2007/10/31
人材育成の110番-人材を人財に変身!
人材育成の110番 ― 人材を人財に変身!
株式会社 総合経営センター流人材育成の考え方
第94回「トヨタ自動車 張会長の言葉」
●あっという間に仲秋になりました。日中と朝晩の寒暖の差が大きくなりました。
この季節の空気が澄んでいるように感じるのは家の前にある公園の樹木のそよぎで
分かります。夏の名残りが暑さを抱え込んでいたついこの前とは違い、今は冷涼を
伴った秋風が公園を渡って行きます。そのたびごとに空気が洗われるように感じら
れるのです。
●今、10月22日大きな写真入で日経新聞に載った張富士夫トヨタ自動車会長の「今、
若者たちへ 君に伝えたい私の経験」に強く感じるものがあり、これを書き始めま
した。
●張会長はどんな時も写真で見る限り、大変な福相で、人懐っこい、庶民的な親し
みを感じさせます。仕事の実績の大きさに較べれば、そのようなものを少しも思わ
せない優しさがあります。私はその表情にいつもひかれてきました。
●張さんは「人間は、持って生まれた素質と、経験を重ねて備わるものとの2つで
出来上がっていくもの」と言っています。素質はその人が持つ不変のもの、後者は
日々人生を過ごす過程でどんな経験を積み上げるかということ。張さんは小学校3
年の時に北京で終戦を迎え、戦後は山口県へ入り、その後東京へ引っ越されたそう
です。当時は自然が豊かで、友だちと一緒に遊ぶことで、自分の役割や我慢するこ
との大切さなど覚えたということです。
●稲盛和夫さんは、かつてリーダーに必要なことは「人間としての正しい生き方」
を繰り返し学ぶことだと説きました。スポーツマンが毎日鍛錬しなければ肉体を維
持できないように、経営者が正しい生き方をするための心の手入れを怠ると堕落し
てしまうと言いました。企業の不祥事が続発するのは、その簡単な教えを経営者が
守ることができず、社員にも守らせることができなかったからだと斬っておられま
す。
●「企業統治の危機回避には高度な管理システムの構築が急務だといわれている。
だが、『だましてはいけない』『うそは言わない』『正直であれ』というような単
純でプリミティブな教えを、まず企業リーダーである経営者や幹部が徹底して守り、
また社員に守らせることの方がずっと有効だ」。稲盛さんの見事な見解です。
●余談ですが05年6月のことですが、稲盛さんは京セラ取締役退任に伴う退職慰労
金約6億円のうち4億円を母校の鹿児島大学へ、残りも内外の大学や研究機関などに
寄付し、ご自分の取り分はなし。1984年に設立した第二電電企画(後の第二電電)
でも、この会社からストックオプションを受け取っていないそうです。「国家の利
益のために」というただ一点の動機のために私欲を捨てたのです。
●稲盛さんは、経営者は自分の下す決断が経営戦略として正しいかどうかを問う前
に、それが人間として正しいことなのかかどうかをまず問え、という教えも残して
います。
●さて、話しを戻して張さんは子供の頃、自然と親しみながら友だちと一緒になっ
て遊んだことを次のように語っています。「友だちを大事にする、人のいやがるこ
とをしない、進んで人を助ける、弱い者いじめをしない、うそをつかない …」と
いった社会生活の基本を自然に身につけた、と。
●張さんは東京大学法学部へ入る頃には剣道三段の腕前だったとのことですが「男
らしくとか、人間としてどう生きるかといったことを若い頃から考え、実行してい
たように思います。会社に入ってからも、敵に後ろを見せるのは卑怯なりといった
感じでみんながいやがるような仕事もやるものだから、いろいろな仕事が回ってき
ました。あいつの所に持っていけば何とかしてくれるという雰囲気になって、次か
ら次へややこしい話しが入ってくるんです」。
●張さんが世界企業トヨタのトップにまで一サラリーマンとして登りつめたのは、
まわりに「貸し」をつくる人生の繰り返しの結果なのでしょうね。人間は一足飛び
に人の上に立てるわけではありません。一時の幸運だけでもダメです。
●リーダーシップの7−8割はまわりの支持によります。より高い立場からリーダ
ーシップを発揮するような人は、自分自身が徳を積んで、自分の出世のためにまわ
りを利用するようなことは一切しないで、日々まわりに「貸し」をつくっている人
ですね。
●張さんはいやな仕事を今更逃げられないと思ってやって、それが乗り越えられる
と一つの自信となったと言っています。成長は、自信を持つことによって促進され
ます。それに困難な仕事は知恵を絞らねばなりませんから、考える癖も身について
きます。根性と知恵、この二つがそなわった人は強いですね。
●若い人たち今、求職者優位の絶頂に立っています。ビジネスマンの世界へ入った
ら、そのアドバンティジを捨て去り、下積みからの出発にたえられるかどうか。一
番大切なことは、上司・先輩が若い人を甘やかさないこと。仕事の厳しさを教える
こと。そのためには、自分たちが率先して泥をかぶれるかどうかです。
●最後に張会長の言葉を引用します。張さんは出来るだけ数多くのことを、失敗を
恐れずに思い切って経験してみることだと、今の若者たちへメッセージを送ってい
ます。
●「小さな挑戦と達成の繰り返し。それが自信と自己肯定感を与え、さらに大きな
挑戦へと導くのです。自分で手ごたえを感じれば、あるところでグッと伸びますね。
これは若者だけでなく、社会人全般にもいえることだと、思います」。
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株式会社総合経営センター
代表取締役社長 加藤 靖慶
(中 小 企 業 診 断 士)
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