2008/10/06
教ドキュWeekly 10/6号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 教ドキュWeekly(増刊) 2008.10.6号 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 展覧会紀行北陸編 アメリカでのマネーゲームの破綻でリーマンブラザーズが破綻して話題とな っているが、次に危ないと囁かれているのがAIG生命である。社会に害悪を 流しながら自分たちだけが儲けている守銭奴どもがいくら破産しようと私には 無関係だし、何らの同情心も湧かないが、「AIGが破綻寸前」と聞いた時に は一瞬頭をよぎるものがあった。そう言えば、現在富山県立美術館でAIGコ レクションが展示中であることを思い出したのだ。もしAIGが破綻したら、 これらのコレクションも売却されて散逸するのがオチ。これは今のうちに見に 行っといた方が良いかもという考えが頭をもたげてきた。 しかし前回にも行ったように、今年は夏の大型遠征ラッシュで既に軍資金が 底をついている。それが秋になったからといって好転するわけもなく、全く資 金がない中から遠征費用を捻出する必要に迫られたのである。 日程は9月の飛び石休というのは決定事項だが、とにかく先立つものがない 状況。計画は二転三転をした。福井で一泊して、その後金沢で二泊するという 超大型プランから、果ては高速バスで富山を日帰りする(車中2泊)という極貧 プランまで、様々なプランが浮かんでは消えていく。それらのコストとスケジ ュールの激しいせめぎ合いの結果、金沢2泊で往復は高速バスの昼便というプ ランに落ち着くこととなった。 生憎と当日の大阪は雨がぱらつく天気。しばらく待ったところでターミナル に金沢行きのバスが到着する。到着したのは3列シートのバス。私の座席は最 前列である。高速バスに乗るのはしばらくぶりだが、やはりバスのシートは狭 い。私のように横幅の広い人間にはいささかつらい。東京遠征の時、いつも頭 に高速バスがよぎるのだが、やはり高速バスだと寝られないだろうなというこ とを痛感する。 しばらくは風景を眺めていたのだが、名神高速に乗った頃から雨脚がさらに 強くなり、前もろくに見えないほどの豪雨。車内で「スパイダーマン3」の上 映が始まったので、仕方なくそちらを見るが、あまりにつまらないので途中で ヘッドフォンをはずしてしまう。その結果として分かったことは、この映画は 音声が聞こえない状態で、時々チラッと見るだけでもストーリーが全部分かっ てしまうということである。さすがに最近のアメリカ映画は中身の空洞化がか なり進んでいる。 映画が終わる頃には福井を過ぎていた。雨もようやく小降りになってきて、 辺りの風景が見えるようになってきた。ふと前を見ると丸岡の表示が。左の方 を見ると遠くに丸岡城の天守閣が見える。実は今回の遠征計画では、当初は丸 岡城訪問も予定に入っていたのだが、台風の接近と予算の問題でスケジュール を一部カット、丸岡城は次の機会にすることにしたのである。「待ってろ、い つか行ってやるぞ」と心で叫ぶ。 豪雨のためバスの到着時間が気になったが、前もろくに見えないような悪コ ンディションにも関わらず、バスは予定よりもやや早い時間で金沢駅に到着す る。1年ぶりに金沢に降り立った私は感無量であるのだが、感慨に浸っている 余裕はない。直ちに行動開始である。 まずはとりあえず予約していたホテルに行き、荷物を預けると共にチェック インの手続きを済ませてしまう。私が予約したのは「ドーミーイン金沢」。温 泉大浴場付で部屋の照明は明るく、トイレと洗面台が別になっているなど、こ とごとく私のニーズを満たしており、1年前に宿泊した時に是非ともまた来た いと思っていたホテルである。 ホテルにトランクなどの重たい荷物を預けると市内周遊バスに乗り込む。高 速バスの中でおにぎりを2つ食べただけなので空腹が身に染みている。まずは 目的地の前に腹ごしらえである。武蔵の辻で降車すると1年前にも訪問した近 江町食堂を再訪する。前回は海鮮丼を注文したのだが、今回は近江町定食(1 570円)を注文する。 運ばれてきたのはオーソドックスな昼定食。いかにも町の食堂という雰囲気 のこの店にピッタリである。たださすがに魚の鮮度は良い。魚にはうるさい私 をも納得させる内容。やはり刺身は古くなるとてきめんに味が落ちるが、誰で も最もそれを簡単に感じることが出来るのが甘エビの頭。新鮮な甘エビは頭の 中をすすると、まさにその名の通り「甘い」のであるが、これが少し古くなる と生臭くて食べられものではなくなる。だからそもそもスーパーの刺身などで は、甘エビに頭をつけたまま出すなどという無謀なことをしない。で、ここの 刺身だが当然のように「甘い」のである。またうれしかったのが、なんの変哲 もないように見える味噌汁がしっかりとアサリの入ったアサリ汁だったこと。 大抵は具の断片が申し訳程度に見える程度の味噌汁が多い中で、これは逸品。 調子に乗って嫌いのはずのモズクまで食ってしまった。 印象として、以前の海鮮丼と価格は等しいにもかかわらず、こちらの定食の 方が個人的にはCPが高く感じた。どちらか言えば海鮮丼の方が観光客受けは しそうであるが、実をとるなら昼定食である。なおよりリッチに楽しみたい方 には、さらに上級の定食もあるようである。 腹を満たした後はいよいよ本日の予定をこなすことにする。まずは第一の目 的地はつい最近に改装が終わった石川県立美術館。しかし生憎と金沢の方もい よいよ本格的に雨が降り出したようである。雨をおしてバス停に到着、どのバ スに乗ったら目的地にたどり着くのかを確認。どうやら「兼六園行きループバ ス(土日祝日運行)」に乗車したらよいようである。と、確認を終えて顔を上げ ると、今まさにそのバスがバス停から出て行っていくところ。結局は次のバス まで20分も待つ羽目に。なんて不運な・・・と思いながら目の前の建物を見 ると、「院展金沢展開催中」の看板が。どうやらここの百貨店で院展が開催さ れているらしい。というわけで、ボーっと20分もバスを待つほど気の長くな い私はまずそちらをのぞいてみることにする。 ────────────────────── 「院展金沢展」名鉄丸越で9/21終了 言わずと知れた、多くの一流画家も輩出した大規模な公募展の金沢巡回展で ある。 私は院展の特徴がどうとか云々するだけの知識はないのだが、展示作品は日 本画の具象画ばかりなので、現代アート系が苦手な私にも理解しやすい内容。 また同人作品として名の知れた画家たちの作品も併せて出展されている。その 手の画家については「いかにも○○らしいな・・・」という作品が多かったの であるが、特に目を見張る作品もなかった。 それよりは無名の画家であるが、感性の輝きのようなものを感じる画家が数 人いた。果たして彼らが今後大家として上がってくるか、市井に埋もれてしま うか。前者なら私の鑑識眼はなかなかということだが、後者なら節穴というこ とになる。数年後が楽しみ。 ────────────────────── 結局は、バス停で逃したバスの2本後のバスに乗車して、無事に県立美術館 に到着する。ここに来るのは1年ぶりだが、外から見た限りは特に変化した様 子がない。しかし中に入って唖然とする。喫茶コーナーに行列が出来ている。 よくは分からないのだが、どうやら評判のよいケーキ屋か何かがテナントで入 った模様。とは言っても私はそんなものに興味はないので、さっさと展示室の 方に向かう。 ────────────────────── 「法隆寺の名宝と聖徳太子の文化財展」石川県立美術館で10/24まで 国宝玉虫厨子を始めとする法隆寺の名宝を展示した展覧会。聖徳太子が設立 した法隆寺は文化財の宝庫だが、その法隆寺の国宝や重要文化財がズラリと並 んでいる。 展示物として、仏教関係の資料が多いのは当然であるが、本展では工芸品の 類も多数展示されていたのが特徴的。個人的な印象としては、法隆寺展と言う よりも正倉院展のような印象を受けてしまった。 ただ、奈良が活動エリアに入っている私としては、わざわざ金沢で法隆寺の 宝物を見る意味は・・・。玉虫厨子なんてこれで何度目だろう。正直なところ 展覧会の選択を間違えてしまった。 ────────────────────── 今回、県立美術館を訪問したのは、前回の訪問時にこの館のコレクションに ついても興味を感じたというのがある。というか、その実はむしろこっちの方 が本命と言えよう。だから当然であるが常設展のほうも一回りする。さすが加 賀百万石の城下町、コレクションは玉石混交でかなり興味深い作品もある。前 回は駆け足で回ったので、今回はもう少し腰をすえてじっくりと鑑賞する(と 言っても、私が展示品鑑賞に費やす時間は、普通の鑑賞者に比べると異様に短 いらしいが)。やはり金沢は工芸品のレベルが高いようである。ただ残念なが ら、私はこっちの方には全く鑑識眼がないのがつらい。 美術館の見学を終えるとさらにバスで移動する。実は前回の金沢訪問でやり 残していた最大のものは、金沢城見学である。当初の予定では兼六園を見学し た後、金沢城も見学するつもりだったのだが、灼熱の兼六園を回るうちに体力 を消耗しすぎて、とても金沢城まで回る余力がなかったのである。この前回の 宿題を終えるのも今回の遠征の目的の一つである。 前回に見学した兼六園を背にすると石川門の方に向かう。ここは道路を越え る橋で結ばれているのだが、現在の道路があるところはかつての堀の跡である という。そう考えて見るとかなり深い。 金沢城は言うまでもなく、加賀百万石の前田氏の居城である。しかし明治以 降は陸軍の駐屯地になった挙げ句に大部分の建物を火災で失うなど、全国の他 の城郭と同様の惨憺たる扱いを受けて荒廃してしまった。その挙げ句、戦後は 金沢大学のキャンパスが置かれるなど悲惨な状況にあったという。しかし近年 になって、金沢大学が移転すると共に石川県が本格的に城跡の再整備に取りか かり、積極的な復元工事がなされているとのこと。 とりあえずは数少ない現存建物である石川門をくぐって中に入ると、広大な 敷地内でかなり大規模に工事がなされているのが分かる。前方には復元工事で 再現された菱櫓や五十間長屋が見えるので、まずはそこから見学する。 菱櫓はその名の通り菱形の平面をした櫓。あえて菱形にしているのは耐震性 を向上させるためとか。当時の技法にかなりこだわって復元したとのことで、 櫓の上に上がるための階段はかなり急で、現存天守を思わせる。さらに櫓には 石垣を登ってくる敵兵を迎撃できるシステムが備わっており、防御の要であっ たことが分かる。また広大な五十間長屋の内部はその木組みなどが圧巻である 復元建造物を見学した後は、これまた数少ない現存建物である三十間長屋を 外から観察してから本丸跡に登る。しかしここには既に櫓跡以外は何もなく、 現在は本丸跡全体が広大な森林となっており、貴重な野生生物の住処になって いるとか(となると、むやみやたらに伐採して建築物の復元というわけにもい かないか)。 金沢城は建築物があまり残存していないのが寂しいところだが、複雑な構成 の石垣の美しさが印象に残った。今後復元工事が進んでいけば、兼六園と並ん で金沢の観光名所になりそうである。 この付近にはさらに21世紀美術館があるのだが、県立美術館と金沢城を優 先した結果立ち寄る時間がなくなってしまった。まあ前回の訪問時にも、美術 館の巨大な仕掛けには感心したものの、やはり私は現代アートとは相性が悪い ということを痛感しただけだったので、今回はここは省くことにする。 金沢城見学の後は、金沢駅までバスで戻ってくると、そのまま地下に潜って 北陸鉄道金沢駅に向かう。例によってここからは「21世紀の地域振興と交通 について考える市民の会代表(自称)」としての視察活動である。実は北陸地域 は意外にも鉄道大国であり、多くの地方路線が残存している。北陸鉄道もその 一つである。近年はバスに追われて廃線も増えているが、それでも金沢−内灘 間の浅野川線と野町−加賀一の宮間の石川線が残存している。今回はその浅野 川線を視察しておいてやろうというもの。 駅前再開発工事によって地下に移されたという北鉄金沢駅はこじんまりとし た駅。そこに単両のロングシートタイプの電車が到着する。浅野川線は始発駅 の金沢と終着駅の内灘以外はすべて無人駅であり、有人駅ではすべての乗客を 改札して降ろしてから、乗車する乗客の改札をするというパターンのようであ る。浅野川線は全線単線の電化路線であるが、終着駅まで20分足らずで到着 するぐらい短いので、中央付近の三ツ屋駅ですれ違いをしながら2両の車両を ピストン運転しているようである。 沿線風景はほとんどが金沢の市街。途中でやや郊外めく部分もあるが、概し て沿線人口は多いようで、利用客数もそれなりにいるようである。また終着の 内灘ではバスが接続しており、多くの乗客はそれに乗り換えてさらに先に進む 模様。つまりは鉄道自体が完全にバスの路線の一部として運行されているよう である。 内灘まで往復して帰ってきた頃にはすっかり日も暮れてもう夕食時。しかし 昨晩まともに眠れなかった上に今日は移動で疲れたので、今からどこかに夕食 を食べに行く気力が起こらない。そこでこの日の夕食は安直に、駅の中のレス トランで金沢ではポピュラーというハントンライス(オムライスの上にタルタ ルソースのかかった魚フライを置いたようなもの)を食べて終わりにする。 この日はホテルに帰ると、温泉でたっぷりと疲れを癒し(この温泉があるの がこのホテルの最も良いところである)、夜には床につく。 しかし翌朝の目覚めは最悪だった。夜中に腹痛で目覚め(どうやら腹が冷え たようである)、そのまま完全に寝そびれてしまったせいで、翌日はろくに睡 眠をとらないまま朝を迎えることとなってしまったのだった。 とは言ってもこのまま呆けていても仕方がない。眠気覚ましに早朝から温泉 に入浴すると、とりあえずは朝食を摂って無理矢理に身体を奮い起こして一日 のスケジュールをこなすために出発したのだった。 まずはJR金沢駅に行くと、そこから北陸線で高岡まで移動する。北陸線に 乗車すると、石川と富山の間はかなり険しい山岳地帯で完全に分離されて いることが分かる。 高岡に到着するとここで乗り換え。富山に到着する前に氷見線の視察である 。氷見線とは高岡と氷見を結ぶ単線非電化路線である。当然ながらディーゼル 車両が走行している(キハ40型だそうな)のだが、高岡が藤子不二夫氏のゆか りの地と言うことで、忍者ハットリ君がペイントされた車両が走行しており、 車内放送までハットリ君で「ニンニン」という凝りよう・・・なのは良いが、 生憎とディーゼルのエンジン音が大きいせいでよく聞こえない。 沿線は最初は高岡市街を走行するものの、すぐにそれから外れて海岸沿いの 比較的閑散とした地域を走行する。最初の越中中川駅で通学の高校生が一斉に 降車すると、後は閑散とした雰囲気になる。途中で雨晴海岸で日本海が眺めら れるが、生憎と天候が今一つである。海岸を抜けるとすぐに終着の氷見に到着 。全線で走行時間は30分足らずである。 氷見線については雨晴海岸という景勝地はあるものの、別段に観光色のある 路線ではなく、あくまで沿線住民の足以上でも以下でもない。ただ気がかりは 氷見駅周辺がそう賑やかではないことと、沿線人口もそう多くはなさそうなこ と。さらに他の地域同様、この辺りもモータリゼーションはかなり進んでいる ようである。また北陸新幹線延長後は、この地域の在来線は一括してJRから 切り捨てられる(経営が分離されるとか)とのことで、そうなると今後はかなり 不透明である。実用的なダイヤを死守できるかどうかが存続の ポイントになりそうである。 終着の氷見からすぐに折り返して高岡に到着すると、そこから再び北陸線に 乗り換えて富山に到着する。富山には富山地方鉄道という路線が存在し各地を 結んでいるが、市内を循環する路面軌道と市外とを結ぶ専用軌道の2種の路線 を保有している。とは言うものの鉄道マニアではない私にはあまり関係のない こと。とりあえずは路面電車で次の目的地に向かう。 ────────────────────── 「印象派の光、エコール・ド・パリの夢」富山県立近代美術館で10/13まで AIGスター生命が所蔵するフランス近代絵画コレクションを展示ししたも の。モネを始めとして、ルノワール、ゴッホなどから、シャガール、藤田嗣治 など。 モネについては点数は結構あったのであるが、私としては今一つピンとこな い作品が多かった。逆に面白いと感じる作品が多かったのはルノワール。ルノ ワールには珍しい風景画やいかにも彼らしい人物画まで秀品が多かった。印象 派からエコール・ド・パリまでの画家を網羅的にカバーしているので、この辺 りの流れを感じるには最適の内容か。 ────────────────────── 目的を終えた後は、スーパーで昼食用の弁当を購入し、バスで富山駅まで引 き返すと、再び北陸線で高岡まで取って返す。次はここから南の方に向かって 伸びている城端線の視察である。城端線は氷見線と同様に高岡から延びている 北陸線の支線に当り、氷見線と同様に非電化単線路線である。そのために両路 線の車両は共用化されている模様であるが、直接に接続した運行は行われてい ないようである。 高岡駅から南下して市街を抜けると、沿線風景は突然に富山米所の田園風景 に変わる。田園の中を走行することしばし、再び周囲が市街地めいてくると、 そこはこの沿線で最大の都市(多分)の砺波市である。多くの乗客がこの駅で降 車し、ここでしばし上り列車と待ち合わせのすれ違いを行う。砺波駅を出た後 は再び列車は田園地帯の中を疾走するが、この頃から南部の山岳地帯が徐々に 近づいてくるのが感じられるようになる。 田園風景を見ながら本日の昼食を取り出す。今日の昼食は先ほどスーパーで 購入したマス寿司。本当はもう少しまともなものを買いたかったのだが、残念 ながら私が目当てにしていたものは売ってなく間に合わせである。今日はスケ ジュールが厳しいので、店に入ってじっくりと昼食を摂っている暇さえない。 という意味ではまさしく「遠征」そのものなのだが、何か主旨が変わってきて いるのを感じる・・・。 やがて列車は終点の城端駅に到着。この駅は白川郷方面行きのバスとの接続 点となる。しかしそれ以外には特に何かがあるというところではない。白川郷 には私も興味はあるが、今回はそんなところに立ち寄る大遠征計画はない(と いうか予算がない)。結局は私は滞在数分で引き返す。 今日が飛び石連休の中途の平日であるせいか、乗客には圧倒的に学生が多か った。JRのローカル線を支えているのは学生の通学需要だと言うが、この路 線の場合もまさにその図式の通りなのだろう。盲腸線であるだけに基本的に地 域間輸送が中心であり、それ以外の要素は見つけにくい路線であった。 高岡に戻ってくると、本日最後の鉄道視察となる。次は路面電車の万葉線で ある。高岡市街を走行する路線として、高岡駅前から隣の射水市の港湾地域の 越ノ潟までを結んでいる。かつては高岡と富山を結ぶ鉄道路線であったが、富 山新港掘削による路線の分断、採算悪化による一部路線の廃止、路線の譲渡な どの経緯があった後、現在は第3セクターである万葉鉄道によって運営されて いる。高岡市内路線の大半が路面軌道で、射水市内には専用軌道も併用してい る。運転間隔は15分おきという多頻度運転で利便性は高く、新型の低床型車 両も導入しており、いかにも昔の路線電車というタイプの旧型車両と、最新の 車両が交互に走行している状態である。時代遅れの交通システムと言われてい た路面電車が、近年では環境問題や都市問題の高まりと共に最新交通システム のLRTとして再注目されているが、まさにそのような社会状況を如実に反映 している。 高岡駅前から乗車したのはその旧タイプの方の車両。昭和レトロを思い出さ せるような年季を感じさせる車両である。市街地エリアでは乗客も結構多い。 ただモータリゼーションが進行した地方都市ではどこでもありがちな風景であ るが、運転マナーの悪さが目に付いた。右折時に電車の軌道内に入り込んで停 車している車が結構多く、しかもそのような状況にもかかわらず、対向車も譲 らずにむしろブロックしているという光景がよく見られ、そのたびに車両が急 停止することになってしまった。都市交通としてのLRTを最大限有効に活用 するためには、自動車の流入の規制も不可欠であると言われているが、その理 由がこういうところにうかがえる。 路線が沿岸部に入る頃には、専用軌道の走行が多くなって運行速度も上がる が、逆に乗客の方が減少してくる。やがて窓から海王丸の姿が見えるようにな ると終点は間近。終点の越ノ潟は全く何もない駅である。ここで下車したのは 私と高校生が一人。ここからは対岸に渡る渡船が運行されているようである。 私の方は、このままこの列車で引き返すのも空しいので、終点の一つ手前の海 王丸駅まで散歩がてらにブラブラと歩く。 港湾地域だと思っていたのだが、実際のこの辺りは古い住宅地という風情。 遠くの海岸には海王丸パークがあり、海王丸がそこに接弦展示されているのだ が、案内を見ると生憎と本日は休園の模様なので、遠くから眺めておくだけに する。海王丸駅には十数分で到着。ちょうど新型車両が越ノ潟に向かって走っ ていくのが見える。そこでそれが折り返してくるのを待って乗車する。やはり 乗り心地は新型車両の方が上である。二両が連結された構造になっており、広 島電鉄の宮島線の車両に似たイメージ。また窓が大きくて見晴らしも良い。乗 客は徐々に増え、高岡駅に戻ってくる頃には満員に近い状態になる。 第3セクターに移管してからは、乗客数の減少は歯止めがかかっていると言 うが、ポイントは多頻度運転による利便性だろう。また低床式車両の導入は、 高齢者などの交通弱者に対して優しいシステムであり、今後とも頑張ってもら いたいところである。なおこの路線の命運は高岡の都市としての盛衰に関わっ ており、常々言っていることだが、地方の活性化を促すような全国的な施策が 必要である。これから数年の日本の課題は、小泉インチキ改革によって徹底的 に荒廃させられた地方の再建である。 高岡駅からは北陸本線で金沢まで帰還する。金沢に到着した頃には日がどっ ぷりと暮れている。とりあえずは夕食を摂る必要がある。今日の夕食は前回に も訪問した「自由軒」に行くことにした。今回注文したのはプレート(995 円)。この店の名物のオムライスとコロッケなどを組み合わせたメニューであ る。オムライスについては、前回には注文しながったので今回試してみようと の考え。 前回にオムライスの注文をためらったのは、ここのオムライスはケチャップ を使用しないかなり特殊なものだと聞いていたからである。実際にオムライス を割って中を見てみると、ライスが赤い色をしておらず、茶色っぽいライスが 入っている。一口食べてみると確かに変わっている。多分コンソメなどで炊き 込んだライスに醤油ベースの味付けをしているようである。しかし驚くのはそ のバランスが良い事。正直なところ「ケチャップを使わないオムライスなんて ・・・」と思っていたのだが、実際に食べてみると、非常に味わいが鮮烈でな おかつオムライスというメニューに非常に合致しているのである。これを食べ てしまうと、むしろケチャップライスは味がぼやけているようにさえ思えてき て、こっちの方が正解なのではといういう気さえ起こってくるのである。 なかなかに貴重な体験だった。味覚というのは個人の好みもあるので、万人 に同じことが言えるかどうかは分からないが、私にとってはここのオムライス は私がまだ先入観というものにかなり支配されていたということを思い知らす に十分なものであった。 夕食を終えるとホテルに帰還、最上階の温泉に浸かってまったりとする。そ して本日の夜食を出してくる。富山に行ったのだからお約束のマス寿司である 。実のところを言うと、これを買い込んでいたから今日の夕食は軽めにしてい たというわけ。前回は「特選」マス寿司を食べたのだが、私にはやや脂のりが よすぎてしつこく思われたので、今回はノーマルなマス寿司である。やはり私 にはこちらの方が合っているようだ。 さすがに昨晩ろくに寝てないのと一日列車に乗り続けで疲れたのとで、この 日は原稿執筆の気力さえないままそうそうに爆睡してしまう。 昨晩ろくに寝られなかったせいか、この日は朝まで爆睡をした。目覚ましに 叩き起こされたが、疲れがまだ残っているのかまだ頭がボーっとしている。い っそのことこのまま今日の予定はなしにして、チェックアウト時間まで寝とこ うかという悪魔のささやきが頭の中に聞こえる。これに対して反対側から、こ こまで来ていて予定をこなすことができなければ勿体ないという貧乏神のささ やきが。結局、悪魔対貧乏神の葛藤は貧乏神が勝利を収め、私は重たい身体を 無理矢理起こすと朝食を摂りに食堂に降りる。 朝食を済ませるとホテルをチェックアウト。トランクは金沢駅のロッカーに 放り込んでからホームに向かう。今日の目的地は能登半島である。七尾線を使 用して能登に乗り込もうという計画。七尾線は津幡からであるが、七尾行きの 列車は金沢から発車している。ホームの先端部が切り欠き状になっていて、そ こから七尾線の列車が発着している。 ホームで待っていたのは交直両用電車の415系の800番台。七尾線は直 流電化されているが、金沢−津幡間の北陸本線は交流電化なので、金沢発の七 尾線列車は交直の切り替えが必要になる(津幡を通過したところで、交直切り 替えのための停電が数秒ある)。本車両はそのための改造車であるという。な お元は関西地区でもよく見かける113系だとのことなので、道理で初めて見 た時にどこかで見たことのある面構えだと思ったはずである。なお動力部の改 造の際に車両の内部も改造してあり、新たにバケット型のボックスシートを導 入している。元々の113系のボックスシートは、115系と共にその異常な 狭さで悪評高いが、415系はシートピッチが元の113系よりも広げている ので、座っていても快適である。よく見てみると、窓の位置とシートの位置に 微妙にずれがあることが、この車両が改造車であることを示している。 列車が津幡に到着すると、ここでかなりの乗客が降車する。津幡を出てすぐ に交直切り替えのための数秒間の停電があり、列車は七尾線の直流区間に突入 する。沿線は所々に集落はあるものの沿線人口はそう多くはない典型的なロー カル線の風景である。単線路線なので所々で対向列車とすれ違ったり、特急サ ンダーバードに追い越されたりしながら、1時間強で終点の七尾に到着する。 七尾駅前は私が思っていたよりも賑やかであり、大型商業施設なども建って いる。とりあえず今日の目的地はここである。駅前でタクシーを拾うと目的地 にまで移動する。 ────────────────────── 「能登畠山氏と能登の美術」七尾美術館で10/26まで 室町時代から戦国時代にかけて能登を治めた大名が畠山氏である。畠山氏は 内部の抗争と上杉謙信の攻撃で滅亡するまでの170年間に渡ってこの地を繁 栄させた。その畠山氏にまつわる文物を展示している。 展示物には書状の類が多く、これ以外は肖像画やかつて山城として存在した 七尾城の縄張り図など。要は美術系展示ではなくて博物系展示。残念ながらい ずれも私としては興味の範囲外。 ────────────────────── この地域のゆかりの芸術家と言えば長谷川等伯が存在し、駅前にもその像が 立っている。だが私の訪問時には残念ながら等伯の作品はほとんど展示なし。 これは来る時を間違えたようである。 再びタクシーで七尾駅まで戻ると、ここからさらに先に進むことにする。七 尾からは穴水までのと鉄道という第3セクターの鉄道が通っている。のと鉄道 は国鉄能登線の廃止が論議された時に、この能登線と和倉温泉以遠の七尾線を 引き継いだ第3セクターであり、かつては輪島や蛸島まで路線が延びており、 まさに能登半島を隅々までカバーしていた。しかし沿線の過疎化の進行や道路 整備に伴うモータリゼーションの進行によって乗客が減少、穴水以遠の路線が すべて廃止されるに至って、今や路線長は往時の1/3にまで縮少していると いう。この路線は各地の第3セクターが直面している問題にもろにさらされて いる状況であり、経営的にも危機的状態だと聞いている。これはやはり「21 世紀の地域振興と交通について考える市民の会」としては現状視察をしておく 必要があると考えてのことである。 七尾駅の一部を仕切った形でのと鉄道の駅が存在している。待っているのは 同社の新鋭ディーゼル車NT200型。あのJR西日本の非電化地区で頻繁に 見かけるキハ120型を製造している新潟トランシスの車両だけに、「どこか で見たことがある」という気が強烈に起こる車両である。 七尾からの乗客は十数人ほど。七尾の次は和倉温泉に到着する。実際の和倉 温泉はこの駅から少々距離があるようで、ここから車による接続が必要なよう だ。そう考えると利便性が少々悪い。 列車が能登中島駅に到着すると乗客のほとんどが降りてしまう。この駅には 地元の有志によって保存されているという郵便列車が設置されている。またそ の隣にはかつてこの路線を走行していたパノラマカーNT800型の姿も見え る。路線はこの能登中島を過ぎた頃から山の中や海沿いといった沿線風景とし ては面白くなるが、沿線人口は絶望的に少ないと思われる地域を走行し、終着 の穴水に到着する。この間、30分強。 穴水からは輪島方面などに向かうバスが出ているようである。しかしそれ以 外には特に何があるわけではない。駅の0番ホームには、かつてこの路線を走 行していたNT100型が保存・・・というよりも放置に近い状態で置かれて おり、ここからまだ先に伸びている線路と共にもの悲しさを漂わせている。 穴水に到着はしたものの、特にここからどこかに行くという当てがあるわけ ではなし、結局は滞在数分でここまで乗ってきた列車でそのまま引き返す。帰 りはこの辺りのどこかで宿泊していたと思われる乗客十数人が乗り込んできて 車内はそれなりの混雑になる。 さてのと鉄道であるが、地元の利用はあるようであるが、このままではジリ 貧という感は否定できない。穴水に特に何があるというわけではなく、結局こ こから先に行くバスに乗り換えるのなら、最初からバスで行くのとそう違いが ない。どうせ新型車両を投入するのなら、そのまま従来路線を高速化するとい う手もあったと思うのだが、結局は路線を廃止してから新型車両を投入したの だからそれも手遅れ。輪島や蛸島まで新型車両が高速で突っ走れば少しは勝負 の目もあったかもしれないのだが・・・。 それにしても今回の遠征では、つくづく私は鉄道マニアではないということ を思い知った。鉄道マニアとはとにかく列車に乗っていればハッピーになると いう種族なのであるが、私の場合は「鉄道とはどこかに行くために乗る」とい う意識があるので、盲腸線を終点まで行ってはすぐに折り返すということを今 回続けている内に、どうしようもない虚しさに襲われてしまったのである。や はり私は到着地に何か目的が存在しないと精神的に耐えられないたちのようで ある。これは今後考えておく必要がある。 やがて列車は七尾に到着。しかしここで私の心の中の虚しさは既にピークに 到達していた。このまま来た道を同じように帰るという気にはなかなかならな かった。ここで私は今回、金沢との往復に高速バスを使用することにしたこと を後悔したのである。今回の遠征はこの高速バスを使用することにした結果、 どうしてもそのバスの発車時間までには金沢に帰っておかないといけないとい う制約があり、これがかなりのプレッシャーになると共に、スケジュールの自 由度を制限するのである。これが鉄道で帰るつもりなら、予定よりも一本後の 便にするという変更が可能であるので、例えばついでに和倉温泉に寄っていく とか、いくらでもアドリブが効くことになるのだが・・・。 結局はこのまま金沢に帰るという選択肢しかないのだが、行きと同じように 普通列車でエッチラオッチラ帰る気力は既に私にはなくなっていた。私はせめ て少しでも変化をつけるべく、金沢までは特急サンダーバードを使用すること にしたのである。 普通列車に先行すること数分、和倉温泉発のサンダーバードが到着する。私 が乗車するのは当然のように自由席。3両編成の先頭車両が自由席になる。内 部は結構広々としておりシートも快適。また走行も非常に滑らかで、この列車 かかなりの高速運転が可能であるだけのパワーを秘めていることが分かる。し かし残念ながら単線路線の七尾線ではその真価が発揮されているとは言い難く 、実際に前がつかえているのかかなりの低速で走行することが多かった。この 列車が本当に真価を発揮したのは、津幡を過ぎて北陸本線に入ってからのわず かの区間。しかしここでかなりの高速走行を体験できたのである。 実際に乗車してみて、この列車がかなりの人気を博しているという理由が分 かったような気がした。やはり一度大阪から乗車してみたいという気持ちがム クムクと湧きあがってきたのである。 金沢に到着したのは2時過ぎ頃、ここで遅めの昼食を摂ることにする。大阪 行きのバスは金沢を4時に発車なので、この昼食が金沢での最後の行動となる だろう。私は駅からバスに乗車すると香林坊で下車する。金沢は市役所の裏辺 りに多くの飲食店が存在するエリアがあるが、私が選んだ店はその中の洋食屋 「グリル中村屋」である。 金沢は実は洋食の町でもあるのだが、この店もそのような洋食の町・金沢を 代表するような店。昨日に夕食を摂った自由軒が昭和レトロの空気を漂わす店 なのに対し、こちらはもっと洒落た喫茶店のような雰囲気の店である。多分、 女性などはこちらの店の方が雰囲気的には入りやすいだろう。私が注文したの は「コキール巻定食(1600円)」。 注文した定食が届く前に、私の前に茗荷の甘酢漬け(?)が出される。洋食に この付け合わせとは何とも妙なもの。それに私はあまりこの類を好まないので あるが・・・少し首をひねりつつも一口かじってみると、これが意外にうまい 。結局はすべて平らげる。これは料理の方も期待できそうである。 しばらく待たされてから料理が出される。さてコキール巻であるが、これは クリームソースを豚の薄切り肉で巻いてから揚げたものである。謂わばクリー ムコロッケの皮とクリームの間に豚肉が入っているようなもの。一口かじると 、サクサクした衣の食感とトロリとしたクリームソースが絶妙。またやや甘め のクリームソースと豚肉が非常にバランスが取れていてうまい。何やらホッと するような、それでいて少々贅沢でもある味である。 金沢最後の食事はなかなか堪能できた。なおこの店では皿に入ってソースを かけたような形の洋風カツ丼が人気メニューであるとのこと。次の機会があれ ばそっちも試してみたい。 昼食を堪能した後は再びバスで金沢駅に帰還。駅の周辺で土産物を買い求め ると、ロッカーからトランクを出して高速バスの停留所へ。そのままバスで大 阪へと帰還したのであった。なお帰りのバス中ではウトウトとしたのであるが 、やはり熟睡とはいかず、夜行バスで東京というプランはやはり無理であると いうことを再確認したのだった。 今回の遠征で、やはり私は金沢という町と相性が良いということを再確認し たのである。私が今まで相性がよいと感じた町は、松江、松山、広島などであ るが、いずれも共通しているのは城を中心とした大きすぎず小さすぎずという 規模の町であることと、路面電車もしくは路線バスなどによる移動の便が整っ ていることである(私は地下鉄が嫌いである)。そしてやはり町の中にそこはか となく文化の薫りが漂っていること。この辺りを考えていくと、私が無意識の うちに都市に対して理想と考えている条件が見えてくるようである。そして私 が理想とする国の形態とは、このような都市を地方の中核都市として周辺に農 業地域を配した自給自足圏が全国に数十散在し、それらが交通網によって結ば れているという形態である。これを実現しようと考えるなら、やはり日本のガ ンとも言える東京は直ちに解体するしかないという結論に至るのである・・・ ────────────────────── <連絡> この度、新しいHPを立ち上げました。その名は「私的美術館紀行」。 今までに掲載した展覧会レポートを中心としながら、さらに新しい情報を付 け加えたページです。私が遠征のために集めた各美術館の展覧会スケジュール データなども掲載しております。 URL http://www.b-kikou.com/ ====================================================================== ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ <<お知らせ>> 現在、超話題の書籍ということだそうです・・・。 『また「あるある」にダマされた』 三才ブックスより発売中 巷にインチキな健康・ダイエット情報が氾濫し、テレビがそのお先棒を担い でいる時世に危機感を感じた私が、「全編完全書き下ろし」で仕上げました。 本著は「あるある大事典」での放送内容について、具体的に問題点を指摘す ることで、巷に氾濫する誤った情報について斬っていく形式をとっています。 詳細な情報についてはこちらをご参考ください。 http://homepage1.nifty.com/sagi/book.html ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ====================================================================== あとがき 北陸遠征編です。ここのところバタバタしていて執筆が全くはかどらなかっ たのですが、ようやく完成です。 教ドキュWeekly 発行者 鷺(さぎ) sagi@yo.rim.or.jp --------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000125100.htm ---------------------------------------------------------------------


