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これを読めばすべてがわかる!!なんてことはありえませんが、宇宙、地球、生命、人類の歴史をビッグバンから現代まで、1年半くらいでコンパクトにまとめます。現代まで一通り終わったら、またビッグバンから改訂版を送ります。現在、5版目です。

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2009/12/19

明快!森羅万象と百家万節の系譜 -No.29/5-

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明快!森羅万象と百家万節の系譜 -No.29/5-
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 ここ2カ月ほどのミニエッセイは脳神経回路について書いてきました。自分で
もっとも疑問に思っているのは何かを整理するためでした。そして、それは脳神
経回路の可塑性。再結合・構成の分子的なメカニズムでした。

 第1に、ニューロンが常に新しい結合を作り続けていること。神経線維、神経
突起を伸ばし、シナプスを形成することです。第2に、うまく機能したシナプス
があると、その結合が強化される。第3に、うまく機能しなかったシナプスは退
化する。1つの神経細胞は約1000のシナプスを持っているといいます。生き残っ
ているシナプスは1万個のシナプスから選ばれたものかもしれません。

 しかし、ニューロンは新しいシナプスから入ってくるインパルスが、また、出
ていくインパルスがうまく機能したことをどうやって判断するのでしょうか。細
胞は単なる分子機械ですから価値判断ができません。ほかの細胞が最終的なアウ
トプットを見て判断するのでしょうか。その場合はどこがするのか。

 価値判断をすることなく、ネットワーク全体としてうまくいくように個々の細
胞レベルで遺伝子発現や反応の基本パターンが決まっているのか。それとも、価
値判断をする中枢(快楽中枢?)があり、ここが入ってくる環境情報のインパル
スを判断する。ポジティブと判断すると、脳全体にポジティブ・ホルモンが分泌
されて、ここ数時間(?)にインパルスを送り出したシナプスが強化されるのかな?

 細胞のやることですから、複雑なメカニズムが錯綜しているのではなく、単純
な原理があると思います。生物ですから、その原理に基づきながらも細かなとこ
ろでは例外や調整があったりします。

 メルマガの発行は年末年始の休みにします。次回の発行は1月9日です。


◆◇ 森羅万象と百家万説の系譜 ◆◇

今回はお休み


◆◇ 生体防衛論 ◆◇

19.細胞膜を突破するAB型毒素

○今回は細胞の分子メカニズムに関する話です。わかりやすく書いたつもりです
が、難しいかもしれません。前半は細胞の食作用の話。後半は食作用を利用した
毒素の侵入方法の話です。

細胞膜は脂質(油)でできていますから、イオンや糖、アミノ酸などは通しませ
ん。細胞は栄養分や必要な物質を取り込むために、タンパク質を利用します。細
菌の毒素もその経路を利用します。

+++ 細胞の内と外を分けるのは脂質の膜である +++

細胞膜はタンパク質と脂質から作られています。タンパク質だけだと硬い膜です
が、脂質が入っていることで膜に柔軟性が生まれます。主に使われている脂質は
リン脂質で、長い疎水性の尻尾(油部分)を2本もち、リン酸基を含む親水性の
頭部を持ちます。

このような分子を多数、水の中に入れると、尻尾の部分を中心に集合します。量
が少ないと、球状になり、表面に親水性の頭部の並んだ鞠になります。もう少し
多いと、丸い柱(はしら)状になります。毬を細長く伸ばしたような形です。同
じように表面に頭部が並び、幹の内側が疎水性です。十分な量があると、シート
状に並び、シートの表と裏に親水性の頭部が並びます。脂質二重層構造と呼びます。

シートの内部は油部分の疎水性基の液晶状態です。いわば、2次元の液体状態に
なります。液体ですから、何かを突っ込んで掻き回しても、あまり抵抗を受けま
せんし、層も乱れません。水面に浮いた油の層のようなイメージです。押せばへ
こみ、強く押せば、ちぎれて中空のボールになります。ボールを押し付けると、
また、もとのシートに融合して戻ります。

細胞膜のイメージはリン脂質のシート状液体にタンパク質の島(といっても、重
量の半分を占める)が浮いている様子になります。疎水性の膜は半透膜の性質を
持ち、厚さ7.5nmです。リン脂質は無機的には合成されない分子で、すべて生物
由来とされています。

+++ 可塑性の高い脂質の膜は内側に膨らんで大型の物質を飲み込む +++

大きめの分子や構造体は膜が変形して細胞内にとり込みます。食作用と呼びま
す。膜の変形部分にはクラスリンというタンパク質が集まって、かご状の構造に
なります。クラスリンはサッカーボールの模様の様なかごを作って裏側から支え
ながら細胞膜を球状に変形させます。

取り込まれた物質は細胞膜に包まれた状態になります。食作用の袋をエンドゾー
ムと呼びます。エンドゾームの内部には水素イオンがイオンチャンネルタンパク
質によって注ぎ込まれ、酸性になります。取り込まれたタンパク質は酸で変性
し、活性(働き)を失います。

やがて、タンパク分解酵素をたくさん含むリソゾームと融合します。リソゾーム
は胃袋そっくりです。内容物が消化すると、栄養分は吸収され、残った膜の袋は
もとの細胞膜と融合して、中身を外に捨てます。この一連の機能を食作用と言い
ます。

+++ 小さな分子は結合タンパク質に乗って細胞内へ運ばれる +++

鉄の吸収は食作用の応用編です。鉄はトランスフェリンというタンパク質に結合
して体液中に含まれています。細胞はトランスフェリンレセプターを細胞膜の表
面に持っています。

トランスフェリンは鉄と結合したまま、レセプターに結合します。トランスフェ
リンを結合したレセプターは形が変わって細胞膜上で集合しやすくなります。集
合体は食作用を誘導します。トランスフェリンとレセプターの集合体は食作用に
より、細胞の中に取り込まれます。

酸性になると、トランスフェリンは鉄イオンと離れ、また、レセプターと離れま
す。その状態で鉄イオンが栄養分として細胞内に取り込まれます。レセプターと
空のトランスフェリンの入った袋は細胞膜と融合し、中身を外に放出します。レ
セプターはまた細胞膜上に戻り、トランスフェリンは体液中に戻って鉄イオンと
結合することになります。

+++ いくつかの毒素は食作用を利用する +++

ジフテリア毒素、赤痢菌毒素(志賀毒素、ベロ毒素ともいう。 VT1、VT2があ
る)、ボツリヌス神経毒素、炭素菌毒素は食作用を利用して細胞に入り込みま
す。これらの毒素は、AサブユニットとBサブユニットからできています。赤痢菌
毒素は5つのBサブユニットが輪を作り、1つのAサブユニットがその上に乗っ
かった構造です。ジフテリア毒素やボツリヌス神経毒素はひとつのタンパク質と
して合成されますが、菌や宿主のタンパク質分解酵素でAとBの部分に分解されま
す。炭素菌毒素は1つのBサブユニットに2つのAサブユニットが乗っかっています。

Aサブユニットは酵素で、毒素の本体です。Bサブユニットは細胞に送り込む乗り
物として働きます。Bサブユニットは細胞表面の決まった分子(レセプターと呼
ばれます)に結合します。レセプターのない細胞は毒素の影響を受けません。毒
素は細胞の食作用を利用して中に入ります。

エンドゾームの中が酸性になると、Bサブユニットは構造変化を起こしてエンド
ゾームの膜に入り込み、穴を開けます。Bサブユニットは酸性になると働くよう
に設計されているのです。その穴を通してAサブユニットが細胞質へ入ります。
このとき、細胞の持つHSP90タンパク質とチオレドキシン還元酵素が働きます。
両者とも変性タンパク質に結合するタンパク質です。Aサブユニットが細胞質に
侵入する(Aサブユニットが2つのタンパク質を利用する)ときの詳細なメカニズ
ムはまだ明らかになっていません。

○前回取り上げたコレラ毒素は? コレラ毒素も1つのAサブユニットと5つのBサ
ブユニットからできていますが、この経路とは別経路で細胞に入り込みます。そ
の入り口はよくわかっていません。ただ、細胞質にはERという細胞の分泌システ
ムからSec61運搬複合体(レトロトランスロコン)を介して入り込みます。ERに
は分泌タンパク質の輸送経路の逆経路を通ってくるようです。逆経路は出来損な
いタンパク質の処理経路ですので、コレラ毒素は出来損ないタンパク質に変装し
ている(と設計されている)ようです。


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 2009/12/19 発行
 発行人 岩田
 HP: http://eco-evo.hp.infoseek.co.jp
 ご意見・お問い合わせ: a6iwata@infoseek.jp
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