ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo  RSSを登録する

映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2009/04/15

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 122号 2009.4.15

 
 
☆━┓ ┏━┓ ┏━┓
┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
┗━┫e┣━┫n┣━┫o┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○
  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    122号  2009.4.15

∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 †01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
      『長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語』
       フォン・イェン(馮艶)監督インタビュー
       (2008年12月16日) (3−最終回)
       聞き手:萩野 亮
 †02 ■自作を語る
      『チョコラ!』  小林 茂
 †03 ■映画時評
      企画展『廃墟にフィルムを回す 原爆被災記録映画の軌跡』を訪ねて
        中村 のり子
 †04 ■広場
      ■ポレポレ東中野 4.26オールナイト VOL.2
       4/25(土) 『祝(ほうり)の島』(ラッシュ上映)
        『ドキュメント’89 脱原発元年』『へばの』『ナージャの村』
       4/18〜5/1『バオバブの記憶』公開記念として
        『ナージャの村』『ナミイと唄えば』『アレクセイと泉』
        『水になった村』
      ■「自作を語る」などの原稿募集!
      ■上映の告知の有料化とカンパのお願い
 †05 ■編集後記 伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで
     まぐまぐ配信   http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/ 
     melma!配信   http://www.melma.com/backnumber_98339/ 



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■『長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語』
┃ ┃フォン・イェン(馮艶)監督インタビュー
┃ ┃(取材:2008年12月16日) (3−最終回)
┃ ┃■聞き手:萩野 亮(構成・採録)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●日中映画の架け橋として

――フォン・イェン監督は中国で小川紳介監督の本の翻訳や、土本典昭監督の紹介
などをされていて、まさに日中の架け橋として活躍されているわけですけども、ま
だまだ日本のドキュメンタリーは中国で見られていないんじゃないかと思います。
いま中国に紹介したい日本の作家や作品はありますか?

いま、土本さんの回顧上映を企画しているんですね。来年(2009年)の5月に。私が
個人的に紹介したいのは、佐藤真さんと原一男さん。このふたりはすごいと思って
います。他はまだあまり見ていないからわからないんだけど、ぽつぽつと短編を見
たり。山本起也さんの『ツヒノスミカ』(06)は私もとても好き。ひとつのスタイ
ルなんですね。自分の家族をああいうふうに撮れるというのがすごくよかったし、
いろいろ勉強になった。映画としての完成度もすごく高いと思います。土本さんは、
本当にまっすぐな視線で私は本当に人間がすばらしいと思う。人間を尊敬する真摯
な姿に、とても実直な人柄を感じる。原一男さんをとても好きなのは、ふつうの人
がなかなか持たない勇気を押しの一手で持ってしまう。あれはすばらしい。とても
卑怯に、ふつうの人の生活をどうのこうのではなくて、ちゃんともっと大きなもの
のためにやるというところがすごいなと思って。独特の味のある作家だと思います。
作品しか知らなくて、ご本人は知らないんだけど。

――逆に日本に紹介したい中国のドキュメンタリーはありますか?

すでにほとんど紹介されているところもあるから(笑)。ワン・ビン(王兵)さん
の作品とか、山形映画祭を通して中国のいい作品は紹介されている。ほとんど的を
外してはいないですね。山形映画祭の方々の選ぶのは本当にいい作品だと思います。

●長江三部作の完結に向けて

――最後の質問に入っていきますが、いま次回作の編集中ということで、これは
『長江の夢』の女性とは一部別の人たちであるわけですね。

ひとりだけ別。『長江の夢』のおばあちゃんがまず出てきます。おばあちゃんが死
ぬまで。おばあちゃんの孫をまた撮って、(彼女に)今年子どもが生まれた。おば
あちゃんの話は『長江の夢』とはまったく違ったものになる。私はずっとこれをど
う表現したらいのかわからなかったところがあって、それを今回のメインにする。
もうひとりは美容師さん。美容師さんは転々としていて、結局工事現場から男を見
つけ出して結婚した(笑)。いまの娘は小学二年生なんだけど、すごく面白い人。
彼女の人生も本当に面白い。もうひとりは、秉愛(ビンアイ)の親友。都市に移住
したもと村医者と婦人主任の夫婦で、ほとんど秉愛と同時期に撮り始めた人。町で
あったいろんな出来事。あとは秉愛の娘、息子。この四人の女性を描いています。

――新しい映画を作ってゆくなかで、今回公開される『長江にいきる』は、フォ
ン・イェン監督にとっていまどんな映画としてありますか?

最初(『長江の夢』)はダムというテーマを、次(『長江にいきる』)はひとりの
人間への私の愛情、尊敬を映像というかたちによって表現したもの。三番目はいま
構成で苦しんでいる。事実説明ではなくて、四人いるからそれで難しさも増えるし、
四人をどうやって構成していくのか。でも四人の人生を重ね合わせることによって、
彼らの孫や娘も入ってくるんだけど、現実の重みはいっそう見えてくるといういい
ところもあるんですね。スタイルもまったく違ったものになる。今回こそやりたい
ことをすべてやるつもりでいます。『長江にいきる』ではまだ躊躇がある。徹底的
ではない。もっと徹底的にやればもっとよかったと思います。編集に満足していな
い。どっちかというと前の作品に引きずられた部分もあって、今回はやりたいこと
を思う存分やるつもりでいます。

――その新作でこの長江のシリーズが完結するということでしょうか?

いまはそう考えています。もう、長すぎるから(笑)。

        (了)


■インタビュー後記  萩野 亮

フォン・イェン監督にお話を伺ったのは、年の瀬も迫った昨年12月の中ごろのこと
だった。今回がはじめての取材となったわたしは、前夜から胃と腸がさかさまにな
るような緊張に見舞われていたのだが、フォン監督はその日最後の取材者となるわ
たしを、とてもやさしく迎えてくれた。その日もいくつかの取材をつづけて受けら
れたようで、「口内炎ができたのでゆっくり話しますね」と添えてから、わたしの
用意してきた一問一問に、とても丁寧に答えてくださった。
あらゆるドキュメンタリーは主体と被写体の距離のドラマだといえると思うのだが、
わたしが『長江にいきる 秉愛の物語』に見たのは、家族と長く暮らした親密な空間
を追われようとしているある女性と、キャメラを持ったもうひとりの女性とのあい
だで、もうひとつの親密な空間があたかも自然に形成されてゆくドラマだった。今
回のインタビューでまず伺いたかったのは、秉愛という女性とフォン監督とのあい
だに、どのような共感のプロセスがあったのかということ。そしてそのプロセスが
前作『長江の夢』から『長江にいきる』を経て、次作『長江の女たち』(仮)へと
展開してゆくなかでどのように位置づけられているのかということだった。驚かさ
れたのは、今回の作品は「まだまだ徹底されていない」という強い言明。「やりた
いことをすべてやる」という次作にいまから期待が高まるが、まずはいま上映され
ている傑作を、多くの方に見ていただきたい。
質問を展開するなかで、自分の知識や技術、また感性のたよりなさを痛感する場面
がいくつもあったが、とりわけより具体的な個々のショットにおいて問いを立てら
れなかったことが何より悔やまれた。けれどもそのぶん、ショットとして結実する
までのフォン監督の映画への向き合い方がより強く感じられるものになったとすれ
ば、望外の幸せである。
インタビューをどうにか終えてほっと一息つくわたしに、フォン監督は中国の煙草
を一本くださった。ふだん吸うものよりもいくらか強い香気を、監督のいかにもや
さしくしなやかなお人柄とともに、わたしはいまも胸に想起することがある。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃02┃□自作を語る
┃ ┃■『チョコラ!』
┃ ┃■小林 茂
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「ギブ、ミー、テン」(10シリングをくれ)。
「バイ、ブレッド」(パンを買ってくれ)。
路上で暮らす子どもたちから声がかかります。東京だけで1日50万食分が捨てられる
という飽食の日本からきた私のやわな身体と精神が悲鳴をあげるのに、そう時間は
かかりませんでした。シンナーを口から離さない子どもたちの泥酔したような目が
追いうちをかけます。

ストリートで暮らす子どもたちをテーマにしたドキュメンタリー映画の撮影のため
に2006年、約5か月間にわたり、アフリカ・ケニアに滞在しました。首都ナイロビの
北東45キロにある10万人余のティカという地方都市が映画の舞台です。「チョコ
ラ」とはスワヒリ語で「拾う」を意味し、ストリートチルドレンを指します。侮蔑
の意味を含んだ言葉でした。

1994年、アフリカ・ウガンダのエイズ孤児を取材。そのとき同行した松下照美さん
がウガンダの隣のケニアに移住して、子どもたちを世話するNGOの活動をしています。
松下さんから「アフリカの子どもたちの今を映像に残してほしい」と言われたのが
きっかけでした。

貧困、経済格差、エイズ被害、シングルマザー、暴力、都会へのあこがれなど多様
な原因を背負って、子どもたちは町へ出てきます。鉄くずやプラスチックなどを金
に換える。彼らは油で真っ黒だ。荷物運び、金をもらい、なんでもしながら生きて
いる。ビデオ映画館でアクション映画を楽しみ、夜は軒先に眠る。大多数の子ども
たちが、いやなこと、寒さ、空腹を忘れるためにシンナーを吸う。

1年半の編集作業の末に、2008年、映画は完成。タイトルは『チョコラ!』としまし
た。「俺たちはチョコラだぜ!」と歌い踊る姿に、「生命体」としての「原石の輝
き」を見る思いでした。
映画が完成してからも、大きなスクリーンで上映されるたびに、見入ってしまいま
す。そして、子どもたちと対話している自分に気づきます。一瞬のうちに、撮影現
場に引き戻されてしまうのです。あのときの彼らの心情を、私はもう一度「いま」
の自分の中で想像し繰り返します。その、「いま」は、幼いころの自分であったり、
彼らと同じ少年時代だったり、初老期を迎えた現在であったりします。それぞれ生
きている時間も場所も飛び越えて。

映画には「完成」というゴールがあるように思うかもしれません。しかし、その
ゴールはじつにあやふやな蜃気楼(しんきろう)です。それゆえに、映画という総
体は、完成された時点から逆走するように、「現在」に向かって来るものでもある
と、今更ながらに思います。
子どもたちを取り巻く環境が悪い、社会が悪い、世界が悪い――と子どもたちの内
心を見ようともせず、当初、私は空回りしていたのではないでしょうか。

帰国近くになっても、映画になるかどうかの感触も持てませんでした。ただ、「な
ぜ、おせっかいにも、こんな遠くアフリカまで来てカメラを回すのか」という問い
が頭をもたげてきました。そして、それに答えられるものは何もないと気づいたの
です。

グローバリゼーションや経済格差を描く術も力量もない。援助者でも教育者でもな
い。私がアフリカにいて映画を作るということは、既存の価値観で彼ら(チョコ
ラ)を断罪する視点をいかに捨てられるか、それだけなのではないだろうか。

私はただただ、子どもたちの日常(気持ち)に思いを寄せれば、それでいいのだ。
そこから浮かび上がって来たのは「思春期」の川を泳ぐ子どもたちの哀しい心情で
す。日本もアフリカも「思春期」に変わりはしない。

「いのち」を背中にかつぎながら疾走する子どもたちにいかなる光を感じられるか。
それが、腎不全から透析へ移行した時間と並走しながら、この映画を作ってきた私
の原動力のような気がします。
この映画を支え、たびたびケニアに手紙をくれた佐藤真監督に、完成した映画を見
てほしかった。

☆『チョコラ!』(2008年、94分、HD、スタンダード)
監督:小林茂、撮影:吉田泰三、整音:久保田幸雄、編集:秦 岳志
編集協力:山崎陽一、音楽:サカキマンゴー
特別協力:佐藤 真、製作事務局:目黒秀平、小林眞人
アソシエイト・プロデューサー:秦 岳志、プロデューサー:矢田部吉彦
製作:カサマフィルム、配給:バイオタイド
公式サイト: http://www.chokora.jp 
☆『チョコラ!』は本年5月9日(土)より渋谷・ユーロスペースにてロードショウ。
ほか全国順次公開予定です。


■小林 茂(こばやし・しげる)
1954年、新潟県生まれ。『阿賀に生きる』(佐藤真監督)の撮影により日本映画撮
影監督協会第1回JSC賞受賞。重症心身障がい者の世界を描いた『わたしの季節』は
毎日映画コンクール記録文化映画賞、文化庁映画大賞他を受賞。近著に「ぼくたち
は生きているのだ」(岩波ジュニア新書)。映画公開にあわせ、「チョコラ!アフ
リカの路上に生きる子どもたち」(岩波ブックレット)が5月8日刊行予定。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃03┃□ドキュメンタリー時評
┃ ┃■企画展『廃墟にフィルムを回す 原爆被災記録映画の軌跡』を訪ねて
┃ ┃■中村 のり子
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1945年の9月から数ヶ月間、広島と長崎を撮った日本の映画スタッフ達がいた。戦時
下にニュースや文化映画を手がけた日本映画社の人々の自発的な構想で始まった映
画製作だったが、途中からGHQの監視を受け、完成した約2時間半の作品『広島・長
崎における原子爆弾の影響』と使用した5時間半分のフィルムはアメリカの博物館へ
持ち去られてしまった。返還されたのは1967年で、それを機に企画されたのが、松
川八洲雄がコラージュ手法で作った『ヒロシマ・原爆の記録』(1970)だ。私はこ
の作品を見ているから、知らずのうちに当時の映画の断片を見たことになる。他に
も、このフィルムは貴重な「素材」として国内外で使用されたそうなので、どこか
で目にしているのかもしれない。しかし、かつての製作スタッフが考えた元の映画
作品とは、どんなものだったのか。

現在、広島の平和記念資料館の一角でこの「元の映画作品」についての企画展が行
われている。私は旅行もかねて資料館を訪ねた。展示は写真パネルと現物資料と映
像モニターを組み合わせた構成で、映画の発案から現在に至るまでの経緯をまとめ
ている。『広島・長崎における原子爆弾の影響』は原爆の被害状況について、学術
的な観点から詳細に記録しようとするもので、学界の監修の下に生物・物理・医
学・土木建築の4班に分かれて調査・撮影するという科学映画の巨編だったといえる。
私がもっとも関心があったのは、ラッシュ段階の映像と、製作スタッフによるシナ
リオや撮影メモだ。調べてみればこの映画には、当時の日本のノンフィクション映
画界の第一線の顔がある。生物班は演出が奥山大六郎、撮影が鈴木喜代治という科
学映画のエキスパートだ。土木建築班の撮影には、亀井文夫の『上海』『戦ふ兵
隊』を手がけた三木茂がいる。全編のプロデューサーは加納竜一、統括役は岩崎昶
だった。原爆を取材しようという動きは、その投下が知らされた直後から始まって
いたという。
8月15日まで国策宣伝を担っていた日本映画社の内部でそうしたアイデアが生まれ、
敗戦をまたいで混乱する中で、翌月に30数名のスタッフを編成したという事実は興
味深い。結果的に彼らは文部省による原爆の学術調査団の組織に属して製作を開始
することになった。

展示品として、当時書かれた撮影日誌やスケッチ、絵コンテなどが並べられていた。
鈴木喜代治が描いた、放射線を浴びた植物についてのカット割り。三木茂による所
定の撮影報告書には、パルボL型で露出がF4〜6とあり、ショットごとにフィート
数が記してあった。物理班の演出をした相原秀二のメモには、被爆した屋根瓦に起
こった現象を見せるシーンが図入りで詳しく描かれ、できれば同じような熱射実験
をして現物と比較したいというアイデアも残されている。当時のノンフィクション
映画の作り手達が、撮影中にどうやって考察を進めていたかを知ることができる。
また相原は日誌で、調査や撮影の不十分さに触れつつ「果してこれで世紀の一齣を
動かしてゆく力がこの歯車によって成し遂げられるであらうか」「又この歯車の作
成が果して如何なる価値を後の時代に生むだらうか」と記している。スタッフ達が
すでに、この撮影に対して歴史的な重要性を意識していたことをうかがわせる内容
だ。また編集段階におけるショットと解説を組み合わせたシナリオ、映画の冒頭ナ
レーションの原稿、「文化映画製作日程表」というスケジュール用紙、線画注文書
など映画製作の要領をつかめる資料が豊富で、この頃にどういう段取りで仕上げて
いたのかが分かって新鮮である。

出来上がった『広島・長崎における原子爆弾の影響』はGHQに没収されたのだが、実
はスタッフはラッシュフィルムの一部を秘密裏に焼き増しし、三木茂が運営する三
木現像所に保存、1952年の独立後にニュース映画として公開したのだった。映像展
示では、そのニュース映画と後日返還された作品全編の他に、秘匿されていたラッ
シュ状態の映像からの抜粋が30分上映されていた。音楽も解説も付いていないショ
ットの集まりは、不思議にも作品化されたものとは異なる印象を与えた。爆心地か
らの180度のパンショット、爆心となった島病院、がれきの中を行く移動ショット、
徒歩で道を進むショット、立ち枯れた木、曲がりくねった鉄骨。生気なく横たわる
被爆患者達。それらを静かに見ていると、作品の中にスムーズに取り込まれたら見
落とすような微かなニュアンスが感じられる。

また、調査団がトラックから手を取り合って降りる様子や、墓石を調べるところ、
放射能の測定をしたりがれきから何かを拾っているショットなどは、現場にいた学
者とスタッフの動きを親密に伝えてくれる。これらのラッシュの中から良い部分を
つないだのが1952年のニュース映画であるはずだが、私にとっては何故かバラバラ
のラッシュ状態のショットの方が触発されるものを持っていた。同じフィルムを元
にして、当初の学術的な演出ではなく撮影スタッフの呟きを軸にまとめ直すことが
できたら、まったく意味合いの違った作品が生まれるのではないかとも感じた。た
だしそこには、当時の構想が安易な告発ルポ(それは占領下では無理だっただろう
が)ではなく科学的なアプローチだったからこそ、対象を丁寧に的確に撮る姿勢が
あり、そうして生まれた映像だから新たな面も見出せるという前提がある。それら
のショットの中に、カメラマンや演出家の心情や行動が静かに息づいているのが、
ラッシュ状態で見ることによって自然と現れてきたようだった。それは「元の映画
作品」である『広島・長崎における原子爆弾の影響』の作品としての貴重さともま
た別のものだ。

そう考えると、松川八洲雄が『ヒロシマ・原爆の記録』であらためてこれらのフィ
ルムを用いた時、ナレーションで当時のカメラマンの存在を引き合いに出したやり
方は、撮影したスタッフ達とそのフィルムの価値を認め直すという秀逸な視点を持
っていたといえる。それは、単なる「素材」として1945年の記録を援用することと
は大きく違ってくる。そして考えようによっては、『広島・長崎における原子爆弾
の影響』がすぐに公開できず、秘密のラッシュフィルムが存在し、返還が20余年後
になったことで、一つの記録がいろいろな表情を見せるに至ったといえるのかもし
れない。

☆「廃墟にフィルムを回す―原爆被災記録映画の軌跡」は、
平和記念資料館で7月15日まで


■中村 のり子(なかむら・のりこ)
中学3年生の修学旅行ぶりに訪れた広島は、路面電車が縦横無尽の魅力的な街でした。
宣伝:国内各地で開催されるイメージフォーラムフェスティバルの「ジャパン・ト
ゥモロウ」部門に拙作『中村三郎上等兵』をノミネートしていただきました!嬉し
恥ずかしですが…東京では西新宿パークタワーにて4月29日〜5月6日に行われます。
招待部門や新旧作の特集もかなり充実していますので、ぜひ遊びにきてください。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃04┃□広場
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■上映:ポレポレ東中野 4.26オールナイト VOL.2

会場:ポレポレ東中野  http://www.mmjp.or.jp/pole2/ 
   東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下 TEL:03-3371-0088
日時:4月25日(土)←開催日注意!“25日土曜日”開催です
    23:00開場/23:15開映(5:40終映予定)

チェルノブイリ原発事故の発生日である4月26日。ポレポレ東中野では、この日近く
の土曜日に「原発」に関する映画をオールナイトで上映する企画を2008年より立ち
上げました。
2回目の本年は『アレクセイと泉』でスタッフを務めた纐纈あやの初監督作品『祝の
島』の特別ラッシュ上映をはじめ、上映機会の少なかった小池征人の『脱原発元
年』、本年公開され大きな話題となった六ヶ所村が舞台の異色劇映画『へばの』、
写真家・本橋成一による映像美溢れる『ナージャの村』など、「原発」に関する多
様な映画を一挙に上映します。

『祝(ほうり)の島』ラッシュ上映(約50分予定)監督:纐纈あや
27年前から原子力発電所の建設計画が持ち上がり、反対を表明し続けている山口県
祝島の人々の営みに寄り添い、現在撮影中の『祝の島』監督解説付ラッシュ上映。

『ドキュメント’89 脱原発元年』(1989年/105分/16mm)
監督:小池征人 撮影:一之瀬正史/高岩仁/大津幸四郎 ナレーション:江守徹
長年重厚なドキュメンタリーを制作し、『人間の街』『いのちの作法』などで知ら
れる小池征人による、原発の存在意義・原子力の意味を問い続ける貴重な作品。

『へばの』(2008年/81分/DV-CAM)
監督・脚本:木村文洋 出演:西山真来/吉岡睦雄 撮影:高橋和博 音楽:北村
早樹子
青森県六ヶ所村の恋人たちを描き、核燃料再処理工場で働く主人公の被曝によって
揺れ動く人間模様を描いた痛烈な怪作。

『ナージャの村』(1997年/118分/35mm)
監督:本橋成一 撮影:一之瀬正史 編集:佐藤真 音楽:小室等
ナレーション:小沢昭一
チェルノブイリ原発事故で汚染されたベラルーシ共和国ゴメリ州ドゥヂチ村。そこ
には故郷を離れず、汚染された村に残る6家族がいる。美しく厳しい自然とともに、
大地に根ざして明るくたくましく生きる彼らの暮らし。

オールナイト詳細 →  http://www.mmjp.or.jp/pole2/motohashi-sp-an.html 

前売:1,800円(劇場窓口・チケットぴあにて発売中!)
 →Pコード555-194
  http://ent.pia.jp/pia/event.do?eventCd=0916133&perfCd=001 
当日:2,300円
 ※全ての券は、当日整理番号の受付(10:10より)が必要となります

────────────────────────

!同時期開催!
『バオバブの記憶』公開記念
<本橋成一作品アンコール・レイトショー〜世界はたくさん、人類はみな他人〜>

4月18日(土)〜5月1日(金/映画サービスデー)
連日21:00〜

上映スケジュール:
4月18日(土)〜21日(火) 『ナージャの村』
4月22日(水)〜24日(金) 『ナミイと唄えば』
4月25日(土)〜28日(火) 『アレクセイと泉』
4月29日(祝)〜5月1日(金・映画サービスデー) 『水になった村』

写真家・本橋成一が初めて訪れたアフリカでバオバブの樹に魅せられてから35年、
念願の映画『バオバブの記憶』が公開中です。この映画の公開を記念して、彼が今
までに監督した三作、プロデュースした一作を二週間にわたって一挙上映致します。
本橋成一の四作品と新作『バオバブの記憶』
( http://baobab.polepoletimes.jp/ )を、是非この機会にご覧下さい。

詳細 →  http://www.mmjp.or.jp/pole2/motohashi-sp.html 
『アレクセイと泉』予告編 →  http://www.youtube.com/watch?v=NYITTPglDww 

前売:1,000円(劇場窓口・チケットぴあにて発売中!)
 →Pコード460-751
  http://ent.pia.jp/pia/event.do?eventCd=0916191&perfCd=001 
当日:一般1,300円/大・専・高・中・シニア:1,000円
※5月1日は映画サービスデー!どなたも1,000円でご覧いただけます!
※相互/リピーター割引実施!(ポレポレ東中野でのみ有効)
本橋成一最新作『バオバブの記憶』、もしくは本橋作品アンコール・レイトショー
のチケット半券ご提示で、『バオバブの記憶』は当日1,300円、本橋作品アンコー
ル・レイトショーは当日1,000円でご覧いただけます。


   ◇────────────────────────◆◇◆    


■「自作を語る」などの投稿、歓迎!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。その他の投稿も歓迎します。「自作を語る」は1600字程度。監督のプロフィー
ル(150字)、作品のデータ、上映スケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)

neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。

(1)上映等の告知の有料化 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき、2,000円
です。それ以上の行数の場合は比例して加算します。

(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせく
ださい。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃05┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●フォン・イェン監督はすでに、次作『長江の女たち』(仮)の仕上げに取りかか
っている。今回のインタビューで、「『長江にいきる』ではまだ躊躇がある。徹底
的ではない。もっと徹底的にやればもっとよかった」という想いが、完成への意欲
を駆り立てているようだ。『長江にいきる』からさらに徹底した作品とはどのよう
な作品なのか、今から新作が待ち遠しい。人生の諸相をより深く照射する作品にな
ることを期待したい。

今回のインタビュアーには、本誌「映画時評」の萩野亮さんを抜擢した。インタビ
ューは彼にとっては初めての体験。日頃から沈着冷静の萩野さんだが、「前夜から
胃と腸がさかさまになるような緊張に見舞われていた」と白状する。しかしフォ
ン・イェンの包容力ある対応に助けられ、作品の内部に迫るインタビューになった。
こうした経験は萩野さんにとって大きな自信になったはずで、フォン・イェン共々、
今後の活躍を期待したい。監督が何を考え、どのように実行したかを知ることは、
わたしたち読者にとって作品の鍵を握ることである。

さて次回からは、金井勝監督の連載を予定しています。

●小林茂監督から投稿があった。ケニアの路上で暮らす子どもたちを描いた新作
『チョコラ!』についてである。小林監督は7年前に脳梗塞で倒れ一時は作家生命が
危ぶまれたが幸いにも復帰し、以前にもまして旺盛な制作意欲を発揮しておられる
ことは、昔を知る者として嬉しい限り。一方で編集・構成担当として参加する予定
だった佐藤真監督の突然の他界によって、一時は映画の完成が危ぶまれる状態であ
ったそうだが、こうした幾多の苦難を乗り越えていった。新作は来月東京での公開
を皮切りに、全国公開される。

●広島、長崎に原爆が投下された翌月、廃墟の惨状を撮影した日本人クルーは当時
の映画最前線で活躍する人たちだった。彼らが撮影したオリジナルフィルムとこれ
に関連する資料を展示した「企画展」が広島の平和記念資料館で開催されている。
中村のり子さんのレポートによって、彼らが撮影したフィルムやノートにメモされ
た文字から彼らの視点、調査の様子を知ることができると同時に当時の映画人の矜
持を確認することにもなる。アーカイブの必要性を改めて痛感する。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■発行:ビジュアルトラックス  visualtrax@jcom.home.ne.jp 
■責任編集:伏屋 博雄
■編集デザイン:能川 悦子
─────────────────────────────────────
★ご意見・ご感想はビジュアルトラックスまで
★いただいたメールには全て目を通しますが、必ずしも返信できるわけではありま
せん。また、いただいたメールをこのメールマガジンに掲載させていただくことが
ありますが、掲載不可の場合はその旨をお書き添えくださるよう、お願いいたしま
す。
─────────────────────────────────────
★バックナンバー閲覧、およびメールマガジン配信解除はこちらまで
 まぐまぐ配信   http://www.mag2.com/m/0000116642.htm 
 melma!配信    http://www.melma.com/backnumber_98339/ 
※編集部では配信解除、メールアドレスの変更などは受け付けておりません。
お手数ですが、ご自身でお願い致します。
注」デザインが崩れて見える場合は等幅フォント(MSゴシック、Osaka等)でご覧
ください!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright (C) 2003-2009 visualtrax
 
 
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る