2007/11/30
こころのともしび(第48号)2007年11月号
■─────────────────────────────────┐ ☆ ☆ ☆ こころのともしび【第47号】 ------仏教の教えより------- ☆ ☆ 2007.11.30 ☆ └─────────────────────────────────■ --------------------------------------------------------------- ■山野鈍海遺稿集より 尊い因縁 ■徳行のコラム 死を考えることは優しさにつながる ■編集後記 --------------------------------------------------------------- 皆様、ご無沙汰しております。 毎月のご愛読心より御礼申し上げます。 新しい読者の皆様、ご登録有り難うございます。 暑からず寒からずの程よい気候は瞬く間に過ぎゆき、厳しい寒さが 目前に控えております。体調など崩されておられませんでしょうか。 今回は鈍海の書斎から徳行が見つけ出して来た遺稿と、徳行のコラ ムをお届けします。 --------------------------------------------------------------- ■尊い因縁(平成5年 鈍海が伯父の三回忌の時に綴った話です) --------------------------------------------------------------- ◆悩み苦しみの元は「無常」 人生は苦しいことが多く、楽しみというものの少ないものだと、年老い た歌人は詠んでおります。自分の家庭や子供、兄弟などの親戚、親しい 友達やお隣などの事で、何の悩みや苦しみも持たずに暮らしておれる家 庭はごく稀です。 私は今65歳ですが、年を取れば取るほどそうした悩み苦しみが、切実に 身にこたえます。若い時はたとえそうしたことが身の近くにあっても、 それほど感じないのです。自分の責任が軽いという事もあり、人様の悩 み苦しみに共感するということも薄いものです。しかし年を取りますと 人様の苦しみがだんだん分かるようになるのです。 私達人間は今の状態が、いつまでも変わらないように思い、又それを願 っています。こここをこういう風に直して、こんな道具を入れて、あれ をこうして、これをしてと、来年も、又、再来年も変わりなく元気でい るつもりでいます。でもそれがいかに空しい夢であるかということ、時 折思い知らされます。身近な人の死、自分と余り年の違わない人の死去 の知らせに、自分の背後に迫っている死の影におびえます。 私達が悩み苦しむ原因を一口に言うと、「世の中は自分の思うようにな らぬ」事へのいらだちです。 お釈さまの説かれた教えの第一に「諸行無常」とありますが、これは世 の中すべてのものは、刻々に移り変わって、いつまでも元のままで居る ものは何一つないということです。石や鉄のような硬いもの、一見変化 があるとは見えないようなものでも、実は刻々に変化しているのだとい うこと、今では科学的に証明されています。だから地下から掘り出した 遺跡でも、いつごろのものか或る程度まで科学的に分かるのです。 ◆私達の感受性は? 人間の持つ能力の一つに「感受性」というものがあります。「感じやす い年ごろ」等という言葉に表されているようです。 これは「一を聞いて十を覚る」というような、頭の良さを言うのではな く、もっと高度な情感的なものを含んでいるように思うのです。 お釈迦さまは、お生まれになって七日目に生母マヤ夫人と死別しておら れます。その後は父王夫人となられた叔母に、何不自由なく育てられま す。母の死は恐らく厳しく秘められたのでしょうか、いつしか皇太子で あるお釈迦さまの知るところとなり、物思いに沈まれることが多かった と伝えられています。 十歳を過ぎられた頃、父王にしたがって「農耕祭」に出られ、掘り起さ れた土の中から出てきた虫をついばんだ鳩が、鷹の餌食になるという事 実を見られ、「なぜ生き物は殺し合わねばならないのか」と現実の世界 の矛盾に、深い哀しみの中に瞑想されたということです。 また城から出て領内を巡視中、よぼよぼの老人・病に苦しむ人・遺族の 泣き悲しむ葬式の列に会い、今は青春を謳歌している自分も、やがては こうした姿になることを知り、遊び楽しむ心は萎(な)え、一室に閉じこ もり静かに思索されたということです。 ◆総てを捨てて、覚りを得る お釈迦さまはカピラの国の皇太子だったわけですが、国の大きさは近畿 地方くらいであったらしいと言われています。 その大事な国の跡取りが、物思いに沈んでおられるので、王さまや重臣 たちは夏・冬・春秋の三時の宮殿を造るやら、美人のお妃を迎えるやら、 手を代え品を代えてお釈迦さまの気持ちを引き立たせようを計ります。 そうしてかわいい一粒種の子供が生まれた矢先、生・老・病・死の苦し みと世の中の矛盾の解決を求めて・将来には王になる身分も捨て、妻も 子も家族との縁も切って、修行の旅に出られたのです。 そして当時の有名な師を尋ねては教えを受け、修行をつまれましたが、 自分なりの疑問の解決が出来ず、ついに決死の苦行の末、覚りを開か れました。 時に御年三十五歳、十二月八日朝まだきであったと伝えられています。 それから四十五年間、あの広いインドの国を休む暇もなく、覚られた 法を悩める民に説き続けられました。その時のお経が今のお経になっ たのです。 ◆私とは お釈迦さまの説かれた教えは一口に言うと「縁起の法」であると言われ ています。「私というものは、独立して、他のものと関係なく存在する ということはありえない」ということです。 もし私の両親のうち、どちらか一人がこの世に始めから居なかったら、 私というものがこの世に生を受けることがなかったでしょう。 私の父親、母親、父の両親、母の両親を元を訪ねてたどっていくと27 代前で、「1億3421万7728人」となります。これだけの人があって初め て私というものが、この世に産声を上げることが出来たのです。 お祖父さんの命日だ、お祖母さんの法事だ、曾祖父(ひいじい)さんの 曾祖母(ひいばあ)さんの五十回忌だというと、若い子は中々集まって くれないんです。 なぜ参らんのやと聞くと「そんな人は私には関係ない」というんです。 でもね、「其の人が居なかったら、あなたは 又、あなたの連れ合いは、 この世に生まれることは出来なかったんだよ」と言ってやると、しぶし ぶだけど参ってくれるのです。皆さんのお家では こんな事はないと思 いますけれど、世間にはざらにある話です。 ◆助けを借りて この頃の電子機器の発達は目を見張るものがあります。 かく申す私も「ワープロ」の助けを借りて文を打たせてもらっています。 こうした素晴らしい機械は、みんな私達人間の頭の能力を真似して作っ たものだといわれています。 私の頭などはもうだいぶ錆び付いて、ぼけてきています。もともと不勉 強で資料もあまり沢山入ってないのですが、最近ではいくらキーをたた いても、中々画面に文字が出てこないんです。 久しぶりの人に会ってしばらく話をして、分かれて一時してから、 「あっ○○さんだった」…てなことも時々あります。若いうちにうんと 磨いておけばもう少しましなコンピューターになっていたでしょうにね。 --------------------------------------------------------------- 死を考えることは優しさにつがる 徳行 --------------------------------------------------------------- この言葉に出会ったのは、昨年の夏頃でした。私の在学している龍谷 大学の建物の一角にあります「パドマ」という場所で、「死を超えた願 い─黄金の言葉 あれを見よ 明日は散りなむ 花だにも 生命の限り ひと時を咲く」という仏教の展覧会のようなものが催されました。 (下記にインターネット上で閲覧できますパンフレットのURLを載せ ましたので、是非御覧下さい) その時はその言葉はなんとなく、気に留まった程度でした。しかし、な ぜ死を考えることが優しさにつながるのか?と思いつつも、すっかり忘 れておりました。 この言葉を思い出したのは、丁度去年の今頃でした。 私の父方の伯母が癌で死去し、初めて死に立ち会った時でした。私はそ れまで19年間、幸いなことに身内の不幸というものに遭うことなく、生 活しておりました。もちろん、人の亡骸を見ることも、白骨となった姿 も見ることはありませんでした。 その亡くなった伯母というのが、私のことを世界一可愛い、大好きだと 大事にしてくれていた人で、私も伯母の事が大好きでした。しかし、夜 中に母からその知らせを聞き、一晩中大泣きしてもまだ死というものが 受け入れられませんでした。 翌朝、伯母の亡骸に触れた時、まだ温かくて、とても他界したなどとは 思えませんでした。それから淡々と通夜や葬儀の準備が進み、私は時間 があれば陰で泣いてしまうほど、目の前の事実に耐えられませんでした。 そしていよいよ火葬となり、外で煙になって空に上っていく伯母の姿に、 どこか胸の奥に暖かいものを感じるようになりました。しかしそれが何 とは分からず、何か安心感のような、温まるものなのであったことに感 じたのは確かでした。 無事に全てが終わり帰宅し、妹と一緒に祖父母の部屋で初めて死に触れ たことを話しておりました。その時に祖父に、忘れかけていたあの言葉 と、何か感じた暖かさのことを話すと、『人の死を考えることはね、結 局は自分の死を考えるようになるんだよ。そして自分の死を考えると、 優しい気持ちになるんだよ』と答えてくれました。 それを聞いて、なんとなく、今まで感じていたあの暖かさは、結局自分 の死を知らず知らずのうちにとらえていたんだ、ということを知りまし た。「ああ、なるほどな」と思い、やはり祖父に聞いて良かったと思い ました。そして祖父が「次はおじいちゃんだから、よろしくね」と言い、 本当にそれから1ヶ月も経たないうちに祖父はお浄土へ行ってしまいま した。 今考えれば、昨年の11月中旬の話なので、癌も肺に転移しており、祖父 も相当しんどかったのだと思います。しかし、祖父がお浄土に行く前に、 この話を出来たことは本当に良かったと思っています。今でもふと、書 斎で祖父がパソコンに向かっている姿や、座敷でお経をあげている姿が 思い出されます。もうすぐ祖父の1周忌がつとまります。もう1年経っ たのかと思うと本当に早いものです。 私事ですが、来年の2月に得度をすることに致しました。まだまだ沢山 の勉強をしなくてはいけませんが、まずは大学の後期試験が間近に迫っ ているので、そちらに全力を出したいと思います。 龍谷大学パドマ7 「死を超えた願い─黄金の言葉 あれを見よ 明日は散りなむ 花だにも 生命の限り ひと時を咲く」 http://buddhism-orc.ryukoku.ac.jp/atlas/07/07_padma_exhibition.pdf --------------------------------------------------------------- ■ 編集後記 --------------------------------------------------------------- 今回も発行に手間取りましたこと、お詫び申し上げます。 道路脇にはサクラの朱赤色、イチョウの澄んだ黄色や木々の葉が微妙に 違う色合いを醸しだして鮮やかな紅葉を織りなし、思わず目を奪われて しまいます。 私事ですが、娘が働いている店によく来て下さるお客さまで、いつも丹 精込めて作られた飛びっきり新鮮で元気な(本当の味がする)季節の野 菜を、ダンボール箱いっぱいに詰めて、こまめに届けて下さる50代の男 性がおられます。 我が家もその恩恵に預かっておりましたが、このところその方がガンに 全身を冒されて余命幾ばくもないという状態なのだと聞き、非常に心を 痛めております。有り余る恵みを頂戴していたにもかかわらず、今、こ の方のために自分に何が出来るかと、あれこれ考えましたが、結局は励 ましのお手紙を差し上げるに留まりました。 痛みで夜は2時間ほどしか眠れないとの事、目もあまり良く見えなくなっ て来ているとの事、非力で無力な自分は父の時と思わず重ねあわせてし まいます。せめて痛みが少しでも軽くなりますようにと、毎晩仏様の前 で拝むことが今の私にできるただ一つの事です。無念でなりませんが。 重い話になってすみません。皆様もお体大切になさって下さいませ。 (ぱせり記) -------------------------------------------------------------------- □□ 次号(第48号)発行予定日 2007年12月? -------------------------------------------------------------------- ◆バックナンバー<http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000124366> -------------------------------------------------------------------- □□ 著者:山野鈍海 <http://www.eonet.ne.jp/~panacee/> □□ 発行責任者:ぱせり <http://plaza.rakuten.co.jp/maywind/> □□ 叱咤・激励のお便りはこのメールマガジンに「返信」して下さい。 -------------------------------------------------------------------- □□ mag2ID:0000124366 『こころのともしび』月1回発行 -------------------------------------------------------------------- □□ 読者登録解除は下記のホームページからお願いします。 http://www.eonet.ne.jp/~panacee/ -------------------------------------------------------------------- □□ 『まぐまぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ -------------------------------------------------------------------- Copyright (C) 2004-2007 Donkai Yamano All Rights Reserved. -------------------------------------------------------------------- ******************************************************************** ど素人の百合おばさんがネット商人のたまご?になるまでの苦労談や 耳寄りなお話が満載! 百合おばさんのネット奮戦記 <http://www.onlinenikki.com/> ********************************************************************



