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私立校で教壇に立つ、つきのみどりの、教育のホンネ話。ロゼッタストーンでのweb連載「つきのみどりの教育カフェテリア」で書けない話を中心に、ここでしか読めない最新の教育事情満載! ※当初は週刊でしたが、web連載のスタートに伴い、不定期化しております。

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2004/07/31

「週刊 みどりのひとりごと」Vol.028

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「週刊 みどりのひとりごと」(マガジンID: 0000123512)Vol.028  2004.7.31

☆はじめに☆

 皆さん、こんにちは。今週もメルマガを読んで下さりありがとうございます。
 先週私は東京・お台場での「国際女性ビジネス会議」に出席しました。この
会議は、「女性」とありますが、どなたでも参加可能です。私は2度目の参加で
したが、参加者はエネルギッシュな方が多く、いつも多くの刺激を受けます。
今年の会議の様子は、以下のサイトで見ることができます。なお、来年は7/16
開催予定とのことですから、興味のある方は今から空けておいてはいかがでし
ょう。ちなみに今年の参加者は850人でした。
http://www.women.co.jp/conf/

☆Vol.028 「私立小学校の現実 Part1」☆

 今回は「私立小学校の現実」について、次回と2回に分けて書きます。
 以前、ある女性社長さんが、教育についての会議の席でこう言われていまし
た。「私の子どもは現在小学生ですが、私立校に通っています。最初は小学校く
らい公立校で、と思っていましたが、学区の小学校が1学年1クラスだと知り、
そういう少人数で固定された中でしか対人関係をはぐくめないと思うと恐ろし
く、急遽私立の受験を考えることにしたのです」と。

 社長のお子さんは無事合格したわけですが、地元の公立小学校の話を聞いて、
私立校の受験ができるほど時間的・金銭的に余裕がある人ばかりでもないと思
います。ですが、この数年、公立校の教育に不信感が高まる一方なので、特に
東京では私立小学校受験が大変過熱しています。私立幼稚園や小学校の受験は
特に「お受験」と呼ばれ、他の受験とは区別されて呼ばれます。

 私立小学校に入学させることは、高額な金銭的負担を伴います。ですから、
一昔前までは、私立小学校に子どもを通わせるのは、学校から近い距離に住む
会社経営者・医師や、一部上場企業勤務のエリートサラリーマンの父親と、専
業主婦の母親などの組み合わせなどの、限られた家庭の子どもだけでした。な
お、家庭で特定の宗教への信仰があり、その宗教法人の学校に行かせたいとい
う理由も多くありました。この理由は今でももちろん存在します。

 ですが、エリートサラリーマンでも福利厚生やボーナスカットななどが当た
り前の現在、共働きの家庭の子どもも多く「お受験」に参戦しています。その
結果、有名校・人気校の倍率は10倍程度、というのが実態です。10倍、と言
えば今やへたな大学受験よりも高倍率です。ですので「お受験」に参戦する子
どもは、小さい体で、自分の意志とは関係なく、大変な試練を課せられてしま
っているのです。なお、この倍率は外部には示されず、卒業生などのみに、同
窓会報などで示されることが多いです。

 上に書いた通り、公立校への不信による受験者の増加もあり、この数年は、
少子化にも関わらず私立校の新設、定員増加も後を絶ちません。東京では、学
校案内の10倍の寄付金を要求して問題になった早稲田実業学校初等部(現在3
年生までが在籍中)、学習院初等科(定員増の予定あり)など、関西では、京都
の同志社小学校(2005年4月開校予定)などの動きが目立ちます。一方で、少
子化ゆえに定員を削減する学校もありますが、「子どもの選別は難しいのに、そ
れで本当に素質ある子を選べるのか」など、これには批判的意見が出ています。

 高額な学費と書きましたが、その学費は、有名校・大学付属校などでは、年間
合計で100万円を越えています。正確に言えば、その系列の大学(文科系学部
など)に入学する時と同じだけかかるのが一般的です。6歳くらいの子どもが
いる若夫婦で、これだけの額を用意できるのは、限られたケースですから、祖
父母の負担があるのも当然のこととなっています。また、この額ですから、ま
だ20代の夫婦には払いきれないことが多く、私立小学校に通う子どもの保護者
の平均年齢は、総じて公立校より高めです。

 試験は、11月1日から数日の間に行なわれます。11月1日以降、東京では紺
のスーツでキメた親子3人連れを見かけるのが当たり前の光景です。各校とも、
小さい子どもに過重な負担をかけるのを避けるため、受験票などを受け取って
初めて正確な日程がわかる形になっています。ですので、「お受験」の併願はあ
る程度限られてしまいます。試験は次の形で行なわれることが大半です。

1.ペーパーテスト、運動能力テスト、面接など、子どもの能力を見るテスト
2.保護者の面接

 この試験は、学校ごとで傾向・対策も全く異なるため、お受験に参戦する場
合、幼児教室などで訓練を受けるのが一般的です。オムツも取れないうちから
教室に通うことも珍しくありません。文字を覚え、体操などで体の発達をうな
がし、年齢に応じた手先の使い方ができるようにし、はっきりと話やあいさつ
ができるようにする…。こういったことは、家庭できちんと周りの大人がしつ
けていれば、本来あわてて教室に通うことなど必要はないかもしれませんが、
核家族化で世代間の断絶が当たり前の今では、もはや教室なしでの「お受験」
など考えられないのでしょう。なお、教室に通わなくて、個人的に家庭教師な
どを頼むケースもありますが、これはこれで大変な金銭的負担が必要です。

 この幼児教室への通学、それに伴う出費は相当なものです。どういった教室
へ通うかにもよりますが、年間数十万円は必要です。また、大手幼児教室とは
別に、個人的に教室を経営している方もいます。ですが、こういう教室へは
「口コミ」や「知人の紹介」などでしか入ることができず、また、まるで音大
進学のためのレッスンのように、毎回教室代を何万円も払わなければならない
のが当然なのです!!

 音大への進学なら、もっと年齢も上ですし、何より自分の意志で頑張ってい
ることですが、「お受験」の場合、子どもは幼いのですから、本人の意志などま
ずそっちのけです。それなのに、高額な金銭を投じるわけですから、いかに異
常な事態だとわかっていただけるでしょうか。また、こういう教室に高額を投
じて通っても、中学受験などのペーパーテストとは違い、明確な合否の基準が
見えにくいので、受かるかどうかは本当に未知数です。ですから、「お受験」を
めぐり、「必ず学校には入れる」などと言って高額のわいろを要求するような詐
欺事件も後を絶ちません。

 試験に関しては、学校から「簡単な内容です」といった指示しかありません。
ですので、あまりにもベールに包まれていて、かつ、小さい子どもの選別とい
う客観的指標が立てにくいことでもあり、根拠のあるなしに関わらず、さまざ
まな憶測が飛び交っています。

 「どういうタイプの子なら入れるのか」、「親の職業は何が多いか」などとい
うことから始まり、試験後も「何を面接で言われたか」「なぜ受かったのか、落
ちたのか」と言っては大騒ぎをします。私の幼児期で言えば、同じ幼稚園に通
う1学年上の人の何人かが、近くの私立小学校を受けたのですが、揃いも揃っ
て全員不合格。私の親も含め、保護者は「なぜ優秀な子も落ちるのか」とカン
カンガクガクだったそうです。落ちた子の中には、成長して、帰国子女でもな
いのですが、ICU(国際基督教大学)に入った人もいましたから、それだけ小さ
いうちの選別は判断が難しいのです。受けたのは、自営業の家庭の子が多かっ
たので、「自営業ではだめなのか」といった話も出る有様でした。

 また、試験の不明朗さに拍車をかけるのが、私立小学校の教員の視野の狭さ
だと私は考えています。黙っていても子どもが集まり、しかも一定の水準以上
の家庭の子どもばかりなのですから、意識して学校の外に視野を向けない限り、
視野が狭くなってしまう人も多いのでしょう。しかも、その狭さは、子ども本
人ではなくて、親に向けられてしまうことが多いのです。

 たとえば、よく言われるのが、「片親の家庭の子どもは入れない」。これは残
念ながら、そういう学校もいまだに多く存在します。「両親揃っているのが健全
な家庭」という考えに、小学校の教員がとらわれているからでしょう。でも、
どちらかがDVをふるう人や、夫婦が離婚寸前だとしたら、両親揃っていること
は果たして「健全な家庭のあかし」と言えるのでしょうか。結局、これは旧来
の価値観でしか世間を見ていない、私立小学校の教員の閉鎖的視点からくる大
変な弊害なのです。

 片親だと入れない、という小学校側の価値観のため、お受験させる親は、あ
の手この手で偽装工作をしていることも珍しくありません。「本当の父親が別居
中のため、なんと便利屋から“父親”を手配し、入試、入学式まで替え玉の“父
親”に来てもらった」話、某有名歌手がかつて、わが子の小学校入学式の翌日
に離婚した話…。こうして、事実を捻じ曲げてまで幼い子どものお受験に狂奔
するのは、本当に子どもの成長に良いのでしょうか。

 だからと言って、偽装工作をせず(あるいは知らず)、片親であると正直に願
書に書いて出したところ、面接では「お母さまはどんなお仕事をしていますか」
「ご実家の援助を受けられているのですか」と、子どものことはほとんど聞か
れず、母親のことばかり聞かれて終わり、あげく不合格との話もあります。

 また、片親だからと、そういった点で差別されない、国立の小学校だけを受
けるケースもあります。ただ、国立の小学校は試験の公平性を保つため、必ず
一度は抽選をしなければなりません。ですから、その時点でどんなに優秀な子
どもでもふるい落とされる可能性があるのです。

 以前、こういうTV番組を見ました。それは、銀座の有名な双子のママさんの
うちのお一人が、未婚の母になったのですが、生まれてみたら子どもは幼稚園
では「銀座ママの子」と言っていじめられ、私立の小学校に受験希望だから、
と問い合わせたら、「銀座ママの子どもなど入ったことがない」と言われ、却下
される。彼女は悩んだ末、「生まれなどで差別されず、また、英語がしっかり身
について世界中どこででも生活できるように」と、イギリスの全寮制の学校に
まだ幼いわが子を託すことにしたそうです。

 もちろんそのために母子共につらい別れを決断し、また、合格までに涙ぐま
しい努力を重ねたのでしょうが、こういう話を見るにつけ、私も教員の端くれ
ですが、視野の狭い中で昔と同じ価値観で生きている教員を憎みますし、また、
この銀座ママさんとお子さんに、「視野の狭い教員がいて申し訳ないです」と言
いたい気持ちになります。
 
 子どもは生まれてくる親を選べないのです。だから、子どもに資質があると
判断され、学費をきちんと納めてくれそうで、信頼できそうな親であれば、入
学を許可すべきなのではないでしょうか。

 また、以前ある女優さんが雑誌のインタビューでこう語っていました。「私は
料亭の女将の娘で、母は未婚のまま私を産みました。父親は高名な政治家だっ
たのですが、ほとんど話をしたことはありません」と。彼女は有名私立校に小
学校から通ったそうですが、このような場合、父親から学校に「働きかけ」な
どの「後ろ盾」があったから進学できたのではないかと考えられます。

 それから、「どんな職業であれ、母親が働いているのはタブーである」こと。
これは、高度な専門的キャリアを持つ親でも同様です。私立校の場合、入学後
慣れるまで、親が付き添っての登校を求めるケースが多く、母親が働いていて
は対処できないから、という意味でしょう。また、「母親が働いていては、子ど
もに手をかけておらず、良くない」との小学校教員のゆがんだ価値観も原因のよ
うです。これも、母親の職業の有無と子どもの非行は関係がありませんから、
一昔前のナンセンスな思い込みでしょう。

 ですが、上に書いた通り、最近は共働きの母親の子どももお受験に参戦して
います。こういう場合、学校の方針から親が判断して、場合によっては働いて
いることを隠して面接に臨むのです。ですが、受かってしまえば「こっちのも
の」ですから、祖父母が代わりに送迎している風景も珍しくありません。

 母親が働くのがタブーなら、当然子どもが「保育園出身」というのもタブー。
お受験のため、保育園に通っていた子どもも、最後の1年か2年だけ幼稚園に
行かせ、子どもには「保育園、と絶対言ってはダメ」と厳しく指導することも
あるそうです。これでは保育園とは良くないところなのか、と子どもは思って
しまうかもしれません。でも、これらは親でも子どものせいでもなく、全て私
立小学校の教員の、ゆがんだ価値観のせいに他ならないのです。

 また、学校によっては、特定の職種の家庭の子どもが多いこともあります。
創立当時からそうだったため、その傾向が数十年たった今でも変わっていない
ということのようです。私立小学校へは、前に書いた通り、もともと公立校よ
りも親の所得の高い、限られた家庭の子が通うことが多かったのですが、親の
職業に偏りがあると、ますますその傾向は強まることになります。
そして、願書に双方の祖父母の学歴まで記入させる学校もあります。なんだ
か、お見合いのつり書きよりもひどいですね。

 このようなことを打破しなければならないと、ある有名小学校で、親の学歴
記入欄を撤廃したことがありました。そうしたところ、今までなら「一族みな
その小学校出身で、楽勝で合格するはずだった子ども」が落ち、「絶対に入らな
かったような家の子ども」が合格、ということになりました。その中で、AV映
画監督の父と元AV女優の母、という家の子どもが受かった年があり、このこと
は週刊誌などでセンセーショナルに扱われました。

 子どもは親を選ぶことはできません。ですから、先ほども書いた通り、子ど
もに資質があり、親が信頼できて学費を納めてくれるのなら、入学を許可して
良いはずです。ですが、私立校の小学校の教員や、子どもの保護者の中には、
「家柄を重視」という、古い価値観で生きている人も多くいます。伝統ある私
立校では、「一族みなその小学校の出身」ということも珍しくないのですから。

 ですが、結局そういう形のままずっと経営していると、学校の卒業生は均質
化されますし、また、世間にはさまざまな人がいることもわからなくなってし
まいます。こういったことに気づかないでいると、成長した時に世間の価値観
についていけないのではないでしょうか。今のように変化の早い時代ならなお
さらのことです。

 私立小学校に子どもを通わせる場合、視野が狭くならないようにしないと、
成長してさまざまな局面で困難を乗り越えられない場合がでてくることを親は
肝に銘ずべきでしょう。

 皆が皆そうだとは言いませんが、均質化された家庭の子どもとの付き合いし
かしたことがなく、受験などの試練も乗り越えてきていないと、就職活動など
を乗りきることはできませんし、また、保護者のコネなどで就職できても、そ
の後訪れる試練に対処できなくなります。メルマガVol.006で書きましたが、
そのような人に私は嫌がらせを受けたこともあります。

 また、別の人物ですが、異常に自分自身にプライドを持っていて、仕事上で
の間違いを指摘されても、「私は悪くない」という大変な逆ギレぶりに、周りは
呆然となったのを見たこともあります。受験回数の少なさが、子どもを伸び伸
び育てることにつながれば良いですが、視野の狭い大人を育てているとしたら
大変良くないことです。こういう教育をしては絶対にならないのです。

 ☆あとがき☆

 今週は、「私立小学校の現実」について考えました。
 次回は、「私立小学校の現実」後半を書きます。なぜこんなに「お受験」に狂
奔するのか、などについて考えたいと思っています。
 感想・質問などのメールをお待ちしています。

つきの みどり
http://tsukinomidori.hp.infoseek.co.jp/
tsukinomidori@infoseek.jp
※このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ から発行して
います。配信中止はこちらまで http://www.mag2.com/m/0000123512.htm
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