「週刊 みどりのひとりごと」Vol.029
「週刊 みどりのひとりごと」(マガジンID: 0000123512)Vol.029 2004.8.7
☆はじめに☆
皆さん、こんにちは。今週もメルマガを読んで下さりありがとうございます。
まだ夏真っ盛りですが、都内のデパートでは、「お受験フェア」が様々な形で開催さ
れています。専用コーナーに「お受験」用のスーツを揃えたり、「お受験」対策のため
に講演会を開いたり。「お受験」用スーツは、ほぼ100%紺色と相場が決まっています。
教員の私の目から見れば、奇抜な色やデザインでなければ別に合否には関係ないと思
いますが、受ける側からは「服装のせいで落ちたことにはしたくない」のでしょう、安
全策、とされる同じ紺色のスーツばかりが目立つことになるのです。こういう光景は、
「出る杭は打たれる」という日本を如実に表していると見えて仕方ないのですが。
☆Vol.029 「私立小学校の現実 Part2」☆
今回は「私立小学校の現実」について、後半を書きます。
前回は、「お受験」の裏側にある実態をいろいろ書きました。今回もその続きです。
実際に私立小へ子どもを送迎する親を見ていると、学校案内や願書では絶対にわから
ない、その学校の校風がはっきりわかります。スーツなどのきちんとした格好で来る親
ばかり、という学校もあれば、ジーンズにポロシャツ、という親がいる学校もあります
(さすがにTシャツは見ません)。これは、学費の高低に関係はなく、ひとえに校風の違
いによるものです。
だから、「お受験」の場合、その学校の教育方針と自分の家庭の教育方針が合致する
ことはもちろん大事ですが、そういった、願書などではわからない面の調査も大事にな
ってきます。たとえば、私が良く見かける、某有名幼稚園の送迎風景では、(たとえス
ーツでも)パンツスタイルの母親を見たことがありません。
この幼稚園では、おそらく母親同士で「スカートで来る、パンツは禁止」ということ
が不文律で代々受け継がれているのではないでしょうか。パンツ禁止、などと幼稚園側
が言うことはまず考えられませんので。でも、これは明確な根拠のない、ナンセンスな
取り決めで、活動的な子の親なら、パンツの方が良いのではないでしょうか。
また、親同士の交際も、公立校の場合より派手であることも多いです。子どものお誕
生会、教師を呼んで高級レストランで毎月のように会食…。ただ、これは学校によって
千差万別で、その有無や詳しい内容は、身近にその学校に行っている人がいないと、な
かなかわかりません。当然学校案内にも書かれていません。また、こういった面で「派
手な」学校に入れば、これらは、学費以外の「必要経費」になってしまうので、あまり
最初に無理をして私立校に入れると、後が続かずつらい、ということになるのです。
以前、このような雑誌記事を読みました。その子は帰国子女で地区の公立校になじめ
ず、私立小の編入試験を受けて入学したものの、学費は父親のボーナスから捻出(ここ
まで読んで、「これってまずいよ」と思わずつぶやいた私でした)。その後、父親のボ
ーナスが減り、学費のやりくりがすぐに危機的状況になったのだそうです。子どもが小
さいうちにここまで無理をすると、その後子どもを大学に行かせるまで学費が持つか、
非常に心配です。
私の高校時代の恩師が、HRの時などに、こう語っていたのを忘れられません。「私の
友達のひとりが、子どもを無理して私立の小学校に入れたのだけれど、学費の負担が大
変で、自家用車は軽自動車のまま。それで保護者会に行ったら、周りはベンツや国産の
高級車ばかりで、“ママ、学校に絶対車で来ないで!!”と子どもに言われた」のだそう
です。こういったことも想定しておかないと、親子とも惨めな思いを味わってしまうこ
とになります。
無論、「車の大きさで人間の価値判断をしてはならない」ということを教員がはっき
り言えば良いのでしょうが、前回にも繰り返し書いている通り、教員の視野の狭さか
ら、そういった発言は放置されてしまうこともあるのでしょう。
私立校に子どもを通わせるのなら、無理な学費プランを立てては絶対にダメです。メ
ルマガVol.026でも書いていますが、中学から私立校に入学しても、最初の入学時には
100万円は費用がかかるのですし、受験までの塾の費用は年間数十万円かかるのが当然で
す。4年生から塾に通えば、塾代が年間50万円だとしても、×3年で150万円です。
だから、このメルマガ読者で、小さいお子さんのいる家庭では、「とにかく今のうち
から子どもの学費のために、プランに基づく貯金」をしておくことを強く勧めます。
ところで、前回書いたような偽装工作や作戦までたてて、私立小学校に親を駆り立て
るのはいったい何なのでしょうか。
まず第一に、「公立校教育への不信」があります。公立校が学級崩壊などで荒れてい
る、少子化でクラス替えがないからいじめられたら6年間続く、また、「ゆとり教育」の
名のもとに、学習内容が恐ろしく削減されている…。数えたらきりがありません。今の
公立小学校の夏休みの宿題などは、全て「担任任せ」。担任に意欲がなければ、ろくに
宿題も出さなくても通ってしまうのです。だから、同じ学校でも、「あの先生のクラス
は宿題が多い」「こちらは少ない」など、てんでばらばら。
今は「ゆとり教育」で、全体の教育水準が下がっている上に、教師の裁量で教えてよ
い範囲もあるので、「ゆとりとは言っても、基礎学力を養うべきだから、漢字や計算ド
リルは宿題にして鍛える」教師と、「ゆとりなんだから、勉強しなくたっていいじゃな
い。自分も楽をしたいので宿題を出さない」教師に分かれているのです。どちらが良い
教師なのかは言うまでもありません。自分も楽をしたい教師に習っているだけでは、子
どもの真の学力や思考力は身につかないでしょう。
それから、教員の高齢化が進んでいて、ベテラン教員だと体を動かすのが面倒くさく
なり、体育の授業をつぶしてしまうことも珍しくありません。中学校以上でも教員の高
齢化は進んでいますが、教科ごとに担当者が分かれるので、体育だけつぶれる、という
ことはまずありません。でも、特に小さい子どもにとっては、頭を使う時間と、体を動
かす時間の双方が、成長に大変重要なことです。ですから、体育をつぶすなど、本来は
あってはならないことなのですが、公立校では体育の授業をつぶしても、校長がとがめ
なければ、このような「教師の怠慢」が横行してしまうのです。
一方、私立校に入れば、通常の教科だけではなくて、英語や他の外国語、礼儀作法な
ども学習させてくれたり、独自の教育方針で子どもの個性や才能を伸ばしてくれる、と
期待できるのです。もちろん、体育だけつぶす、ということもまず考えられません。
それから、中学で私立校を受験させるのは、受験者数が多くて激戦なので、小さいう
ちに済ませてしまう、という考えもあります。また、有名大学や難関大学の付属校で
も、小学校や幼稚園なら過酷な受験戦争に巻き込まれない、ということもあります。た
だし、既に書いた通り、別の意味での「お受験」戦争に巻き込まれてしまっているわけ
ですが。
また、一族みな私立小学校にしか通ったことがなく、公立校の教育を知らない、だか
ら「お受験」が当たり前、という家族も見ます。これは家庭の事情ですから、否定しま
せんが、そういう家族の中で育つと、世の中に対して非常に優越感を抱き、そこから
様々の「カン違い」を招くこともあります。たとえば、「私たちは私立校の教師よりも
お金持ちなのだから、教師の言うことは聞かなくて良い」という考えの親がまれにいる
ようなのです。
こういう考えこそ世の中を誤解しきっているのではないでしょうか。それでは、高級
住宅街に住む教師や、資産家の一族の教師の言うことならその親は聞くのでしょうか。
なんだかばかばかしくて、付き合っていられません。それならば私費で家庭教師でも雇
えば良い、と私は思いますが、いかがでしょう。
こういった、「小さいうちに受験を済ませる」ことは、将来まで安泰そうに見えます
が、大きな不安もはらんでいます。それは、「子どもが自分で努力をできない子どもに
なってしまった、あるいは成績が伸び悩んでしまった場合など、せっかく高額を投じて
入学させたのに、学校から追い出される」ことが決して珍しくないからです。
一般論としてよく、「大学付属校の場合、大学入学までに成績不振などで一番多く追
い出されるのは、小学校からの内部進学の男の子」と言われます。過酷すぎる受験戦争
は不要でしょうが、中学や高校受験などで年齢相当の試練にぶつかっていないと、自力
で勉強できる姿勢が身についていないので、こういうことになるのでしょう。
また、私立小学校からは併設の中学に進学できることが大半なのですが、義務教育は
中学までですから、中学終了時点で子どもの成績や素行に改善の見込みがないと判断さ
れると、「もう進級できません」と宣告されることが多いようです。もっと成績不振だ
ったりする場合は、小学校在籍時に「もう進級できません」と宣告されてしまうことも
あるのです。
私のきょうだいの小学生時代、某私立小学校から一人の子どもが転入してきました。
その子はあまりにも成績不振で追い出されたようでしたが、公立校に入っても、びりを
ひた走る成績だったそうです。当然、からかいやいじめのターゲットになってしまいま
した。なんともかわいそうなのは、その子の父親は大学病院の勤務医で、NHKの「きょう
の健康」などにも出演する名医として知られる人だったことでした!!その子曰く、「親
も、他のきょうだいもみんな優秀で、自分だけ違う」と、大変な劣等感を味わっている
ようでした。
親がどんなに優秀でも、子どもの成績が同じようになるとは限らない、ということは
よくあります。これは小さい時にははっきりわからず、成長するに従ってわかるように
なります。こういった場合、親子ともに惨めな気持ちになることは間違いありません。
親も、「あんなに大変な思いをして、お金もつぎこんだのに」と言い、子どもをなじり
ます。私も、学校や、かつてアルバイトをしていた塾で、こういった親子を多く見てき
ました。
万が一、親の予想よりも子どもが大きく下回る成績を取ってくる場合、親はヒステリ
ーを起こす前に、「なぜこのような結果になるのか」を親子で共に考え、教員とも話し
合い、対策を練るべきです。単に成績不振ではなく、もしかしたらLD(学習障害)など
の可能性も考えられるのですし、子どもを怒ってばかりいても何の解決にもなりませ
ん。
子どもにとって、自分の意志でなく「お受験」させられ、気づいてみたら校風にあわ
ず、勉強にはついていけなくて、それで親から責められたら、生きている価値を見出せ
なくなるでしょう。だから、このことをきっかけに非行に走る子どももかなりいます。
また、追い出されなくても、学校側が「まぁ、成績はひどいが、非行に走ってもいな
いので、最底辺の成績でも在籍させてあげよう」と思うケースも多くあります。この場
合、子どもはその学校の一般的レベルの生徒からは大きく見劣りする成績しか得ていな
いのに、自分では「小学校から高校まで、○○学園卒業」などと、非常に高いプライド
を持ってしまい、自分の学力や知力との間に大きなギャップが生じていることもあるの
です。
私がかつて教えたケースでも、「実際の学力とプライドの間に大きなギャップがあ
る」子どもは数多くいました。成績が悪いからといって、むやみに劣等感を植え付ける
のは無論良くないことですが、それならばそれで、「学校の勉強が苦手でも、資格など
を取り、やりがいのある道を見つける」ように指導すべきです。世間ではそうやって立
派に生きている方は、たくさんいるのですから。
でも、多くの私立校では、そういった教育はしていません。「とりあえず卒業させる
のが仕事だから、後は知らない」ということでしょうし、また、「進路については大学
で考えるべき」ということなのでしょうか。でも、それでは変化の早い現代、非常に遅
すぎます。
前回も書いていますが、私立小学校の多くは、黙っていても多くの裕福な家庭の子ど
もが集まるので、教師の視野は狭くなりがちです。将来のための職業教育やIT教育など
は、学校によって取り組みに大きな差があり、特に詳しい人物がいなかったり、校長に
見識がなかったりすると、どんどん遅れていくことにもなりかねません。また、メルマ
ガVol.017で書きましたが、ADHDなどの学習障害に関しては、教員間で認識に大きな差が
あります。
その上、私立校の教員には「文部科学省の言うことを聞かずに独自の教育をする」と
いうことに気概を持っている者も多いため、文部科学省の通達は全て聞き流しっぱな
し、という人も数多くいます。ですから、公立校に行かせるよりもひどい扱いしか受け
られない場合も、実は多いのです。このことを認識しておかないと、「高い学費を払っ
たのに、学校では何もしてくれない」ということにもなりかねません。
私の知る、某私立校のケースでも、「自由」が基本方針なので、それをいいことに子
どもはほったらかし、成績の悪い子はどうやったら勉強ができるようになるのかわから
ないまま中学に来る、という場合を多く見られました。これは非常に問題で、小学校で
身につけておくべきことの多くができていないため、新しいことを学んでも、今までの
こととの関連性がわからず、その場しのぎの暗記しかできなくなってしまったり、自分
でどうやって「ひとつひとつ積み上げて学んでいくのか」がわからないのです。これで
は、やる気のある公立校の教員に習う方が、その子にとってはるかに良かったのではな
いでしょうか。
こういったことをよく知らないままで「とりあえず私立校に子どもを行かせれば安
心」と思う場合、大変な間違いが起こる可能性をはらんでいます。
現代は、何でも「プロに丸投げ」という傾向が強く、子育てでもそれは同じようで
す。
ある幼児教室の室長先生がこのような趣旨の話をしていらしたことがあります。「今
のお母さまがたは、お教室にお子さんを連れてきたら、その間はご自分の時間に使う、
ということで、全てプロにお任せ。ご自分の習い事に行かれたり、おしゃれに気を使わ
れたり。もちろん任せていただくべきこともありますが、やはり子育てとはどんな場面
でも子どもをしっかり見つめることが大事なのですから、何でも“丸投げ”というのは
困ります」。
この談話に現在の「お受験」が集約されると私は考えています。プロに任せておけば
安心、と教室に通っても、決して全員が合格できるわけではありません。むしろ、教室
に通わなくとも、ひとりでの着替えやあいさつなどができ、一定の時間集中して人の話
が聞けるなど、家庭で適切なしつけができていれば、合格できるのです。教室にいかに
も通っていた、という「作為的な動作をする子ども」を嫌う私立小学校も、実際に存在
します。
また、私立小学校に子どもを入れることが、最近では「母親の勲章」であったり、
「子育ての中の“学歴”のゴール」などと思うカン違いな親も多いようなのですが、こ
れは言語道断です。
これには、それまでの人生では偏差値などで評価されてきた今の世代の母親が、子育
てに関しては明確に数字で評価してもらえるわけではないので、誰の目にもわかる「お
受験」で合格すれば、母親にとって「勲章」になるという大きな問題が絡んでいます。
ですが、前回のメルマガVol.028でも書いた通り、わずか6歳で「お受験」に失敗して
も、その後有名大学に自力で合格できる子どももいるわけです。
ですから、「お受験」の合否が単純に人生全てを左右することには決してつながりま
せんし、まして、「学歴のゴール」など、とんでもない間違いです。子どもが幼児教室
に通っている間は自分の時間に使っても良いのですが、「丸投げ」ではなくて、「その
間何を子どもは身につけたのか」親子で共に歩んでいく姿勢が大事なのです。
公立校の教育内容があまりにも薄っぺらな状態が続く限り、「お受験」ブームは決し
て一時のことでは終わらないでしょう。もしかしたら、10倍前後の倍率は当たり前にな
ってしまうかもしれません。ですが、選ぶ側も、現代にふさわしい価値基準を取り入
れ、臨む側も「あくまでも良い教育を受けるための手段」くらいの心構えでいないと、
教員の側の家柄や親の職業、離婚の有無などで子どもを選ぶ間違った選別はなくなりま
せんし、親の側の「子どもの学歴のゴール」という悲劇的な思い違いもなくならないの
です。
「お受験」が、家柄などにとらわれない子どもの真の良さを見つけ、その後の子ども
の人生にとってプラスになるように、これから変わっていってほしい、痛切にそう感じ
ます。
☆あとがき☆
今週は、「私立小学校の現実 Part2」について書きました。子どもは減っているの
に、「お受験」のための教室が、都会では全く減っていません。そのことが子どもにと
って良い影響を生めば良いが、型にはまった子どもばかりになるのだろうか、と不安を
抱かずにはいられません。
次回は、「スポーツ推薦の実態」に関して書く予定です。夏の甲子園まっただ中の頃
ですが、野球やその他の、学生スポーツの裏側にある事実に迫ります。
感想・質問などのメールをお待ちしています。
つきの みどり
http://tsukinomidori.hp.infoseek.co.jp/
tsukinomidori@infoseek.jp
※このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ から発行して
います。配信中止はこちらまで http://www.mag2.com/m/0000123512.htm
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