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私立校で教壇に立つ、つきのみどりの、教育のホンネ話。ロゼッタストーンでのweb連載「つきのみどりの教育カフェテリア」で書けない話を中心に、ここでしか読めない最新の教育事情満載! ※当初は週刊でしたが、web連載のスタートに伴い、不定期化しております。

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2004/08/22

「週刊 みどりのひとりごと」Vol.031

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「週刊 みどりのひとりごと」(マガジンID: 0000123512)Vol.031  2004.8.21

☆はじめに☆

 皆さん、こんにちは。今週もメルマガを読んで下さりありがとうございます。
 先週から、明治大学の一場投手と、巨人との「裏金問題」が取りざたされています
が、この件で渡邊オーナーも責任を取って辞職、という大変な事態に発展してしまいま
した。オリンピックのメダルラッシュの影で、すっかり忘れられたような感もあります
が、巨人への処分はまだ決定していませんし、未解決の問題です。

 一場投手もおそらくスポーツ推薦で入学した生徒でしょう。彼に、「お金を受け取っ
たら野球生命に関わることになる」と忠告する人はいなかったのか、又は、表面化しな
ければこういうことは日常茶飯事だったのかと、あれこれ考えています。残念ながら、
私には後者が正しいように思えてなりません。

☆Vol.031 「スポーツ推薦の実態Part2」☆

 今回は「スポーツ推薦の実態Part2」について書きます。

 前回の補足です。たいていの学校では、スポーツ推薦で進学した生徒と、一般の生徒
が混じって部活を行なっていますが、学校によっては、生徒からレギュラーを選ぶ時、
「スポーツ推薦の生徒からのみレギュラーにする」というところもあるそうです。スポ
ーツ推薦の生徒は、学校の名を有名にするために進学しているのだから、そういった生
徒に活躍してもらわねばならない、ということなのでしょうが、これでは一般の生徒に
もし能力の高い子がいても、全く報われないことになります。一般の生徒も、スポーツ
推薦を実施している学校に進学する場合、運動部でレギュラーになれるかどうか確かめ
ておく必要があるのではないでしょうか。

 前回は、成績偽造を行なう、スポーツマンの隅にも決して置けない不道徳な教員の話
を書きました。こういった形とは異なっても、目先の勝利や利益しか見ておらず、指導
者としての自分の実績になることばかり重視し、生徒のその後の人生は全く関知しな
い、という、長期的視点の欠けた教員や指導者は、実は数多く存在します。

 『スポーツは「良い子」を育てるか』という題の本があります。(永井洋一、NHK出
版・生活人新書)この本では、子どもとスポーツを巡るさまざまな問題点を提示してい
て、大変興味深い内容が書かれています。スポーツ推薦で進学していくことに対する警
告は「スポーツバカになるな」という語で表しています。

 一方、『カリスマ体育教師の常勝教育』という本もあります。(原田隆史、日経BP
社)この本は話題になったので、読まれた方も多くいるでしょう。荒れた大阪の公立中
学で、「普通の子ども」を中学日本一に13回も導いた著者の指導方法を細かく書いてい
ますが、この方法はビジネスにも応用できるもので、そのため、経済界から注目されて
いるのです。

 この2冊を読むと、「どのような者が一流のスポーツ指導者であるのか」はっきりと違
いがわかります。一流の指導者の教えることは、他の面でも応用のきくこと、他の面で
も通用することだと言えます。原田氏は「態度教育」を重視しており、あいさつ、遅刻
しないこと、果ては消しゴムのカスの捨て方まで厳しく指導したそうです。今は消しゴ
ムのカスの捨て方など、小学校できちんと習ってくる時間がないのか、散らかしてしま
う子どもも多いのです。あまりの厳しさに「鬼軍曹」とのあだ名までついたそうです
が、態度を改めることで、「指導を受ける」姿勢を子どもに作らせ、そのことが子ども
の全てによい影響を及ぼしていく例を書いています。

 今の教師は、どうしても子どもと「近い存在」になりたがります。親しまれることを
悪いとは言いませんが、親しいだけで注意もしないのでは、子どもにとって何の良いこ
ともありません。私が知る限りでも、生徒に慕われていて、何の注意もしない教師が担
任をしているクラスは、授業態度が悪かったり、テストの平均点が異常に悪かったりし
ます。それでも注意されないので、生徒もゆるみきっているのでしょう。これでは卒業
後、生徒は社会で通用するのか大変心配です。威厳を持ち「だめなことは厳しく指導す
る」「良いことはほめる」など、徹底的に教える姿勢を見せれば、子どもは次第に理解
してくるものです。

 一流でないスポーツ指導者については、永井氏の著書にはっきり書かれています。
「目先の勝ちにこだわり、勝ちだけを尊重する」者の指導は、必ず子どもに同じ価値観
を植え付けます。また、運動能力のすぐれた子にだけ手厚く指導し、能力の劣った子ど
もには「レギュラーになれなくても耐えろ」とだけ言って、やめるのを待っているよう
な者も、「低級の指導哲学」を持つ、とはっきり指摘しています。
 教職に関わる人、お子さんを持つ人には、ぜひこの2冊を併せて読むことをおすすめし
ます。

 私の個人的所感で言えば、生徒の教員に対する態度で、部活や運動の指導者の考えが
透けて見えることがあると感じます。顧問の教員の前でだけおとなしくして、他ではふ
んぞり返って「自分は○○部のレギュラーだから」と言って、全て許されると思ってい
る、カン違いをしている生徒もたまに目にしますが、こういう生徒を許しているのは結
局「勝ちさえすれば、レギュラーならば、何をしても良い」という、間違った観念を持
つ顧問教員の視野の狭さ、愚かさなのです。こういう生徒が社会に出て通用しないのは
当たり前なのですが、逆に言えば、顧問教員の愚かさがこういう生徒を生み出している
とも言えます。
 
 ここで話題を変え、スポーツ推薦にまつわる「お金」の問題を考えたいと思います。
 
 そもそも、スポーツ推薦で進学すると、一般の生徒より、多くの費用がかかります。
学費は、試合でよほどの好成績でも挙げなければ免除・割引になりませんし、試合のた
めの遠征、夏休みの合宿(東京の私立校なら、涼しい北海道で行なう)などで、「その
学校の通常の学費×2」程度の費用がかかる、と言っても間違いではないでしょう。もち
ろん、部活で忙しいので、生徒がアルバイトをする暇もありません。全て親が負担しな
ければならないのです。ですから、最近は親の経済事情で部活をやめざるを得ないケー
スも見かけます。

 現在、アテネオリンピック日本代表野球チームで活躍する松坂投手は、高校時代、神
奈川県内の私立校に通学していました。その当時、このような記事を見た記憶がありま
す。彼には弟がいるのだそうですが、「お兄さん(松坂投手)でお金がかかるので、自
分は公立高で野球をしている」という趣旨の話でした。こういう子どもも、実は全国に
多くいるのかもしれません。

 また、学校を卒業して、一流スポーツ選手になると、巨額の契約金や年俸を手に入れ
ることになりますが、そのお金をめぐってトラブルが生まれることも珍しくありませ
ん。

 私が知人から聞いた話です。現在、日本のプロ野球で活躍する某スター選手は、母子
家庭であったため、リトルリーグ時代の指導者がずっと「親代わり」の後見人としてつ
いていて、その後見人が、最初に入団した球団も決めたそうです。そして、契約金も全
てその後見人の手に渡ったとのことでした。ただ、その人物が事業にそのお金をつぎこ
み、事業が失敗してしまったので、契約金もまたたく間になくなってしまったようでし
た。

 また、これは私の親類から聞いた話です。その親類は不動産業などを手がけていた関
係で、ある有名サッカー選手の後援会長から、「そのサッカー選手の家族が住む家を探
して欲しい」と言われたのだそうです。事情があり、どうしても家族が安全に住む家を
欲しいのだということでした。「なぜ後援会長からその話が来たの」、と私は親類に聞
いたところ、「それは、選手が未成年だから、きっと後援会長がお金の相談なんかに乗
っているんだろうね」との答えが返ってきました。

 その後しばらくして、私は親類に、「サッカー選手の話はどうなったの」と聞いてみ
たのですが、思いもかけない答えが返ってきました。「その話はこちらからお断りし
た」というのです。「どうして」と更に聞くと、「後援会長が、本当はそのお金は選手
本人のもののはずなのに、まるで自分のお金みたいに思っているように受け取ったから
だよ。そんな人とは一緒に仕事がしたくなかった」との答えでした。

 このような話を見聞きすると、どのような指導者や後援会長が良いのか、おのずと見
えてくるのではないでしょうか。あくまでも契約金などは選手本人のもので、いくらそ
れまで育てた恩師だから、とか、選手が未成年だから、という理由で、選手本人に断り
なく使っていいという理由はどこにもありません。このような人物は、長い目で見れ
ば、選手にとってプラスの存在になることは決してないのです。

 最後に、スポーツ推薦の生徒を、授業を通して見た際に気づいたことを書きます。
 本当に選手として優れている子は、勉強の集中力もあるとつくづく感じます。現在筑
波大学に通う、サッカーの平山選手のようなレベルまでいかなくても、ちょっとコツを
教えたり、ポイントを指導するだけで、グンと成績が上がることもあります。そういう
生徒は、もちろん授業中も集中して聞いています。つまり、「集中しなければならない
時には、きちんと集中できる」能力を、スポーツなどで養ってきているからでしょう。

 反対に、「スポーツ推薦」にあぐらをかいて、「スポーツ推薦だから何をしても許さ
れる」と言わんばかりに授業中にはふざけっぱなし、周りからも「迷惑だからやめてほ
しい」というクレームが来る生徒もいます。こういう生徒は、たまたま中学時代までは
周りの生徒よりも運動能力が高かったのでしょうが、高校に入ると、そのスポーツで
も、そして、勉強でも伸び悩んでいったりするのです。これは、集中力を養ってこれな
かったことから生まれるもので、そのことが次第にあちこちに悪影響を及ぼすようにな
ってきます。その後の人生で、スポーツで大成することはまず困難でしょう。

 スポーツ推薦で、このような生徒を生み出すことは、何より生徒にとって大きな悲劇
です。このような悲劇を生まないためには、以下のことが重要です。

1.長期的視点に基づく指導をする指導者、教員に習う
2.スポーツ推薦でやたらに進学することより、「勉強もしっかりさせてくれる」環境を
選ぶ
3.「スポーツさえできていれば全て世の中許される、ということはない」とわからせる
4.スポーツ推薦で進学することは、その後の人生を大きく左右するという認識を持つ

 このような価値観を、親子ともにしっかり持ち、「スポーツ推薦の実態」を正しく見
ることで、生徒にとって良い進路が選べるのではないでしょうか。

☆あとがき☆

 今週は、「スポーツ推薦の実態Part2」について書きました。私の親戚のもとに舞いこ
んだサッカー選手の話は、だいぶ前のことで、今は選手自身が成人しています。後援会
長の判断を必要としない状況になっていることを望んでいます。
 次回は、「教師の健康」に関して書く予定です。
 感想・質問などのメールをお待ちしています。

つきの みどり
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tsukinomidori@infoseek.jp
※このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ から発行して
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