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2009/01/01

ビジネス法務最前線! 第120号

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【INDEX】
1.TOB(株式公開買付け)に失敗例について    弁護士 池田 佳史
2.契約期間中の派遣契約の解除について       弁護士 池野由香里
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1.【TOB(株式公開買付け)に失敗例について】  弁護士 池田 佳史

2008年12月17日の日経新聞によれば、婦人下着販売のシャルレはTO
B(株式公開買付け)の不成立を発表したとのことです。

シャルレの創業家は、支援するファンドと協力して、シャルレの100%株主
となって、他の株主の意向を気にすることなく経営しようとしました。そのた
めには他の株主の保有する全株式を買い取る必要があり、これに要する100
億円を超える株式買取資金は支援ファンドが準備することになっていました。
そこで、支援ファンドの子会社(買付者)は、2008年9月19日、まずは
株主総会での議決権対象株式の3分の2以上の取得を目指してシャルレ株のT
OB(株式公開買付け)を行い、TOBが成功した後、シャルレの株主総会で
発行済み株式を全部取得条項付き株式へ転換することについて特別多数の賛成
(出席株主の議決権の3分の2を超える賛成)を得て100%子会社化を実現
することを発表しました。
取得条項とは、会社が株主から強制的に株式を取得するという条項です。詳細
は当職執筆の法律情報「レックスの株式取得価格決定(東京高裁)」
http://www.eiko.gr.jp/topics/kaisha081001.html)をご参照ください。
一方、シャルレは、同日、支援ファンドの子会社からのTOBに賛同意見を表
明しました。なお、TOBに際してはその目的を達成するために必要最低限の
株式数を決めることができます。本件ではシャルレの発行済み株式のうち創業
家の保有する株式全てと、それ以外の株式の過半数の合計約970万株を必要
最低限の株式数としました。それ以下であればTOBは不成功に終わり、TO
Bに応じた株主の株式買取りも行われません。

金融商品取引法では、TOBが行われる際に、株主や投資者に判断材料を与え
るため対象会社の意見表明を求めています。敵対的なTOBなのか友好的なT
OBなのかなどは重要な情報だからです。その意見表明は取締役会で決議され
る必要があります。
買付者が100%株式を取得するためのステップとしてのTOBは、最終的に
他の株主の意向に関わらず金銭と引き換えに株主の地位を奪うためのものです。
しかも、経営陣の一員である創業家が支援ファンドと共に対象会社の100%
株主となる手続き(これがManagement Buy Out、つまりMBOの典型的なパタ
ーンの一つです)は、買付者と対象会社が協調して行われることから、他の株
主に不当な不利益を被らせないようにする必要があります。
そこで、MBOを目的としてTOBをする場合、対象会社の取締役会が賛成す
るかどうかを決める手続き、特に買付者が提案する株式買取価額を対象会社の
取締役会が賛成する手続きには、公平性や透明性が強く要求されることになり
ます。
そのため、上記の意見表明のための取締役会の決議に買付者(創業家かつ大株
主であることが多い)側の取締役が関与することは不公平なので、これら取締
役は通常、審議、決議には参加しません。
さらに、取締役だけで決めると買付者の意に沿った結論を出すことになり、あ
るいはそう疑われる可能性があるので、取締役会では第三者の意見を聞いた上
で決めるのが普通です。ここでいう第三者は、株価算定機関(公認会計士)、
法務アドバイザー(弁護士)、第三者調査機関(外部の有識者)などです。少
なくとも株価算定機関(公認会計士)と法務アドバイザー(弁護士)の意見を
聞いた上で決定するのが一般的です。

シャルレの取締役会は、創業家を審議、決議から排除した上で、公認会計士に
株価を算定してもらい、一連の手続き等について弁護士の意見をもらったうえ
で賛同意見を表明しました。
しかし、この株式買取価格に関する賛成決議手続きには疑惑がもたれ、別の弁
護士により手続きの公平性、透明性の調査がなされました。
その結果、シャルレの法務アドバイザーである弁護士は、手続きの公平性、透
明性にお墨付きを与えたわけではなく、価格算定には、創業者一族の影響が強
かった可能性が指摘されました。
この調査結果はシャルレによって公表され、シャルレの取締役会はTOBに対
する賛成意見を撤回して、反対意見を公表しました。
支援ファンドは創業家との契約で、シャルレの取締役会がTOBに賛成しない
場合、創業家に対しTOBに応募しないこと、または応募の撤回を請求できる
ようになっておりました。これにより創業家一族がTOBに応募しなかったた
め、買付予定数の下限に達しなかったことから、TOBは成功しませんでした。
MBO、TOBのあり方に一石を投じる事例であり、今後の影響に注視したい
と思います。

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2.【契約期間中の派遣契約の解除について】     弁護士 池野由香里

急激な景気の悪化から製造業等で派遣社員が大量に契約を解除され、ニュース
などでも大きく取り扱われています。
そこで今回は、人材派遣を受けている会社(派遣先の会社)が、派遣期間中に
派遣契約を解除するときの注意点について解説します。

契約期間の途中で派遣会社との派遣契約を解除しようとする場合、どのような
法規制があるのでしょうか。
派遣契約はそもそも派遣会社と派遣先の契約ではありますが、派遣社員の保護
の見地から以下のような法規制があります。

まず、労働者派遣法では派遣先が、派遣社員の国籍、信条、性別、社会的身分、
労働組合の正当な行為をしたことなどを理由として、派遣契約を解除すること
を禁止しています。
また、厚生労働省の定める「労働者派遣事業関係業務取扱要領」により、派遣
期間中に予定していた業務が早く終わったとか、受注量が減少したなどの派遣
先の都合で派遣先を解除する場合には、派遣会社の同意を得ることはもちろん
のこと、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣会社に解除の申し入れを行う
こととされています。 
そして同要領では、派遣先が派遣契約を解除しようとするときは、労働基準法
上の解雇予告に準じて、解除しようとする日の少なくとも30日前にその旨の
予告を行うこと、または、少なくとも派遣社員の30日分以上の賃金に相当す
る額の損害賠償を行うこととしています。
ただし、派遣会社と派遣先の双方に責任がある場合には、派遣会社と派遣先の
それぞれの責任の割合についても十分に考慮するものとし、
30日前の解除予告やその日数相当分の損害賠償義務は最低限のものであって、
状況によってこれを超える損害賠償を妨げるものではない旨定められています。

派遣会社は、契約解除により仕事がない状態になっている派遣社員に対しては、
労働基準法の定めによって、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければ
ならないため、正当な理由なく契約を解除され、派遣社員のその後の場所確保
がどうしても不可能な場合には、残っている全期間について一定額の損害賠償
請求が認められる場合が多いと考えられます。
なお、この場合の損害賠償請求権は、派遣会社から派遣先の会社になされるこ
とになります。

また、同要領では、派遣先は派遣会社からの求めがあったときは、派遣契約の
解除を行った理由を派遣会社に対し明らかにすることとされています。これは、
いずれに責任があるかをはっきりさせることにより、場合によっては派遣会社
や派遣社員からの損害賠償請求等を可能にするために必要なことです。

なお、派遣先は、契約期間が満了する前に派遣社員の責任のない事由(先にあ
げた受注量の減少なども責任のない事由にあたります。)で派遣契約の解除を
行った場合には、関連会社での就業をあっせんするなど新たな派遣先を確保し
ようと努める義務があります。

これらのことからすれば、後日の紛争可能性を考えると、派遣先から契約期間
中の派遣契約を解除するのは、簡単にはできないと考えておくほうがよいと思
います。

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