出て鞄職人?】
〜 魅力ある物作り、人が、私を変えていった 〜
Vol:65 「三ちゃんと鉄砲汁」
発行人:田村幸樹
隔週発行
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人は失敗して成長します。 人は体験して成長します。
そして人は人と出会い成長します。
このメルマガを読んで一人でも多くの方が、
物作りに興味を持っていただけたら幸せです。
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発行人プロフィール: 昭和53年 大阪府立泉陽高校卒
昭和59年 関西学院大学文学部卒
昭和60年 有限会社JOB設立
最初はメーカーに依頼して鞄を作っていたが
5年目ごろから独学で鞄を作り始め、現在にいたる
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◆10月29日号 menu
1.Vol:65 「三ちゃんと鉄砲汁」
2.∽∽〜かおりん、たむたむの裁断したろかーー〜∽∽
3.あとがき
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皆様!おはようございます。
早いものでもう十月も終わりですね。
今年も、後二ヶ月・・・
私の周りでは、もう忘年会の話もちらほら出てきています。
でも、まだそっちには頭が回りません。
ここ一ヶ月ばかり、展示会サンプルの製作で工房に篭っていたからです。
でも、それもいよいよ今日まで。
今日、最後の商品を出荷してサンプル作りはやっと終わります。
明日はみんなでうまいもんでも食べに行こうと思います。
さて、ここ最近叉嫌な事件が次々と起こっていますが、
今日も先号に引き続き、私の子供の頃のお話をしたいと思います。
偶然続いてしまいましたが、言いたいことはまったく違うのでお許しください。
それでは、
Vol:65「三ちゃんと鉄砲汁」
楽しんでください!
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1.Vol:65 「三ちゃんと鉄砲汁」
私が生まれ育った堺市は、現在人口約83万人を突破し、
今年4月1日に政令指定都市に移行しました。
その広さも大阪府では大阪市に次ぐ二番目を誇っています。
けれども、堺はその昔は、濠で囲われた小さな町でした。
15世紀から16世紀にかけて、堺が日本一の海外貿易港として栄えた時、
世の中は戦国時代でした。
日本各地で戦がおこり、町が焼かれました。
けれども、堺では貿易で富を得た商人たちが、町を守るために、
西側の大阪湾以外の三方に濠をつくり、入口となる橋には門や門番をつけ、
外から敵が入れないようにしました。
その濠が土居川の始まりです。
しかしその後、日本を統一した豊臣秀吉により濠は埋められてしまいます。
そして秀吉が死に、大坂夏の陣で豊臣方が火を放ち、堺は焼け野原となりました。
徳川幕府はすぐに堺の町を復興し、
町を 碁盤の目に区画し、その周りに濠をもう一度掘りなおしました。
これが私が知る、私が幼い頃見た土居川でした。
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土居川で囲まれた旧堺の北の端に先号でお話しした綾野町の市場があります。
そして、旧堺の東を流れる土居川を渡ったところに、
父や父の弟達が魚を解体する作業場がありました。
叉、旧堺から少し離れ、
更に東に向かった南海高野線を渡った所の今池町に私の自宅がありました。
小学校の四年生になるまで、私はこの三ヶ所を行き来していました。
「幸樹君!今日は七の日やから寺町筋行こうか?」
魚のすり身を持って店にやってきた父の一番下の弟が、
そう言って、私を誘ってくれます。
寺町筋・・・お寺が数多く並んでいたのでそう呼ばれていましたが、
正確には、錦之町筋。
ここには一年の中で気候が良い四・五ヶ月の間、七日、十七日、二十七日といった、
七のつく日に夕方から夜店が出ていました。
夜店で遊ぶ事も楽しみの一つでしたが、
叔父と寺町筋を通って土居川沿いの仕事場に帰ることは、
私にとってはもう一つの意味を持っていました。
「やったー!鉄砲汁食べれる!」
私は喜んで、自転車を押して帰る叔父の後をついて行きました。
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人ごみで賑わう寺町筋を通り抜けると、私の通う錦小学校があります。
そして、その錦小学校の西側の塀際の細い道を歩いていくと三叉路に出、
それを、左折すると三ちゃんがたこ焼きを焼いている鉄砲汁屋があります。
鉄砲汁とは、椀の中に焼きたてのたこ焼きを入れ、
それにうどんの汁をいれて葱をふりかけた物です。
ダシをつけて味わう兵庫の明石焼きとはまた少し違います。
明石焼きは卵が入っていますが、
鉄砲汁は大阪名物のたこ焼きそのものが入っています。
現在まで、私はこの三ちゃんのところでしかこの鉄砲汁を食べた事が無いので、
おそらく、日本中でもこの食べ方をするところはそうは無いと思われます。
叉、そのネーミングも、堺がその昔鉄砲作りが盛んだった事から、
たこ焼きを鉄砲の弾に見立て、この地独特の名前を三ちゃんが付けたと想像できます。
店につくと、三ちゃんがいつものように店先でたこ焼きを焼いていました。
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実は三ちゃんは小児麻痺という障害を抱えていました。
くの字に折れ曲がった細い左腕を宙に浮かせ、顔は右手すぐ傍まで傾いています。
その同じく折れ曲がった細い右腕の先では、
親指と中指がたこ焼きをひっくり返す目打ち棒をつまんでいます。
三ちゃんは、それで器用にたこ焼きをひっくり返していきます。
顔を引きつらせ、額に汗を流し、黙々と一生懸命たこ焼きをひっくり返し続けます。
三ちゃんの店は、木造の平屋の家屋の玄関先を改装して出来ていました。
ガリガリと音のする古い引き戸を開けると、
四角い安物のテーブルが三つほど置いてあり、その周りに丸椅子が置かれています。
店内はいつも学校帰りの高校生や、買い物帰りのおばさんたちでいっぱいでした。
詰めてもらって席に座ると、三ちゃんのお母さんが鉄砲汁を運んできてくれます。
ひとつの椀に四個たこ焼きが入り、確か一杯50円でした。
持ってこられた鉄砲汁に七味をふりかけ食べていると、
店先で、近所の悪ガキ達が三ちゃんがたこ焼きを焼く真似をして、
三ちゃんをからかいます。
それもまた、いつもの事でした。
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子供達が三ちゃんをからかっているのに気付くと、
三ちゃんのお母さんは、烈火のごとく怒り店先に飛んで出ます。
子供達は、三ちゃんのお母さんの怒鳴り声が聞こえると、
「鬼ババアが出てきた!」と叫ぶや、
蜘蛛の子を散らすように逃げていきます。
それでも、三ちゃんのお母さんは子供達を追いかけます。
そして、逃げ遅れた子供の手を掴むと、本気で拳骨を落としました。
私は、子供心に
「何で病気の三ちゃんがたこ焼き焼くんやろ?
おばちゃんが代わりに焼いてあげたらいいのに・・・」
といつも思っていました。
ある時、三ちゃんに、
「三ちゃん!たこ焼き焼くん、しんどいんちゃうん?
おばちゃんに代わってもうたらええのに。」
そう聞くと、三ちゃんは引きつった顔を私に向けこう答えました。
「たー こ やー きー やー く ん すー き やー ね ん」
私は、「ふーん」と頷き、
叉、鉄砲汁を頬張りました。
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時が流れ、土居川は私が小学校に入る頃から始まった埋め立て工事が終わり、
私が小学校を卒業する時には、その上に阪神高速道路が開通しました。
父の綾野町の市場の店も二番目の父の弟に譲り、
土居川沿いの作業場もその叔父の住居となりました。
私達は、今池町の家を引越しし、三国ヶ丘の建売住宅に住むことになり、
私が、旧堺を訪れることは無くなりました。
私が、再び旧堺を訪れるようになったのは、旧堺にあった高校に入学してからでした。
高校に入学してすぐ、私は懐かしさも手伝って三ちゃんの店を訪れました。
けれども、店は既に閉められていて、住居にも誰も住んでいないようでした。
暗く閉じられた店の前で私は、
幼い頃の三ちゃんのお母さんとの会話を思い出していました。
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私は、三ちゃんがたこ焼きを焼く姿が、
子供達の見世物のようになっているように思えて、
三ちゃんが可哀想で仕方ありませんでした。
ある日、いつものように、三ちゃんをからかう子供達を追い散らし、
戻ってきた三ちゃんのお母さんに、私はこう言いました。
「おばちゃん!三ちゃん可哀想やん。
店先でたこ焼き焼くん辞めて、店の中で焼いたらええんちゃうん?」
すると、三ちゃんのお母さんは怒っていた顔を元に戻し、
私の質問には答えずにこう言いました。
「ボク、この店はな、あの子の為にやってるんや!
私が先に死んでもな、あの子が一人で生きていけるように、
そう思ってやってるんや!」
三ちゃんのお母さんは、私の隣のテーブルを拭きながら、
今度はひとり言のようにもう一度こう呟きました。
「あの子はな、私が死んでも生きていかなあかんのや・・・」
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主のいない店の前で、私が佇んでいると一緒に来た友人が私に帰るよう促しました。
先に行く友人を追いかけかけ、もう一度振り向いて店を見た時、
私は、顔を引きつらせ、額に汗を流し、
黙々と一生懸命たこ焼きをひっくり返し続ける三ちゃんの姿を思い出しました。
「もう一度、鉄砲汁が食べてみたい・・・」
私は思わず口にでそうになったその言葉を胸にしまいました。
三ちゃんが亡くなったと言う噂を聞いたのは、そのすぐ後でした。
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追記: 私が子供の頃も差別やいじめがありました。
それも、部落や、民族や、障害者といった人たちを対象にしたものでした。
その為、わざわざ授業で「道徳」の時間があったくらいです。
今、その甲斐があったのか、
世の中から、差別用語は消えてなくなりました。
けれども、ご承知のようにいじめも差別も無くなる事はありません。
「昔は良かった」だとか言う気はさらさらありませんが、
何が今と違うかと言われれば、
それは人々の生きようとする力だったと思います。
自分を高める為にいろいろな事をするのはいい事です。
自分が何の為に生きるのかを考えるのも大切な事です。
只、そんな事の前に、
もっとがむしゃらに、
もっとバタ臭く、
もっと必死に、
人生を生きる姿を子供達に見せてあげる事が大切ではないでしょうか?
生きる事は、ファッションじゃあないんです。
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2. ∽∽〜かおりん、たむたむの裁断したろかあーー〜∽∽
|このコーナーでは、わが愛妻かおりんが、世の風俗世相を
|油圧裁断機のごとくたった一言で、がつんと切り落とします!!
■ 今回のかおりんは、
11月の展示会のサンプル作りに忙しい工房。
鞄に付けるホックのことを言おうとするのですが、
その種類の「ASL」がなかなか出てこない・・・。
かおりん:「えっと、今つけようとしてるホックの種類なんやった?
う〜んと、ALSD・・・」
浜ちゃん:「おしい!!」
かおりん:「ASDY・・・
え〜っと・・・・あっ!ADSLや!」
浜ちゃん:「・・・・・・・・・・・それ・・・インターネットです。」
ASL・・・シルバーつや消しメッキの事。
決してホックのことではな〜い!byたむたむ
かおりんへの応援メッセージはこちらへ ↓
perfume289@hotmail.com
かおりんブログはこちら ↓ (本当のかおりんがここにいます)
http://blog.goo.ne.jp/perfume289/
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3.あとがき
私も、子供の時「てんぷら屋!」とか「魚臭い!」
とかずいぶん言われました。
ひょっとすると、あれもいじめだったのかもしれません。
けれども、私はそう言われてもなんとも思いませんでした。
ですから、相手にする事もありませんでした。
するとそのうち何も言われなくなりました。
私がなんとも思わなかったのは、決して私が強い人間だったからではありません。
只、私は包丁一本でゴボウ天や竹輪を作る父を本当に凄いと思っていました。
叉、アルコール中毒だった父の代わりに店を切り盛りする母も凄いと思っていました。
要するに、父も母もそしてその仕事も大好きだったのです。
人間にとって一番の強さとは、
人を愛する事のできる心なんです。
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発行人:田村幸樹
JOB inc.
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最後までお読みいただいて本当に有難うございます
Vol.66 予定は11月12日です。
乞うご期待!
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