2007/03/26
【かしこい人の見分け方】No.176 「よりよい答えを諦めずに探す人」
○●○━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○●○ か し こ い 人 の 見 分 け 方 2007/03/26 No.176 ○●○━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○●○ 【今週のポイント】 ○ よりよい答えを諦めずに探す人 × 答えはないと諦める人 ******************************************* 子供の頃の勉強には、必ず「正解」があります。 もちろん「勉強」の定義次第ですから、「人間関係」などまで含めれば、正解の ないものもある、と言えるかもしれませんが、子供の頃のほとんどの勉強につい ては、学習進度を客観的に評価し、効率的に教育するという目的もあって、予め 「正解」を用意された「問題」が出題させるケースが、ほとんどだと言えるでし ょう。 このためもあってか、大人になって、複雑な社会の問題に直面したときにも、つ い「正解」を探そうとしてしまうことが、よくあります。 ところが、社会生活を送る上、あるいは仕事を適切に行う上で直面する問題は、 学校で「問題」として出されるものとは異なり、論理的に唯一の解答が導き出さ れうるといった都合の良い物は、あまりありません。 ほとんどの場合、「あちらを立てれば、こちらが立たず」という矛盾に満ちたも のであり、どのような解決策を考えても、どこかがうまくいかない、あるいは、 運の悪い場合には、どうやって考えてみても、とても満足にはほど遠い答えしか 思いつかない、といったものもあります。 こういうときに、頭の回転がなまじ速く、気の短い人は、「どうやってもうまく いかないのだから、しかたがないじゃないか」「いくら考えてもどうせ一緒だか ら、考えるだけ時間の無駄。さっさと切り上げて、もっと他の有意義なことをし よう」と、問題から逃げてしまうことが、往々にしてあります。 もちろん、問題の性質によっては、そうすることが常に間違っているとも言えな いのですが、いつも問題から逃げていたのでは、自分の「問題解決能力」が鍛え られません。ましてや、周りの人々に対する貢献度合いの大きい「創造的問題解 決能力」は、いつまで経っても得られません。 では、「解決策の見あたらない問題を考える」ことは、本当に「時間の無駄」に ならないですむのでしょうか。 問題が非常に複雑な場合、解決策を考えるときには、誰でも問題を単純化して考 えます。そして、その単純化の方法には、一定の「セオリー」や「パターン」が あり、通常の問題の場合は、そのパターンをうまく使って、効率的に処理するも のです。そのやり方を、学校時代にたたき込まれるのが、今の一般的な教育でし ょう。 ところが、問題を分解・分析する方法には、実際にはいろいろなやり方がありま す。中には、普通の発想では思いつきにくいものがあったり、また、深く考える 前には、まさかそういうやり方でうまく行くとは思えなかったために、十分に考 えてみなかったものがあったりするかもしれません。 また、問題によっては、考えている間、待っている間、もがいている間に、状況 が変わって解決のための条件が整うことだってあります。 「解決は不可能」と思うのが、早とちりだったということは、想像よりもはるか に多いのが「現実」ではないでしょうか。 しかし、考える苦労することなしに、解決策が見つかることはありません。諦め てしまっては、それでおしまいです。 かしこい人、いや、かしこくなれる人、とは、生半可なことではあきらめずに、 しつこいくらいに問題を深く考える人です。 【最近読んだ本】 いつものように、以下は、僕が最近読んだ本の感想で、僕の書いているブログ 「最近読んだ本」( http://books.fujishima.main.jp/ )からのご紹介です。 今日の一押しは、最後にご紹介する「哲学ファンタジー」ですね。いいですよ。 ●「高校生が感動した「論語」」 → http://tinyurl.com/2dfszc 「論語」は、中学・高校時代に漢文の授業で結構暗唱させられ、文章そのものに は比較的馴染みのあるものでしたが、説教臭さが鼻について、どうも今ひとつ読 む気をそそるものではありませんでした。 しかし、本屋で新書のこのタイトルを見かけ、ちょっと興味をそそられて手に取 ってみました。すると、この本の作者は、慶應義塾高校の一番人気の国語の先生 だそうで、本の内容も、「論語」での登場順にこだわらず、孔子の言葉を作者が 内容別にまとめなおした順序で並べられており、しかも非常にくだけた口語調の 訳文となっていることもあり、実に読みやすそうでした。 実際、読んでみると、よても読みやすくておもしろく、勉強になりました。孔子 の言葉は非常に簡潔ですから、解釈の幅もとても広いようで、原文を直に読む時 にはそこが理解の障害となるところなのですが、自由奔放に訳すというこの本の ようなアプローチが取られると、むしろその自由さこそが魅力です。さしずめ、 「桃尻語訳 枕草子」の論語版といったところでしょうか。(さすがにあそこま で訳がはじけてはいませんが、作者のスタンスは同じです。) 作者が「蛇足」と称している冗長な訳や大胆な解釈も、その見解に対する賛否は あれ、理解を深めるのに大いに助かりました。 別の論語の訳と比較して、自分なりの考え方をまとめるときっとさらにおもしろ くなるのだろうと思います。作者も行っていたように、「時代や個人に即した」 十人十色の解釈が許されるのが「古典」だという考え方には、大いに共感しまし た。 ●「君主論」 → http://tinyurl.com/25xsxl 文庫本ながら、大きい文字で読みやすそうだった上、訳者が東京大学政治学教授 で総長にもなった佐々木毅ということもあって、読んでみることにしました。 訳は多少堅い感じはあるものの、それほど難しい語彙も使われておらず、比較的 平易に読めましたし、冒頭および章末に付されていた訳者によるコメントも内容 の理解を助けてくれるもので良かったと思いました。ただ、コメントでは、マキ ャベリの「リヴィウス論」との比較が多く、しかもその内容には触れずに、リヴ ィウス論の第何章と読み比べてみなさいといったトーンが多かったことには、や や辟易しましたが。 「マキャベリズム」と言えば、言わずと知れた「権謀術数」。しかも「君主論」 と言えばまさにそのレッテルの元となった書物ということで、どれだけニヒルな 記述があるのかと思っていましたが、実際には、たしかに冷静を通り越して、冷 徹と言えるほど現実に対して客観的な見方をしており、君主が目的を達成するた めには、何をしなければならないかを歯に衣着せず書いてあるのは確かですが、 この本を全体として読むと、マキャベリは、クールどころか、むしろ極めて熱い 愛国心に燃えた熱血漢という印象を受けました。 君主論の記述は、これが書かれた折のイタリアの時代背景を反映されているもの で、論語的・道徳的にだけやっていたんでは、とても生き残れるような状況では なかったのでしょう。ただ、そんなに「権謀術数がすべて」といった感じでもな く、むしろ、君主たるもの、平素はできるだけ国民の福祉向上に努め、人に憎ま れないようにすることを大いに説いています。ただ、「それだけじゃ生きられな い」ということを、あまりにもストレートに言っているところが、理想主義者の 反感を買うところが大きかったんだろうなといった印象を受けました。 なかなかこのようなプレゼンテーションは、真似のできるものではありませんが、 それだけに社会や人間性を極めて鋭くえぐり出している記述がたっぷりです。 短くてすぐに読める本ですし、食わず嫌いをせず、ぜひ一度目を通してみるべき でしょう。 ●「「品格のあるお金持ち」になれる資産形成マニュアル」 → http://tinyurl.com/2esfys 僕が数年前から購入している、さわかみ投信からのメールでこの本の存在を知り ました。しかも、さわかみ投信の社長自身が座談会に参加しているということで、 読んでみることにしました。 出だしは、自己啓発書によくありがちな、「自分の過去を振り返りましょう」 「目標を決めましょう」といった内容が、チェックシート付きで載っているとい ったもので、正直「はずれだったかな?」と思わせるものでした。 が、中盤からの投資運用についての内容は、実に具体的でわかりやすく、とても 感心しました。 僕がFPの資格を取るときに勉強した、ライフプラン表を簡単にしたような表を 作るアドバイスから始まり、投資目的の決め方、リスク許容度の決め方、投資方 針書の作成方法、資産配分の決定方法とポートフォリオの運用とチェックと言っ た、実に「正統的」な長期投資のための運用方法を、個人レベルに置き換えたも のが、とてもていねいに述べられています。 この本に書いてある内容は、大手の年金や生命保険と言った長期運用を目的とす るプロの機関投資家が実際に行っている、まさに「正統」といったものなのです が、正直、資金量の乏しい個人レベルでこの「資産クラス分散型ポートフォリオ 運用」を実行するのは、ちょっと無理があるのではないかと思っていました。実 際、僕自身、自分個人の資産運用としては、このようにかっちりした方法は行っ ていません。 しかし、この本では、適切な投資信託を利用して、個人レベルの小額資産(とい っても、数百万円程度は必要ですが、その「タネ銭」の作り方のアドバイスもあ ります)を、自分自身でリスクをコントロールしながら運用する方法が具体的に 述べられており、かなりの説得力がありました。 ただ、正直言うと、このような運用方法は、あまり「おもしろい」ものではあり ません。プロの運用というのは、高いレベルの確実性が求められるために、ギャ ンブル的な要素を徹底的に排除するからです。ですから、ギャンブル感覚で小遣 い稼ぎをしたいという運用スタンスの人には、この本は、まるっきり役に立たな いでしょう。 しかし、老後に向けての資産形成を行うため、本気で長期運用を実行したいと考 える人にとっては、もっとも適切なアドバイスを述べている本です。 ●「私説放送史」 → http://tinyurl.com/2y56dt TBSの制作出身で、現在番組制作会社の社長をやっている著者が、日本のラジ オ、テレビの黎明期から1960年頃までの放送界の歴史について、丹念な取材 やインタビューによってまとめ上げた労作です。 以前読んだ「NHK vs 日本政治」は、放送業界の中でもNHKについての歴史が書か れているものでしたが、こちらは民放中心に描かれており、ちょうど補い合って いるといった印象を持ちました。 全体として、固有名詞の羅列が多く、単なる事実の記録に終始して退屈な部分も 多かったのですが、終戦の玉音放送を巡る一件や、民放ラジオ開局、テレビの開 局といった節目の「事件」は、実にサスペンスフルで波瀾万丈のストーリーがあ り、記述が詳細に渡ってドラマチックに描かれていて、とても楽しめました。こ の部分だけでも、読んで得した気分です。 本の一番最後に出てくる、TBS会長だった今道氏が退任の際に言った「放送とい う強い力を文化の方向にむけようとしたその夢は全く実現せず、理想と違った道 を走ってしまった。もちろん経済的には貢献し得たと思うが、精神文化の面で成 功をおさめたといえないことが残念だ」という言葉は、実に重いものだと思いま した。 今からでも、遅くはないと言うべきでしょう。よりよい方向に、向かわねばなり ません。 ●「哲学ファンタジー」 → http://tinyurl.com/23estc 作者のスマリヤンは、アメリカの哲学者で、論理パズルの著書で名前を知ってい ました。 非常におもしろいパズルを作る人で、文章もユーモラスでおもしろいため、この 本も、単なる小難しい哲学書ではないだろうと期待していましたが、まさに期待 通りのおもしろさでした。 実は、この本で取り上げられているテーマは、いかにも哲学らしい、認識、論理 とパラドクス、生と死、時間、神、心と体、存在と実在といった、実に深遠なも のばかりなので、一歩間違えると、数ページ読むか読まないかのうちに、寝てし まいそうなものともいえそうです。 ところが、これらのテーマを扱うシチュエーションや語り口に実に工夫が凝らさ れていて、読んでいて実にわかりやすく、それどころか結構笑えます。でも、そ れでいてちゃんと上に述べた「哲学的テーマ」の「キモ」は抑えられているので すから、本当にすごい本です。 題名に「ファンタジー」という言葉が入っており、実施にファンタジー風という か、SF風の物語仕立ての章もありますが、それだけはなく、あるテーマについ て、専門や価値観の異なる複数の人たちが議論する形式があったり、神の存在を 「数学的に証明」してみせるような形式があったり、ショートショートがあった りと、論を展開する形式においてもバラエティに富んでおり、単調に陥ることが ありません。 本当に良いことずくめの、すばらしい本でした。哲学は難しくて嫌いだと思って いる人でも、もしSFや論理パズルが好きな人でしたら、間違いなく楽しめ、か つ、勉強になること請け合いです。一読を、強くお奨めします。 【編集後記】 先月の「編集後記」で、「今月は、その感想がなかったので、いつもよりさらに ちょっと不安でした」と書いたところ、早速これに反応して、「常設コメンテイ ター」のお二人から、コメントをいただきました。(笑) いつも、本当にありがとうございます。 まずは、トムさんのものから、ご紹介させていただきます。 >>お世話になっております。 >>いつものトムです。 >> >>先月には感想つけられませんでした。 >>といいますのも、以前のアドレスがジャンクメールで溢れ返って >>しまっていた関係で、新しいアドレスを取得してそちらに切り替えた >>際に、誤ってこれまでのメールをすべて消去してしまったからです。 >>(泣笑)。 >> >>ただ、何ともタイムリーなことに、今日のテーマはそれを後押しして >>くれるような内容だったので少し気を取り直しました。 >>これまでの成果を「所有」することに意味はない、これらを次に >>どうするかが大事なのだ、と。 >> >>>【今週のポイント】 >>> >>> ○ リソースの活用を考える人 >>> >>> × リソースの所有にこだわる人 >>> >>> ******************************************* >>> >>> >>>これは、お金だけではなく、企業がかかえる人材についてもそうですし、個人が >>>持っている才能についてもそうです。単に持っているだけでは意味がなく、それ >>>をフルに使いこなしていてこそ、「リソース」が「富」と言えるのです。 >>> >>>逆に考えると、この「リソース」は、別に所有していなくても、必要な時に使う >>>ことができるのであれば、それでいいとも言えます。お金を必要なときに借りる >>>ことができる、知恵や力を持っている人が必要な時には手伝ってくれるという環 >>>境に自分がいるのであれば、別に今、お金や人材を直接持っていなくても、一向 >>>にかまわないわけです。この場合は、この「環境」こそが、この人の「リソース」 >>>だと言えるでしょう。 >>> >> >>痛感します。 >>組織にいると色々ありますからね。。 >>人材をまず活かすことを考えるのではなく、まず「自分の手足」に >>してから使おうとする考え方の壁によくぶち当たります。 >>人材は活用してナンボなのに、人材をまず「所有」しようとする人 >>が結構おります。 >> >>これが経営の原則に反していることは明らかでしょう。 >>その考え方の延長上にあるのは、喩えて云えば、企業が蓄える >>内部留保の利息だけで食べて行こうとする「守り」の思考です。 >>農耕民的な発想の極致とでも言うのか。 >> >>ビジネスの現場で、この農耕民的、高じれば圧力団体的な思考と >>私はずっと闘い続けて来ました。何度も飼い殺しの憂き目に遭い、 >>露骨な嫌がらせのターゲットにされ、転職も経験しました。 >> >>しかし、はっきりしているのは、こうした農耕民的な既得権至上 >>主義の壁に当たれば当たるほどに、更なる創意工夫でこれを >>撃破する方法を模索するようになる、自分なりにパワーアップ >>して闘い方も巧みになって来ているのが自覚できることです。 >> >>これからも闘い続けます。 >>ビジネスの現場で、市井の一見識を踏まえた無名の一パーソン >>であれれば、と願います。 >> >>今後の発行を楽しみにしております。 先月のテーマは、サラリーマンには深く共感していただけるものだったようです ね。僕自身サラリーマンですから、当然と言えば当然だったかもしれません。 元気を出してもらえて、何よりでした。 次に、Aさんからのコメントです。 >>今年初の感想になります(笑) >> >>今年に入ってから、にわかに忙しくなってきました。 >>メルマガを消化する「時間」はあるのでしょうが、 >>どこか落ち着かない感じで「ゆとり」がなかったのが現状です。 >> >>そう思ったのは、実は今日、昨日のことで、 >>ようやく新しいペースがつかめてきた、 >>といったところかもしれません。 >> >>さて、一番興味深かったのは編集後記です(笑) >> >> >>>正確な名称は忘れましたが、小説家などで、 >>>最初の1行を書く前の、真っ白な紙やディスプレイをみると、 >>>緊張で固まってしまう症候群があるようです。 >>>これを克服するためには、何よりもまず、 >>>後から直せばいいのだから、と自分に言い聞かせて、 >>>何でもいいから書き始めて見ることなのだと、何かで読みました。 >> >> >>ほんとにそう思います。何かを書き始めれば、 >>自分の中から書くべきことは浮き上がり、 >>パソコンであれば指がキーを叩いていく。 >>ペンであれば、ペンが知っているかの如く、 >>それまでは意識していなかったことが書き出されます。 >>まずは、手をつけることですよね。 >> >> >>それと、リソースの活用についてですが、 >>投資をしていると、人の財産を見聞きすることが多くなります。 >>人によって感覚はそれぞれで、 >>4000万を運用して2000万に減らしてしまい、 >>無駄遣いはしないと出し渋りをしてしまう人。 >>片や50万を運用して倍の100万に増やして、 >>大盤振る舞いでみんなにご馳走する人。 >> >> >>実際に手元にある資産は断然2000万が多いのに、 >>その人の捉えかた次第ですね。 >>2000万でも暗い顔の人と、 >>100万しかないのにニコニコ幸せ顔で、 >>みんなと分かち合おうとする人。 >> >> >>>かしこい人は、リソースを所有することにこだわって、 >>>かえって人との信頼関係を損なうようなミスは犯しません。 >>>常にリソースを活用して、他人と円滑な人間関係を築くことに心がけています。 >> >> >>現状にピッタリフィットするお話でした。 >>ありがとうございます。 >>これからも楽しみにしています〜♪ いつものように、資金運用に引っかけて、経験を語っていただきました。 本当に、「持っている額」より「損得」の方が、深く影響しますよね。自分自身 の反省にも、役立てたいものです。 それでは、来月、最終月曜日に、またお会いしましょう。 ◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇ 発行者 : 藤島 昇 Webサイト : http://fujishima.main.jp/ メルマガサイト : http://www.mag2.com/m/0000118741.html メール : noboru.fujishima@gmail.com ◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇ 転載ご希望の場合はご一報ください (C) Copyright 2004-2007


