2009/05/26
会計士監査こぼれ話「インセンティブのねじれ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−2009/5/26 NO.123 −− 「インセンティブのねじれ」 発行部数1,219部 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− みなさんこんにちわ。 3月決算も大分落ち着いては来たのですが、会計士業界は忙しいのが すっかり定着したのか、なかなか仕事が減りませんね。 どこの会社も同じと思いますが、+αの仕事をしていくのは比較的簡単 ですが、不要な仕事を見極めて減らすのはなかなか勇気が無いと できませんね。 さて、最近コーポレートガバナンスに関する提言が経団連、会計士協会 や監査役協会から相次いで出されています。いろいろ立場が違って読んで いると本音が透けて見えてきたりしてなかなか面白いのですが、その中の 論点の一つで、監査人の選任権を経営者が持っているいわゆる「インセン ティブのねじれ」問題が取り上げられていますので、ちょっと紹介したい と思います。 インセンティブのねじれというのは、要は、監査を受ける側が監査人の 選任権を持っているため、自分達に都合の良い監査人を選択する誘引があ ること、また、監査人側も選任権を握られているため、会社側に安易に同 調し易く、結果、監査が適正に行なわれない可能性があるため、このよう に呼ばれています。現行制度上は監査役に会計監査人の選任、報酬の同意 権が与えられており、一定の歯止めになっていますが、それでは不十分で はないかというところから問題提起がされています。 会計士協会は、インセンティブのねじれ問題の解決のためには現行の同 意権では足りず、監査役に監査人の選任権を与えるべきと提言しています。 一方、経団連は今のままの制度でも監査役の同意権が定められているので それをしっかり活用すれば十分と主張しています。要は、会計士協会は、 仕組が弱いのでより強固な仕組にすべきという主張であり、経団連は、仕 組を強化するよりも倫理観等の実態を高めるべきという主張といえます。 経団連の主張は、主張としては理解できますが、実態を高めるための方策 は示されておらず、説得力としては弱いかなと感じます。むしろ、実態を 全ての会社について高めるのは難しいので仕組を強固にすべきという主張 の方が説得力はあると感じます。 実務家の立場からすると、監査役の同意権が会社法で導入されてから、 選任・報酬交渉のプロセスが変わったかと言うと、多くの会社では、ほと んど変わっていないのが実情なのではないでしょうか。まず第一義的に交 渉するのは経営側であり、監査役の同意については、そこで決まったもの について、法律で定められておりますので、監査役の同意も忘れないよう にお願いしますと申し添える程度のものでしかないんだと感じます。だと すると、適正な監査時間の確保という本来の趣旨が達成されているとは言 い難く、やはり同意権だけでは仕組としては若干弱いと思います。 では、会計士協会の主張するように監査役に選任権を与えるとどうなる か。こうなると報酬交渉のプロセスは大きく変わることになるんだと思い ます。会計士側が見積もりを監査役に提出し、説明をする。それに対して 経営側がもうちょっと効率化するように反論する。両者から意見を聞いた 監査役が最終判断することになりますが、なかなか細かい話まで監査役 (特に社外)が理解するのは難しいかもしれません。また、監査役も実質 的には会社から給料をもらっている(建て付けは株主総会ですが)こと、 候補者は経営者により選任されていること等を考えると、日本企業の多く は監査役は身内という意識も強く、結局はプロセスは変わるものの、実態 と結果はあまり変わらない会社も多いのかなという気もします。しかし、 仕組としては強固になりますので、より望ましい割合が増えるのは間違い ないと思いますが、さてどういう仕組になっていくのでしょうか。 【発行責任者】 ************************ ペンネーム 会 啓示(かい けいじ) 連絡先 kaikeiji2000@yahoo.co.jp 質問やご不明な点あればいつでも連絡下さい。 まぐまぐ紹介ページ http://www.mag2.com/m/0000128296.html ************************



