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2009/07/06

マンガの園】056・夢見る流星!号

マ】ン】ガ】の】園】          *
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     │MANGA NO SONO      
     └───────●Vol.056
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2009.7.6                  【 夢見る流星 】


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  このメールマガジンは、ピュア1st.がほぼ同世代に向けて発信する
     マンガとエンターテインメントの雑談マガジンです。

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今年の七夕は晴れるでしょうか?
・・・・やっぱり雨でしょうか?

夜空を見上げて、少し空想の世界を巡ってみましょう。



(今号はほぼ全エピソード、ネタばれしますのでお気をつけください。)



◯流れ星/坂口尚】━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◇◇◇◇manga◇
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ボクが「感動したマンガ」として真っ先に思い出すのが、
【坂口尚】さんの『流れ星』です。


(作品集『竜巻を売る老人』他に収録)

・『流れ星』
晴れた星のよく見える晩は、老婦人はいつも庭に出て、
揺り椅子に腰掛け、空を見上げていた。
35年前。彼女にはテストパイロットの夫がいて、飛行を終えて帰って
来る時にはいつも「逆噴射の点滅を3回」くりかえす。
それが「ただいま」の合図だった。

二人の間には幼い子供がいたが、「準光速ロケットのテスト飛行」の時、
ついに夫は帰って来なかった。今では孫にも囲まれた幸せの日々を
送っているが、あの事故以来彼女は夜空を眺めて暮らしているのだ。


35年ぶりに「行方不明だった準光速ロケットが帰還する」という
ニュースが入ってきたのはそんなある深夜の事だった。
老婦人は家族に起こされ、宇宙センターに向かう。

ロケットは回路の故障から漂流を続けたが、ようやく地球への軌道を
みつけたという…。しかしいわゆる《ウラシマ効果》で、ロケット内の
時間は「半年」しか経過していなかった!

宇宙センターがロケットの回収と家族との面会の準備を伝えると、
彼はそれを断った。二人の時間はあまりに隔たってしまっていた…。
センターに向かう老婦人も状況を察し、車を止めるよううながして、
車外から夜空を見上げるのだった。

ロケットは減速せずに大気圏に入り、3回光ったかと思うと
摩擦で発火し《流れ星》となった。
それを目撃し、老婦人は「おかえりなさい…あなた…」とつぶやくのだった。

星空と揺り椅子がラストカットになっている。


***

ボクがこれを読んだのは高校3年の時だったと思います。
真っ黒な夜空。カミソリで切りつけたかのような流れ星。
それを見上げる老婦人と息子。これがまるまる1ページに1コマで
描かれているのです。
絵がやさしく叙情的で、とても感動しました。




◯300,000km./sec./あすなひろし】━━━━━━━━━◇◇◇◇◇manga◇
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さて感動作『流れ星』を読んでから、25年以上が経ち・・・。
【あすなひろし】の短編集が文庫で出ていたので買いました。
【坂口尚】が「流麗で」「愛おしさ」なら、
【あすなひろし】は「カラっとした」「切なさ」のマンガ家でしょうか・・・?


(作品集『林檎も匂わない』収録)


・『300,000km./sec.』
1933年、戦争前夜のドイツ。レーマン博士は「新エネルギー」の実験に
成功する。…軍部がそれを嗅ぎ付け、博士から拷問に近い形で、
その「新エネルギー」の情報を聞き出そうとする。

着々と戦争への準備が進む中、「新エネルギー」に関する情報を守りきれないと
判断したレーマン博士は、助手のヨハンを同伴させて、ロケットで宇宙へ
脱出する事にした。…戦争が終わり、平和な世界が戻って来る時まで。
ヨハンには婚約者イルゼがいて、お腹には子供もいた。
割り切れないヨハンだったが、軍部から逃れるようにしてロケットは飛び立った。

博士はヨハンに伝える…
「光の速度秒速30万キロを、このロケットで越えてはならない。
 何故ならその瞬間に、ロケットも君も光のつぶとなって消えてしまう」
というのだった。そして博士は死んだ。

ロケットはその後ミスから宇宙を漂流し、34年の年月が経過してしまう。
やっと地球への帰還の道筋を見つけた時には燃料が限界に来ていた。
どうしてもイルゼの待つ地球へ戻りたかったヨハンは、
禁じられていた「光の速度」に挑むことにしたのだった。
それならば計算上あと数分で地球に戻れる・・・。

まさにその時、地上ではイルゼが庭に出て揺り椅子に腰掛けていた。
彼女はドイツ軍部に危害を負わされ盲目となっていたが、34年が経ち、
子と孫に囲まれた生活をしていた。

ヨハンは思う。「光となったわたしを君は見てくれるだろうか……」

光速となったロケットが地上を照らす。
盲目のイルゼを強烈な閃光がつつむ・・・。

家族が驚いてイルゼに近づき「巨大な光がイルゼをい包んだ」と言うと…
イルゼはすべてを悟っているかのように「そう」と答えるのだった。

***

わー。なんとこのラストは【坂口尚】の『流れ星』そっくりではないか!
ボクはびっくりしました。
「ロケットで光となって帰る男」「庭で揺り椅子に腰掛け、待つ女」
偶然でここまで同じになることは無いでしょう〜。

この両者にはどんな関係があったのでしょう?
『300,000km./sec.』は1968年の作品。『流れ星』は1979年の作品。
【坂口尚】さんが、【あすなひろし】さんの作品を目にしていたのでしょうか?
とても興味深く思うようになっていました。





◯不思議な少年/山下和美】━━━━━━━━━━━━━◇◇◇◇◇manga◇
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【あすなひろし】の『林檎も匂わない』購入を遡る事2年前、
普段マンガ雑誌を買わないボクが、あるマンガを目的に《モーニング2》
(週刊モーニング増刊)を買いました。その他には目を通さずに保管したまま、
2年が経過しいよいよ処分しようとして念のため中身を確認しました。

その確認するタイミングは、【あすなひろし】の『林檎も匂わない』を買って
何ヶ月も経たない時間ですから、これはある種の偶然と言えるでしょう。
そこで目に止まったのは、こんなマンガでした。


・『不思議な少年』19話/NX-521236号

【不思議な少年】は時空を自在に行き来できる、本編シリーズを俯瞰する存在。

この回の主役はロボット【NX-521236号】。
子供の姿をしたロボットで、同型が100万体存在する。
そして1000年の歳月をかけて太陽系外の3つの惑星を「地球化する」という
作業任務が与えられ、彼ら100万体がロケットに積まれ惑星開拓の旅へ出る。

彼らの開発者は【サンドラ】、女性の研究者。
ロボットのリーダーには毛糸の帽子を与え、彼だけは1000年の間
壊れないような設定がしてあった。

まさにロボットたちの出発の夜、【サンドラ】たちが庭に出て
祝杯をあげていると【不思議な少年】が現れ夜空を指差す。
指差す方向で何かが光った・・・・。


さて、出発したロケットを追うと、帽子をかぶった【NX-521236号】は
各惑星で指揮をとりながら着々と任務を遂行していた。
その間ここにも【不思議な少年】は現れ、両者は会話をしている。

500年が経過し、仲間は仕事を成し遂げながら次々と壊れて行く。
【NX-521236号】は言う
「僕らの頭脳にあるのはプログラムだけ。感情はない…」と。
すると【不思議な少年】が言う
「それなら何故、サンドラ(女性研究者)の写真を何度も見るのかな」

【NX-521236号】は仕事の合間にいつも、
【サンドラ】の写真を眺めていたのだった。

1000年が経ち、仲間のロボットはすべていなくなり、惑星の地球化も
完了した。既に【サンドラ】がこの世にいない事を知る【NX-521236号】に
どしゃぶりの雨が降る。その姿は泣いているよう。

任務を終えた【NX-521236号】は自爆スイッチを入れる。
【不思議な少年】が彼を「2000年前」の惑星上空に連れて行くと、
閃光となり、1000年かけてその光が地球へ到達した。

そこはちょうど彼らが出発した日の晩。
まさに【サンドラ】が見上げる夜空に一つのまたたきがあった。
「あいつのサインさ」「帽子を振ったんだよ」と【不思議な少年】が言う。


***

これも「光となって帰って来る者」と「夜空を見上げ帰還を目撃する女性」
の構図になっています。

ただこの場合は前の二者と同じアイデアだとは言い切れないですね。
ボクが勘違いをしていました。
しかしこのマンガを読んで、ここまで似通うと偶然ではない、
大元になる作品がきっとあるに違いないと思うようになりました。
(SFファンのみなさんには常識なのでしょうね。)





◯スペースオペラの書き方】━━━━━━━━━━━━━◇◇◇◇◇◇book◇
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以上の事を意識したわけじゃなく、たまたま『スペースオペラの読み方』
という文庫を買ったのは、それからまた2〜3ヶ月してから。
《スペースオペラ》は苦手なジャンルなもので、勉強しようと思ったのです。
『スペースオペラの読み方』の著者は作家、翻訳家の【野田昌宏】。
その中で作例として、要約して引用してあったのが『万華鏡』でした。


・『万華鏡』/レイ・ブラッドベリ

ある宇宙船が、宇宙空間で真っ二つになってしまう。
宇宙服をつけていた何人かが船外へ放り出され、それぞれ別の方向に
飛ばされて行く。

状況は絶望的。残り少ない電池を使って、無線でお互いに話し合う。
ある男は妻や子の事を思い、ある男は流星群に巻き込まれ、それぞれに
死んで行く。またある憎み合っていた二人は、それまでを回想しながら、
互いに許し合うという場面もある。

ホリスという乗組員は地球へ引き寄せられる。
大気圏へ突入すれば、流星のように燃えてしまう。
「ひょっとして」「だれかにおれの姿が見えないものだろうか」と言う。

そしてそれは流れ星になって、夜空に白く輝くのであった。
地上では歩いていた少年がそれをみつけて言う…
「母さん、見てごらん! 流れ星!」

すると
「願い事をおっしゃい」と母が言う

「願い事をおっしゃい」


***

こんな感じです。要約された文章を発行者なりにさらに要約しました。

これは「帰って来る者」とそれを「待ち受ける者」の関係ではないけれど、
上に書いたマンガの元ネタであることは、ほぼ間違いないでしょう。
【坂口尚】さんも、【あすなひろし】さんも、【山下和美】さんも
きっとこのSF小説を読んでいるのでしょうね。

しかし逆に言えば、元ネタと思われる『万華鏡』と、あとのマンガは
違う点の方が目立ちますね。違う印象を受けます。



意外にもあっけなくマンガの元ネタを推定する事ができました。
しかしそれだけではありません。
この紹介された『万華鏡』の要約を読んで、さらに別の2作品に
思い当たったのです!

それは【石ノ森章太郎】の『サイボーグ009』と、
【手塚治虫】の『火の鳥』です。





◯『サイボーグ009』と『火の鳥』】━━━━━━━◇◇◇◇◇manga◇
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『サイボーグ009』はすべて読んだわけではなくて、『地下帝国ヨミ編』
も確か読んだ事はないのに、何故かラストシーンはよく知っています!
【黒い幽霊団】を宇宙空間で倒し、飛び出す【009/ジョー】を
【002/ジェット】が捉まえます!

しかしその時点で【002】も燃料が切れてしまい、二人共々真っ逆さまに
地球へ落下しようとします。そこで【002】がこう言うのです。

「ジョー、君はどこに落ちたい?」

そして二人は大気圏で発火し、それが流れ星のように見えるのです。
地上ではそうとは知らない姉弟がいて、物干し台から星空を見上げています。
これは姉弟の会話…

「あ、流れ星」
「きれいね。…何かお願いした?」
「うん、おもちゃのライフル銃。お姉ちゃんは?」
「私はね、世界に戦争が無くなりますように…って」

                (アニメ版のセリフを元に要約しました)



上記の『スペースオペラの読み方』での『万華鏡』の紹介を読み、
「あ、これは『サイボーグ009』だ」と思ったのです。
構図的には『万華鏡』と同じと言っていいでしょう。
ただそこに込められたメッセージのために印象はかなり異なりますが。



***


そして『火の鳥』の場合ですが、『万華鏡』と似通った部分はこれまで指摘
してきた部分とは違い、ラストではなく冒頭の部分となります。

『火の鳥/宇宙編』では、宇宙船が故障します。人工冬眠から覚めて
乗組員が集まると、見張り番の牧村の死体がみつかるのです。
それから彼らは脱出ポッドに各々乗って、宇宙空間を漂流するのですが、
この時に互いに無線で交信し会話でストーリーの運ぶ点が『万華鏡』に
とても良く似ているように思います。

やがて死んだはずの牧村のポッドも後を追うようにやって来るのです!
『火の鳥/宇宙編』は、牧村の死をめぐるミステリーが会話で語られるのが
特徴と言えるでしょう。(その間、舞台となるのは狭いポッドの中ですから
ワンシチュエーションとなり、実験的なコマ割りがされます)


***

日本を代表するマンガ家の、マンガの歴史にその名を残す二大作品、
『サイボーグ009』と『火の鳥』に引用されたSFの名作が
『万華鏡』/作レイ・ブラッドベリなのです!

石ノ森ファン、手塚ファンには既によく知られた事なのでしょうけど、
発表当時、この事に気づいた読者はどれほどいたのでしょう?
また【坂口尚】【あすなひろし】【山下和美】は果たしてその事に
気づいていたでしょうか?互いの作品の存在も知っているのでしょうか?
さすがにインタビューでもしてみないとそれは解りません。
(坂口氏とあすな氏は共にご存命ではありません)




「創作は模倣から始まる」なんてありきたりの結論で締めるつもりは
ありません。「インスパイアあるいはオマージュか」も解りません。
しかし「感動を狙ってる」のは確かでしょう。
エピソードそのものが感動的だから、初見でも感動できるし、
元ネタが解ったなら解ったなりに感動を膨らます事ができるのです。

彼らマンガ家が放った《光(仕掛け)》が、1年か2年か…
5年か10年か20年すると…
再び別の形をして目の前に現れるかもしれないのです。
彼らは「感動を狙ってる」のです。そして密かにほくそ笑んでいる
のでしょうねえ・・・。






(敬称略)



◯あとがき】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◇◇◇◇◇P.S.◇
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<今回出て来た作品の発表年代順>

・1949年〜『万華鏡』レイ・ブラッドベリ
・1951年〜(短編集『刺青の男』収録)『万華鏡』レイ・ブラッドベリ
・1966年〜『サイボーグ009/地下帝国ヨミ編』石森章太郎
・1968年〜『300,000km./sec.』あすなひろし
・1969年〜『火の鳥/宇宙編』手塚治虫
・1979年〜『流れ星』坂口尚
・2006年〜『不思議な少年/NX-521236号』山下和美

・2008年4月〜『林檎も匂わない』(作品集)あすなひろし
・2008年8月〜『スペース・オペラの読み方』(文庫版)野田昌宏


短編集『刺青の男』から『サイボーグ009/地下帝国ヨミ編』までに、
15年のブランクがあります。この間に《日本語訳》が出たと思って
いいのでしょうかね〜?

実はアニメには「あ、流れ星!」とつぶやいたり、叫んだりする作品が
多数あるそうです。もちろん本当の流れ星ではなく、その主人公や
ヒーロー・ロボットがラストに落下してくるパターンらしいのですが。

それはSFファンや、アニメファンに向けたメッセージなのでしょうね。



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○バックナンバー】━━━━━━━━━━━━━━━━◇◇◇◇◇まぐまぐ!◇

 http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000121387


◇>>>・・・ 感想は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

   pure1st2001@yahoo.co.jp


マンガの園【 夢見る流星 】
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2009.7.6
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