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映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。

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2008/12/01

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジンneoneo 114号 2008.12.1

 
 
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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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 †01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
      道具としてのドキュメンタリー (1)認知症を撮る  川村 雄次
 †02 ■ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫
      重なる現実―ドイツで活動している日本人でもある
       女性作家たちの作品  梶村 昌世
 †03 ■neoneo坐12月前半の上映プログラム
 †04 ■広場
      ■「シネマテークたかさき」総支配人・茂木正男さんを悼む 景山 理
      ■第12回ゆふいん文化・記録映画祭 第2回松川賞の公募
      ■「第11回ゆふいん文化・記録映画祭記録集 モンスーン2号」
       を発行!!
      ■桜映画社特集 <桜映画はしなやかである>
            ポレポレ東中野 12/13〜29 全17日間
      ■「自作を語る」などの原稿募集!
        ■上映の告知の有料化とカンパのお願い
 †05 ■編集後記 伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで
     まぐまぐ配信   http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/
     melma!配信   http://www.melma.com/backnumber_98339/



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┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■道具としてのドキュメンタリー (1)認知症を撮る
┃ ┃■川村 雄次
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●私は私になっていく

先日、何人かの知人に向けてメールを送った。

私が制作に携わった番組のおしらせをさせていただきます。
今度の番組は、「『おしまい』の続き」のお話です。
子どもの時に聞いた「そして、お姫様と王子様は結婚して幸福に暮らしました。
おしまい」というお話に続きがあることを、大人の皆さんは日ごろからよく感じて
おられると思います。たとえば、「そして、認知症になりました。」というような
ことがあります。それもやはり「おしまい」ではない。「その続き」をどう生きる
か?という番組です。

『長すぎる休日 若年認知症を生きる』(11月23日放送)という89分のドキュメン
タリーの放送のおしらせだった。
数日後、メールの送信先の一人であった職場の先輩から、こんなご批判をいただい
た。
「君が、あのように作家が作品を語るように書くと、誤解を受けかねないのではな
いか?先にテーマがあって、取材先をその素材として扱っているのではないかと。
我々はあくまでも、取材先に真摯に向き合って取材した結果、こうだった、という
立場を守るべきではないか?」
実は、それは私の考えと全く一致していた。私も、自分たちの作るドキュメンタ
リーを、「作品」とは考えていない。放送局に就職してテレビ番組を作るようにな
ったからといって、自分が「作家」になれるとは思わないし、目指してもいない。
卑下して言うのではない。私たちのドキュメンタリーには別のことが期待されてい
るのだと思う。では何なのかということを、これから書かせていただきたいと思う。

私はこの5年、認知症に関する番組を作り続けている。最初に作ったのは、46歳で
アルツハイマー病と診断されたオーストラリアの女性、クリスティーン・ブライデ
ンへのインタビュー番組だった。『痴ほうの人 心の世界を語る』として2003年
11月に放送した。「認知症が進み、娘の顔が分からなくなっても、私は私だろう
か?
神に祈ることすら出来なくなっても私は私だろうか?」と自問自答を続け、3年後、
その心の旅路を本にまとめた。そしてその後、驚くべきことに、結婚相談所を訪ね、
紹介された男性と結婚。世界10か国以上での講演活動を続けていた。彼女が語るの
は、認知症が進行するにつれて、人間の外側を覆っていた殻がはがれ落ち、自分が
自分であることの本質はますます顕かになっていく、「私は私になっていく」とい
うことだった。

当時日本で、高名な認知症の専門医ですら「自分のことを認知症という人を認知症
と言わない」と言ってはばからなかった。認知症の人の暴力、暴言などは、壊れた
脳の産物「症状」として、無視するのが当たり前だった。それが「常識」だった。
だが彼女は、認知症を生きる当事者として、それは嫌なことを嫌と言えないために
とる「表現」なのだと説明し、「耳を傾けて欲しい」と要望した。クリスティーン
の言葉は、日本の認知症ケアの現場に大きな衝撃を与えた。翌年には、京都で開か
れた国際会議で、認知症と診断された50代の日本人男性が演壇に立ち、実名で自ら
の体験を語った。2006年には、全国の認知症の人たちが集まって「本人会議」を開
き、社会、家族に向けて共同声明を発表した。
「クリスティーンのように生きたい」という希望が、これらの人々に行動する勇気
を与えた。
古い「常識」は覆り、それにかわる新しい「常識」が求められたこの時期、私は機
会を与えられるまま、何本もの番組を作り続けることになった。だが、知識として
「知る」ことと「分かる」ということの間には大きな隔たりがある。今なお、「ク
リスティーンのように生きる」ことを支えることを目指すことが日本にあまねく広
がってはないし、そもそも「クリスティーンのように生きる」とはどういうことな
のか、そのために何が必要なのかも、分かってはいない。

そんな中、札幌に暮らす認知症と診断された50代の男性二人がその妻たちととも
に、クリスティーンとその夫と語りあうためオーストラリアへ行くことになった。
その旅に、私たちが同行して出来たのが、この文章の最初に書いた番組『長すぎる
休日』だった。
それは、「私は私になっていく」とは一体どういうことなのか?を問いつづける旅
だった。  (つづく)


■川村 雄次(かわむら・ゆうじ) 
1990年NHKに入局。ドキュメンタリー、教養番組などを制作。2005年から制作局文
化・福祉番組に所属。主な番組『16本目の“水俣”〜記録映画監督 土本典昭〜』
『山村の巡回診療班はいま〜長野県佐久総合病院の50年』『クリスティーンとポー
ル〜私は私になっていく〜』など。



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┃02┃□ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫
┃ ┃■重なる現実−ドイツで活動している日本人でもある女性作家たちの作品
┃ ┃■梶村 昌世
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●世界と交差するベルリン

今年はなにかと映画シリーズやビデオアートの上映イベントをキューレーションす
る機会に恵まれ、おかげでたくさんの作品に出会った。ほとんどがドイツで暮らす
映像作家の作品であるが、ハンガリー、スペイン、トルコ、フランス、日本などと
作家たちの出身地は様々だ。それだけベルリンという街に各国の人たちが集まり、
国際的であると言えるかもしれないが、もっと見分けをつけると、スペインと言っ
てもバスク人、トルコと言ってもクルド人、出身国でもマイノリティーである人た
ちがいるし、ハンガリー人と言ってもドイツ育ちの二世であったり、グローバルな
社会になるほどローカルな話を耳にするし、マイノリティーや共同体と言った概念
を考え直すことが多い。映像作品にもそういう経験と想いが様々な形で反映されて
いる。日本でも他の文化や習慣を持つ人々が増えているが、島国であることも関係
するのだろうか、外は外、内は内という考え方が強く、まだ「日本人」といった確
固とした国民像があるような印象を受ける。

陸続きのヨーロッパでは当然それではつとまらない。「海外」という表現もない。
海の向こうの遠くの人ではなく、電車で一時間の所の人だったりするわけだ。しか
し日本人と言ってもドイツに住む日本人がいる。日本人と言ってもドイツ生まれド
イツ育ちだったりする。日本人とドイツ人のハーフの人もいる。ハーフと言っても
日本で独逸学園に通い、大学生時代はドイツで過ごし、今ではアメリカとドイツの
間を行き来している人がいる。そんな人たちが映像作品を作り、自分と日本の関係、
個人的な経験と共同体の記憶の関係性などを考え、映像や写真として記録された瞬
間の解釈と意味を問い、また自ら映像を撮り、世界に発信する。今回はそんな作家
たちの作品を紹介したい。いずれも女性作家であり、ドキュメンタリー的素材を用
いて詩的及び連想的な見方を提供する短編作品だ。

一本は数年前からドイツのケルンに住む中沢あきの『願いをひく』(2006年)とい
う作品だ。映像はたったのワンカット、ローアングルから撮ったひとつの窓とその
向こうに見える青空。誰もが見たことのある風景、指定された場所ではない。この
映像に国際電話の会話が重ねられている。半年前にドイツに移住した日本人女性が
日本の友人に久々に電話をかける。何気なく過ぎていく会話、その中で明らかにな
るのは、グローバル化された消費社会では日本の食料品はドイツでも手に入るし、
インターネットでは常に日本の情報が見られるし、「こっちに来ても人生変わるっ
てことはないよね。」と女性の声は言う。場所が変わってもアイデンティティーと
いうのはそう変わるものではなく、同時に取り替えがきく環境に浮遊感を覚える。
そんな中、ふとした違いに感動する。日本ではあまり見られない飛行機雲がドイツ
ではたくさん見えると言うのだ。そう言った瞬間、窓から見える青空を横切る飛行
機雲が方向を変えたり、曲がったり、円を描いたりする。空に願いがひかれていく。
「夢みたいな現実というか、日本のほうが今私にとっては現実みたいな夢」と女性
は言う。現実、そして自分の居場所というのはどういうことか、さりげなく且つ力
強くこの詩的な作品で問われる。中沢あきさんは「ドイツに住み始めて、家や故郷
というものを真剣に考える機会を持った」という。

一方、Sylvia Schedelbauer(シルヴィア・シェーデルバウア)は常に二つの文化
の狭間にあったアイデンティティーを持つ経験から、自分の家族の歴史を見つめる
というとてもプライベートな行為がまた社会の在り方を問うことに繋がる。
『Erinnerungen』(思い出、2004年)という作品では、古い写真が詰まった箱を見
つけたことをきっかけに、自分の家族の歴史を語る。ドイツ側の祖父の第二次世界
大戦中の兵隊の姿の写真から始まり、父の貧しかった少年時代、貧困から抜け出そ
うと努力する姿、やがて商社の日本への派遣、実業家としての成功、日本人の妻と
の出会い、二人の間に生まれる二人の子供たち、という三世代を渡って家族の歴史
が写真のみで語られる。シェーデルバウアは自分でドイツ語のナレーションをし、
親が話さなかった過去を写真を頼りに破片を繋げるように再構成する。それは自分
と両親に対する厳しい視線でもあるが、それより感じられるのは、歴史の不在から
来る痛みである。日本でもドイツでもない二つの国の文化と歴史の狭間に置かれた
作家は、自己の物語を作ることによって、20世紀の歴史を考える。両親は二人とも
第二次世界大戦の加害者であった国の市民であるのに、個人的な歴史からその事実
が消されたという経験から、その空白を埋めるようにこの作品は展開していく。だ
が最後には家族の歴史を再構築した達成感ではなく、アイデンティティーの複雑さ、
そして自分が戦争を知らずに育ったという事実に直面、インターネットのデーター
ベースで20世紀の世界の戦争と紛争を調べ、その途方もなく長い一覧表が作品の最
後に映画のエンドロールのように流れる。

同じ作家の『Ferne Intimitat』(遠くの親密、2007年)はファウンド・フッテー
ジを利用し、ある夢を語ることから展開していく。『Erinnerungen』より抽象的で
あるこの作品は、他人が撮った映像と音源をモンタージュすることによって、無関
係だった昔の記録映像を意識の流れの中で組み合わせる。激しいと同時に繊細なシ
ェーデルバウアの作品は、ある現実の記録として残っている映像や写真が誰の所有
物でもなく、個人と共同体の記憶の中を漂うことを指摘する。

映像や写真といった媒体が、世界を駆け巡ることを実感させてくれるのが、Hito
Steyerl(ヒト・シュタイエル)の作品『Lovely Andrea』(愛らしいアンドレア、
2007年)である。シュタイエルはベルリンに住む映像作家、芸術家であり、シェー
デルバウアと同じく日本人とドイツ人の両親を持つ。20年前日本で映画の勉強をし
ていた頃、一度だけ緊縛モデルの仕事をしたことがある。その時の写真を探す目的
で緊縛モデルでもある若い日本女性が通訳兼監督助手をつとめるという設定で風俗
資料館、緊縛撮影スタジオなどを訪れる。意外なことにその写真が実際に見付かる。
緊縛、ボンデージはこの作品でポルノに留まらず象徴的に扱われ、我々が資本主義
の情報社会で自由であるようで如何に縛られているかがフォーカスである。スパイ
ダーウーマンのアニメ、9.11のテロの後禁じられたスパイダーマンのティーザー広
告、ニュース映像などを利用し、視覚媒体がクモの巣及び網のように絡み合ってい
ることをユーモアに富んだモンタージュで表現することによってドキュメンタリー
とフィクション、現実とメディアの関係性を考える。アンドレアとは、シュタイエ
ルが緊縛モデルをした時に使った偽名である。この名前は作家の若い時の仲良き友
人の名前で、この実在したアンドレアは後にクルド労働者党のテロリストとしてト
ルコ軍に殺される。殉教者として死んだとされるアンドレアの顔写真がベルリンに
住むクルド人たちのデモでポスターとして町中を運ばれ、またそのポスターが
ニュース映像として世界のメディア網を駆け巡る。

いずれの作品もドキュメンタリー的エッセイ映像とでも言える、現実を出発点にし
たものだ。しかし現実は現実ですまないことをよく知っている。青空も、家族も、
20年前の自分も、写真や映像として撮られた、捕らえられた時には現実を越え、一
人歩きを始める。結局その映像になにを見るかは、語り手によって変わるし、観る
側によっても変わる。また、その映像が世界を循環していく中でまた違う「真実」
や「現実」が含まれることもある。日本にいる日本人にもこのような作品と出会っ
て、自分たちの現実と同時に様々な生き方と考え方がこの世界にあることを知って
いただき、そしてそれらが日本という自分たちの生活環境とも繋がっていることを
感じてもらえたら幸いだと思う。


■梶村 昌世(かじむら・まさよ)
先週久々にいいドキュメンタリー映画を観た。監督はAysun Bademsoy、ドイツに住
むトルコ人二世の女性で、10年前に撮ったドキュメンタリー映画の主人公たちを再
度撮った作品だ。当時ベルリンの女子サッカーチームで懸命にボールを蹴っていた
トルコ人二世の5人の女性たちが30才前後になった現在をどう生きるか、そして当
時をどう見るかを、敬意を込めたやさしい眼差しで追っていく作品だ。



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┃03┃□neoneo坐12月前半の上映プログラム
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会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩1
分JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。詳細と地図はneoneo坐のHPをご覧下さい。
  http://www.neoneoza.com/

■「知られざる短篇映画を見てみる」上映会「短篇調査団」

毎月第2・第4水曜/20:00〜21:40 終映予定
16mm上映 会費500円(作品資料付き/映画は鑑賞無料)
追加情報はblog版短篇調査団へ

■こんにちは赤ちゃん5本立(計90分)
(80) 誕生の巻…2008年12月10日(水)20:00〜

『赤ちゃんがうまれるまで』
1991年/10分/カラー、制作:学研映画
プロデューサー:福井康雄/脚本・監督:新井智明/撮影:浅原優
■男女のからだの違い、卵子と精子と受精卵の変化、動物の交尾、胎児の成長、出
産の過程などを顕微鏡や超音波による映像、実写などで克明に記録したもの。生命
誕生の神秘を正面からとらえている。

『母子手帳』
1950年/20分/白黒、制作:英洋行教育映画部(現・英映画社)/企画:厚生省
監督:西尾佳雄/撮影:富沢恒夫/ナレーション:村岡花子
■厚生省配布の母子手帳をもとに、家庭分娩が一般的だった当時の家庭の描写を交
えつつ、妊娠・出産・授乳と母子の衛生をわかりやすく説明する。

『たまごからひよこへ』
1969年/15分/カラー/制作:学研映画
プロデューサー:原正次/脚本・監督:江藤征治/撮影:秦吏志
■タマゴの中の胚の成長からヒヨコの誕生までの過程、特に栄養吸収と生長(生命
活動)との関係を描く。

『生命創造 いのちそうぞう(原題:Les premiers jours de la vie)』
1971年/18分/カラー/制作:フィルムス・デュ・ルバン(フランス)
プロデューサー:ルネ・バトパン/監督:クロード・エデルマン Claude Edelman
撮影:ジャン・マリー・ポーフル/生物実験:デニス・ウデ
■受精から出産まで、初めて体内にカメラを据えてそのすべてを捉え、生命の美し
さ、誕生の素晴らしさを謳いあげる。

『人間誕生』
1971年/27分/カラー/制作:桜映画社/企画:雪印乳業
プロデューサー:村山英治/監督:瀬藤祝/脚本:藤原智子
撮影:三枝弘夫/音楽:三木稔/ナレーション:久米明・山田三恵
■この映画は初産婦を主な対象とする妊産婦
【お問合せ】清水 E-mail: shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp 
教室の教材映画として企画された。妊娠と出産は病気ではなく「自然の生理」であ
り、出産の苦痛をなくす人工分娩よりも自然分娩をという主張が根底に流れている。

会費500円(作品資料付き/映画は鑑賞無料)
※7月より会費制(500円)として、ご来場の皆様に作品資料をお渡しする形に改め
させていただきます。



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┃04┃□広場
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■「シネマテークたかさき」総支配人・茂木正男さんを悼む
■景山 理

11月15日、二十数年にわたる友人であり地方で映画を支える同志だった茂木正男さ
んが亡くなった。全身をがんに侵され自宅で、しかもまだ61歳という無念の死だっ
た。彼から舌がんの手術を受けたと聞いたのは一昨年のことだった。しかし、治癒
したのではなく、がんは転移していた。今年8月末の仙台での「全国コミュニティ
シネマ会議」では2日目にパネラーとして出席。その時の彼の姿はまさに満身創痍。
無理して体調を整え、力を振り絞っての参加だった。「俺は生きてるよ。死んだ人
間のように見ないでくれ」、そう笑いながら言った茂木さんを、僕はただ抱き締め
るだけだった。それが彼に会った最後だった。  彼は高崎で「上映集団メーヴェ」
を立ち上げ自主上映活動を展開。1987年には高崎映画祭をスタート。毎年4月に開
催されるこの映画祭は、高崎の春の風物詩ともなり、今年で22回を数えるまでにな
った。まさに高崎の映画の拠点だった。僕も参加していた自主上映の全国組織体
「シネマテーク・ジャポネーズ」に80年代末から参加。以来、毎年春と秋の2回、
この全国会議で寝食を共にしながら映画を語り合ってきた。  僕は、彼のことを悪
く言う人を会ったことがない。永遠の映画青年のような若々しい発言をする一方、
場をなごますちゃめっ気たっぷりの一言など、僕たちにとってなくてはならない存
在だった。怒りっぽい僕とは対照的で、誰からも愛されていた。ある時、僕が喧嘩
しているHさんと僕を高崎に招待し、しかも同じ部屋に寝泊まりさせ、仲を取り持
とうとしてくれたこともあった。友人たちを大切に思う彼の気持がうれしかった。
彼こそ映画を愛し、信義に厚く、友情を尊ぶ実にいい男だった。  彼は高崎に映画
館をつくる夢を語っていたが、ついに2004年、高崎で唯一のミニシアター「シネマ
テークたかさき」を設立した。僕たちがシネ・ヌーヴォをつくったのは1997年のこ
とだったが、映画館を持とうという熱い気持は彼のほうがいち早く、その夢を持ち
続け十数年ぶりに実現させたのだ。しかも毎年、高崎映画祭を開催しながらのこと
なので、その努力と根気強さには頭が下がる。昨年末には2スクリーン目もオープ
ン。これからが期待された矢先での、あまりに突然の死だった。
しかし映画館はつくるのと同じくらい継続させることも困難だ。しかもミニシア
ターの危機が続く現在、今後はまったく予断を許さない。いま彼を失ったことはあ
まりにも大きいものがある。だが、全国には彼にお世話になった多くの映画の仲間
たちがいる。「シネマテークたかさき」のスタッフたちに熱くエールを送り、微力
ながら応援してゆきたい。ご冥福を心からお祈りします。  ※茂木さんは、自分の
ことを「もぎ」と言っていた。しかし、本名は「もてき・まさお」だった。葬式の
場で初めて知った。最後までちゃめっ気たっぷりだったね、もぎさん!

■景山 理(かげやま・さとし)
シネ・ヌーヴォ、シネ・ピピア代表。昨年よりコミュニティシネマ大阪事務局長。
自主上映グループ「シネマ・ダ−ル」を1975年より開始。1984年からは「映画新
聞」を発行してきた(1999年終刊)。来年3月に開催する大阪アジアン映画祭の準
備に追われている。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■第12回ゆふいん文化・記録映画祭 第2回松川賞の公募が始まります!!

第12回ゆふいん文化・記録映画祭は2009.5.29〜5.31の3日間、開催されます。そし
て、そこで表彰されます第2回松川賞の募集が、いよいよ始まります。
募集期間は2008.12.1〜2009.3.10となっています。「作り手の思
い」がくっきり見える、完成度の高い(或いは力強い)、中・短編(60分以内)の
「映像記録」を全国から募集します。
第1回の昨年は、64本の作品が応募され、そのうち5本が松川賞に選出され、その
中から「緑の海平線」が大賞を受賞しました。さらにこの作品は、この後文化庁映
画賞文化・記録映画部門の大賞も受賞しました。松川賞をきっかけとして、入賞作
品が一般に上映されたり、他の映画賞を受賞するということは、私たちのとってこ
の上ない喜びです。今年もそのきっかけとなるべく、優れた作品が集まることを期
待しています。

また、今年も松川賞ならではの審査員が顔を揃えております。第1回では筑紫哲也
さんに審査員に加わっていただき、入賞作品に対して詳細な講評をお寄せいただき
ました。残念ながら筑紫さんは今年10月にご逝去なされましたが、今回は新たに吉
岡忍さん(ドキュメンタリー作家)と森達也さん(作家、映像作家)の両氏に新た
な審査員として、加わっていただきます。
充実した審査員に加え、今年も入賞作品(5本を予定)の制作者1名を映画祭に招待
し、作品を上映し、表彰いたします。そして、大賞には賞金10万円を用意しており
ます。
詳しい募集要項、および募集用紙は、下記のホームページをご覧下さい。
  http://movie.geocities.jp/nocyufuin/home.html 
 
事務局:〒879-5102
     大分県由布市由布院町川上2863番地
     ゆふいん文化・記録映画祭「松川賞」係


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■「第11回ゆふいん文化・記録映画祭記録集 モンスーン2号」を発行!!

2008.5.30〜6.1に開催された、第11回ゆふいん文化・記録映画祭の記録集(12月
15日発行予定)を発行します。
山田泉さん(『命の授業』)、時枝俊江監督(『夜明けの国』)、池内了さん(科
学映画特集)、井上修監督(『出草之歌』)各氏のトーク。また、第1回松川賞入
賞者によるシンポジウム(司会は野村正昭氏)と、審査員(筑紫哲也さん他)によ
る入賞作品の講評が採録されています。
雑誌名の「モンスーン」は21年前、映画『1000年刻みの日時計』をめぐって、故小
川紳介監督へのインタビューを中心に、創刊されました。今回、ゆふいん文化・記
録映画祭の記録集として、やはりドキュメンタリー映画を扱った第2号として復刊
しました。由布院盆地から吹く爽やかな風に乗って、皆様にお届けします。
松川賞への応募希望者はもちろん、文化・記録映画に興味のある方、あるいはゆふ
いん文化・記録映画祭に興味のある方には、是非購読をお勧めします。
価格は、第11回ゆふいん文化・記録映画祭公式パンフレット(500円)と合本とな
って、1,200円です。「モンスーン(記録集)」のみ購入を希望の方は1,000円とな
っております。
購読を希望の方は、下記までメールにてお申し込み下さい。
メール: kayako@ace.ocn.ne.jp 

事務局:〒879-5102大分県由布市由布院町川上2863番地
    ゆふいん文化・記録映画祭「モンスーン」係


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■桜映画社特集 <桜映画はしなやかである>
ポレポレ東中野にて開催!
2008年12月13日(土)〜29日(月) 全17日間

この度、ポレポレ東中野では53年の歴史をもつ記録映画製作会社・桜映画社の特集
上映を行います。
1955(昭和30)年に「母と子の桜映画社」というキャッチフレーズで出発した桜映
画社は、女性たちの一株株主を集めて設立され、草創期には第一作『さようなら蚊
とはえさん』に代表される家庭生活・保健衛生をテーマにした記録映画を多く製作
していました。1960年代からは、科学映画、医学映画、文化映画、海外ロケシリー
ズ、産業映画と様々なジャンルの作品を生み出していきます。
「ベアテの贈りもの」「シロタ家の20世紀」の藤原智子の『歌舞伎の後見』、樋口
源一郎と組んだ『女王蜂の神秘』、松川八洲雄脚本の「食」に関する映画『和菓
子』『にっぽんチーズものがたり』から、市川房枝の一生を追った『八十七歳の青
春』、七世野村万蔵の芸を追った『狂言・野村万蔵』、宮武外骨の検証映画、科学
映画の傑作『血液 止血とそのしくみ』をはじめ、建築土木技術を追った『急曲線
を掘る 泥水加圧式シールド工法』まで、多様な記録映画を残しています。
記録映画ともう一つの柱として岡本忠成、杉井ギサブローらを起用した作家性豊か
なアニメーション作品も制作し続けており、2005年の話題作・川本喜八郎監督作品
『死者の書』も記憶に新しいところです。劇映画の製作も草創期より行っており、
満映でも活躍した木村荘十二監督の『海ッ子山ッ子』('58)でベネチア国際映画
祭サン・ジョルジュ賞を受賞、また、内藤誠、神山征二郎といった商業映画作家に
も活躍の場を与えています。
こういった、広範囲な種類の作品を製作しながら、変わらないスタンスを持ち続け
ている桜映画社の作品を観ることにより、記録映画の歴史だけでなく、ひいては戦
後史、昭和史が再確認・再発見してもらえると思っております。今回は800を超え
る桜映画のフィルモグラフィから、選りすぐりの88作品・全36プログラムを上映し
ます。

作品詳細 →  http://www.mmjp.or.jp/pole2/sakuraeigasha-sp.html 
タイムテーブル →  http://www.mmjp.or.jp/pole2/sakuraeigasha-time.html 

料金:前売:一回券1100円/三回券3000円(Pコード:460-321)
当日:一般・学生1300円/中・高・シニア1000円/
小学生700円/三回券3300円

会場:ポレポレ東中野(東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下)
TEL:03-3371-0088 ホームページ: http://www.mmjp.or.jp/pole2/ 


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■「自作を語る」などの投稿、歓迎!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。その他の投稿も歓迎します。「自作を語る」は1600字程度。監督のプロフィー
ル(150字)、作品のデータ、上映スケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)

neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。

(1)上映等の告知の有料化 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき、2,000円
です。それ以上の行数の場合は加算します。

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送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせく
ださい。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。



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┃05┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
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●川村雄次さんの連載が始まった。川村さんはNHK(東京)のディレクターである。
前任地の松江局時代から認知症に関心をもち、これを終生のテーマとして取材を続
けてこられてきた方だ。例えば今年の1月に放送されたNHKスペシャルでは認知症の
医療の現状を問うていた。私はかねてからテレビ局がどのような姿勢で、どのよう
にして番組を制作されてきているのか知りたくて、執筆をお願いした。今もBS放送
の番組と、そのほかに年末までの番組2本の仕上げを抱えての多忙のなか、快諾く
ださったことを感謝したい。

●≪ベルリン発≫の梶村昌世さんのご両親は70年代初頭にベルリンに渡って以降、
ずっとこの地に住み続け、そして梶村さんが生まれ育った。「私はドイツ人です」
と、かって私に語ったことがあったが、それは生活様式や発想の仕方であったのか、
国籍は日本にあることを最近になって知った。こうした環境に生きる人は自らのア
イデンティティーを問う欲求が私たち(日本人)よりも強いように思うが、彼女は
仕事を通じてさらに意識的だ。さまざまな国籍を持つ者たちと複合された様々な文
化を受容してきた者たちとの交流・交差は、世界の最前線を照射している。

●「シネマテークたかさき」の茂木正男さんが11月15日に亡くなった。享年62歳。
つい10数日前に、M大学で行われたシンポジウムでお会いした岩崎ゆう子さん(コ
ミュニティシネマ)から、病状はよくないと聞いてはいたが、余りにも早い死にた
だただ驚くばかりであった。

思い起こせば私が初めて茂木さんにお会いしたのは20年ほど前だ。彼が立ち上げた
高崎映画祭で小川作品(『ニッポン国 古屋敷村』だったか?)を上映し、私を招
待してくださった。その後会う機会がないままに年月は流れ、数年前にある会合で
遭遇し短い挨拶を交わしたが、私は茂木さんとは淡い関係でしかなかった。しかし、
彼が20代の頃に電電公社(現NTT)に勤務しながら自主上映集団「メーヴェ」を立
ち上げ、その勢いを高崎映画祭を組織化へと繋げ、さらに映画館「シネマテークた
かさき」設立に至る映画への情熱に、私は敬意を抱いていた。追悼文は、長年の盟
友である景山理さん(大阪「シネ・ヌーヴォ」)からの寄稿をもって、茂木さんの
30年余の奮闘を讃えたい。

それにつけても現存するミニシアターの多くは、80年代から90年代にかけて設立さ
れた。60年代以降の自主制作作品の上映運動の流れを汲み、代表の殆どは今や高齢
化し50歳代から60歳代に達している。茂木さんが62歳で永眠したことを想うとき、
急務は後継者の育成だ、と切に思うのである。



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