「週刊 みどりのひとりごと」Vol.037
「週刊 みどりのひとりごと」(マガジンID: 0000123512)Vol.037 2004.10.11
☆はじめに☆
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☆Vol.037 「帰国子女の勉強法」 ☆
今回は「帰国子女の勉強法」について考えます。
前回、私は「帰国子女を受け入れている、良い学校の目安」として、以下のこ
とを挙げました。
1.授業の方針がはっきりしていて、学校全体で統一されたものである
2.補習は必修である
3.外国語力が落ちないように維持できる環境がある
この中で、3.の「外国語力が落ちないように維持できる環境がある」について、
補足をさせて下さい。以前、知人から聞いた話で、「外務省勤務の親を持つ子ど
もだけが通える、海外からの帰国後に、現地で学んだ外国語を維持できるため
の特別な外国語学校がある」というものがありました。それは大使館の中など
に設置されているので、民間の家庭の子どもは、通うことはおろか、存在さえ
もまず知らないだろう、というのです。
事実かどうかは未確認ですが、もし事実であれば、外務省の閉鎖的かつ特権階
級的体質を今もなお表している存在だと言えましょう。
一昔前と違い、今は一般家庭の子どもが多く海外で学んでいるのですから、も
しもそのような外国語学校が大使館に設置されているのであれば、たとえば「海
外滞在○年以上」などの条件を設けて、民間の家庭の帰国子女にも、外国語力
が維持できるように門戸を開くべきなのではないでしょうか。外国語と日本語
を同時にきちんと使える人物を増やせば、国際舞台で活躍できる日本人が増え、
結果的に日本にとってプラスになるのではないかと私は思うのです。
さて、今週の本題です。「帰国子女の勉強法」についてです。
今まで数多くの帰国子女、そしてその親と接してきましたが、大きく以下のタイプに分けられると感じています。それは、
1.「外国語さえできれば、日本語はどうでも良い、または、日本語を伸ばすの
は後回し」
2.「外国語も日本語も同じようにバランスよく伸ばしたい」
の二つです。
1.のタイプでは、極端な場合、高校生になっても、日本でずっと育った小学生
の子が書く程度の字しか書けない子どももいます。漢字を知らない、というの
ではなく、字があまりにもバランスが悪く、字を練習していないことが一目瞭
然なのです。こういう子は、外国語の理解能力は高いのですが、同じ内容を日
本語で表現できないことも多く、結局「外国語だけ能力があり、日本語は、日
常会話は問題ないものの、高度な外国語の内容を文章化したり、通訳などで仕
事をすることは無理」ということになります。
以前教えた生徒では、古典の時間に「注連縄」という語があったのを、その子
はそのまま「ちゅうれんなわ」と読んだので、私が「何のことかわかる?」と聞
いてみると、「全然わかんない」という返事でした。しめなわ、と言って、神社
にある、と説明しても、全くわからないと言うのです。その生徒は、いつも機
械的に古典の現代語訳を覚えている、という感じで、全く想像できないものを
ただ暗記しているだけのようでした。しかも、それが何を指すのか全く好奇心
さえ示さない様子に、私は驚いたものです。こういう子が将来、仕事で海外か
ら来た重要なゲストの応対をすることになっても、日本文化について説明がで
きるのでしょうか。恐らく無理ではないかと簡単に想像できます。
こういった子どもを、2ヶ国語を操れる「バイリンガル」ではなくて、どちら
も中途半端なので「セミリンガル」と称することもあります。こういった子ど
もは、自分がどこの国の人物であるか、というアイデンティティも確立できな
いので、「何人であるのか」という悩みを抱えたまま生きていくことにもつなが
りかねません。
一方、2.のタイプの家庭で育った子どもは、最初は大変でも、長い目で見れば
能力が伸びるのは言うまでもありません。前回書いた「親とは日本語、きょう
だいとはフランス語」で会話する、かつての教え子は、「私は日本人ですが、生
まれて初めて覚えた言葉はフランス語です。フランス語も大事にしながら、日
本人として持っているものを大事にしていきたい」という作文を書いたことが
あります。この文を見た時、「この子の日本語の力をきちんと伸ばしてあげたい、
そしてバイリンガルになる手助けをしたい」と心から思いました。
この子だけではないのですが、外国語の能力が高いものの、日本語の能力がま
だ生かしきれていない場合、私は新聞記事を教材に取り入れています。こうい
う子には個別の指導でしか対応できません。ですので、通常の授業の勉強を指
導するのと並行して行ないます。
新聞記事を取り入れるメリットは主にふたつあります。
1.今の日本の事情がわかり、「浦島太郎」的状況から脱出できる
2.毎日新しい教材が確実に手に入る
これは、文字通りのことですので、すぐ納得いただけると思います。
あとは、目的やその子の日本語力に応じて対応するのですが、まずは丁寧に記
事を一緒に読むなどして、内容を理解させます。そして、それに対する自分の
感想や、記事の要約などを行なっていきます。記事を選ぶ時に、その生徒が興
味を持ちそうなものを選ぶのは言うまでもありませんし、ある程度理解力のあ
る子には、自分で記事を家で取っている新聞から探させます。ここに挙げた生
徒の場合は、最初は小学生向けの新聞からスタートしました。
そして、これと並行し、必要な場合には漢字などの薄いドリルも学習させます。
全てに共通するのは、「時間をかけて、慌てず、丁寧に」ということです。きめ
細かく面倒を見ることで子どもは安心し、落ちついて取り組めるようになりま
す。こういう場合、公立中学3年生にいきなり帰国して編入しても、受験が控
えていて、そのような時間はとれません。中・高一貫校でゆっくり勉強をする
方が良いのです。
私がこのフランス帰りの生徒を見ている時に、一番驚いたのは、その子はすぐ
上のきょうだいと同時に編入したのですが、上の子に対して、担当教員がほと
んどなんのケアも施していない、ということでした。
私はたまたま、編入した年に下の子、翌年に上の子、と続けて受け持ったので、
上の子に詳しく話を聞く機会があったのですが、上の子は「下の子がどんどん
課題を与えられるのに、自分の先生は何もしてくれなくて、とても不安だった」
とこぼしていました。この生徒の立場に立てば、それは当然でしょう。その子
の担当教員は、そこまで手をかける必要はない、と思ったのかもしれませんが、
それではその子は「セミリンガル」になってしまいます。帰国後早い段階での
フォローが絶対に必要なのです。
帰国子女に限ったことではないのですが、国語力、日本語力の低さは、他の全
ての教科に悪影響を及ぼしますし、将来社会に出ても良いことなど何一つあり
ません。皆が得意科目にできることは難しいのかもしれませんが、正確に日本
語を操れるように指導するのが、国語教員の大切な任務だと私は思っています。
☆あとがき☆
今週は、「帰国子女の勉強法」について考えました。個別に対応できるケースも
ありますので、ご質問がありましたらご遠慮なくメールをお送り下さい。
次回は「最近の国語教育」を予定しています。読者の皆さんの子ども時代とは
大きく変わっているので、私なりの視点で今の国語教育を考えていきます。
感想・質問などのメールをお待ちしています。
つきの みどり
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tsukinomidori@infoseek.jp
※このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ から発行して
います。配信中止はこちらまで http://www.mag2.com/m/0000123512.htm
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