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2009/09/26

今の美術業界を考える(その290)

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        今の美術業界を考える(その290)

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 1Q84     村上春樹著           2009年9月26日
                                                
 今年の春に出版された、村上春樹さんの話題作、‘1Q84’を読みました。
 なんとも不思議な読後感のある本ですが、さすがと思わせるのは一気に
 読ませる文章力です。ただ、なんともいえない心にずしりとくるものは
 村上さんの本を読んでみないとわからないと思います。
 
 あまり、この手の本は読まないのですが、読後感が似ているという点では
 ‘ソフィーの世界’ヨースタイン・ゴルデル著でしょうか。この本は
 少年・少女向けの哲学書ということで、非常にわかりやすく哲学の世界へと
 読者をいざなうのですが、村上春樹さんもある意味、大人向け娯楽哲学
 といった趣がありました。基本的には哲学の世界に人を引き入れるには、
 かなりの文章力が必要です。村上さんの文章は、とてもセンスがよく
 歯切れのよい文章がつらなるので、休むまもなく連休だったこともあり、
 年甲斐もなく徹夜をして読んでしまいました。
 
 現代社会をうつしているのでしょうか、村上さんの描く作品の人間関係は
 かなり特殊な人たちにスポットをあてているように思ったりします。もしくは、
 私は70代のあまり仕事をしたことのない母親と一緒に生活をしているから
でしょうか? 仕事に関しては、自由に新しい発想でさせてもらっておりますが、
こと子育てに関して言えば、祖母に任せていることもありかなり保守的な考え
方になっていると思います。また特に、少女になろうとしている娘に対して、
男女関係においてはかなり保守的です。実の娘である私以上に孫に対して
厳しいようにも感じます。そもそも、お年頃になって男性に声をかけられるのは
女性の方に隙があるからいけないのだ。というのは昔から祖母の持論でして、
村上春樹の世界における自由な男女関係は、祖母からすると全くの別世界であり
自分の周りでは起こってはいけない世界なのです。村上春樹さんが提示する
現代社会のあり方や、若者の価値観は既に私の世代よりずっと若く、1Q84
を読んだという祖母はどのように感じたのでしょうか?
‘ふかえり’という主人公がかなり特殊な人物として描かれているのは理解
できても、その周りを彩る人間模様もフィクションの世界を感じさせます。
そういう意味においても、村上さんが村上ワールドという世界を作り上げ、
そういう世界観に共感するわかもの読者が多く居るということを実感させら
れる本でした。個人的には、重松清さんの‘かあちゃん’の人間関係から学ぶ
ことは多かったのですが、村上ワールドにおける人間関係は私の世界では
起こりえないし、ちょっと不思議な国のアリスに行ってきたような気分に
させてくれる視野を広げさせてくれた本です。

                        文責    野呂 洋子




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