言霊使いの玉手箱/びっくり箱かもしれません  RSSを登録する

小説の更新通知、進行状況などを配信します。異世界を舞台にした恋愛ものがメイン。現在はお題小説『宝石20』豪商にして男装の麗人サファイアが活躍(大暴れ?)中でございます。

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2007/11/25

七瀬なな小説メールマガジン

言霊使いの玉手箱/びっくり箱かもしれません
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  七瀬なな小説メールマガジン【2007/11/25】

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どうも、七瀬ななです。
【2007/11/24】以来のメルマガ配信です。

今回も、
お題小説『宝石20』十二個目『アレクサンドライト』をお届けします。

http://nanasenana.blog90.fc2.com/
▲七瀬なな小説閲覧室『お題の間』
宝石シリーズこれまでのお話と、ちょっとしたオプション記事が読めます

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   ★☆★『アレクサンドライト』第十八話☆★☆

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「……牢は、嫌いだ」
 牢の中で、猛獣よろしく、
 イライラと檻の前を往復しながら副船長が、つぶやく。

「ああ、嫌なもんだな」
 冷たい石造りの台座に腰を降ろした船長が、応じる。

「ところで、
 何故おまえまで、おれたちと同じ扱いを受けて、
 ここにぶちこまれてるんだ。
 ニコラ、おまえ、あいつの婚約者なんだろ」

 隅っこでひざを抱えてうずくまるサンドラに、
 船長は訊ねる。

 サンドラは、のろのろと顔をあげ、
 生気のない目で船長を見つめたかと思うと、
 また、うつむいてしまった。

 サンドラの口からは言いにくい事柄を、
 副船長が、代弁。

「こいつは傷物扱いされてるのさ。
 本当に傷物かどうかなんてのは、問題じゃない。
 嫁入り前の娘が、海賊と一緒に暮らしてたんだ。

 人質として捕らえられてたんなら、まだしも、
 海賊仲間として略奪や戦闘にも加わってたしな。
 貴族社会で、まともに受け入れてもらえるはずがない。
 そうだろニコラ、いや、サンドラか」

「そうなのか?」
「…………」

 船長、副船長の問いに、サンドラは答えない。
 かわりに、問い返す。

「わたしより、
 ご自分たちの心配は、なさらないんですか」

「おれたちは、どうせ縛り首さ。
 もう決まってるようなもんだ。
 今さら心配もなにも、ないだろ」

 船長の潔い響きの答えに、
 サンドラはハッとして顔を上げる。

 船長も、副船長も、いっそ清々しいような顔で、
 不敵に微笑んでいた。

「そうとも限らないよ」

 女伯爵エメラルドを装って船に乗り込んできた、
 サンドラの婚約者、
 この辺り一帯を総べる領主エイドリアンが、現れた。
 牢番が立ち上がり、腰を折って迎える。

「おまえ、なんでまだ女装してるんだ」
 船長の疑問に、領主は悪びれもせず、堂々と。

「これはわたしの趣味だ」
 と答えてのける。

「どうだ、美しいだろう、美しいものにより磨きをかけて、
 何が悪いと言うのだ。
 男装した少女を部下に持つ者が、
 女装した美丈夫へ好奇の目を向けるとは、
 理解に苦しむよ」

「屁理屈をこねるな。おれの部下をどうした」
「気になるのか」
「あたりまえだ、おれの部下なんだぞ」

「あんな卑劣な真似を、しでかしても?」
「なにを仕出かそうと、だ。
 むしろ根性を叩き直してやらなきゃならん」

「ふっ、いいだろう、教えてやろう。
 留守番組も、港町へ繰り出した連中も、
 全員捕らえてある。一網打尽さ」
「どうするつもりだ」

「船長のかわりに、わたくしが、
 彼らの根性を入れ替えて差し上げますわ」

 唐突に声色を高くし、手に持った扇をぱっと広げ、
 女伯爵エメラルドを演じてみせる。
 そしてまた男口調に戻り、

「傭兵訓練所へ放り込んで、
 わたしのために働いてもらうよ。
 人は殺すものじゃない、生かすものだ。
 せっかく手に入れた人材だもの、
 役に立ってもらわなくてはね」

「本気か」
「もちろん」
「そうか、では、頼んだぞ」
「任せておき給え」
「恩に着る。あと心残りなのは、こいつの行く末だ」
「あっ」

 船長はサンドラの腕を引いて、自分の前に立たせ、
 エイドリアンのほうへ向かせた。
 いきなり腕を引っ張られて、サンドラはうろたえる。

「婚約者なんだろう、
 牢に入れるなんて、あんまりじゃないか。
 こいつはこの先、どうなるんだ。
 大切にしてやってくれ、頼む」

「せ、船長」

 背中を押すように、肩に置かれた、
 船長の手の大きさ、ぬくもり。

 嫌だ、こんなの。
 わたし、誰にも託されたくなんか、ない。

 エイドリアンは、悪い人ではないと思う。
 女装趣味は、どうかと思うけど、
 領主としては辣腕だし、知略にたけ、大胆でもあり、
 尊敬できる人物だとも、思う。だけど。

 わたしは、船長以外。
 他の誰のものにも、なりたくないの。

「船長、彼女の顔を見てごらんよ」

 エイドリアンに促され、
 船長はサンドラをくるりとこちらに向き直らせ、
 あごに手をかけて、上を向かせた。

「理解できたかな、わたしがいくら大切にしても、
 サンドラは幸せには、なれないだろう。
 それは、きみの役割だと思うけど?」

 サンドラは、船長の胸に顔をうずめた。
 船長は、戸惑いながらも、
 サンドラの背中に、腕をまわした。

「そこで、ひとつ提案があるのだが。
 その前に、会って欲しい人がいるのだ。
 おいで」

 姿を現した人物は、サンドラに向かって、
 こう呼びかけた。

「姉上」

 懐かしい声。この呼び方。
 嘘。まさか。

 船長の腕の中から、
 檻の向こうを、振り返る。

「ニコラ!」

 鉄格子の隙間から手を伸ばして、ニコラに差し出す。
 ニコラは駆け寄り、その手をしっかりと握り返した。

****************************(続く)

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読んでくれて、ありがとうございました。
つづきを、おたのしみに♪

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