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2009/11/15

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジンneoneo 135-1号 2009.11.15

 
 
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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    135-1号  2009.11.15


∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 †01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
       試写室BASE KOM 柏原寛司氏インタビュー(3-最終回)
        聞き手・採録・構成:萩野亮
 †02 ■映画時評・特別編
      ヤマガタで見た、聞いた、感じた、考えた
      ――山形国際ドキュメンタリー映画祭2009を振り返って(1)
         萩野 亮 VS 中村 のり子
 †03  ■neoneo坐 11月後半の上映プログラム


※135-2号へ

     ◇────────────────────────◆◇◆    


 †04 ■広場
      ■「今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭」アンケート追加発表
         浦辻宏昌
      ■『船、山にのぼる』(監督:本田孝義)のDVD、発売中!!
      ■第14回アートフィルム・フェスティバル」
        11/19~26、12/1~6  愛知芸術文化センター
      ■‘文化’資源としての<炭鉱>展  Part-3
        特集上映 <映像の中の炭鉱>  11/28~12/11 ポレポレ東中野
      ■場外シネマシリーズ1「黒木和雄とPR映画」
        12/6 12/13  Latitude☆P(新宿区四谷)
      ■「自作を語る」などの原稿募集!
      ■上映の告知の有料化とカンパのお願い
 †05 ■編集後記  伏屋 博雄

    ★バックナンバー閲覧はこちらまで
     まぐまぐ配信   http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/ 
     melma!配信   http://www.melma.com/backnumber_98339/ 



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┃01┃□ドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■試写室BASE KOM 柏原寛司氏インタビュー('09/8/24)(3-最終回)
┃ ┃■聞き手・採録・構成:萩野亮
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●BASE KOMの「色」

――先ほどもお話に出ましたが、もともとは映画館として運営したかったものが試
写室になったと。
ただ映画館と試写室とではまったく位置づけが違いますね。映画館では番組編成を
決めていくことが重要になっていきますし、試写室ではひたすら上映環境を提供す
る、ということで違ってくるわけですけど、新橋のTCC試写室では最近一般の方に
も開放されているようですが。

自分の知り合いも「TCCで試写をやる会」を作っていて、定期的にやっていますよ。

――TCCさんではカップルで使ってもらうためにワインを用意するサービスなんか
もあるようで、近頃の映像受容の変化を反映しているようにも感じるんですが、柏
原さんとしてはBASE KOMをどのように展開していきたいですか。

 まあカップルに使わせるまったく気はないですね(笑)。ラブホじゃないんで。
その「TCCで試写をやる会」で使わせてくださいよ、とは言ってきているんで、そ
ういうひとたちには使ってもらおうかな、と。あと自主映画の連中を何人も知って
いるんで、彼らにも使ってもらおうかなとは思っています。

――試写室によってやっぱりカラーというか色合いってあると思うんですね。わた
しも試写状をたまにいただくんですが、映画美学校の試写室の若い作家の試写に呼
んでもらうことが多いです。ドキュメンタリーもよくかかっていると思います。
BASE KOMはどんなカラーでいきたいというのはありますか。

 あまりないんですけど、どっちみち席数も少ないですから、そんなメジャーな作
品で使われるわけはないんで、若くて金のないやつらが使ってくれればいいかなと。
TCCがいま一番安いですから、料金はTCCよりは安くしようと思っています。

――2階がカフェになるということで、こちらももう完成しているんですか。

 ええ。9月6日オープンの予定です。ここ(試写室)も建前としては9月6日オープン
ということで。

――カフェは何というお名前で。

 人形町三日月座。こっち(試写室)ではぜったい儲からないですから、ここに来た
人が上で待ち合わせとかに使ってもらったり、終わったあと呑んでもらったりとか。

――上映とカフェと両方あるということで、思い出されるのが東中野のポレポレ坐
さんですとか、渋谷のUPLINKさんです。ああしたところでは上映と飲食とがうまく
リンクしているように思います。そのときかかっている映画のイベントをカフェで
やったりですとか、映画に関連したお料理を出したりですとか。そうした上映と飲
食とのリンクについては。

 上映と飲食でリンクさせたいという思いは多少あります。ただポレポレ坐さんと
かは興行なので、そうではないかたちで、興行ではない形でなにがあるだろうかと。
十条にシネマレストランがあるんですよ。「soto」っていう。それがうちと同じよ
うな条件で、地下で、喫茶店とレストランがあって。そこのオーナーが好き物で、
そんなに年もとってないんだけど、やっぱり35入れちゃって、やってるんですよ。
柳町(光男)さんのをやったり、カウリスマキのをやったりとか。メインはレストラ
ンのコックさんなんで、上映する映画に合わした料理を出したりするんですよ。
つまり上映でお金を取るわけじゃなくて、料理でお金を取る。多少そうしたことは
考えていて、作る前にそこを見に行ってもいます。そうしたことはやろうかなと。
たとえば上でイベントをやって、それに関連して下で上映もやってるんでどうぞ、
みたいな。

――カフェではそうしたイベントスペースなんかもあるわけですか。

 まあ、机を並べ替えていろいろできるから。そういうことを含めていろいろやろ
うかなとは思っています。まあ、試行錯誤しつつ、焦らずにやっていくつもりです。

――あまりビジネスとしては考えてはいないということなんですが、お伺いしてみ
たいことがあります。日本では80年代にいわゆるミニシアターブームが起きて、そ
れから20年くらい経ったいま劇場の再編が激しく行なわれていると思います。シネ
コンが増えてゆくなかで、ミニシアターが苦境に立たされている。また後継者がい
ないということも伺ったことがあります。BASE KOMは試写室として運営されてゆく
わけですが、こうしたミニシアターの現状について、お考えはありますか。

 ミニシアターはそれなりに行くんですが、やはりメジャーではない映画をかける
スペースは必要なわけで、それはなくならないんじゃないかと思う。だから、場所
の問題。行きやすい場所で、それなりに認知されてくれば。やっぱりその劇場側の
努力というか、むかし僕らのころは劇場ははっきり色分けされていて、俺なんかは
アクション映画の男ものが好きだから日比谷映画に行ったわけです。女性ものの場
合はみゆき座へ行くわけです。文芸的なのだと遊楽座とか。あとATGもあるし。B級
的なアメリカのアクション映画だとニュー東宝とか。そういう色分けがされていた
から、行きやすいわけです。小屋にファンがついていたわけで、そうなればいいと
思います。いまでもシネマヴェーラかな、日本映画の特集をやたらとやっている。
つまりああいうふうに映画館としての色が出れば、いいんじゃないかなと。そうす
るとここは映画館じゃなくて試写室ですけど、BASE KOMに関しては俺がやってます
から、どうしても俺の色になるわけです(笑)。だからそういうふうになるのはしょ
うがないわけだけだけど、そうしたかたちで何らかの色がついてくれば、客も来る
んじゃないかと思います。

――柏原さんはKOM PICTURESでも「70年代アクション」を強烈に意識されていると
いうことですが、やはり日本のアクションを盛り上げていきたいというお考えです
か。

 もともとは西部劇なんですよ。ジョン・フォード。

――そういえば『リオ・ブラボー』(ハワード・ホークス監督、59年)の上下二枚組
のポスターも館内に貼ってありますね。ああいうポスターははじめて見ました。

 あれはね、もらいまくったんですよ。ぜんぶもらいもの。裏返すと『アラモ』
(ジョン・ウェイン監督、60年)の上下のポスターになってるんです。むかし映画館
はくれたんですよ。よく常連で行ってたのが東劇の4階にあったんです。3本立ての
映画館。そこのオヤジさんがいい人で、終わるとくれるんですよ。けっこうもらっ
てて、あと人形町にもあったユニオン座って洋画の3本立てのところもくれたし。
だからジョン・ウェイン系はけっこうありますよ。

――ポスターの展示なんかもできそうですね。

 むかしはああいう上下のやつもあったんですよ。ポスターもけっこう好きなんで、
コレクションしてますよ。むかしのパンフレットもたくさんありますし。一種コレ
クターですから(笑)。なんせ映画好きは映画に関するものは何でも好きですからね。
はじめ資料館なんかをやったらどうですかっていわれたこともあるんですけど、台
本もけっこうありますし。自分がからんでた作品のものは全部あります。ただそこ
まではしなくて、まあ見せびらかしにならない程度で。

●これからの展望について

――最後にこれからの展開について伺いたいと思います。脚本、監督、それからこ
の試写室の運営含めて、どのようにお考えでしょうか。

 撮りたいものはいろいろあるんで、それをだんだん仕掛けていこうかと思ってい
ます。脚本の仕事はあまりだんだんやる気がなくなってきたんで、今年シナリオ作
家協会の会長になってしまったので、そっちの仕事がけっこうあるんですけど、あ
と三本くらいは撮りたいなと考えています。監督として。本でも気がいくネタがあ
ればやりたいと思いますけど、気がいかないのをやる気はないなと。

――いま進行中の作品は。

 東映で映画の企画動かしたりとか、探偵もので一本動かしたりとか。進行中の企
画はいくつかあるんだけど、映画の場合は決まるかわかんないから。テレビは意外
とすんなり決まるんだけど。まあテレビはね、様変わりしちゃってるから。役者が
SMAPとか、そんなんでやる気はまったくないです。
よくできたものでジョン・フォード一家っていうのは、あれはジョン・フォードの
あの一家でやっていかないと意味がないわけで、やっぱりジョン・ウェインが抜け
たら終わりなんですよ。だから黒澤さんの作品でも三船(敏郎)さんが抜けたら終わ
りなんです。そういうグループがあるわけです。いま脚本家でそういうのがあって、
三谷幸喜さんの本だと三谷さんの色になる、色が出てくる。クドカンが書くとクド
カンの色になる。われわれにもそういうカラーがあるわけで、主役がやっぱり
ショーケン、舘ひろし、柴田恭兵あたりで、お兄さん的な役、アニキ株に藤さん、
渡(哲也)さん。まあその辺まではOK。許容範囲(笑)。それで脇にやっぱり片桐(竜
次)さんとか、元ピラニアの人たちとか、やっぱりそういう人たちとやっていくっ
ていうのがベースだから。そうじゃないと自分の色合っていうかね、カラーは出な
いですよ。

――若い俳優で注目している方は。

 TOKIOの長瀬(智也)だけはいいな。あれだけはいい。あれが主役だったらやって
もいい。『ソウル』(長澤雅彦監督、02年)は面白くなかったんだけど、『ヘブンズ
・ドア』(マイケル・アリアス監督、09年)がよかった。あとdocomoのコマーシャル
とか、あのバカキャラがいいじゃないですか。
気取らないというか、バカを出せる。いまやってる『華麗なるスパイ』(NTV)はつ
まんないけど、ああいうふうに遊ばせないで、もっとちゃんとワルをやらせればい
いと思うんだけど。
    (了)

☆試写室BASE KOM
〒103-0013東京都中央区日本橋人形町1-15-5
Tel/03-3667-0911 Fax/03-3667-0423
上映可能素材:35ミリ、16ミリ、 ミニDV、DVCAM、ブルーレイ、
DVD、LD、VHS、ベーターマックスなど


■柏原寛司(かしわばら ひろし)
1949年東京生まれ。日大芸術学部卒。主なテレビ作品『傷だらけの天使』『大都会
シリーズ』『大追跡』『探偵物語』『プロハンター』『西部警察』『あぶない刑
事』他、主な映画作品『あぶない刑事シリーズ』『べっぴんの町』『行き止まりの
挽歌 ブレイクアウト』『ゴジラvsスペースゴジラ』『ルパン三世 くたばれ!ノ
ストラダムス』『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』他、監督作品『猫の息子』他。

●インタビュー後記  萩野 亮
まだ完成して間もないという試写室BASE KOMを訪ねるため、伏屋博雄編集長と日本
橋人形町に足を向けたのは、まだまだ暑さの厳しい8月の暮れのこと。「日本アク
ション界の首領」とも呼ばれるTVドラマや映画での数々のお仕事ぶりから、実は少
々身体を硬くしていたわたしだったが、生まれも育ちも人形町だという柏原寛司さ
んは、いかにも「江戸っ子」というような歯切れのよい親しみやすい方で、若造の
わたしにもフランクに接してくださった。カメラマンの加藤孝信さんの紹介でごあ
いさつにお伺いしたその日に早くも取材の話が決まって、幸いにもわたしがお話を
伺えることになった。久しぶりの取材の仕事は舞い上がるほどうれしく、けれど同
時に、これまでスクリーンに映されるもののことばかりを気に留めていた自分に、
いったい何が聞き出せるのかとふと立ち止まる。あわてて興行や施設についての本
を読み散らかして、何とか取材に臨んだ。

「すごろくでいうと、最後あがりが映画館のオヤジみたいなね」。
けれど柏原さんは迷いもなくそうおっしゃった。ほとんど「運営」という意識はな
いという。あまりの明快なお答えに、正直拍子抜けするほどだったのだが、わたし
の少しずれていたかもしれない質問に対して予想もしない面白い話が次々に飛び出
してくる。奥さんが実家に帰っている間に35ミリの映写機を入手したというお話に
は思わず手をたたいて笑ってしまった。柏原さんは「首領」でありながら、ひたす
ら映画を愛する熱い「オヤジ」でもあった。
まだまだ「すごろく」は終わっていないはず。どんな「あがり」をみせてくれるの
か、試写室「BASE KOM」の活動を含めた今後のご活躍にぜひとも期待したい。



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┃02┃□映画時評・特別編
┃ ┃■ヤマガタで見た、聞いた、感じた、考えた
┃ ┃ ――山形国際ドキュメンタリー映画祭2009を振り返って (1)
┃ ┃■萩野亮 VS 中村のり子
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今年も怒涛のように過ぎていった11回目の山形国際ドキュメンタリー映画祭、われ
らが「ヤマガタ」。本誌で「映画時評」を交代で担当している、まだまだ若輩者の
萩野亮と中村のり子が今年のヤマガタで見たもの聞いたもの感じたもの考えたもの
をざっくばらんに語り合い、映画祭とドキュメンタリー映画の現在形を探ります。
どうか大目にみてやってください。(萩野亮/中村のり子)

●何回目のヤマガタ?

 萩野(以下H):まずは自己紹介も含めて、たがいのヤマガタ経験から話していき
たいと思います。
ぼくからいきますと、ぼくが初めて参加したのは、この場で言うのも恐れ多いんで
すけど、つい2005年からなんですね。そのときはまだ学部の学生で、2泊3日で十何
本か見て帰ったというのが最初のヤマガタ経験。そのときは何を見ていいかわから
ないからコンペ中心に見ていて、受賞作品なんかは運良くとかいうか、ほとんど見
ました。まだそれほどドキュメンタリーに関心のある頃ではなかったんですが、そ
の三日間でみるみるうちにのめりこんでいった。
 中村(以下N):きっかけになった。
 H:そうなんです。前回07年はもう「neoneo」にも書かせてもらっている時期で、
プレスのパスもいただいたので、一週間まるまる見ました。今回も初日から最後の
受賞作上映まで一週間すべてに参加しています。中村さんはどうですか。
  N:わたしは、いちばん初めが2003年で、そのときは2、3泊で明治学院大学の一
年生だったんですが「教授はみんな山形ドキュメンタリー映画祭に行って授業も休
みにするから」ってけしかけられて、だまされやすい方なんで行きました(笑)。
すでにドキュメンタリーの講義も若干受けていましたね。次の2005年のときには、
フォーラムの映写室のボランティアをやりました。それで3回目が2007年で、前回。
neoneo坐の科学映画上映会に参加していたので、科学映画特集の助っ人要員みたい
なかたちで行きました。今回は会社に勤めているのでパワーダウンして(笑)3泊だ
け。毎回わたしはころころ立場を変えていて、パスの色が毎回違うんです。
 H:ヤマガタ経験から人生の変遷がわかる(笑)。なるほど。じゃあヤマガタはい
ろんな角度から見てきたと。
  N:そんなたいしたものではないですけど、結果的には立場が決まっていないの
でいろんな視点から見ることにはなった。でもまだ4回ですからね。10年前、20年
前から来ている人と比べればたいしたことないです。
 H:ぼくは批評というものの末席を汚していることもあって、観客としてずっと
見てきました。その辺のふたりの視点の違いもこれから出てくるかもしれないです
ね。

●どこか小ぶりな印象

 H:まず全体の印象から話していきたいと思うのですが、中村さんどうでしたか。
 N:わたしは4日間しかいなかったので、全体の印象というのは安易に言えないん
ですけど、見た限りでは前回よりも少し参加者が少ないのかなと。今年で11回目で
ある程度の知名度もあるし、その中で今後どんなふうに続くんだろうというのがち
ょっと心配、っていうのがあったかな。
 H:来場者数は最後に発表されて、正確な数字は把握していないんですけど、2万
人くらいで、それはそんなに減ってはいない。例年並かなという感じ。
前回が23387人で、その前が19963人。
 N:前回は多かった!って感じですよね。今回は作品が見られないということはほ
とんどなかったけど、前回は満員締め切りになる現象があって、ブーイングもあっ
た。今回は会場も変わって収容人数が増えたので、それで少なく見えたのかもしれ
ないですけどね。
 H:データ的なことでいえば、今回上映本数が119本で、前回は238本だったんで
すよ。
 N:だいぶ絞られているんですね。
 H:いや、前回は8ミリ映画特集の作品が100本くらいあって、科学映画も50本く
らいあったっていうのがあって。05年が145本なので、減ってはいるんだと思うん
ですけど、そんなにスカスカになっているわけではない。けれど全体の印象として
は、やっぱり何か盛り上がりに欠けるというか。
 N:正直、ちょっと小ぶりなイメージはありましたね。
 H:ありますね。全体の雰囲気ということだけではなくて、作品を見ても、やっ
ぱり小ぶりな印象というのはぬぐえない。プログラムや上映作品が発表されたとき
から、どれから見たらいいのかっていう、ちょっと散漫な印象を受けていたんです
けど、その印象が実際に来てみてもほとんど変わらなかった。
 N:たとえば前回だったらワン・ビンの新作の『鳳鳴―中国の記憶』(07)が開催前
からすごく話題になっていたり、面白いかどうか以前にそれがかかるということで
話題になる作品があって。前々回は『水没の前に』(リ・イーファン、イェン・ユ
イ/04)とか。
 H:『ルート181』(ミシェル・クレイフィ、エイアル・シヴァン/03)とか。
 N:そうですね。そういう流れが前回で一巡したのかもしれないという印象はあり
ます。
 H:ありますね。何かヤマガタに来たら3時間4時間の作品を期待するというか、
覚悟を決めて来るんですけど(笑)、そういう意味でも100分とか120分とか、あるい
は興行に適うような規格内での作品が目立っていて、そういう意味でまさに『鳳
鳴』のような、どう受け止めていいかわからないような、そういう作品がなかった
というのは印象に持っていますね。
 N:わたしはそれを否定的にだけ捉えているわけではなくて、そのとき出てくる作
品って出るべくして出てくるもので、その時点のドキュメンタリー映画の状況を表
しているとも思うんですけど、今回は「これが」というものがないから、逆に「ど
れを見るのか」がお客さんの感覚にかかっていて。みんなが詰めかけるという作品
はなかったと思うんで、視点が分散するというか。人によって気に入ったものが全
然違ったんじゃないですかね。
 H:そういう感じはしますね。ただプログラミングにも関わってくることかなと
思うんですけど、やっぱりコンペでアジア勢がほとんど姿を消したという事件が。
 N:事件かもしれないですね(笑)。これまで毎回コンペに中国の大型の映画が出て
いて、そういうお決まりになりかけていたのが、そう単純にはいかないということ
かもしれないですけど。審査員の方の意見を聞くと、やっぱりワン・ビンの映画が
賞を取ったことでそれに似せたというか、そういうやり方で撮ればいいのかなって
いう中国の作品がすごく増えたらしいんですよ。それがマンネリ化、ステレオタイ
プっぽくなった結果、面白い作品がなかったという背景があるようです。
 H:何かやっぱりひとつの地域からひとつ突出したものが出ると、それを真似た
亜流がどんどん出てきて、結局その地域の作品全体がつまらなくなっていくってい
うのはぼくもカンヌ映画祭のプログラマーの方の話から聞いたことがあります。で
すから、ワンサイクルを閉じた過渡期にいまあるのかな、という印象も持てるもの
かもしれませんね。ワン・ビン自身も前作の『鉄西区』(03)から大きくスタイルを
変えてきたわけで、ひょっとしたらいま「インタビュー」という、ある意味シンプ
ルなドキュメンタリーの方法論へと回帰しようとする流れがあるのかもしれない。
これは中国の作家たちが独自に消化してきた、いわゆるワイズマン・スタイルのダ
イレクトシネマが否定してきた方法論でもあるわけです。ちなみに今回大賞を受け
た『包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠』(リシャール・ブルイエット/
カナダ/08)もインタビュー・ドキュメンタリー。半分しか見ていないのでめった
なことは言えませんが、けれどこれはあまり映画である必要性を感じなかった。

●評価の難しい「島/シマ」特集

 N:今回の特集は「島/シマ――漂流する映画たち」、「映画に(反)対して――
ギー・ドゥボール特集」、「明日へ向かって」。「やまがたと映画」は前回からで
すね。「島/シマ」特集は、今まであまり試みられなかったようなアプローチで特
集を組んでいる部分があって、それは新しいなと思いましたね。パフォーマンスと
かダンスといった領域のものを積極的に取り込んだりとか、「シマ」を感じさせる
ものであればオッケーっていう発想で。実験映画とかエッセイ的な映画の特集は今
までにもあったと思うんですけど、組み合わせがランダムで変わっていましたね。
 H:あれはけっこう意識的にそういうふうに組んでいるように感じましたね。同
じ作家のものをまとめて見せることもできたはずなのに。
 N:そうですよね。「島/シマ」特集の中で同じ作家の作品をわざと離して上映し
ていましたね。それはいままでのいわゆる作家特集とか、ジャンル的な特集にしな
いぞっていう意図は感じましたよね。
 H:たしかに新しかったですね。中村さんが肯定的なことを言って、ぼくばかり
否定的なことを言っているようで印象を悪くしたら困るんですけど(笑)、ただぼく
はやはり特集としては難しかったんじゃないかなと思うんです。2003年の沖縄特集
から派生した企画ですけど、仲里効さんがコーディネートされて質・量ともに圧巻
だった沖縄特集の骨太さに比べれば、どうしても散漫な印象があるわけです。もち
ろん企画意図じたいに、どこかに中心を持たせないでまさに「シマ」としてプログ
ラムしようというのがあったのはわかるんですけど、そもそも「特集上映」という
こと自体に何らかの中心を要請するものがあるわけですから。テレサ・ハッキョン
・チャ――韓国出身のアメリカで活動していた実験映画作家、現代美術作家――
の作品とか、フランスのジャン=ダニエル・ポレの作品(『秩序』/フランス/74)
とか、すごく貴重だったと思うんですけど、やっぱり埋もれてしまった感じがして、
もったいなかったんじゃないかなと。
 N:たしかにそれをまとめて作家特集にした場合に出ただろうインパクトというの
は出なかったですが、ねらいなんだと思いますね。
 H:ええ、だから難しいなと。作品としては高嶺剛監督の新作で『パペット・
シャーマン・スター』(日本/08)。あれはめちゃくちゃ面白かった(笑)。ドゥボー
ルは行かれました?
 N:わたしね、ドゥボール行かなかったんですよ。ごめんなさい(笑)。どうでした
か。
 H:3プログラムあるうちの2つに駆けつけたんですけど、非常に面白かったです
ね。8年越しの企画だということで気合が入っていたわけですけど、ただプログラ
ムが発表されたときにカメラマンの加藤孝信さんやそのほかの方々がブログなどで
しきりに言われていたように、「土本(典昭)さんとか佐藤真さんの特集上映をさし
おいて『ドゥボール』というのはいかがなものか」という感じはやっぱりしないで
もないというのがまずあるんです。
 N:作品は面白かったけれども。
 H:ええ。あとでふれる「山猫争議」の発端にもなるわけですけど、やっぱり土
本さん佐藤さんの特集はヤマガタこそが何より組むべきだった特集だったとぼくも
思うんです。日本では土本さんにせよ佐藤さんにせよ別の機会に追悼上映がされて
いたわけですけど、海外の方はやっぱり見たかったんじゃないか、あるいは日本が
誇るべき映画作家としてあらためて紹介していくべきだったんじゃないか、と思う
んですよね。
 N:その視点を考えるとやっぱり何でやらなかったのかと思いますね。海外の作家
さんで今回来日している人とかが見る機会にもなった。
 H:そう思うんですよね。あえてドゥボールに引きつけると、ドゥボールと土本
さんってほとんど同世代なんですよね。ドゥボールが31年生れで、土本さんが28年。
ともに60年代後半から70年代にかけて、――土本さんはそれ以降もですけど、映画
を通じて闘争していた。だからあるいは両方プログラムとしてあったら、それはそ
れで面白かったんじゃないかとも思ったりして。ドゥボールの場合は、映画を通じ
て映画に対して闘争を仕掛けるわけですけど。面白かったのは『サドのための絶叫
』(フランス/52)といういちばん最初の作品があって、白の画面にナレーションと、
あとは音声も映像もない黒の画面とが交互に続くという映画で。
 N:なんか最後は黒味になってずっと続くらしいですね。
 H:そうなんですよ。あれだけがビデオ上映だったのがすごく残念だったんです
けど。ドゥボールはナレーションで、「映画は死んだ。お好みならば議論へと移ろ
う」という決定的なコメントを行なうんですが、黒画面が最後24分続く中で、まさ
にそこで怒号やそれをなだめる声が出たり――これはあとから知ったことなんです
けど、その怒号なんかはコーディネイターの木下誠さんがぜんぶ仕掛けたことだっ
た(笑)――そこでドゥボールはまさに「状況」を映画体験の中に作ろうとした。
あれは稀有な映画体験でしたね。

●「ニュー・ドックス・ジャパン」の新しさ

 H:「ニュー・ドックス・ジャパン」も例年とはちょっと違う印象を持ちました
ね。外国人監督で日本を舞台にしたものなんかも入っていて、『日々の呟き』(ジ
ル・シオネ、マリー=フランシーヌ・ル・ジャリュ/フランス/09)は制作もフラ
ンス。そういう意味では「日本映画」というものの範囲に再考を迫るものがありま
すね。単に日本の監督が日本で撮ったものだけが「日本映画」なのではないという。
 N:いままで日本の若手監督とか、注目監督の映画が「ニュー・ドックス・ジャパ
ン」だと思っていた。わたしは今回みたいなかたちがいいなと。
 H:今回みたいなかたちというのは?
 N:たとえば、それをいちばん感じたのは大西健児さんの8ミリ映画(『尺景』日本
/08)が入っているんですけど、前回前々回わたしが見ていた「ニュー・ドックス
・ジャパン」のイメージでは入ってこないタイプの映画だったと思うんです。
 H:前回は『選挙』(想田和弘/06)や『蟻の兵隊』(池谷薫/05)なんかが入って
いましたね。わりと劇場ですでに公開されたか、その後公開されるような作品がピ
ックアップされていたような印象はありましたね。
 N:本当かは知りませんが、「アジア千波万波」に応募して、そこに入らなかった
んだけど面白い作品が「ニュー・ドックス」で上映されるっていう話も聞いたこと
があって。でも今回はプログラマーの馬渕(愛)さんが自分で、何をやったら日本が
見えてくるかっていうことで探して来られたんだと思うんですね。だからその色が
出ているなあって思いましたね。友達と彼女が出てくるかなり個人的なアプローチ
の『蜘蛛と羽虫の記憶』(大森宏樹/日本/08)があったり、伝統芸能を記録した
『究竟の地――岩崎鬼剣舞の一年』(三宅流/日本/08)があったり、かなり幅が広
いのがわたしは面白いなと。今までのヤマガタで、日本の作り手の人たちと話して
いると、日本ではいろんなタイプのドキュメンタリーと言える作品を作っているの
に、そういう作品が無視されている気がするっていう意見を聞くことがけっこうあ
ったんですよ。
 H:コンペにも入っていない。
 N:そうですね。もともとコンペには日本の作品がなかなか入らないということは
言われていると思うんですけど。松江(哲明)さんなんかはけっこう例外的に、ど
んなタイプの作品をつくっても比較的山形で上映される機会を得られていると思う
んですが、日本では松江さんみたいな身近なアプローチで映画を作っている人が他
にもたくさんいるわりに、「ニュー・ドックス」がそれら全体から集められている
とは今まで思えなかったんですけど、今回けっこう視野が広がったのかなと思いま
した。

●「やまがたと映画」の盛況

 H:あと「やまがたと映画」も面白いんですよ、すごく。
 N:面白かったみたいですね!
 H:ナトコ映画ももっと見ておけばよかったって思うんですけど。
 N:友人でハマっちゃって毎朝見に行っている人がいましたよ。
 H:いや、本当にそうなんですよ。めちゃくちゃ面白いんですよ。
 N:わたし大学の時にナトコ映画に近い年代の映画をけっこう好きで見ていた方な
んで、そういう作品が人気だと勝手にうれしいです。どうなんでしょうね、ドキュ
メンタリー映画祭で世界の新作のドキュメンタリーがいくつもやっている中で、こ
のナトコ映画ってどういう印象で受け入れられるのかなあって。
 H:海外の人の感覚はわからないですけど、ぼく自身は、インディペンデントの
作家の作品なんかをわーっと見ているなかで、ナトコ映画なんかにふらっといくと、
目的も非常に明確で、啓蒙映画として作られた中に、たしかな映画技術が凝縮され
ている。これにははっとさせられました。単にこれを一時期の時代の産物として見
るのではなくて、一本の映画として捉え返したときにやっぱり全然違う映画作りが
そこにはあって。『大地の子』(58)という映画があって、北海道の開拓の理想を描
いたフィルムなんですけど、もう西部劇みたいな映画なんですよ。トラクターのキ
ャタピラをクロースアップで撮ったりとかもあって(笑)。もっと見ておけばよかっ
た。
 N:日本のドキュメンタリー映画の流れってどんどんさかのぼっていくと、一部こ
ういう文化映画、教育映画にたどり着きますよね。そういう視点で見たらつながっ
てきますよね。どんな人がどういう関心で見ていたのか取材すればよかったです。
人は入ってました?
 H:お客さんは入ってましたよ。「やまがたと映画」は今回かなり好評のようで、
今度の映画祭で一番の傑作は『サンダ対ガイラ』(本多猪四郎/66)だっていう人も
少なからずいましたし(笑)。かわなかさんの『新宿伝説――渚ようこ☆新宿コマ劇
場ゲバゲバリサイタル』(かわなかのぶひろ/09)ももう劇場の記録を塗り替えるく
らい入ったって。ぼくは行けなかったんですけど。
 N:途中で行った人はもう入れなかったって。渚ようこさんがいらしたんですよね。
そういう意味ではソラリスは会場が離れていたけど、やった作品は充実していた。
 H:そうですね。あまり劇場が大きくないというのもありますけどね。会場の話
にもなっていきますけど、やっぱりソラリスは場所的にきついなあと思って(笑)。
ミューズがなくなったというのがすごく今回つらくて、ソラリスというと駅の向こ
うにあるので、アズから20分くらいかかる。20分だったらそのうちに短編が一本見
れてしまう。映画祭って小さい範囲で、見れる時間に見れる作品を見て、見ようと
思っていなかったものがけっこう面白かったりとか。
 N:ありますよね。時間が空いているから見た作品とか。
 H:お客さんを分断してなければいいな、と思うんですけどね。ソラリスばかり
行く人と、「ソラリスは遠いからいいや」って切っちゃう人とに。これだけ面白い
映画をやってるのに、コンペとかアジアだけでいいやってことになっちゃうと。
 N:告白すると、わたしはソラリスはいいやって思っちゃった方です。遠い、行け
ない…って。
 H:やっぱりそういう人いると思うんですよ、もったいないですよね。コンペと
ナトコ映画と一緒に見られるから面白いっていうこともあるのにね。
 N:自分でももったいなかったです。ミューズは劇場自体がなくなっちゃいました
ね。「さよならミューズ」に行けなくて、すごく残念だったんですけど。
 H:ぼくは第2部にちらっと行きましたけど、ショックだったのは座席がもうなく
なっちゃっているという。がらんとした部屋に、プロジェクターとスクリーン置い
て昔の写真なんかを流して、っていう。第1部では踊り狂っていたらしいんですけ
ど。
 N:ぜひぜひ参加したかったですねぇ。ミューズのことで言えば、映画館自体が閉
館っていうのは、やっぱり山形での映画需要ということを考えると深刻なのかな、
と思います。あそこは普段はミニシアターだったんですよね。東京のミニシアター
でやった映画をかけていたと思うので、それが廃館になるくらい需要がない、2年
に一回映画の都となる山形市でそうだというのは、やはりこのままだと駄目なんじ
ゃないか、とわたし以外の人も思ったと思うんですけど。
 H:フォーラムやソラリスは後発のシネコンですもんね。
 N:うん、シネコンの中でミニシアターをやるからもっている、ということですよ
ね。

●山猫争議――培われてきた観客の力

 H:イベントでいえば、やっぱり「山猫争議」については語っておかないといけ
ないんじゃないでしょうか。
 N:山猫争議、行きますか!山猫争議は…めちゃめちゃ面白かったですよね。もし
作品とイベントを同列にして、もっとも印象に残ったものはと言ったら、山猫争議
かもしれないですね。
 H:「これはチラシじゃなくてビラだ!」と言われていたのが印象的だったんで
すが、まさにアジビラと言っていいと思うんですけど。裏面からしてすごかったで
すし。蓮實重彦さんと四方田犬彦さんの文章が並んでいるという。しかも両者の言
っていることが真っ向から違う!
 N:チラシ自体が豪華だったですよね。1日2時間のイベントのために、劇場用映画
と同じようなチラシがつくられて、それが鈴木一誌さんのノーギャラによるデザイ
ンで!「価値が高まるから捨てないように」って言われていますが。もうそこから
して異様で、ちょっとした企画じゃないなってことはわかる内容でしたよね。
 H:もう香味庵の奥にずらっと並んだのが……。
 N:登場したのが山根貞夫さん、上野昂志さん、鈴木一誌さん、で諏訪敦彦さんが
来て、石坂健治さん、中村秀之さん、そして藤井仁子さんが司会というそうそうた
るメンバーで。
 H:でその前にアテネの松本(正道)さんが観客として座っているという。一生な
いですよね(笑)。
 N:そういうコアな顔ぶれで、それでいてかなり幅広い方が聞きに来ていましたよ
ね。いかにも詳しい、見かけたことのあるような人以外の方もすごく沢山来ていて。
 H:若い人が多かったですよね。
 N:多かったですね。誰か先生が教えたのかもしれないですけど、自主企画とは思
えないほど、いろいろな人が聞きつけて来ていて。学生さんが目立っていましたよ
ね。わたしはこのイベントで、自主企画だからできる自由さと、そのエネルギーを
すごく感じました。そもそもは土本さんの特集がないことへの疑問から始まってい
るんですけど、それを文句言って終わらせるだけじゃない動きがあったということ
がカッコイイし、じゃあ自分たちでやろうって言ってあそこまで本格的にまじめに
やって、それでいて実は映画祭の暗黙の了解を得ているという点も意味があった。
これを通して、やっぱり山形映画祭面白いな、と思えましたね。最初ちょっとさび
しいかな大丈夫かなって思った反面、こういう企画をする人がいて、登場して話そ
うっていう人があれだけいて、それを実現できる場があって、しかもこれだけの人
が集まって……そういう磁場がやっぱり山形映画祭にあるっていうことだとあらた
めて思いました。
 H:かえって東京では絶対集まらないですよね。
 N:そうかもしれません。ヤマガタに対するまじめな熱意というものを感じられた
のが、やっぱりうれしかったですね。
 H:こういう「山猫」的なものが、メインプログラムに対する一つの批評的な機
能を担うようになっいけば、映画祭全体を活性化させるものになると思いますね。
 N:それは可能性として期待したいですよね。
 H:「山猫争議」だけじゃなく、「山猫上映」とか、そういう自主企画もあれば。
猫がいっぱい(笑)。
 N:映画祭はやっぱり続ければ続けるほどどうしても、これは想像ですけど、企画
の内側にいる方っていうのは、自分たち自身で限界に当たってしまうというか、マ
ンネリになってしまうことがあると思うんです。その時かわりに期待できるものは、
その間に培われた観客の力なんじゃないか、と。その観客の側が何か問題を投げか
けたりすることで活性化できる、という一つのすごい勢いのある例でしたよね。壇
上に上がってないから話せるような話し方で、かなりざっくばらんに話したり。
 H:ギャラリーからの介入があったり。
 N:そう、批判が入って、それに対して出席者がまじめに応える、ということがあ
ったり。それは一つの観客の意識の高さの表れだな、と思いました。それから、観
客のことで言えばこの「山猫」だけじゃなく、各会場での質疑応答が今年は活発だ
なと感じたんです。たとえば、「島/シマ」で『私の存在しているところ――そし
てtouch me』(比嘉千秋/04)と『島影』(丸谷肇/07)を上映した後に、中年の男性
が手を挙げて「私ははじめてドキュメンタリー映画祭というものに参加したんです
が、今やった映画は……ドキュメンタリーなのでしょうか?」という質問をされて。
この方は、社会的な要素の入った内容がドキュメンタリー映画だとイメージしてい
て、前述の2作品を見て混乱したみたいなんですが、それを質問するという姿勢は
映画祭にとって有意義だなあと。他にも、アジア千波万波の『ここにいることの記
憶』(川部良太/07)では、「ここで上映すべき作品ではない」とかなり率直に厳し
い批判をする方がいて、それに対してまた別のお客さんが反論するという緊張感の
ある一幕にも遭遇しました。それだけ観客の間で、何をドキュメンタリーと呼ぶの
かということを考えている人が多くて、それを大勢の場で話そうという雰囲気もあ
るようで、それは価値のあることだと思いました。

●会場運営のあれこれ

 H:運営の話もしておきたいと思います。
 N:一つ、はじめて映画祭に来た友人から新鮮な意見としてわたしが聞いたのは、
香味庵についての印象です。映画祭の人が集まる場所だと聞いて行ってみたけど、
あまりにも人が多くて、結局誰ともゆっくり話せない。その人の目には、山形を訪
ねてきた人たちを香味庵だけが無理に独占しているように見えたそうです。その意
見を聞いて、ちょっと考えたんですよ。もともと香味庵って、周りに遅くまで開い
ているお店がなかったから作った場所だろうということと、あと大事なのは監督と
かとも会えることですよね。映画祭の出会いの場として設置されたはずなんだけど、
今回のように規模が大きくなっていると、ただの混んでいる飲み屋になってしまっ
て、香味庵の良さを感じられなくなっているのかもしれない。映画祭と交流の場を
どうするかという意味では、昔と規模が違ってきた時に考えなおす余地があるのか
な、と。来る人は増えているのにシステムがそのままで、満足できるものではない
としたら課題ですよね。
 H:でもいくつか設置して分散しちゃうと、そもそもの目的がなくなっちゃうの
で難しいところだと思うんですけど。たしかに混んでていづらいというのもあるん
ですけどね。
 N:それから別の面では、全体的に人手が不足しているんだろうなという印象もあ
りました。ボランティアは多いと思ったんですが、核になるスタッフが。今回アジ
ア千波万波では、プログラマーが不在のまま通訳さんが司会をする場合もあったん
ですね。そのことで誰が仕切っているのかよくわからない雰囲気になっていたりし
て。
 H:これまでは藤岡(朝子)さんが現場でも中心になって、観客と映画とをつなぐ
接点の役割を担っていたということが今回あらためてわかりますね。
 N:ただ今回藤岡さんはディレクターという立場になっておられるので、より全体
を統括しているのかなという勝手な想像はあったんですけど。「明日へ向かって」
は藤岡さんのプログラムで、あと「J-pitchセミナー」と「撮影とドキュメンタ
リー」は藤岡さんが司会をされていたようですね。どちらかというと日本と海外の
関係、海外の作品や作家をどう紹介するかという領域を藤岡さん自身が役割として
いらしたのかもしれません。
 H:そういう意味では今回、組織が一新したというのが表れていましたよね、プ
ログラムにしても実務面にしても。
(つづく)


■萩野 亮(はぎの・りょう)
立教大学大学院現代心理学研究科修士課程在籍。映像身体学、映画批評。学生であ
ることをいいことに、今年のヤマガタも一週間まるまる満喫。6日目にからだの節
々が痛いのに気づいて、年齢を感じてみる。みなさん、山形では本当にお世話にな
りました。後編にもどうかおつきあいください。

■中村 のり子(なかむら・のりこ)
明治学院大学芸術学科卒、イメージフォーラム映像研究所卒。今はただ映画に目が
ない会社員です。
ヤマガタでは休日気分が抜けず、スローペースで見ていて後から反省しました。そ
れはさておき、場外シネマという自主上映企画を始めます!詳細は「広場」コー
ナーをご覧ください。ご参加をお待ちしています!



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃03┃□neoneo坐 11月後半の上映プログラム
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩1
分。JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。詳細と地図はneoneo坐のHPをご覧下さ
い。
  http://www.neoneoza.com/ 

■「知られざる短篇映画を見てみる」上映会
「短篇調査団」

16mm上映 会費500円(作品資料付き/映画は鑑賞無料)
追加情報はblog版短篇調査団へ

美味おもてなし5本立(計110分)
(93)和食の巻…2009年11月25日(水) 20:00~ 
『二千年の味 ―日本の食文化―』 
1983年/23分/カラー
制作:東映教育映画部/企画:全国米穀協会/プロデューサー:布村建
脚本・監督:菅孝行/撮影:保川俊夫
■米食をベースに、多彩で味覚に富んだ伝統的な食文化のルーツと現状を文化史的
に見ながら、「日本型食生活」の良さを描く。

『うま味の世界』
1985年/21分/カラー
制作:電通+東京コマーシャルフィルム+日本産業映画センター
企画:日本うま味調味料協会/プロデューサー:畠中好信・斉藤拓
脚本・監督:飯塚増一/撮影:田中美憲
■味覚には甘酸鹹苦があるが、だしに含まれる「うま味」も基本味の一つとして国
際的に確立されている。その独自性と働きを様々な実験を通じて紹介。

『おせち料理は語る』
1982年/15分/カラー
制作:東京都映画協会
■食生活の多様化は、母から子へ伝える家々の伝統を失わせつつある。墨田区のお
せち講習会などから、おせち料理が家庭にとってどんな意味を持っていたのか考え
る。

『懐石料理 ―その心と作法―』
1976年/22分/カラー
制作:岩波映画製作所/企画:キッコーマン/プロデューサー:堀谷昭
脚本・監督:重森具崙/撮影:八木義順
■懐石料理の席にカメラを持ち込み、下ごしらえ、向付、香の物などを順に解説。
洗練された料理の数々は日常の食生活にも発見をもたらす。

『舶来の日本料理 ―食文化の翻訳術―』
1996年/29分/カラー
制作:岩波映画製作所/企画:キッコーマン/プロデューサー:菅澄子
脚本・監督:山崎博紹/撮影:奥村祐治
■米、味噌、豆腐など外来の食材や食文化を巧みに翻訳して、独自の食文化を作っ
てきた日本人。食べ物に対する繊細さや考え方、料理への知恵を描く。

【料金】会費500円(作品資料付き/映画は鑑賞無料) 
【お問合せ】清水 E-mail:shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp



   ※135-2号へ



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