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2009/06/15

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジンneoneo 126号 2009.6.15

 
 
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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    126号  2009.6.15

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 †01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
      『湯の里ひじおり〜学校がある最後の一年』が出来るまで (1)
        渡辺 智史
 †02 ■自作を語る
      『アブバとヤーバ』  大宮 直明
 †03 ■ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫
      グローカルな映画祭たち:
      ニッポンコネクションとオーバーハウゼン国際短編映画祭
        梶村 昌世 
 †04 ■映画時評
       『広場』を見ながら  中村 のり子
 †05 ■広場
    ■『バックドロップ・クルディスタン』DVD発売記念イベント第2弾!
    上映:『バックドロップ・クルディスタン』『フツーの仕事がしたい』
         6/23(火) アップリンクファクトリー
    ■展覧会:ドキュメンタリー作家 土本典昭
         6/ 30(火)―8/ 30(日) *月曜日は休室
          東京国立近代美術館フィルムセンター展示室(7階)
    ■「自作を語る」などの原稿募集!
    ■上映の告知の有料化とカンパのお願い
 †06 ■編集後記 伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで
     まぐまぐ配信   http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/
     melma!配信   http://www.melma.com/backnumber_98339/



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┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■ 『湯の里ひじおり〜学校がある最後の一年』が出来るまで (1)
┃ ┃■渡辺 智史
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●さまざまな「映画」との出逢い

ドキュメンタリー映画『湯の里ひじおり〜学校がある最後の一年』を監督した渡辺
智史です。この映画は山形県大蔵村の肘折温泉を一年にわたって撮影し、2009年3
月に完成しました。私は飯塚俊男氏が主宰するプロダクション(有)アムールに3年
勤めた後、フリーで映画制作に従事しています。フリーになった直後にこの映画の
監督をすることになり、プロデューサーは飯塚さん、カメラマンは『靖国
YASUKUNI』を撮影した堀田泰寛さん、音の仕上げは数々の映画の名作に携わってい
る久保田幸雄さん、編集は『ゆきゆきて神軍』を編集した鍋島惇さん、ナレーター
は数々の記録映画に参加している伊藤惣一さん、錚々たる大ベテランのスタッフと
一緒に仕事をすることができました。本当に様々な人々に支えられて映画が完成し、
現在は上映活動が本格的に動き始めています。この映画が完成するまでの過程を辿
りながら、若輩者の私が経験したドキュメンタリー映画の現場をお伝えできればと
思います。今回は『湯の里ひじおり』を撮影するに至までの経緯を、私がドキュメ
ンタリー映画に出会った時に遡りながら辿っていこうと思います。

1999年に山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)に出会った時、私は山形市の
東北芸術工科大学(芸工大)で建築を学ぶ大学生でした。この年のコンペティショ
ンはビデオが解禁される前の最後の映画祭で多くのフィルム作品が上映されていま
した。一方でアジア千波万波のプログラムでは、海外のアジアの映画作家が身近な
題材で、社会的なテーマをビデオで描いていました。私は『新しい神様』(監督:
土屋豊)等の、プライベートなドキュメンタリー映画に親近感を感じながら観てい
ました。社会的な問題意識が低かった18歳の私は、ビデオカメラを片手に自由な発
想で、家族や友人を撮影しながら社会的なテーマを語っている映画作家の姿に爽快
で、底知れない魅力を感じたのです。

その後、芸工大の赤坂憲雄氏が主宰する東北文化研究センターで、学生が民俗映像
を制作するというプロジェクトが始まり、私は参加しました。その時に講師で来て
いた飯塚さんや、プロの映画スタッフと出会い、ドキュメンタリー映像制作の基礎
を知りました。一方で、自由な表現スタイルをもった作品群をYIDFFで観ていたこ
とから、より幅広く映画の表現方法を知りたいと思い、大学卒業後上京してイメー
ジフォーラム付属映像研究所で、金井勝さんや、かわなかのぶひろさんから個人映
画や実験映画を学びました。8ミリフィルムを手で触りながら編集したこと、多く
の実験映画を観たことなど、興味深い体験でした。

その後飯塚さんの会社で映像制作に従事しました。飯塚さんは、故・小川紳介が主
宰していた小川プロで助監督を長年務めながら、山形の上山市の牧野村に十数年住
み続け映画を作ってきました。独立後も長期の映画制作で、チョウセンアカシジミ
蝶の一年を記録したり、青森県の縄文遺跡・三内丸山の発掘現場を一年見つめた記
録映画を監督してきました。かつてフィルムが主流だった頃は、文化映画と呼ばれ
る、大きな予算の記録映画を作ることができました。その後はコストがかからない
デジタルビデオでの制作が主流になり、少人数の編成での撮影や、PCでの編集が主
流になり、映画制作の予算は大幅に減少していきました。(有)アムールの仕事も少
人数の編成で短期間の仕事が多くなっていました。飯塚さんの最新作で、YIDFFの
2007年の様子を記録した『映画の都ふたたび』は、私がビデオカメラで撮影し、飯
塚さんがマイクで録音しながらインタビューするという制作体制でした。次第に飯
塚さんのなかで、小川プロで経験したように、長期の制作体制で村を撮影したいと
いう欲求が高まっていました。そんな時に肘折温泉を撮影しないかという誘いがあ
りました。

かつて小川紳介さんが若いスタッフと一緒に、肘折温泉で映画を作ろうとしていま
したが、小川さんの病気によって撮影は中断してしまいました。小川さんが亡くな
った後、撮影途中だったフィルムでまとめた『肘折物語』というラッシュフィルム
ができました。その映画には、真夜中に激しく雪が吹き付ける様子や、分厚い雪雲
のなかに見え隠れする太陽が真っ白な月のように見え様子、除雪車の轟音、高く雪
が敷き詰められた道で太鼓をたたきながら歩いてくる僧侶の姿が映っています。ま
た途中で撮影者の加藤孝信さんが、このカットは露出がいくつで、どんな風に撮影
したのかと説明する声が入ってきたりします。このフィルムを観たとき、ラッシュ
を観たという印象ではなく、個人映画のような輝きをもったフィルムだなあと思い
ました。なんて自由なスタイルで撮影をしているのかという驚きと、肘折の冬の特
徴をしっかりと捉えているなあとも思いました。撮影の堀田カメラマンも『肘折物
語』を興味深く観ていました。このフィルムを観た後、現実の村の時間とは異質な、
映画の時間を一年かけて描きたいと強く思うようになっていきました。その思いが、
映画制作を進めるにあたって一つの指針になっていきました。実際の予算はなかな
か厳しかったのですが、肘折地区の協力を得て、長期の映画制作が08年の4月から
スタートすることになりました。次回は、『湯の里ひじおり』の撮影現場でのエピ
ソードを中心に書きたいと思います。      (つづく)


☆『湯の里ひじおり―学校のある最後の1年』はこの6月より山形県最上地方を皮切
りに、全国各地にて上映いたします。現在までに決定している上映は下記の通りで
す。
※上映等のお問合せは、肘折の映画を支援する会事務局(03-3555-3987)または、
各地の上映実行委員会へお願いします。

●最上:09年6月〜7月にかけて山形県最上郡および新庄市の8市町村にて上映予定
     最上地区上映実行委員会連絡先 TEL:0233-34-6106(肘折いでゆ館)
●東京:09年7月23日(木)24日(金)25日(土) 江東区文化センター
     連日 開場18:30〜 上映19:00〜
     肘折の映画を支援する会 TEL:03-3555-3987(パンドラ)
●前橋:09年8月21日(金)22日(土)23日(日) シネマまえばし
     前橋市上映担当 TEL:027-360-6421(デイみさと・田部井)
●鶴岡:09年8月29日(土) 鶴岡市中央公民館
     第1回 開場13:00〜 上映13:30〜
     第2回 開場18:30〜 上映19:00〜
     鶴岡上映実行委員会 TEL:0235-76-2177(村田)

映画「湯の里ひじおり?学校がある最後の一年」を支援する会ブログ:
  http://hijiorieiga.blog.shinobi.jp/ 


■渡辺 智史(わたなべ・さとし)
監督。1981年山形県鶴岡市生。東北芸術工科大学在学中に東北文化研究センターの
民俗映像の制作に参加。2002年『関川のしな織り』で撮影を担当。03年山形県村山
市の茅葺集落五十沢の1年を追う。上京後イメージフォーラム附属映像研究所に通
う。05年アムール入社。06年障がい者が参加する第九合唱を描いた『An Die 
Freude 歓喜を歌う』で撮影・編集。07年『映画の都 ふたたび』で撮影。08年3月
フリーとなる。



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┃02┃□自作を語る
┃ ┃■『アブバとヤーバ』 〜コンセプトから出発したドキュメンタリー
┃ ┃■大宮 直明
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今の世界を表現したい。
大上段に構えた、身の程知らずの無謀な試みだが、この映画の制作を思い立ったと
き私は本気でそう考えていた。2006年の暮である。対象は事件でも事故でも社会問
題でもなく、「ひと」それも市井の人だと決めていた私にとって、次の課題はどこ
の誰を撮影すれば今の世界を表現できるのかということだった。

「世界」というからにはそれを代表する場所を選ばなければならない。一か所では
不可能、複数の地域が必要だ。自分の住む地域(千葉)は当然含む。そしてそこか
ら一番心情的に遠い場所が選ばれなければならないだろう。その場所としてスーダ
ンを選び、結果的に千葉、東京、スーダン北部、スーダン南部に住む年寄りたちを
取材することとした。

なぜスーダンが「心情的に最も遠い場所」なのか?それは作家池澤夏樹氏のエッセ
イ「ジュバへ行く船」(『明るい旅情』所収)からヒントを得た。氏はそこで、
スーダン南部に広がる湿地帯、延々とパピルスの広がるナイル川沿いの光景を、
1980年代の日本からみて最も遠い場所と感じると述べている。

スーダン南部は1956年の独立直前から内戦の舞台となり、2005年1月に終結するま
で断続的に30年以上戦乱の地にあった。日本人がイメージする「危険で貧しくて発
展の遅れたアフリカ」の代名詞ともいえる国だ。ODAの仕事をしていた私にも、
スーダンは遥か遠くの地であった。

年寄りたちを選んだのは、彼らの生きてきたこの70〜80年間を射程にしようと思っ
たからである。現在の日本とスーダンを比較すれば、なるほど経済発展の度合いや
社会資本、教育や政治のシステムに大きな違いがあることは疑いがない。しかしこ
の数十年間の個人史に思いを馳せれば、戦争や貧困、疎開という共通体験が浮かび
上がる。取材するうちに家族との別れという要素も加わった。両地域の老人たちを
描けば「今の世界」のある意味での縮図が表現できるのではないか。これが私の仮
説である。

さて、いくら「立派な」コンセプトを設定しても見て面白くなければ、何か感じる
ものがなければ映画としての価値がない。四か所での撮影中、これはとんでもない
駄作だ、いや作品として成立しないかもしれないという不安に絶えず苛まれていた。
事実、制作開始後一年の2008年3月、アフリカに関心を持つ20名ほどの方々に、そ
れまでの撮影分を一時間程度にまとめて見てもらったが、反応は芳しくなかった。

例えば、南部スーダンに住むおばあさんは8人の子を産んだが3人が病死、2人の息
子が内戦に参加し行方不明、長女は子どもを置いたまま北部に逃げたまま帰らず、
孫たちの世話をして生きてきた。一方、満州への出征経験を持つ千葉のおじいさん
は70過ぎに妻から離縁され一人暮らしとなり、子供たちからの電話もない生活を続
けている。―このような人生を交互に見せる編集としていた。

その反応とは、四か所で語られていることがばらばらでよく分からないというもの
だったのだ。懸念した通りである。しかしそのなかに、思わぬ感想があった。「千
葉のおじいさんが60年前の戦争を語るように、スーダンの人たちが内戦を昔話とし
て語れるような時がくることを願います」というものだった。この人は何のつなが
りもない四か所で生きてきたアブバ(おばあさん)とヤーバ(おじいさん)の語り
の間に、「共通性」を超えたものを感じてくれていた。これからの撮影と編集は、
その何かしらを最大限引き出すようにすればいいのだと道筋が見えた。そこに何か
醸し出されるものがあるなら、作品として成立すると思った。

  ※  ※  ※

このように『アブバとヤーバ』は、まずコンセプトを設定し、それに従って構成の
大枠を決め撮影対象を探すという順序で制作したものである。何の事件も社会問題
も中心におかれていないので時間を追ってもドラマチックな展開は望めない。ただ
一度設定した登場人物たちは時間とともに変化し、行動を起こし、ときにはこちら
から行動を促してもいる。それらを交互に見せている映画である。どんなドキュメ
ンタリーでもそうだが、世界の一断片を描いたということは言える。しかしそれが
「今の世界」を表現しているかどうか、口幅ったい言い方だが、それを見る者ひと
りひとりに委ねたい。


☆『アブバとヤーバ』(2009年、96分、日本)
製作・監督:大宮直明 助監督:ペレス陽子、馬渕陽子 音楽:唄種、オリジナル
・ラスコビ 出演:小山多喜子、石井一三、アフメッド、ロダ・ヨセパ夫妻
プレス試写:6月24日JICA地球ひろば
自主上映:7月4日横浜開港記念会館講堂
7月25日銚子市市民ホール 
8月9日新宿区角筈区民ホール
公式サイト: http://abubayaaba.blog42.fc2.com/ 


■大宮 直明(おおみや・なおあき)
映像作家。1961年千葉県銚子市生まれ。テレビディレクター、国際協力機構職員を
経て2006年よりフリーランスで制作活動を続ける。近作は『尾方美樹の方法と夢』
(2008 未公開)、『おかぐら』(2008 YouTubeにて公開中)。



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┃03┃□ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫
┃ ┃■グローカルな映画祭たち:
┃ ┃  ニッポンコネクションとオーバーハウゼン国際短編映画祭
┃ ┃■梶村 昌世 
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

4月にニッポンコネクションという日本映画祭がフランクフルトで開催された。こ
の映画祭は今年で9回目、来年には10周年を迎える。日本映画を好きな3人のドイツ
人がまだ学生の頃に立ち上げたこの映画祭は、今ではヨーロッパでは間違いなくい
ちばん大きい日本映画祭である。インディペンデント、メジャー、実験映像、アニ
メーション、短編、ピンク映画と幅広く日本で作られている作品を紹介し、多くの
映画はここでヨーロッパ、またはドイツ初公開を迎える。熱意のあるオーガナイザ
ーたちは今では日本映画の専門家に育ち、他の映画祭の審査員も担当、ニッポンコ
ネクションを西洋の日本映画ファンの集いの場所に育てることに成功した。
上映プログラムは「ニッポン・シネマ」、「ニッポン・デジタル」、「ニッポン・
レトロ」の部門に分けられている。日本から多くのゲストを呼び、上映後のQ&A、
トーク、パネルディスカッションなどを通して日本映画の現状を観客に伝える。

この映画祭の特徴は、定着したにも関わらず学園祭のようなサブカルチャーの味を
未だに持っていることだ。メインの開催地はフランクフルトのゲーテ大学のキャン
パス内であり、そこは文字通りお祭りなのだ。カレーライス、たこ焼き、お寿司な
どの日本の定番料理、日本の雑貨、本、マンガ、お茶、カラオケ、ゲームセンター、
指圧など、日本独特とされるものを体験できる。日本人のDJを招きパーティーとコ
ンサートを実施、舞踏ワークショップ、武道の演舞会、和太鼓ワークショップなど
と、とにかくありとあらゆる日本文化を紹介する。ここでは日本のサブカルチャー
とオタク文化がエキゾチックな香りを持ちながらドイツ人の客群と出会い、また在
独日本人たちは自分たちの活動を紹介する場をもうけ、里心に灯を灯しながら日本
の風景を映画で観る。両方の文化と携わりながら育ってきた私は、ドイツ人が見る
日本にも、日本人が見るドイツにもなかなか共感できず、この映画祭でもまた居心
地の良さと悪さを同時に体験するのだが、このように日本映画がドイツで紹介され
続けてきていることをありがたく思う。

スタッフがほぼ全員ボランティアで成り立っているニッポンコネクションはまたな
かなか観られないような貴重な作品も紹介してくれる。例えば去年は衣笠貞之助の
『狂った一頁』をフィリムで上映し、それに来独した活動写真弁士の片岡一郎が語
り、ドイツのDJの音楽とともに引力のあるライブセッションが行われた。今年は女
性ゲストが多数来たこともあって、「What’s up with the women?」というタイト
ルのパネルディスカッションで日本映画業界の女性の立場を語り合った。また、短
編集のプログラムでは、日本の様々な映画祭で上映された学生映画、若手監督の映
画を紹介し、日本の明日の作家たちに海外上映を体験する機会を与え、いち早く日
本映画の今後のトレンドを海外に発信している。デビュー作でいきなりドイツまで
飛んできてしまった彼らは初々しさと緊張感が入り交じった表情でワープしてきた
世界に挑み、またベテランの監督たちは観客の率直な質問に真剣に答えながら、し
がらみの少ないこの映画祭で忙しい日常をふと抜けたような様子である。

私は今回ニッポンコネクションにはキューレーターとして参加し、サスキア・ヴェ
ントラントとともに日本人のビデオアート作家を紹介する展示会「body. space. 
time.」を実施した。以前ドイツでメディアアートを学んだこともある瀧健太郎が
パフォーマンス・ユニット「MiHaRI」で共に活動している大江直哉と伊達麻衣子と
来独、展示されたビデオインスタレーション『Living in the Box』を使ったマル
チメディア・ダンスパフォーマンスを披露してくれた。彼らもまた多くのドイツ人
の観客に暖かく迎えられ 、身も心もはって心地よい緊張感のある公演をみせてく
れた。映像は作者なしでも旅することができるが、パフォーマンスは出演者がいな
いと成り立たない。そして映画もまた関わっている人たちの顔があってこそ息する
わけで、制作者たちが観客と出会うということは大切なことである。日本という場
所で活動する作家たちと、ドイツという場所で作品を観る観客たちが出会うニッポ
ンコネクションは、そんな橋渡りをするグローカルな映画祭である。
 
5月にはオーバーハウゼン国際短編映画祭がドイツのオーバーハウゼン市で開催さ
れた。国際的に有名なこの映画祭は1954年に設立、世界で最も古い短編映画祭だ。
今年は55回目を迎えた。このフェスティバルは当初から短編映画独自の実験性を強
調し、ドイツの映画史では重要な役割を果たしている。1962年には「オーバーハウ
ゼン宣言」が発表され、作家性の強い「新ドイツ映画」が生まれた。
ヴィム・ヴェンダース、アレクサンダー・クルーゲ、ヴェルナー・ヘルツォグなど、
戦後ドイツの代表的な監督たちの多くはこの映画祭に参加した経験がある。現在で
もその精神を大事にし、作家の自由を重視する映画祭である。「インターナショナ
ル」、「ドイツ」、「ミュージックビデオ」と「青少年」のコンペティション部門
があり、青少年の部門は小学生の審査員グループと中高生の審査員グループによっ
て受賞者を決める、正真正銘の青少年部門である。その他毎年ある映像作家の特集
と映像製作団体の作品を紹介するプログラム、またテーマ部門、そして数々のパネ
ルディスカッションがある。今年は松本俊夫の作品特集、そして『Unreal Asia』
と題して東南アジアを中心にアジアの若手作家の作品群が紹介された。松本俊夫特
集は3プログラムに渡って監督の短編作品を丁寧に上映し、来独した監督は上映後
に観客の質問に答えた。このようにまとめて松本俊夫の作品が観られる機会は日本
でもそうはない。しかも今回は長年なくなったとされていたが近年発掘された『銀
輪』(1955年作)や 『白い長い線の記録』など、DVD化されていない作品も観られ
るという貴重な機会であった。
また、70年代のサラエボ・ドキュメンタリー・スクールの特集などもあり、デジタ
ル化が進んでいる現在でも、このように映画祭に行ってこそしか観られないという
体験は、映画を観るという20世紀の文化的習慣が危機にあると議論されている今で
も一つの貴重なイベントであることを再認識させてくれる。アジア映画の特集では、
珍しくビルマの作品なども紹介され、アジア各国の作家,批評家とキューレーター
が来独し、パネルディスカッションに参加した。また、今後の映画教育を積極的に
考えるこの映画祭は、今年はオーバーハウゼン市の小学校と中学校を協定校とし、
青少年部門の予告編をその学校の子供たちが制作した。平日の午前中の上映にはク
ラスで青少年部門のプログラムを観に来る子供たちで会場は埋まり、映画たちが負
けてしまうのではないかと思わせるほどの元気を発揮していた。

オーバーハウゼン国際短編映画祭もまたグローカルな映画祭なのだ。この中規模の
西ドイツの町は以前炭坑の町として栄えた。産業社会を後にした今では周辺の炭坑
はリクリエーション用の緑地として再開発されたりしているが、労働者を誇りとし
てきたこの町はどことなく淋しさを感じさせる。この町に一年に一度一週間の間に
世界各国から人々が集まる。町の中心部の商店街にある映画館に一瞬集まる国際的
な客群は、 これもまたエキゾチックなものを感じさせる。そこでオーバーハウゼ
ン市の子供たちと一緒に映画を観るわけなので、どうもこれもまたローカルとグ
ローバルの融合の場所のようだ。

今回久々に行ったオーバーハウゼン国際短編映画祭で観た映画は、残念ながら期待
ほどではなかった。今でも実験精神を大切にしているセレクションと審査員の受賞
者選考には多いに同意できるのだが、作品自体に強さを感じることがあまりなかっ
た。デジタル化のためだろうか、どうも作品が前ほど丁寧に作られていないという
印象を受ける。誰でも簡単に映像を作れてしまう現代では短編映画の数は急激に増
加したが、だからと言っていいものが作られているかは別問題のようだ。デジタル
技術の導入で映像制作が「民主化」されたのは素晴らしいが、映像が溢れる情報社
会では作る側も観る側もどのように映像と関わっていくかを考え直す必要があるよ
うに感じた。それでもグローカルな世界で作られていく今後の短編映画に期待する。
今回紹介した映画祭のウェブサイトです。ぜひご覧ください。

  http://www.nipponconnection.com/ 
  http://www.kurzfilmtage.de/ 

また瀧健太郎のウェブサイトはこちらをご覧ください。
  http://www.vctokyo.org/ 


■梶村 昌世(かじむら・まさよ)
1976年ベルリン生まれ。東ドイツに囲まれた「西ベルリン島」に育ち、壁の崩壊後
旧東ベルリンのフンボルト大学で文化学・美術史修士取得。その後、映画制作や映
画研究を継続。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃04┃□ドキュメンタリー時評
┃ ┃■『広場』を見ながら
┃ ┃■中村 のり子
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

10月の山形国際ドキュメンタリー映画祭に向けて、東京で催されている上映会「月
刊ヤマガタ」の6月号に足を運んだ。今月の上映は1993年の『広場』(チャン・ユ
アン、ドゥアン・ジンチャン/中国)だった。近年、『鉄西区』(2003)のワン・
ビンを筆頭に中国のドキュメンタリー作家の活躍が目立つようになったが、彼らの
多くに共通する「物事を黙って見つめる」ようなスタイルの発端となった、とも言
われる作品である。私は今まで部分抜粋でしか見たことがなく、初めてその全体像
に触れた。『広場』を見ながら、あらためて最近の中国ドキュメンタリー映画の存
在感について考えた。

『広場』には、いくつかの異なるイメージ、かけ離れた印象が混在している。冒頭
で天安門広場を担当する警官たちが「この広場を守る意義」について誇らしく語る
シーンでは、天安門広場が公的にどんな価値であるのかを私たちに示す。それから、
広場を記念として訪れる子どもの団体、写真に収まる女学生や若い軍人の様子を沢
山映し出す。その一方で、露店の写真屋や食べ物屋のおじさん・おばさんたちはも
っと現実的な生活を見せる。さらに仏頂面の掃除婦や、賭け事に興じる面々もカメ
ラはちゃんと捉えている。この人たちにとって、冒頭の警官たちが述べるような天
安門広場の歴史的な問題はまったく関係ないかのように見えてくる。また、無表情
で機械的に見張りをこなす兵隊は、国家の権限を体現する半面、たんたんと仕事を
するだけで特に理念のなさそうな点はむしろ露天商の態度に近いものを感じさせも
する。  実は外国人観光客が他の誰よりも、広場の歴史的価値を意識している人々
かもしれない。中盤、外国のお偉い方を迎えるために広場で憩う人々が一斉に追い
出されるようなシーンがある。急に当局の統制が敷かれる様子が引きのショットで
撮られている。民衆は端っこに寄って事が済むのを待って、また平気な顔で元に戻
ってくる。権力を讃えもしないが反抗もしない、という彼らの姿が印象に残る。そ
れは『水没の前に』(リー・イーファン、イェン・ユィ/2004)を見た時にも感じ
られたことだし、去年の「山形イン東京」で紹介された黄牛田(ファンニュウティ
エン)集団の作家たち自身の姿勢を思い出しても、似ている部分がある。社会的な
事象を扱っているが、過去に日本で作られてきたように被写体に加担するアプロー
チとは違い、ここでの作者はあまねく出来事と人々を黙々と撮り切ることが、自ら
の役目と考えているようだ。もちろんそれが闇雲でないことは自明で、後半にはス
ケボーをする男の子やおしゃれをした女の子に「天安門事件」以後を表させている
かのようだし、最後に警官がカメラの方へ向かってくるという展開にも狙いがある
はずだ。しかし『広場』が与えるイメージは、おそらく作者の意図する以上に渾然
として、デコボコが見えている。  上映後にトークをしてくださった麻生晴一郎さ
んの言葉が的を射ていた。

一つは、「中国では表現活動の内容以前に、当局の許可なしで活動すること自体が
問題となる」が「その規制は厳しいけれど不思議と穴が空いていて、多くの人がそ
の間をくぐり抜けている」こと。もう一つは「当局に従わない表現活動をする作家
であっても、中国を何とかしたいという気負いがあり、そこにはある種の愛国心が
あるのではないか。『広場』にもそういうものを感じる」ということ。
私はこの指摘を聞いて腑に落ちるものがあった。去年、黄牛田の作家たちが疑いの
ない様子で、自分たちには中国で撮るべきものが山ほどあって、何を撮っても意義
があると言い切っていたことは、中国でそういう活動自体が認められていないこと
の裏返しなのかもしれない。そんな中でみるみる作品群が生まれてくる現状は、た
しかに「穴」があるからだろう。『広場』に映る人々がそれぞれ好き勝手に過ごす
大衆性からも、そうした「ゆるさ」は伝わってくる。そして、カメラが捉えた内容
の中に批判したくなるような、疑問の湧くような状況があったとしても、作者がそ
の追求に回るムードにならないという傾向に私はときどき違和感を覚えるのだが、
もしかすると麻生氏の言う「愛国心」も関係しているのかもしれない。中国という
場所とその歴史に対する達観性というのか、目の前の現状を受け止めることから始
めるという眼差しを、『広場』以外にも『鉄西区』や『鳳鳴』(ワン・ビン/
2007:この作品は一人の女性だけにカメラを向け続けたという点で、別の検討が必
要だと思うが)や『水没の前に』、またドラマではあるがジャ・ジャンクーの『四
川のうた』(2008)などが備えているように思われるのだ。自主制作というやり方、
記録映像という多元的なメディアと、中国の人々の持つ雑駁とした空気とは化学反
応を起こしやすく、さらに90年代以降の中国の社会変化がそれを後押しして、現在
の活況を作ったのだと感じさせられる。

中国ドキュメンタリー映画に、私はけして詳しいとは言えない。雲南の映画祭や北
京のドキュメンタリー上映会にも、噂を聞くばかりで未だ足を運んでいない。しか
し先月の北京の集いでは『長江にいきる』のフォン・イェン監督が土本典昭特集を
プログラムし、土本基子さんや大津幸四郎さんが招かれたと聞き、やっぱり大きな
潮流を感じずにはいられない(ちなみに、日本留学中に小川紳介の影響を受けたと
いうフォン・イェン作品に関しては、今回取り上げた中国ドキュメンタリーの傾向
が当てはまらない点も多いと思う)。ここに記したことは限られた映画体験による
私見だけれど、そんな私でもたしかに感じるこの存在感に、今年も注目していきた
い。


■中村 のり子(なかむら・のりこ)
先日25歳になってしまい、動揺しています。おかげさまで、イメージフォーラムフ
ェスティバル2009での東京上映は無事に終わりました。お越しくださった方、感謝
です。今後は巡回で、名古屋6/19・横浜7/19に『中村三郎上等兵』を上映いたし
ます。お近くにお住まいの方は見に行っていただけたら嬉しいです!仕事は8月に
夏休みをとって、中国の旧満州地域に行く計画を立てています。 



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┃05┃□広場
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■『バックドロップ・クルディスタン』DVD発売記念イベント第2弾!

昨年劇場公開され話題を呼んだ映画『バックドロップ・クルディスタン』がついに
DVD化!(現在絶賛発売中)。DVD発売を記念したイベント上映第2弾の特別併映作
品は昨年公開されて話題を呼んだ『フツーの仕事がしたい』。上映終了後両監督に
よるトークショーもあります。是非ご覧ください。

日時:6/23(火)18:30開場/19:00開演
料金:一律 ¥1,500(1ドリンク付き) 
場所:アップリンクファクトリー
渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F tel.03-6825-5502

【上映作品】
『バックドロップ・クルディスタン』(2007/102分/日本語・トルコ語)
監督:野本大2004年、映像系の専門学校の卒業制作の主題を探していた野本は、偶
然埼玉県で開催されたクルドの新年祭に参加する。彼はそこで日本で暮らすカザン
キラン家の人々と出会い、彼らを主役にした卒業制作を企画するが企画段階で却下
される。そんな中、父アーメットに強制送還の危機が迫り、野本は専門学校を中退
して彼らの姿を追い始める。
※2008年劇場公開作品
ホームページ  http://www.back-drop-kurdistan.com/ 
予告編  http://www.youtube.com/watch?v=CWm6kjJjB1A 

『フツーの仕事がしたい』(2008/70分/日本語) 監督:土屋トカチ
車好きの皆倉信和さんは、高校卒業後運送関連の仕事を転々とし、現在はセメント
輸送運転手として働いている。だが、月552時間にもおよぶ労働時間に加え、会社
から一方的に賃金も下げられ生活に限界を感じた彼は、ユニオン(労働組合)の扉を
たたく。しかしそれは、ユニオン脱退を求める会社側との激しい闘いの幕開けでも
あった。
※2008年劇場公開作品
ホームページ  http://nomalabor.exblog.jp/ 
予告編  http://www.youtube.com/watch?v=yBT_wzPjy6E 


■展覧会
ドキュメンタリー作家 土本典昭
Tsuchimoto Noriaki: The Life of a Documentary Filmmaker

会期:2009年6月30日(火)―8月30日(日) *月曜日は休室
会場:東京国立近代美術館フィルムセンター 展示室(7階)
開室時間:午前11時―午後6時30分(入場は午後6時まで)
料金:一般200円(100円)/大学生・シニア70円(40円)/高校生以下、障害者
(付添者は原則1名まで)、MOMATパスポートをお持ちの方、キャンパスメンバーズは
無料

主催:東京国立近代美術館フィルムセンター
特別協力:映画同人シネ・アソシエ

2008年6月24日、日本のドキュメンタリー界を代表する映画作家、土本典昭監督が
逝去されました。1928年、岐阜県に生まれた土本は、1956年に岩波映画製作所に入
社、助監督修業を積むとともに、黒木和雄・小川紳介などドキュメンタリーの同志
との交流を深めながら、映画と世界とのかかわりを模索しました。
1963年には国鉄のPR映画『ある機関助士』のダイナミックな表現で頭角を現します
が、その後に直面した水俣病の現実が、映画作家としての土本の生涯を決定づけま
す。『水俣 患者さんとその世界』(1971年)に始まる「水俣」シリーズは、撮影
対象に徹底して寄り添い、問題の深奥をえぐる一貫した姿勢を通じて国内外の観衆
に衝撃を与えました。また1980年代以降は主題の幅をより拡げ、その著作とともに
今日まで日本のドキュメンタリー界を牽引してきました。「映画は生きものの仕事
である」との信念のもとに生み出されたその作品群は、社会への批判精神だけでは
なく、人間や他のあらゆる生命に注ぐ視線の暖かさによっても特徴づけられます。
監督の没後一年となるこの機会に、フィルムセンターは、ご遺族や製作プロダクシ
ョンの所蔵する写真や遺品を中心とする展覧会を開催し、この記録映画の巨星の思
考と行動の軌跡をたどります。

*展覧会の構成
I  記録映画への道―岩波映画へ
II “青の会”―若きドキュメンタリーの旗手
III 独立の時代
IV  生きものの仕事―水俣へ
V  新たなる旅

・ドキュメンタリーの仲間たち
・海外における土本典昭
・土本典昭の仕事部屋
・未発表インタビュー映像

*ギャラリートーク
関係者・専門家によるギャラリートークを開催いたします。

第1回 2009年7月11日(土)
ゲスト:土本基子氏(土本監督夫人)、石坂健治氏(映画研究者)
第2回 2009年8月1日(土)
ゲスト:中村秀之氏(立教大学現代心理学部教授)
第3回 2009年8月22日(土)
ゲスト:高木隆太郎氏(映画プロデューサー、青林舎元代表)
時刻は後日ホームページなどでお知らせいたします。

*関連企画(上映企画)
京橋映画小劇場No.14
ドキュメンタリー作家 土本典昭
2009年8月11日(火)−8月30日(日)
フィルムセンター小ホール(地下1階)
詳細は後日ホームページなどでお知らせいたします。
  http://www.momat.go.jp/FC/TSUCHIMOTO/index.html 

〒104-0031東京都中央区京橋3-7-6
お問い合わせ:ハローダイヤル03-5777-8600
東京国立近代美術館ホームページ  http://www.momat.go.jp/ 


   ◇────────────────────────◆◇◆    


■「自作を語る」などの投稿、歓迎!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。その他の投稿も歓迎します。「自作を語る」は1600字程度。監督のプロフィー
ル(150字)、作品のデータ、上映スケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)

neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。

(1)上映等の告知の有料化 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき、2,000円
です。それ以上の行数の場合は比例して加算します。

(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせく
ださい。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。



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┃06┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
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●渡辺智史さんの初監督作品『湯の里ひじおり』が完成し各地で上映されるのを機
に、作品に取り組んだ経緯や撮影中の出来事、演出の方法、スタッフワーク等を吐
露していただくことになった。4回の連載になる予定である。初回は作品に着手す
る前史を綴っている。次回から作品の世界が展開されるはずである。

ところで渡辺さんは文章の後半で、刺激を受けたラッシュフィルム『肘折(ひじお
り)物語』について綴っている。これは小川紳介最後の映像となったラッシュだが、
これについて付言したい。小川は『1000年刻みの日時計』(1986年)を完成後しば
らくして、同じ山形県下の村にフィリピンからの花嫁が少なからずいることに触発
され、「羽衣伝説を」をヒントに、新しい作品の構想を描いていた。小川にとって
それはその後に続くであろう作品の起点を意味していた。新たな挑戦は新戦力のス
タッフへと動いた。それは、長年組んできたカメラマンの田村正毅(現・たむらま
さき)とのコンビを解消し若いカメラマンと組みたいという熱望となり、白羽の矢
は加藤孝信に立った。加藤は小川プロのスタッフになって日も浅く、まだ20代前半
の青年だった。
はたして、90年2月、豪雪の地、肘折で加藤のカメラトレーニングが始まった。こ
の時のラッシュフィルムが『肘折物語』と称されるものだ。現像所から上がったば
かりのラッシュは荻窪にあった小川プロのスタジオで映写された。小川と加藤、そ
れに少数のスタッフが固唾を飲んで見守った。―スクリーンを見つめながら、小川
の加藤に下す指示、叱咤は猛烈を極めた。カメラの位置はどこに置くのか、カメラ
の眼のこなし所はどこにあるべきか、激烈な言葉が矢継ぎ早に飛んだ。それは誇張
ということが大げさでなく、身ぶりを交えて小川は吠えた。カメラマンを育てたい
という小川の熱情、一言も聞き洩らすまいとする加藤・・・・それから丸2年後に
小川紳介は癌のため54歳で永眠した。『肘折物語』はアテネフランセ文化センター
で行われた「小川紳介とお別れする会」で上映された。しかし、あの時の小川の映
画に込めた激情と、小川と組めなかった加藤の無念さは、私の大事な記憶として残
存している。

●ドイツのニッポンコネクションとオーバーハウゼン国際短編映画祭はお馴染みの
映画祭だ。今年も日本映画が紹介された。梶村昌世さんはいつもキチンと書き込ん
でくださるが、今回も映画祭の詳細が的確にレポートされていて、これらの映画祭
がいかに日本にとって貴重な存在であるか、よく理解できる。

●中村のり子さんの原稿を面白く読んだ。『広場』を俎上に、中国のドキュメンタ
リーの傾向といったことまで言及しているからだ。当日のゲストは麻生晴一郎さん
で、麻生さんの話を聴けたのはラッキーだったと思う。現代中国を語る最適な方で、
私は著書「こころ熱く武骨でうざったい中国」(情報センター出版局)を読み、雲
間にみる太陽といった感がしたことがあった。また『広場』の監督であるチャン・
ユアン(張元)の『北京バスターズ』(1993年)は、私が15年前に今は無き映画館
シネマアルゴ新宿で公開したことがあり、久しぶりに当時のことを想い出した。



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