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映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

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2009/09/15

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 131号 2009.9.15

 
 
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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    131号  2009.9.15


∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽


 †01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
       サンフランシスコで映画を学ぶ (2)  黒川 通子
 †02 ■ワールドワイドNOW ≪サンパウロ発≫
       ブラジルの「甘い生活」  岡村 淳
 †03 ■列島通信 ≪埼玉発≫
       『ふたつの「ラブ」』  村上 賢司
 †04 ■広場
     ■第1回神戸ドキュメンタリー映画祭
        《社会福祉への眼差し》 柳澤壽男監督特集上映
         9/19(土)~23(水・祝)、26(土)・27(日)
     ■「自作を語る」などの原稿募集!
     ■上映の告知の有料化とカンパのお願い
 †05 ■編集後記 伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで
     まぐまぐ配信   http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/ 
     melma!配信   http://www.melma.com/backnumber_98339/ 



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┃01┃□ドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■サンフランシスコで映画を学ぶ (2)
┃ ┃■黒川 通子
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●入学前のゴタゴタ

めでたく留学にこぎつけましたが、その道のりはスッタモンダの連続でした。詳細
は割愛いたしますが、出願準備に協力してくださった日本の知人友人先生方にこの
場をお借りして再度お礼を申し上げます。彼らからは映画学校に関する情報提供だ
けでなく、出願書類のチェックや、出願後の大学事務局とのやり取りに関する助言
など、あらゆる面でとてもお世話になりました。短期間で素敵な推薦状を書いてく
ださったお三方にも本当に感謝しております。またサンフランシスコ州立大学から
の合格通知が少し(かなり)遅かったので、私は今年は落ちたものと諦め、次の出
願準備まで数ヶ月の仕事に就いていました。それを中途で辞めてご迷惑をかけたに
も関わらず、祝福して送ってくださった皆様に改めてお詫びと感謝を申し上げます。

ところで合格したは良いのですがすぐに仕事を辞めるわけにもいかず、結局、1週間
遅れで入学しました。授業は始まっているのに授業登録もしていなければ住む家さ
え無いという有様です。「大学側の都合で遅れてスタートするんだから、面倒みて
くれるだろう」と思ったら大間違い、メールでやり取りしても埒があかず、行けば
なんとかなるだろうと行ってみれば、あてにしていた大学院のアドバイザーは休暇
中で街におらず、留学生の面倒を見てくれるはずの担当者はいつも不在です。私の
姉が米国留学した時は大学スタッフが空港まで迎えに来たらしいのでえらい違いで
す。学費が格安の州立大学に入学したのだから仕方がないかとあきらめ、とりあえ
ずはホテルにチェックインしました(後から分かったことですが、アドバイザーは
生徒がパートタイムで務めているにすぎずメールチェックも週一度しかしないので
した。また入学手続き、学費支払い、家探しなど窓口が分かれ、自分でそれぞれ交
渉するのだと行ってから知りました)。

そんな時に力になってくれたのが、日本の知人に紹介してもらった日系アメリカ人2
世の男性でした。彼は日本語・英語とも流暢に操り、日本の大学を卒業しているの
で日米双方の事情に通じており、渡米したての私の質問に何でも分かり易く答えて
くれました。「サンフランシスコで家探すならクレイグス・リスト(craigslist)だ
よ」と言われてチェックしてみたのは、家、仕事、中古品探しから、出会い系まで
を網羅する巨大サイトでした。おっかなびっくり膨大な投稿記録をチェックして訪
ねた家の1軒に日本人の女の子が住んでおり、彼女の助言で大家さんが私の入居を最
優先してくれました。古い家でありますが、学校に近く近所に食料品店があり治安
も良いという場所です。付近はサンフランシスコで3番目に大きいと言われる中国人
コミュニティで(私の大家さんも中国人)、路上で聞こえるのは主に中国語なので
英語の勉強にはなりませんが、安い店が多いのは助かります。サンフランシスコは
アジア系が多い上、住まいが中国人コミュニティなので自分がマイノリティである
という気が全くしません。人口比はうちの近所では半分はアジア人です。学校に行
くと「2:3:1:4」で「アジア系:ヒスパニック:アフリカ系:白人」ぐらいでし
ょうか。街全体では、中国人、日本人、ヒスパニック、アフリカ系、イタリア系な
どがそれぞれコミュニティを作っているので感覚的によく分かりませんが、ウィキ
ペディアでは2007年の人口調査で白人45%、アジア系33.1%、ヒスパニック14%、アフ
リカ系7.3%(2009年8月21日アクセス時)だそうです。
私にはもっとヒスパニックが多いように思えます。

●授業開始

家は見つかりましたが授業はすでに始まっているのでおちおちしていられません。
クラスメイトの1人が親身になって助けてくれ、教科書購入や諸々の雑用につきあっ
てくれました。肝心の授業は、遅れを心配したのが無意味に思えるほど全然ついて
行けません。最初は教授の話す英語は音楽と一緒で、私の耳の側を流れて行くだけ
でした。たまに聞き取った単語をノートに書きつけると、横で見ていたクラスメイ
トにスペルを直されるという有様です。ただ映画史を学んだバックボーンがあるの
で、何となく理解できる部分もあり助けになりました。
私のクラスは全部で14人、その中で留学生は、日本人、台湾人、ポルトガル人の3人
です。ポルトガルの女の子Joana(ジョアナ)は日本語を習ったことがあり最初から
私に親しみを感じてくれたようです。台湾の女の子Chia-Li(チアリー)も英語で苦
しんだようですが、最初から私よりかなり話せ、ひょうきんな性格が好かれてます。
またギリシャ人の男の子Nico(ニコ)はニューヨーク生まれなのでアメリカ国籍も
持っていて、英語はネイティブレベルです。日本映画が大好きで、仲代達矢特集を
見たことを嬉しそうに話してくれました。あとの10人はアメリカ人ですが、ユダヤ
系、イタリア系、ヒスパニックを含み、彩り豊かな感じです(彼らの詳細は今後の
カリキュラム紹介の中で書かせていただきます)。サンフランシスコという土地柄、
ゲイが多いのかしらと思っていましたが、うちのクラスでは2人だけでした。女:男
は8:6で、男性陣にはすでに結婚して子どもがいる人もいます。我がクラスの平均
年齢は大学院にしては若く、20代から30代前半のクラスメイトがほとんどです。私
は一応最年長なのですが、若く見られるのと英語が話せないので最初はすっかり赤
ん坊扱いでした。

映画学科大学院の制作では1年から3年まであわせて日本人は私だけです。制作では
なく映画学だったり、院ではなく4年制の制作だと何人か日本人はいますが、これま
で日本人と同じクラスで授業を受けたことはありません。しかしサンフランシスコ
全体で日本人は多いです。学生、仕事で赴任している人、日系アメリカ人がバラバ
ラに住んでいます。日系人については私のドキュメンタリーに関わりがあるので改
めて書かせていただきます。
日本人が多いだけではなく、街の人々が日本人に好意的なことにも驚きました。映
画学科大学院の生徒数人は日本語学習経験があり、日本映画ファンも少なくありま
せん。私の周りでは小津安二郎ファンが目立ちます。フジフィルムのファンも多い
のですが、学生向けのサービスが充実するコダックと違い、フジは学生の存在は重
視していないようです。こちらの学生は16mmフィルムをよく使うし、セミプロの学
生も多いので戦略的に間違っていると思うのですが。また学校だけでなく近所の食
料品店や図書館にも、大学で日本語を勉強した人、妹が日本人と結婚して四国に住
んでいるという人、創価学会インターナショナルのメンバーだという人などがゴロ
ゴロいます。日本人は綺麗好きで礼儀正しいというイメージが定着していて、部屋
探しでは有利だし信用され易いようです。人々は移民に慣れているのか(自分も移
民だからか)、下手な英語で話しかけても驚いたり無視したりせず、我慢強く聞い
てくれ、ゆっくり話してくれます。サンフランシスコに限ったことではないのかも
しれませんが、どんな時でも笑顔で対応するのも感じが良いです。例えば混雑した
バスの中でちょっと肩がぶつかっても、にっこり笑って謝るのが当たり前です。こ
の街に定住する日本人にその話をしたら、いろいろな人種がいるから争いをなるべ
く避けるために気を配るのだと言っていました。
気候は安定して一年中秋のようなものだし、私にとってはとにかく住み易い場所で
す。
住み始めて1年なので良い点しか見えないのかもしれませんが、少なくとも今後この
街を嫌いになることは無いと思います。

さてカリキュラムの話題に移ります。映画学科大学院のプログラムは3年間あり、ご
く大雑把に言うと、1年時に5分の作品を作りながら映画制作のいろはを学び、2年時
に卒業制作の準備をし、3年時に実際の卒業制作にかかるという構成になっています。
1年時の必修クラスは4つ、「Production Practice (プロダクション・プラクティ
ス)」の1と2、そして「Creative Process(クリエイティブ・プロセス)」で実技を
学び、「Non Narrative Film(ノン・ナラティブ・フィルム)」というクラスで理論
を学びました。
1年生のプロジェクトとして作る5分の映画はフィルムで撮ることを奨励されている
ので、授業は16mmフィルムで撮影した素材をテレシネし、ノンリニア編集すること
を前提としています。「プロダクション・プラクティス1」では、16mmフィルム・カ
メラや露出計の使い方、ライティング効果、フィルムの特性、グループ制作での役
割分担など、実際の撮影に関わることを機材に触れながら学びました。一方、「プ
ロダクション・プラクティス2」では、16mmフィルムの編集、 ファイナル・カッ
ト・プロを使って音の編集、テレシネした映像素材の取り込みと編集、音と映像の
シンクロ方法などのポスト・プロダクション作業を学びました。「クリエイティ
ブ・プロセス」では企画から脚本推敲を議論しつつ行い、予算作成、スケジュール
のたて方など実務面を学びました。
理論の「ノン・ナラティブ・フィルム」では、Romance and the “Yellow Peril”
(直訳すると「ロマンスと”黄禍”」)というアジア人には特に興味深い本などを
読み、主に映画を見て議論をしました。
1年目はとにかく大変でした。登録する授業は4つにすぎないのですが、実技の3クラ
スは朝9時からお昼をはさんで夕方4時や5時まであるのです。だいたい午前中に講義、
午後にワークショップやディスカッション、上映という構成でした。そしてそれぞ
れのクラスで課題が出ます。1週間に2つ3つ作品制作やペーパーの課題を抱えるのが
普通だったので、英語がわからない私のみならずクラスメイトは皆な過酷なスケジ
ュールに追い立てられていました。しかしおかげで連体感が生まれたような気がし
ますし、グループ制作が多いので友達ができず孤独感を味わうということもありま
せんでした。

かなり大雑把なカリキュラム紹介でしたが、 次回以降、詳しくご紹介いたします。


■黒川 通子(くろかわ・みちこ)
1971年生まれ。明治学院大学芸術学科で映画理論を学ぶかたわら、イメージフォー
ラム付属映像研究所17期卒業。1996-2007年、財団法人多摩市文化振興財団で映画事
業の企画運営を担当。財団法人日本映像国際振興協会に短期務めた後、2008年より
サンフランシスコ州立大学映画学科大学院生として映画制作を勉強中。
≪近況≫何とか2年生になりました。学校は予算削減のためにてんやわんやで落ち着
きません。学費が値上がりしたので安い部屋に引っ越しましたが、以前の部屋より
も快適で満足しています。



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┃02┃□ワールドワイドNOW ≪サンパウロ発≫
┃ ┃■ブラジルの「甘い生活」
┃ ┃■岡村 淳
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先回、ブラジルからご報告したコウチーニョ監督の『MOSCOW』と並んで、今年のブ
ラジルのドキュメンタリー映画で話題となり、劇場で長期間にわたって公開された
『GARAPA』(2008年 110分)をご紹介しよう。
監督はジョゼ・パジーリャ(Jos? Padilha)、日本でも公開されたドキュメンタ
リー『バス174』(2002年)でデビューして、次に挑んだ劇映画『Elite Squad(エ
リート部隊)』(2007年)はベルリン国際映画祭の金熊賞に輝いている。この二作
はリオデジャネイロのスラム地帯を舞台としているが、パジーリャは新たにブラジ
ルの最貧地帯、北東部のセアラ州の貧困と飢餓にドキュメンタリーの手法で立ち向
かった。
タイトルの『ガラッパ』の語は、ふつうブラジルではサトウキビを搾ったジュース
の意で使われる。
イタリアの蒸留酒グラッパと同源の言葉かと思って調べてみたが、まるで別物のよ
うだ。ブラジルのガラッパは西アフリカ起源か先住民のツピーグァラニー語に由来
するらしい。そして作品の舞台のセアラ州の乾燥地帯では、水に砂糖を溶いた砂糖
水がガラッパと呼ばれ、栄養失調の乳幼児たちに親が与える貴重な栄養源なのだ。
いまやインディオ居住区にも忍び寄るコカコーラも、日本でも知られるようになっ
ているブラジルの国民的清涼飲料グァラナも無縁な極貧の世界だ。
ブラジルの歴史と現状を語る商品作物としては、コーヒーよりサトウキビの方がは
るかにふさわしい。ちなみに近年ではブラジルのコーヒー生産量は世界の3分の1足
らずだが、サトウキビ生産量は全世界の4割近くを占めている。西暦1500年に新天地
ブラジルを「発見」したヨーロッパ人たちは、16世紀のうちにブラジルをサトウキ
ビの大生産地とするべく開発を進める。先住民インディオはプランテーションでの
労働に適さないため、アフリカから大量の奴隷が移入されることになる。栽培と加
工に広大な土地を必要とするサトウキビ栽培は大土地所有制を促進して、その弊害
は今日まで波及している。19世紀以降のコーヒー栽培熱が収まると、かつてのコー
ヒー園は新たにサトウキビのプランテーションに塗り替えられていった。近年のバ
イオ燃料ブームから新たにブラジルのサトウキビは、多国籍企業や世界の為政者た
ちの注目を浴びることになる。日本からも小泉元首相や閣僚たちがブラジルのエタ
ノール生産の視察に訪れているが、世界最大のサトウキビ生産に伴なう農場の日雇
い労働者たちの突然死・過労死や収穫後のサトウキビ畑焼却による公害など、エコ
ロジーとは正反対の社会問題は、「期待されるブラジル像」のみの消費を求める日
本ではあまりにも知られていない。
作品は、セアラ州の農村の二家族、そして都市近郊の一家族の日常に寄り添う。
「極めてシンプルなドキュメンタリーを心がけ、家族の情報以外のアレゴリーなど
は排した」とパジーリャは語っているが、ビデオの映像は白黒に色抜きされ、ナ
レーションも音楽も用いていない。それにより電気もガスもない貧困家庭の炊事の
音、乳児の傷口にたかるハエの群れの羽音などの現地音が、オーデイオ的にも「ビ
ジュアルに」現場を伝えてくれる。バイオ燃料の大生産国の、サトウキビ生産に痛
めつけられてきた奥地の家庭では、モータリゼーションとは無縁のままで水道も井
戸もなく、ロバを繰って乏しい水場まで水汲みに行かなければならない。乾燥地帯
の日照りのなか、わずかな水の奏でる音が、そのまま渇きを伝えてくる。
飢えた裸の体をもてあます子供たちと、ひたすら家事を続ける女たち。家庭内の男
の存在があまりに希薄だ。酔っぱらって寝ているか、他所の女にちょっかいを出し
ているか。それぞれの家庭の最大の収入は、労働党政権がもたらす生活保護だ。ガ
ラッパの原料となる砂糖も政府からの支給品だろう。
不思議に思えたのは、私がブラジルで実際に貧困家庭を訪れてきて、ふつうに目に
するカトリックの祭壇や聖像、あるいは福音派の宣伝グッズ、そして祈りの場面が
現れないことだ。狭い家屋のなかを自在にカメラは動いているので、パジーリャが
あえて外したとは思えない。祈りさえも疎遠になった極貧家庭。ブッダのいう「人
生、一切皆苦」の語を思い出す。
パジーリャはこの映画の興行収入をすべてセアラ州の社会改善プロジェクト、特に
作品に登場する三家族に捧げるという。その志の程には、ただ己を恥じるばかりで
ある。


■岡村 淳(おかむら・じゅん)
記録映像作家。在ブラジル。1958年、東京都出身。日本映像記録センターにて牛山
純一代表にドキュメンタリー作りを叩き込まれたのち、フリーとなり1987年、ブラ
ジルに移住。以降、小型ビデオカメラを用いて、ひとりで取材から仕上げまでを行
なう自主制作と自主上映活動を続けている。日本・ブラジルなど各地での上映予定
は「岡村淳のオフレコ日記」
  http://www.100nen.com.br/ja/okajun をご参照ください。



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┃03┃□列島通信 ≪埼玉発≫
┃ ┃■『ふたつの「ラブ」』
┃ ┃■村上 賢司
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いきなりですが、最新作、しかも二作品が連続で劇場公開されることになったので、
そのお話を。まず一作目が『ラブホテルコレクション・甘い記憶』。これは昭和の
時代に作られ、現在、新風営法等の規制により風前の灯の、回転ベットや総ガラス
張りなどの過激なインテリアな部屋があるラブホテルを14軒取材したもの。この企
画の話をすると、「ということは、その部屋に裸の女の子とか入れて撮影したわけ
~」と鼻の下を伸ばして聞いてくる方が多々いらっしゃるのですが、そんなことは
絶対にいたしません!人間を登場させると、その向こう側にある貴重なインテリア
がよく見えなくなるし、ベットの上にのせたりしたら、従業員の方がせっかくセッ
ティングしたシーツが乱れてしまうではないですか。ただただ、ものすごい「芸
術」が歓楽街に、または国道沿いにあることを多くの人に知らせたくて、この作品
を企画したわけですから、取材といっても撮影したのは、インテリアのみ。人間は
1コマも登場しないのです。蛇足なことは一切しないと企画立案の時に決めていまし
た。

今回いろいろとラブホテルを訪れて分かったことが、その仕事の大変さでした。ラ
ブホ業は部屋の回転をよくして、できるだけたくさんのカップルに利用してもらう
のが勝負。ですから従業員は、ただただ部屋の清掃の繰り返すことになるのです。
その合間にお客のオーダー(食事だけでなく、避妊具やコスプレ衣装などもあり)
に応えたりもして、彼らにはゆっくり座る暇はまずないのです。あるホテルの店長
に「もっと楽な仕事だと思ってました」と言ったら、「そう思わせて、お客さまに
気をつかわせないのがテクニック」と返され、思わず頭を垂らす場面もありました。
しかも、今回取材したホテルの部屋は過剰な装飾を施したところばかりですから、
通常以上に清掃、メンテナンスに時間がかかり、経営的な視点でいえば、無駄な部
分が多い。それでもそんな部屋を遺しているのは、経営者だけでなく、従業員も確
かな「意思」と「愛情」を持ってラブホテルという文化に向き合っているからで、
今回の企画にはみなさん喜んで賛同していただき、協力していただきました。時に
は厨房で一緒に賄い飯を食べたりして、「こりゃ、いつかドラマの脚本書きに使え
るな~」というネタもいくつか頂きました。普段、会えないような方々と出会える。
こうゆう仕事の醍醐味だな~と思っています。

さて二作目ですが『ラブドール・抱きしめたい!』という作品です。「ラブドー
ル」とはダッチワイフに超進化系。空気を入れるビニール製ではなく、全身が最先
端のシリコン素材で覆われ、見た目だけでなく触り心地も人間の皮膚に近いです。
造形にも凝り、特に顔の造りは、超一流の造型師が長時間、試行錯誤の末に完成さ
せているので、どのドールもため息がでるほど美しい。一体、80万円とかなり高価
ですが、今回の作品で協力していただいた業界ナンバーワン企業・オリエント工業
は多くの男性誌に広告を打ち、東京、大阪に3つのショールームを持っていることか
ら経営はかなり好調だと想像でき、ユーザーはかなり多いと思われます。
この企画の発端は『ラブホテルコレクション』に協力して頂いた、都築響一さん
(写真家・編集者)との雑談中にその話題になったこと。その場にいたプロデュー
サーと後日いろいろと調べてみると、とにかくその美しさが圧倒的で、映像化する
ことになったわけです。

では、どのように映像化すればよいのか?男性とのカラミがあると、どうしてもそ
の特異な行為に目がいってしまい、ドールそのものの美しさに注視できない。カタ
ログ的にどんどん紹介してもよかったのですが、単調になってしまう。最終的には
女性プロデューサーが描いた、現代的なものも含めた「日本的な風景」にドールた
ちをエスコートするという構成で9体をそれぞれ違ったシーンで撮影しました。

今回、キャメラマンの提案で、ほぼ全編をビデオキャメラではなく、EOS 5D Mark 
IIという一眼レフカメラで撮影しました。これによって、これまでビデオでは表現
しづらかった被写界深度の浅い画面作りが可能になり、また多用なレンズが使える
ことから、35ミリのフィルムカメラによる映像に近い感覚のものが獲得できました。
問題は動きのある対象を追うためにパンなどすると、動画の処理速度が遅いため、
画面が歪んでしまうこと。今回は微動だにしないドールを撮影するのが目的だった
ため、まったく問題はなかったのですが、ドラマで使うと役者の動きを限定させて
しまうかなと思いました。ただこれから進化することは確実ですから、撮影現場の
風景は一気に変わっていくでしょう(特に低予算の)。こういう機材を先取り的に
使用できるのも、唯一無二の
企画だからこそだと考えています。

☆『ラブホテルコレクション・甘い記憶』
  http://www.lovehotelcollection.com/ 
2009年9月26日(土)よりユーロスペース(東京・渋谷)でレイトロードショー。
2009年10月7日(土)より第七芸術劇場で公開。また10月以降、名古屋シネマテーク、
シネマテークたかさき、京都シネマ他で随時公開予定

☆『ラブドール・抱きしめたい!』
  http://www.lovedoll-movie.com/ 
2009年10月10日(土)よりユーロスペース(東京・渋谷)でレイトロードショー


■村上 賢司(むらかみ・けんじ)
映画監督・テレビディレクター。埼玉県川口市在住。現在、次なる「ラブ」を探す、
寅さんみたいな状況です。2006年に監督した『森達也の「ドキュメンタリーは嘘を
つく」』はDVDブックでキネマ旬報社より刊行されています。今年公開された『細菌
列島』(出演・須藤謙太郎,、竹中直人)はポニーキャニオンでDVD発売中。
近況はブログ( http://d.hatena.ne.jp/MURAKEN/ )に。埼玉でのどうでもいい日
常を更新中です。
本文にも書いたスチールカメラによるムービー撮影ですが、他のメーカーからもい
くつか発売されていて、玉石混合状態。それにRED( http://www.red.com/ という 
『チェ28歳の革命』(監督・スティーブン・ソダーバーグ)で使用されたことで知
られるムービーキャメラも登場。演出側としては面白いことになってきたが、いざ
自宅で編集となるとコーデックの問題など、知識とパソコンのスペックがそれなり
に必要になり、お手上げ状態になることも(はい、私のことです)。撮影時、多種
多様のレンズが使用できるので、キャメラマン復権の予感がいたします。



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┃04┃□広場
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■第1回神戸ドキュメンタリー映画祭
《社会福祉への眼差し》柳澤壽男監督特集上映

2009年9月19日(土)?23日(水・祝)、26日(土)・27日(日)
「地域福祉」をテーマにした作品にこだわり続けた柳澤壽男監督作品を特集上映し
ます。
自主製作の五作品『夜明け前の子どもたち』、『ぼくのなかの夜と朝』、『甘える
ことは許されない』、『そっちやない、こっちや コミュニティケアへの道』、
『風とゆききし』を連続して見られる貴重な機会です。
一作ごとの映画作りが生み出す関係性やその動きに呼応して変化していくドキュメ
ンタリー作家、柳澤壽男の世界を感じることができるでしょう。

上映作品
『夜明け前の子どもたち』(1968/120分)
『ぼくのなかの夜と朝』(1971/100分)
『甘えることは許されない』(1975/105分)
『そっちやない、こっちや コミュニティケアへの道』(1982/113分)
『風とゆききし』(1989/154分)

参考上映
『どこかで春が』(1959/65分)

参考無料上映
『神戸っ子』(1960/54分)
『車大工』(1976/38分)
『古典雅楽器 雲の上の音がたちのぼる』(1977/51分)

■ゲストトーク
9月20日(日)13:00小林茂(映画監督/『チョコラ!』同期間中上映)
9月26日(土)15:20磯田充子(柳澤監督夫人)

プログラムの詳細
  http://kobe-eiga.net/program/2009/09/#a000924 
タイムテーブル
  http://kobe-eiga.net/schedule/2009/09/ 

神戸映画資料館
神戸市長田区腕塚町5丁目5番1 アスタくにづか1番館北棟2階
078-754-8039(FAX兼)
  http://kobe-eiga.net/ 
  info@kobe-eiga.net 


   ◇────────────────────────◆◇◆    


■「自作を語る」などの投稿、歓迎!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。その他の投稿も歓迎します。「自作を語る」は1600字程度。監督のプロフィー
ル(150字)、作品のデータ、上映スケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の5日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)

neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。

(1)上映等の告知料は、 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき
2,000円(税別)です。それ以上の行数の場合は比例して加算します。

(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛に
お知らせください。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。



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┃05┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
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●前号で、黒川通子さんは日本を離れてサンフランシスコ州立大学大学院(映画学
科)に入学した経緯を報告。今回は部屋探しや入学準備のゴタゴタ続きに遭遇した
にもかかわらず、多くの親切に助けられひとつひとつ克服していく様子を綴る。私
は現場に立ち会っているような臨場感を味わった。サンフランシスコは物価が安い
うえにアジア系が多く、住み心地は良好のようだ。クラスメイトの紹介、授業の内
容へと文章は移行し、黒川さんが街や大学に徐々に溶け込んでいく様子が綴られて
ゆく。

●毎回ブラジルの注目すべき作品をレポートする岡村淳さんが、今回は極貧地帯に
住む家族を描く作品を紹介している。ブラジルといえばコーヒーの栽培で知られて
いるが、最近はバイオ燃料としてサトウキビの栽培が活発に行われており、今や世
界の生産量の4割を占めているそうだ。当然そこにはプランテーションによる軋みが
日雇い労働者を直撃し、さまざまな労災、公害が発生している。映画は「白黒に色
抜きされ、ナレーションも音楽も用い」ず、日常の音を際ださせる工夫が施されて
いるそうだ。監督は興行収益を出演家族に寄付すると言明しており、ブラジルにも
気骨ある作家がいることを知る。

●村上賢司さんの二作品が今月から来月にかけて劇場公開が予定される。村上作品
は、いつも予測不可能な対象を映像化している。ひとつは過激なインテリアで飾ら
れたラブホテルで、二つ目はラブドールでダッチワイフを進化させたもの。前者で
はホテル従業員の多忙な仕事に驚き、後者ではその美に魅了されたと告白。村上さ
んの虚を突く視線にいつも驚かせられる。



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■発行:ビジュアルトラックス  visualtrax@jcom.home.ne.jp
■責任編集:伏屋 博雄
■編集デザイン:能川 悦子
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★ご意見・ご感想はビジュアルトラックスまで
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