2006/10/15
「関学出て鞄職人」Vol:64「踏み切りのおじさん」
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■【関学出て鞄職人?】
〜 魅力ある物作り、人が、私を変えていった 〜
Vol:64 「踏み切りのおじさん」
発行人:田村幸樹
隔週発行
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人は失敗して成長します。 人は体験して成長します。
そして人は人と出会い成長します。
このメルマガを読んで一人でも多くの方が、
物作りに興味を持っていただけたら幸せです。
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発行人プロフィール: 昭和53年 大阪府立泉陽高校卒
昭和59年 関西学院大学文学部卒
昭和60年 有限会社JOB設立
最初はメーカーに依頼して鞄を作っていたが
5年目ごろから独学で鞄を作り始め、現在にいたる
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◆10月15日号 menu
1.Vol:64 「踏み切りのおじさん」
2.∽∽〜かおりん、たむたむの裁断したろかーー〜∽∽
3.あとがき
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皆様!おはようございます。
お元気でしょうか?
すっかり秋めいたと思っていたら、
ここ数日神戸は、昼間は夏のように陽射しがきつい毎日が続いています。
今日、日曜日もとってもいい天気です。
久しぶりにどこかに行きたい気分ですが、
残念ながら、展示会前なので今日も工房にこもります。トホホ・・・
さて、唐突ですが皆さんには故郷はありますでしょうか?
私にとって故郷は、子供の頃に育った市場です。
今日はその頃のお話・・・
それでは、
Vol:64「踏み切りのおじさん」
楽しんでください!
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1.Vol:64 「踏み切りのおじさん」
今年の夏の終わり、
私たち夫婦は、私の故郷の堺市に出かける用事がありました。
ネットで知り合った、杉山弘道氏が
「全国甘党の会」
(甘いもんを通して、世の中のビジネス・チャンスを計り知るというコンセプトの会)
というのを主催していて、
それを大阪で開催する事になり、
私の幼馴染が経営しているニッキ餅屋さんを紹介した所、
そこでお話を聞く事が決まったのでした。
いつも、堺に帰省するときは車で出かけるのですが、
この日は夜からお酒を飲む場もあるということで、電車を利用する事になりました。
目的地のニッキ餅屋「八百源」は阪堺線の「妙国寺」駅のすぐ傍にあります。
この阪堺線、大阪市内の恵比寿駅から、堺市内の浜寺公園駅まで、
南北に旧堺を縦断する、一車両の路面電車です。
駅を出るたびに、チリリンと音を鳴らすので、
私たちは幼い頃からチンチン電車と呼んで親しんできました。
「およそ40年ぶりにチンチン電車に乗れる・・・」
出発前から、私の心はワクワクと踊り、
同時にその頃起こったある出来事を思い出していました。
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私が小学校4年生になるまで、私の両親はこの「妙国寺」駅より二つ大阪に戻った駅、
「綾ノ町」駅の市場で天プラ屋を経営していました。
以前にも触れましたが、竹輪やゴボウ天といった魚の練り物の方の天ぷらです。
綾野町市場は、とても大きな市場とはいえませんが、
当時はそれなりに活気がありました。
3mほどの幅の通路を挟んで、右が八百屋、左がお菓子屋。
それが市場の入り口でした。
通路には、背の低いアーケードが架けられていました。
古い市場ですから、アーケードに照明は無く、
半透明のトタン屋根から差し込む陽射しが照明の代わりでした。
各店舗が電球をぶら下げていますが、
それでも日が暮れると薄暗い市場だった事を記憶しています。
アーケードを入って4軒目の左手、それが私の両親の店でした。
右隣が、持ち帰りのお好み焼き屋、左隣が豆腐屋、向が大きなお菓子屋でした。
私の店を過ぎそのまま歩くと、右手に肉屋があり、更に左手に乾物屋、
そして、その隣が親戚が経営する漬物屋でした。
そこで、一旦アーケードは途切れます。
何故ならそこには、阪堺線の踏み切りがあったからでした。
踏み切りを超えると、叉アーケードが始まり市場は奥深くへと続きます。
踏切を越えて、奥の市場に行くこと・・・
それは、幼い私にとっては大冒険でした。
「踏み切りより、向こうへ行ったらあかんよ!」
それが、私の母の口癖でした。
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市場の子供達の中で、最年長が私の姉、そして次が私でした。
他の子達は私より三つか四つ、或いはそれ以上歳が離れていました。
私が幼稚園に入るまで、
私にとって市場の子達は遊び相手にするにはまだ幼すぎました。
ですから、その頃までは一人で市場の中を探検するのが私の遊びでした。
行ってはダメと言われれば行きたくなるのが世の常です。
私は、踏切を超え、市場の奥へ行くのが大好きでした。
映画館に忍び込んだり、パチンコ屋で玉を拾ったり、
お腹がへれば、店先に山盛りに盛られた鰹節を口に入れて逃げたり、
まさに市場は私の遊び場でした。
そんな自由気ままに市場の中で遊び回る私に、
いつしか踏み切りを超えるたびに声をかけてくれる人がいました。
それが、「踏み切りのおじさん」でした。
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チンチン電車の阪堺線は、綾ノ町駅から先が一般道路の上を走る、
所謂、併用軌道となっています。
そこは、堺市でも大きな道路と併用していて見通しもすこぶる良好です。
とこらが、大阪市内から綾ノ町駅までは車幅は狭く、
民家がすぐ近くに迫っている電車道を走ります。
特に、綾野町駅から一つ手前の高須神社駅までの間は、
列車が倒れそうになるぐらいの急カーブが長く続いています。
そのため、市場の踏み切りから遠くの列車の姿を確認する事はできません。
列車が踏み切りに数メートルに接近してやっとその姿を見ることができる状態でした。
そして、それに加え、その踏み切りは人通りの多い市場の中にあります。
おそらく、非常に危険な踏切と認識されていたのでしょう。
その踏み切りは自動式ではなく、
その頃でもとても珍しい、手動の踏み切りだったのです。
踏み切りの横には小屋が建てられ、
そして、そこに常駐の「踏み切りのおじさん」がいたのでした。
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「ボク!お菓子あるで!寄って行き!」
私が踏み切りを超えて奥の市場へ向かおうとすると、
旗を持ったおじさんが、ニコニコ笑いながら小屋から顔を出し声を掛けてきました。
最初はそんな感じだったと思います。
それが気が付けば、いつのまにか私は踏み切りを通るたびに、
おじさんのいる小屋に出入りするようになっていました。
おじさんは、私が行くと必ず金平糖やかりん糖といったお菓子とお茶を出してくれました。
小屋の中には腰を掛ける事ができるぐらいの高さに、2畳ほどの畳がひかれていました。
私はそこに座りお菓子を食べながら、おじさんから色々な話を聞きました。
主に、電車の話だったと思います。
おじさんは鉄道マンらしく、電車が大好きで小屋の中にも電車の本がいっぱいありました。
私は本を広げ、「これは何?これはどこの列車?」と質問を繰り返しました。
おじさんは私の質問に一つ一つ優しく答えてくれました。
おじさんと話をしていると、ピーピーと音がして、赤いライトが点灯します。
すると、丸椅子に座って外を見ていたおじいさんは
「ちょっと待ってな!」と立ち上がり、窓際に備えてあるハンドルをぐるぐると回します。
遮断機が下り、警報機がなって、チンチン電車が通過します。
おじさんは背筋をピンと伸ばし、通過していく電車の運転手に敬礼します。
その姿は子供ながらにかっこいいと憧れたものでした。
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事件は突然起こりました。
不思議な物で、何かが起こった時のことは遠い昔の事でもしっかりと覚えています。
私は、自分の店のなかで椅子に座り足をブラブラさせながら、
天井近くに添えつけられた小さなテレビを見ていました。
テレビでは、「グループサウンズのコンサートで失神者が出た」
というニュースが流れていました。
来日していたビートルズのファンが、
何十人もコンサートの途中で失神したというニュースでした。
「こんなもん、どこがええねん!」
母が、私が見ていたテレビを横目で見ながらそう呟いた時、
遠くの方で大きな音が鳴りました。
その大きな音に驚き、市場の中の誰もが踏み切りに集まりました。
私は人ごみをかき分け先頭に出ました。
見ると、踏み切りから10メートル程離れた所に電車が停車し、
その途中に壊れた自転車が転がっていました。
すぐに救急車が呼ばれ女の人が運ばれていきました。
我に返った私は踏み切りのおじさんを探しましたが、
既にその時おじさんの姿はありませんでした。
「踏み切りのおっちゃんも助けようとして怪我したらしいで・・・」
近くにいるおばさんたちがそんな話をしていました。
その次の日から踏切には違うおじさんが来ていました。
私はもう踏み切りを超えて冒険に出かけることも無くなり、
市場の子達と遊ぶようになりはじめました。
いつしか、私の知らないうちに、踏み切りは自動のものに変わっていました。
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ひょっとしたら、踏み切りのおじさんは私が市場の方へ行かないように、
声を掛けてくれていたのかもしれません。
母が頼んだのか、
おじさんとよく話をしていた親戚の漬物屋の叔母さんが頼んだのか・・・
どちらにしても、私の知らないうちに、大人たちが私を守ってくれていたのでした。
そして、それは踏み切りのおじさんのみならず、
映画館の叔母さんや、パチンコ屋のおじさん、
鰹節屋のお姉さんもそうだったのかもしれません。
市場の人みんなが、幼い私を自由に遊ばせてくれていたのです。
そんな事を考えていると、私と家内を乗せたチンチン電車は、
「高須神社」駅を発車しました。
長い大きなカーブにさしかかった時、
私は身体をひねり窓の外を眺めながら隣にいた家内に言いました。
「もうすぐ、市場が見えるからね!」
その子供のようなはしゃぎぶりに、あきれた彼女はチラリと窓を見やっただけで、
「そう。」と叉正面を向きました。
カーブが過ぎ、10年前に閉鎖された市場のアーケードが、
あっという間に流れ過ぎていきました。
それは長い、深い洞窟のような暗闇でした。
けれども、私にはその通り過ぎる踏み切りの横で、
敬礼しながら私を見送る、
踏み切りのおじさんの姿がはっきりと見えました。
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2. ∽∽〜かおりん、たむたむの裁断したろかあーー〜∽∽
|このコーナーでは、わが愛妻かおりんが、世の風俗世相を
|油圧裁断機のごとくたった一言で、がつんと切り落とします!!
■ 今回のかおりんは、
長い事スタッフの女の子達におねだりされていた電子レンヂが
ついに工房にやってきた!
数日後、そのレンヂにどこかで見たようなものが・・・。
浜ちゃん:「このレンヂに付いてる物何ですか?」
かおりん:「見覚えのある形、何と思う?」
浜ちゃん:「あ、月光仮面!」
かおりん:「そう!バカやろ〜。たむたむが付けてん。」
何をしているのか気付かれていなかったが、
実は、しっかり目撃されていたたむたむ。
一体、こっそり何やってるんですかぁ〜!!
何をやってたかはこちら ↓ ↓ ↓
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perfume289@hotmail.com
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3.あとがき
10年前、人づてに、この市場が閉鎖されると聞いた時には、
余りその実感がありませんでした。
けれども今回、チンチン電車に乗って、
実際に閉ざされたアーケードを見たとき、
思いもよらないほどの寂しさが私を襲いました。
そして同時に楽しかったあの頃のことが次から次に脳裏に浮かびました。
今考えると私が楽しく過ごせたのも、私を取り巻く市場の人たちが、
私をいつも気にかけ、見守ってくれていたからだと思います。
私にとって、この市場は間違いなく故郷でした。
そして、その故郷の優しさを象徴してくれたのが、今号の「踏み切りのおじさん」でした。
今号を書き終えると、
私は市場が無くなった事にも余り寂しさを感じなくなっていました。
何故なら、故郷は生まれた場所、育った場所ではなく、
心の拠り所だと気付いたからです。
そして、その故郷を作り上げたのは、その時の一人一人の人間の心のぬくもりです。
市場が無くなっても、心が消え去る事はありません・・・
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発行人:田村幸樹
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最後までお読みいただいて本当に有難うございます
Vol.65 予定は10月29日です。
乞うご期待!
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