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2005/04/15

人事のブレーン社会保険労務士レポート 第18号

平成17年4月15日 第18号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.	業務上発生した損害に対する使用者と労働者間の賠償金負担の問題
2.	社会保険庁の改革

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今日は、私の31歳の誕生日です。ちょっと書いてみました。

今後ともご愛読宜しくお願い致します。


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1.	業務上発生した損害に対する使用者と労働者間の賠償金負担の問題

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<1> はじめに

通常の事故であれば、相手方との過失割合に応じて損害額の賠償額を決定する。
しかし、使用者と労働者、相手方との三者関係においては、相手方との関係は、
過失割合によるにしても、使用者と労働者の間では、どちらがどの程度費用を
負担するのかが必ずしも明確ではなく、実務上、労働者に賠償額を負担させる
ことは難しいのが現状である。

本稿では、そのことを検討し、どの様な形で費用の負担を求められるのかを明
らかにしていきたい。

<2>	示談は事由
使用者と労働者が、自由な意志で話し合い、損害賠償額の合意がなされること
は全く問題がない。労働者が、100%損害額を負担することも、それが労働
者の意志であれば問題はない。

しかし、少額の賠償額であれば問題はないが、多額の賠償額で分割払いの途中
に退職してしまう場合や、資力の問題で使用者が回収できないケースが多い。

また、示談時において、「印鑑を押さないと退職を強要されると思った」とか、
示談を行わず、機械的に損害額を賃金から控除してしまっている場合には、使
用者は、当該労働者に対し強い態度で望めない。

この種の問題は、例外ケースをつくってしまうと、それが前例になり、その後
は、毅然とした対応が難しくなる。

それであれば、判例を理解した上で、現実的な対策を考えていけばよい。

<3> 判例の確立

使用者と労働者の損害額の負担の問題は、主に交通事故を中心として昭和30
年代からみられていたが、茨城石炭商事事件(最一小判昭51.7.8判時8
27号52頁)により、判例が確立され、今日に至っている。

まず、以下のように、使用者の労働者に対する損害賠償の請求権を認めている。

使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条
件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散について
使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地
から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は、
求償をすることが出来ると解すべきである。

要するに、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」
とは何か、ということである。

この点については、判例の中で、「信義則上右損害額の4分の1を限度とすべ
き」としている。

<4> なぜ労働者に全額負担させることが判例上できないのか

例えば、損害額の100%を当該労働者に負担させた場合はどうであろう。
企業活動において、損害が発生するリスクとはそれに付随するものである。
それ故に、損害保険制度があり、損害保険市場も大きいものになっている。
損害保険をかけずに、仮に損害額の100%を労働者の負担とさせた場合、使
用者である企業は、企業活動に付随して発生する、損害発生のリスクを負担し
ていないことになる。

<5> 管理体制、教育体制の問題

(1)リスクをゼロには出来ない

労働者の過失による損害以外でも、盗難をはじめ、手形決済まで様々なリスクを
使用者である企業は背負っており、それらの損害の発生を避けるための管理を行
っている。

労働者が人間である以上、日々の業務遂行過程において、ミスをゼロとすること
は難しい。

それを前提に業務管理体制を構築し、ミスを少なくする教育体制、ミスにより生
じた事態が小さいうちに解決する管理体制を構築しなければならない。

この管理体制、教育体制が十分に機能していなかった場合には、労働者の過失の
認定は少なくなり、<3>で述べた判例の「4分の1」よりも低くなる可能性が
高くなる。

(2) 長時間労働、深夜労働の問題

長時間労働による労働者の疲労という点も考慮されている。業務命令による長時
間労働で疲労の蓄積がなり、結果として事故の原因を誘発したという考え方であ
る。
そして、労働法の一つの考え方として、「人間は夜寝るもの」というのがあり、
労働基準法の深夜手当や労働安全衛生法の深夜業務従事者の特殊健康診断をみて
も、この考え方というのはおわかりいただけると思う。
であるから、深夜労働に従事する労働者が事故を起こした場合には、やはり、業
務命令により危険な深夜に従事させたことが事故の遠因となっているという考え
方になる。

(3)	損害保険の問題

運送業者や建設業者において、損害の発生を前提とした、車両保険等の任意保
険の加入がなされていないケースが多い。とくに、中小企業の運送業者では車
両保険をかけていない会社の方が多い。

資金の問題から、任意保険の加入がなされていないのであるが、判例では、任
意保険を加入していないという点は厳しく評価されている。

運送業者や建設業者に限らず、個人情報の漏洩、貴重品の盗難等々、事故や漏
洩、盗難の可能性が高い職種について、それらは企業経営上ある程度予測でき
るものだから、それに対応した保険に入っていれば、当該労働者の発生させた
実質損害額は少なくなる。

任意保険に加入するか、加入しないかは、使用者の経営判断であり、保険を加
入していないというのは、その分のリスクを使用者が負担するということであ
り、保険加入について労働者に選択の余地がない以上、この点はやむを得ない
と考えるべきである。

(4)まとめ

実際に判例では、5%や7%といったケースが多く、余程のことがない限り、
この「4分の1」という限度額まで負担させることは難しくなっている。

筆者がおもうに、損害額の発生は結果論であり、むしろ、損害額の負担を論ず
るより、過程である管理教育体制をしっかりとしたものにしていくことが、問
題の本質であると考える。

しかしそうはいっても、損害額の負担の問題は、事故再発防止のモラール管理
や中小企業における資金繰りの面から考えると重要である。

<6>	業務命令から考える

業務命令とは、使用者が労働者に発するものである。業務命令を拒否すれば、
懲戒の対象になり、基本的には拒否は出来ない。
また、使用者は業務命令を労働者に発し、労働者を媒介としてしか業務命令の
効果を生じさせることが出来ない。
企業活動とは、組織活動であり、組織とは労働者の集合体であるから、労働法
的にいうと組織活動とは業務命令活動である。
例えば、無理なノルマ、長時間労働、要員不足、天候を考慮しないもの、設備
等が十分でない等々、業務命令に無理があった場合、また、不完全なものや、
現状を把握していない使用者が発するものであった場合、業務命令を通じて労
働者がミスをするという形で現れてくる。

この業務命令の妥当性と管理教育体制の万全さが立証出来れば、労働者の過失
が重過失となり、4分の1やそれ以上の賠償額(故意や犯罪行為の場合には限
度額は考慮されない)が認められるケースが出てくることが考えられる。

であるから、賠償金の負担の問題というのは、指揮命令系統を整備し、管理教
育体制をしっかりと構築していくことが第一番の問題であって、賠償額を取る
ことは第2の問題であると考える。

次号では、その第2の問題である、賠償額をどのように労働者から負担させる
か、総人件費という視点でお話ししたい。

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2.	社会保険庁の改革について

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社会保険庁改革で、年金を管理する特定独立行政法人と都道府県単位の健康保
険を管理する特定独立行政法人に分割し、解体することがほぼ決まりそうであ
る。

社会保険事務所での実務は、適用に関しては年金と健康保険は一体管理してい
る。では、社会保険事務所はどちらの管理なのか。職員はどちらの職員なのか。

独立行政法人とは、組織の運営に民間の考え方を導入し、効率化を図っていく
ことが目的である。

では、社会保険庁改革における効率化とは何なのか。

47の健康保険を管理する独立行政法人と年金を管理する独立行政法人の合計
48個の独立行政法人が出来る。また、厚生労働省には企画部門として、年金
局、保険局は残るであろう。各独立行政法人には理事がおり、給与も発生する。

また、保険の理論からすると分母が大きい方が安定した運営が出来るのであっ
て、都道府県毎に健康保険の保険者を分ける必要があるのかという疑問もある。

むしろ、社会保険庁を解体するよりは、都道府県毎に設置されている社会保険
事務局を統合し、北海道、東北、関東信越等々、国税局のように地域ごとに統
合すればよい。

例えば、山梨社会保険事務局管内の社会保険事務所は、大月、甲府、竜王の3
所しかない。他に3所のみの管轄は、鳥取、島根、佐賀、香川、徳島、奈良、
和歌山(分室含まず)、滋賀、福井の10社会保険事務局。4所のみの管轄は
長崎、宮崎、大分、長崎、高知、石川、富山、秋田、青森の9社会保険事務局。
5所は熊本、愛媛、三重、茨城、栃木、群馬、山形、岩手の8社会保険事務局。
全体の21%超が3所、5所以下については、全体の57%超である。

今回の不祥事の原因については、社会保険事務局採用の職員、本庁採用の職員、
厚生労働省採用の職員という3重構造による人事制度が、責任ある組織体制を
築けなかった一員といわれている。

国税局は最低でも20以上の税務署を管轄していることを考えると、都道府県
毎の独立行政法人を設立することが果たして問題の解決になるのであろうか。

社会保険庁の人件費についても、年金保険料が使われているという批判があっ
たが、この点についても、地方社会保険事務局統合のプランの方がよい。

結局のところ、組織形態が非効率であったとしても、実態の実務に即してない
にしても、独立行政法人化の方が政治的にアピールできる事だけで議論が行わ
れている。

筆者は今回の社会保険庁改革は、指揮命令系統を複雑にして、責任体制が曖昧
であること。都道府県毎に健康保険料を設定することは、健康保険の運営の不
安定化に繋がること、ポストが増え、結果として人件費が増加してしまうこと。
以上の点から反対である。

読者の皆さんも、はじめに独立行政法人ありきではなく、不祥事の起こった根
本的な原因を考えて、おおいに議論していただきたいと思います。

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発行者 山本経営労務事務所 (URL http://www.yamamoto-roumu.co.jp/)
編集責任者 社会保険労務士 山本 法史
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