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これを読めばすべてがわかる!!なんてことはありえませんが、宇宙、地球、生命、人類の歴史をビッグバンから現代まで、1年半くらいでコンパクトにまとめます。4版目はトピックスとして生物の防衛戦略を特集中。

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2008/05/17

明快!森羅万象と百家万節の系譜 -No.35/4-

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明快!森羅万象と百家万節の系譜 -No.35/4-
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 最近の若い人達の体格を見ていると「変化したな」と思います。中年の日本人
の体格、東南アジア系、欧米系の人達の体格と比較してあまりにも細い人が多
い。細いというより、皮下脂肪を感じない。脂肪を貯める必要がなくなったよう
にみえます。

 柔らかいもの、栄養価の高いものばかり、それも気軽にいつでも食べるものを
取るので、内臓ばかりか、脂肪の比率も少なくても必要なエネルギーは賄えるの
でしょう。我が家の子供たちは、我々が(中年の男女が)好む美味しい魚や野
菜、肉すらも、硬いとか、食べにくいと敬遠する。それより加工食品やケーキ、
アイスクリームに惹かれるようです。

 人類の進化では、煮炊きした柔らかいものを食べるようになって、内蔵に費や
すエネルギーを脳に送ることができ、脳の機能が発達させることができたと考え
られています。現在、起きている体格の変化はその延長上にあるようです。遺伝
子自体の変化はそれほど速くはないと思われますので、もともとの遺伝子の潜在
能力として現在の体格が組み込まれていたと考えられます。

 少子化でがつがつ食べる必要もないし、空腹を感じることもあまりない。その
分、欲望や野心、闘争心も少なくなったでしょうか。満たされた世代?


◆◇ 生体防衛論 ◆◇

35、成熟するために切られるHAタンパク質

○復習です。インフルエンザ・ウイルスは8本のRNAゲノム(染色体のイメージ)
を持っています。大きい順に、PB2、PB1、PAタンパク質(3つそろってRNA複製
酵素になる)、HA、NP、NA、M(M1とM2)、NS(NS1と NS2)をコードします。最
近の研究ではPB1のRNAにはF2タンパク質という別の情報も乗っていることも分
かってきました。少ない遺伝情報(タンパク質)で巨大なゲノム(哺乳類)に立
ち向かうわけですから、小さな体に多くの機能を盛り込む工夫をしています。

+++ 研究の主役HAタンパク質 +++

HAタンパク質はウイルス粒子の膜上にあって、細胞のシアル酸という糖鎖に結合
し、ウイルスの膜と細胞の膜を融合させる役割を持ちます(32を参照)。その結
果、ウイルスのゲノムと複製装置が細胞の中に侵入します。いわば、感染の最初
のステップを担うタンパク質ですから、宿主の免疫細胞にとって最大のターゲッ
トでもあります。

+++ 切断されることで隠された能力を発揮する +++

作られたばかりのウイルスは、HAタンパク質が機能できない形です。気管の粘膜
上皮細胞から分泌される特定のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)によって
HAは2つに切断され(HA1とHA2)、膜融合領域(HA2にあります)が露出されては
じめて感染できるようになります。したがって、ウイルスが増殖する場所はこの
特定のタンパク質分解酵素が分泌されている場所(呼吸器。カモ類では腸でも)
に限定されます。

ところが、鳥に感染するインフルエンザはある条件下で切られやすいアミノ酸配
列に変異することが知られています。すると、呼吸器以外でも増殖することがで
きるようになり、感染力がアップします。とくにニワトリで劇的で、全身に感染
して、2-3日でニワトリが死んでしまいます。ニワトリは症状(咳、体温上昇)
を示す時間もないくらいです。高病原性ニワトリインフルエンザ(昔は家禽ペス
トが呼称)といいます。

どんなときに切られやすい突然変異が起こるのでしょうか。1つはニワトリに繰
り返し感染させるとあるときに20回ほどで出現することが実験的に確かめられて
います。一方で、高病原性ニワトリインフルエンザが発生する場所を調べてみる
と、多くが、多種類の家禽や水禽が生きたまま取引される食鳥マーケットがある
ところだったため、家禽、水禽が高密度で交わる場合と考えられています。家禽
はニワトリや七面鳥など、水禽はカモやアヒルです。多種類の鳥に次々と感染す
ることでストレスがかかり、変異が起こりやすくなると考えれらます。

+++ 感染の特異性の変化 +++

HAタンパク質が結合するシアル酸には小さな構造の違いがあります。シアル酸は
全身の細胞の細胞膜上にあり、組織や細胞によって特徴的な構造になっていま
す。インフルエンザウイルスが増殖できる呼吸器をみると、ヒトのシアル酸はニ
ワトリのシアル酸と少し構造が違います。この小さな違いによりニワトリインフ
ルエンザウイルスはヒトの呼吸器の細胞に感染できません。

もともと、インフルエンザウイルスは水禽が自然宿主で、水禽はインフルエンザ
ウイルスに感染しても症状を示しません。この辺が不思議なところで、病気を起
こす場合と起こさない場合でどこが違うのかが研究の対象です。病気はウイルス
だけ調べれば解明できるわけではありません。ウイルス感染に対する宿主の反応
も病気を起こす大きな要因です。

とはいうものの、人間の知識などお構いなしに、インフルエンザウイルスはその
七変化の能力を発揮して様々な動物に感染します。鮭類からもインフルエンザウ
イルスに似たウイルスが見つかっています。人間の身近な動物では豚や馬。とく
に豚は人間のインフルエンザウイルスの同じタイプのHAタンパク質を持っていま
すので、人間と豚の間ではインフルエンザウイルスは行き来しているでしょう。
不思議なことに、豚の呼吸器の細胞にはニワトリのシアル酸もありますので、ニ
ワトリインフルエンザウイルスも感染します。

インフルエンザウイルスは8本のゲノムを持っていますから、2種類のウイルスが
1つの細胞に同時に感染すると、子孫のウイルス粒子にはランダムにゲノムが入
り混じったあいの子(リアソータント)が含まれます。現在の仮説ではニワトリ
のインフルエンザウイルスが豚に感染し、ヒト型になって人間社会に入り込んで
新しい流行を起こすとされています。もし、高病原性ニワトリインフルエンザウ
イルスがこのルートでヒト型になって侵入したらおそろしい疫病になるでしょう。

香港で発生した高病原性ニワトリインフルエンザでは、人の患者が出て、死亡例
もありました。ただし、人から人への感染は起きませんでした。香港ではヒト型
とニワトリ型の両方のシアル酸に結合しうるHAタンパク質を持つニワトリインフ
ルエンザウイルスが分離されています。このウイルスが直接、人間社会を襲った
わけではなく、ニワトリ型がヒト型になるためにはもう一変異(たぶん2変異。
PB2とNS2)必要なのでしょう。

○以上、述べたようにHAタンパク質は様々なレセプター特異性、プロテアーゼ特
異性があり、それが宿主に認識されたときに血清型として現れます。宿主は HA
タンパク質の攻撃するのに効果的な部分に抗体の特異性の照準を合わせるため
に、感染した宿主の血清(抗血清)を使うとHAタンパク質を分類することができ
ます。逆に言うと、抗血清で分類できるほどHAタンパク質の性質が変化します。
HAタンパク質の血清型は15種類。ヒトに感染するインフルエンザは HA1〜3、ニ
ワトリに感染するのはHA5、7、9です。NAタンパク質は9種類の血清型があります
から、その組合わせは135種類になります。インフルエンザウイルスは免疫系が
特異的に攻撃する性質を逆手にとって、七変化で対応しているのです。


◆◇ 森羅万象の系譜 ◆◇

29. ゲノムの進化・・・変化を許容する仕組み

生物のゲノムを調べると、ゲノムを構成する1セットの遺伝子数(ゲノムサイ
ズ)が倍になった時期がある。一つは真核生物が誕生したときであり、約15億年
前である。原核生物の大腸菌ではゲノムサイズは約4377遺伝子であり、細菌は遺
伝子数は1000-7000個(平均値は大腸菌の遺伝子数くらい)である。一方、真核
生物である酵母のゲノムサイズは5538遺伝子、病原菌であるマラリア原虫
(Apicomplex類)が約5300である。

単細胞の真核生物のゲノムはかなり複雑で、ゲノム解析が遅れていた。糸状菌類
(麹菌など)は9000-12000ほどの遺伝子を持つ。繊毛虫類(ゾウリムシなど)は
小核と大核の2つの核を持つ。2つの繊毛虫類で大核のゲノム配列が決められた。
大核の遺伝子は小核に比べてコンパクトであり、遺伝子間配列、繰り返し配列、
トランスポソンが取り除かれていた。遺伝子は大規模に重複しており、コードさ
れる遺伝子数は真核細胞で最大である。テトラヒメナは225本の染色体を持ち、
27000遺伝子をコードする。 Paramecium tetraureliaは39462個の遺伝子を持
つ。トリコモナスは60000遺伝子をコードする。トリコモナスはミトコンドリア
の代わりに hydrogenosomesをもつ。

真核細胞の多様化は数億年かけて行われた結果である。遺伝子の多様化を背景
に、6億年前のカンブリア紀の大爆発が起こったのであろう。普段はアメーバの
ような単細胞生物であるが、生殖時には集合して多細胞生物となる粘菌は12500
遺伝子を持つと見積もられた。多細胞生物である線虫(C. elegan)は19893遺伝
子、ショウジョウバエは13676遺伝子、ハマダラカのゲノムサイズは14000遺伝子
である。イソギンチャクは 18000遺伝子、原索動物(脊椎動物の祖先)であるホ
ヤは15852遺伝子である。イソギンチャクのゲノムは、系統発生上、後の時代に
出現したショウジョウバエや線虫のゲノムよりもはるかに複雑であり、脊椎動物
のゲノムに似ている。ショウジョウバエおよび線虫のゲノムは、おそらくDNAの
喪失や再編成を通して単純化していったのであろう。

オルドビス紀、シルル紀と、ゲノムサイズが倍になった生物が出現した。脊椎動
物である。とくに、体の構造を指令する遺伝子群の倍化が効果的であったと考え
られる。脊椎は、複雑な感覚器(目や鼻)と骨と筋肉で支えられた強力な咽頭を
頭部もつ構造である。さらに脊椎を体節として様々な臓器が分化、形成される。
脊椎動物は大型化し、現在でも食物連鎖の上位にいる生物である。脊椎動物であ
るフグは27918遺伝子、人は22287遺伝子である。魚、両生類、爬虫類、鳥、哺乳
類はほぼ同じ遺伝子数と考えられている。ちなみに植物であるシロイヌナズナの
ゲノムは25,498個、ブドウは30434個、稲は37544 個、ポプラは45555個である。

多細胞生物から脊椎動物まで、急激に遺伝子数が増えた。単細胞生物から多細胞
生物までのように、10億年余りの時間の中でゆっくりと遺伝子のテストと改良を
重ね、多様性を獲得してから大発展となればもっと異なった脊椎動物、むしろ、
脊椎動物に匹敵する全く別の高度な生物が出現したかもしれない。造山運動で早
い進化の圧力を受け、ペルム紀末の大絶滅後、大幅な多様化のチャンスにもカン
ブリア紀の大発展ほどの多様化は起こらなかった。


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 2008/5/17 発行
 発行人 岩田
 HP: http://eco-evo.hp.infoseek.co.jp
 ご意見・お問い合わせ: a6iwata@infoseek.jp
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